★★★★作品

2006/10/06

三年身籠る

「三年身籠る」★★★★
(盛岡フォーラム3)2005年日本
監督:唯野未歩子
原作:唯野未歩子
脚本:唯野未歩子
出演:中島知子 西島秀俊 奥田恵梨華 塩見三省

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三年身籠る@映画生活

冬子(中島知子)も緑子(奥田恵梨華)も、父の不在がその生涯に多大な影響を及ぼしている。届く事のない手紙を書き続ける。父親と同年代と思われる年齢差のある男性と付き合う。

そんな彼女たちとは対照的に、祖母(丹阿弥谷津子)も母親(木内みどり)も男性のいない生活に特別不自由も感じていない。困るのは缶の蓋が開けられないことぐらいだ。

このマイペースな生活ぶりを姉妹二人は何故送ることができないのか。おそらく、姉妹二人は父の不在の欠落感を埋めようとして行動するが、決して埋めることができず不安定な感情のままなのであろう。

欠落は欠落のままで置いておき、橋をかけて渡るくらいの気の持ちようで構わないのではないか。ここで思い出すのはファースト・シーン、道路のゴミ拾いを延々と続ける冬子の行動。いくら集めても、集めても終わりは見えてこない。待っているのは不毛な砂漠だ。

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2006/10/02

ダ・ヴィンチ・コード

「ダ・ヴィンチ・コード」★★★★
(盛岡フォーラム1)2006年アメリカ
監督:ロン・ハワード
原作:ダン・ブラウン
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
出演:トム・ハンクス オドレイ・トトゥ
   イアン・マッケラン ジャン・レノ

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ダ・ヴィンチ・コード@映画生活

冒頭、ラングドン教授(トム・ハンクス)の宗教象徴学の講演会が興味深い。見た目の印象と事実がかけ離れている事例がいかに多いことか。その誤認を生み出しているのが歴史ということになる。

我々が学校の授業で学び、常識としている事例が、常に正しいとは限らないということ。歴史ミステリーの興趣は、我々の常識を打ち破る真実を提示させるかにかかっていると思う。

そうした意味で本作品はかなり満足できる内容である。キリスト教の教義をあまり把握していない自分にも、ラングドンとリー(イアン・マッケラン)の質疑応答から明らかにされていく真実の開示には惹き付けられた。

原作は未読ながら盛んに一般ニュースでこのネタが取り上げられていたので、これがクライマックスにくるかと予想していた。それが割と早く中盤に構成されていたことから、もう一つ違うサプライズがあるだろうと思っていたが、果たしてその通りだった。

長編小説の映画化ということで、予想どおり賛否両論分かれている。原作を離れ一つの作品として見た場合、様々な弱点を抱えていることは間違いない。

だが、細かいショットに伏線を張り巡らせたロン・ハワード監督の演出は、2度、3度見直すことで評価が変わってくるような気がします。

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2006/09/21

寝ずの番

「寝ずの番」★★★★
(名劇2)2006年日本
監督:マキノ雅彦
原作:中島らも
脚本:大森寿美男
出演:中井貴一 木村佳乃 長門裕之 富司純子

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寝ずの番@映画生活

誰もが簡単に見られる表芸だけでなく、限られた者たちが密かに楽しむ裏芸が存在する世界は奥深いと思う。そこには賭けが行われるボクシングや格闘技などの非合法なものから、料理人のまかない食などの非公開なものまで様々な形が混在している。

そんな世界を一度覗いてみたいという直接的な欲求と共に、それを意識することで表芸にも複雑な色合が生じてくるようになる。

本作品は落語の世界の裏芸をよくぞここまで映像化したという感慨をまずおぼえる。こうした芸の数々はどこまで継承されていくのだろうか。現在のようなテレビ中心の演芸界において、こうした徒弟制度が維持されるのだろうか。

私自身はこうした艶歌に興趣を感じるわけではないが、こうして映画として後生に残すことの意義は強く感じる。

通夜噺三題で、大きな盛り上がりの際中に故人がそれぞれ戻ってくるところがポイント。普通に見れば不謹慎極まりない形かもしれないが、それらが故人を送り出す最高のシチュエーションであろうと感じさせる。

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2006/09/17

美しき運命の傷痕

「美しき運命の傷痕」★★★★
(京都シネマ3)2005年
フランス/イタリア/ベルギー/日本
監督:ダニス・タノヴィッチ
脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
脚色:ダニス・タノヴィッチ
出演:エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール
   マリー・ジラン キャロル・ブーケ

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タイトル・バックに流れる鳥の巣のシークエンスが強烈なインパクトを持って観る者に迫る。一人を助けようとする行為が、他者には災いになることを辛辣に伝える。この過酷な自然の摂理をなぞるように、痛手を追った人物が多数登場してくる。

前半のミステリアスな展開には、固唾を飲みように魅了され、その謎が少しずつ明らかになってくると趣が増してくる。22年前の事件が3人の娘へ影響を与えて、無意識の内にも過去をなぞるような行動に出るのだ。

長女ソフィ(エマニュエル・ベアール)は母親と同じように夫をアパートから締め出す。次女セリーヌ(カリン・ヴィアール)は父親に迫った男子学生セバスチャンと同様に全裸になって報われない愛を求める。大学教授フレデリック(ジャック・ペラン)との不倫に固守する三女アンヌ(マリー・ジラン)の姿はセバスチャンと重なる。彼女たちの苦悩の日々はこの事件から始まっていたのだ。

そして、最後に唖然とする仕掛けが用意されている。さすがヨーロッパ映画だ。簡単に救いを与えず、女性の情念を厳しく残す。

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2006/09/12

僕のニューヨークライフ

「僕のニューヨークライフ」★★★★
(盛岡フォーラム1)2003年
アメリカ/フランス/オランダ/イギリス
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
出演:ジェイソン・ビッグス クリスティーナ・リッチ
   ウディ・アレン ダニー・デヴィート

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優柔不断で悩みつづける主人公と言えば、これまでのウディ・アレン映画ではそんなに珍しい存在ではない。特徴的なのは、ドーベル(ウディ・アレン)がジェリー(ジェイソン・ビッグス)を導くように対話を続けて、物語が進められていることだ。

この設定が興味深いのは、見た目どおり2人の意表を付く会話劇となっているだけでなく、ジェリーの自問自答であるとも感じさせることだ。

エージェントと契約更新をしない。恋人と別れる。ニューヨ-クから離れる。ドーベルに引っ張れるようにして人生の岐路に直面していくが、それらはジェリーの隠れた願望であった。決断できない弱さを乗り越えるべく、ジェリーの理想とする人格を体現しドーベルは存在している。

わがままなクリスティーナ・リッチに振り回されるジェイソン・ビッグスといえば、エーリク・ショルビャルグ監督の『私は「うつ依存症」の女』(2001)を思い出す。タイプの違う作品で、同じような人間関係を演じるのは珍しいことではないだろうか。

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2006/08/01

ニュー・ワールド

「ニュー・ワールド」★★★★
(名劇2)2005年アメリカ
監督:テレンス・マリック
脚本:テレンス・マリック
出演:コリン・ファレル クオリアンカ・キルヒャー
   クリスチャン・ベイル クリストファー・プラマー

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ニュー・ワールド@映画生活

タイトルの“ニュー・ワールド”という言葉が重く響くのは、イギリス人が新大陸を発見したことで新世界を知るという話だけでなく、ポカホンタス(クオリアンカ・キルヒャー)たち現地人にとってもイギリス人たちとの接触は新世界の始まりであることを描いているからである。

もう一つ、ポカホンタスとジョン・スミス(コリン・ファレル)との恋愛話だけかと思えば、ジョン・ロルフ(クリスチャン・ベイル)との結婚、出産に至る展開となり、とても意外だった。ポカホンタスの変貌が、もう一つの“ニュー・ワールド”を示唆する。

陽光で風景をとらえた「天国の日々」(1978)の映像美に魅せられて以来、待ち望んでいるテレンス・マリック監督の新作。前作「シン・レッド・ライン」(1998)を撮るまで20年かかったことを考えれば、7年間というのは短い方であろう。

使用される映像、音楽、効果音と期待に違わぬ出来栄えであった。独特のボイス・オーバーも、絶妙な効果を上げている。ひとつの完成された美しさに酔いしれる。

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2006/07/23

アイス・エイジ2

「アイス・エイジ2」★★★★
(盛岡フォーラム1)2006年アメリカ
監督:カルロス・サルダーニャ
脚本:ピーター・ゴールク ジェリー・スワロー
日本語吹替版声の出演:山寺宏一 太田光
               竹中直人 優香

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主要キャラクターにそれぞれ克服すべきテーマが設けられている。

マンモスのマニーには種族で最後の一匹かもしれないという孤独。ナマケモノのシドには周囲から尊敬を集めたいという願望。サーベルタイガーのディエゴには溺れるかもしれないという水への恐怖。

温暖化による大洪水から避難するという旅を通して、それらが克服されていく展開。仲間たちから直接的にしろ、間接的にしろ、アドバイスを受けて、それらを乗り越えていくところに感心する。

もう一つ特徴的なのは、エリーが自分をマンモスと自覚していないところ。この意外性に惹かれる。彼女がいかにマンモスと気付いていくのか、そこには意外と深い孤独と哀しみが見受けられる。

コミカルに描いたファミリーアニメ作品であるが、それぞれの感情描写にはっとさせられる。

ドングリを追い求めるスクラットが何度も登場し、いいリズムで幕間を楽しませてくれる。往年のカトゥーンアニメのおかしさを継承している。

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2006/07/22

チェケラッチョ

「チェケラッチョ!!」★★★★
(盛岡東宝)2006年日本
監督:宮本理江子
脚本:秦建日子
出演:市原隼人 井上真央 平岡祐太 柄本佑

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市原隼人といえば「リリイ・シュシュのすべて」(2001)の暗い情念を抱えた少年の姿がまず思い起こされる。本作品のように突き抜けた明るさを持つキャラクターを演じると、合う、合わないという評価とは別にホッとするものを感じる。

恋の為に全力投球する少年って、今の時代どこまで現実性があるのかという疑問も残るが、やりきれない少年犯罪ばかり起る中で、絵空事でもいいから、こうした明るさを見続けていたいという思いがまずある。

ハートがないと酷評された最初のライブ演奏。その言葉が透(市原隼人)の胸に突き刺さり、ハートのある演奏とは何か気付いていく心の成長。それが遺憾なく発揮されたのが、クライマックスでの演奏であろう。自分のためでない、誰かへ真剣に届けたいと願った想い。

こうした少年時代から遠く離れてしまった自分にも、共感深く見ることができるのは、親の世代も的確に描写されているからだろう。少年達の成長を優しく見守ることができる構成だ。

後出しジャンケンなど繰り返し登場することで、ふっと笑えるようなユーモアを生じさせている。

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2006/07/21

リトル・チュン

「リトル・チュン」★★★★
(BS)1999年香港/日本
監督:フルーツ・チャン
脚本:フルーツ・チャン
出演:ユイ・ユエミン マク・ワイファン
   ゲイリー・ライ チュ・スーヤウ

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リトル・チュン@映画生活

少年チュンを巡る様々な人物関係が興味深い。それまで存在も知らなかった兄。同じ名前を持つ香港の人気スター“ブラザー・チュン”。大陸から不法移民の少女ファン。それぞれが香港と対比する何かの暗喩となって存在していると感じさせる。

少年チュンは現在の香港の象徴となっているだろう。兄は民主主義、ブラザー・チュンは香港の歴史や伝統、少女ファンは中国と置き換えてみることができ、興味深かった。

香港の猥雑な雰囲気を醸し出す街の描写も秀逸だった。そこに息づく人々の温もりと力強い生命力が感じさせる。

強制退去させられるファンをどこまでも自転車で追いかけていくチュンの姿を見ていると、小栗康平監督の「泥の河」(1981)を思い出しました。

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2006/05/17

県庁の星

「県庁の星」★★★★
(中劇1)2006年日本
監督:西谷弘
原作:桂望実
脚本:佐藤信介
出演:織田裕二 柴咲コウ 佐々木蔵之介 石坂浩二

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県庁の星@映画生活

気付くことの大切さを明確に訴えかけている作品だ。例え、気付くことに時間がかかったとしても問題ではない。大切なのは気付くことができるか否かである。同じ事象を見ていても、気付く者と気付かない者に分れてしまうのが現実だ。本作品では気付くことにより、一歩前に踏み出す勇気を称賛している。

行動を起したからといって、全てが上手くゆくとは限らない。周囲には気付かない者で満ち溢れている。世界は簡単に変わらない。だからこそ、小さなことを少しずつ積み重ねることが大切なのだ。そのことを強く訴えかけている幕切れのエスプレッソマシーン。

ほぼストーリー展開の読める映画であるが、それでも飽きさせず見せるのは脚本がしっかりしているからであろう。キーとなる台詞や小道具を繰り返し使用することで絶妙の効果をあげている。

主演の織田裕二と柴崎コウの存在感もいいバランスとなっている。織田裕二は前半の傲慢で嫌な男を無理なく演技していく。土砂降りの中、どん底に落とされてから緩やかに上昇していくところもいい。柴崎コウも「メゾン・ド・ヒミコ」(2005)に続き、言われたら言い返す強さを秘めた女性を創造している。つくづく瞳に力のある人だと思わせる。

この水と油のような二人の関係が少しずつ変わっていく。それがドラマの醍醐味だ。

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