★★★★★作品

2006/10/04

嫌われ松子の一生

「嫌われ松子の一生」★★★★★
(盛岡東宝)2006年日本
監督:中島哲也
原作:山田宗樹
脚本:中島哲也
出演:中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 柄本明

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嫌われ松子の一生@映画生活

愛し方、愛され方というのもあると思う。ただ好きだから、愛しているからの気持ちだけで、良好な関係を継続的に築いていこうとすることはできないのだ。自分の思いを100%伝えようとせず、相手がどんな風に感じていることを知る必要がある。

本作品のヒロイン松子(中谷美紀)は、常に一生懸命、相手を愛そうとして愛されようとするが、ことごとくうまくいかない。彼女にはそのノウハウを認知していなかった。その遠因は彼女の家族関係にある。

病弱な妹久美(市川実日子)のために父親(柄本明)から愛されていないと誤認する松子。それが為、妹との関係も愛憎混じる歪なものとなってしまう。ここで気になるのは、母親との関係が映画の中でほとんど描かれていないことだ。

父親の笑顔がみたいため考察した変な顔。松子の登っていく階段で待っている妹。家出した松子を嫌な顔をしながらも郷里で迎える弟(香川照之)。彼らとの関係を表すエピソードが反復して何度も登場されるのに、母親との関係は全く描かれていないのだ。ここにこのドラマの異質性がある。

それが母親の役目と限定すべきではないが、直情的に行動する松子へサポートすべき存在が誰もいなかったことの大きさ。母親との関係が希薄であったこと。それが彼女の生涯を決定づける一因であったと感じさせる。

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2006/09/24

ナイロビの蜂

「ナイロビの蜂」★★★★★
(ルミエール2)2005年イギリス
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ジェフリー・ケイン
出演:レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ
   ユベール・クンデ ダニー・ヒューストン

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ナイロビの蜂@映画生活

ジャスティン(レイフ・ファインズ)とテッサ(レイチェル・ワイズ)の出会いの場面が効いている。二人の人物像はこの場だけでよく伝わってくる。外交官という職種には、テッサの行動はマイナス評価になるのは分っていても、彼女と結婚したジャスティン。

常識に縛られない奔放な彼女を愛したはずなのに、一緒に行動していたアフリカ人医師アーノルド(ユベール・クンデ)との関係を疑ってしまった嫉妬心。冒頭で飛行機に乗る二人を見送るジャスティンの姿が示唆的であった。

ジャスティンの飽くなき真相追及は彼女の非業な死に対する義憤というよりも、彼女の不実を疑ってしまった贖罪であったのではないだろうか。

フェルナンド・メイレレス監督の演出にも唸った。謀略ミステリーとしても、ラブ・ストーリーとしてもなかなかの味わいを保っているが、もう一つ「アフリカ人の命は安い」という重厚な主題が全編を貫いている。イギリス人居住区とアフリカ人居住区を絶妙なタッチで切り替え、観る者をハッとさせる。両者の深い隔たりを感じさせるのだ。

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2006/09/13

かもめ食堂

「かもめ食堂」★★★★★
(京都シネマ1)2005年日本
監督:荻上直子
原作:群ようこ
脚本:荻上直子
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ ヤルッコ・ニエミ

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かもめ食堂@映画生活

本作品の中でもっとも特徴的なエピソードは、マサコ(もたいまさこ)のトランクをめぐるもの。飛行機の乗り継ぎで紛失したまま、いつまでも出てこない旅行用トランク。やっと見つかり部屋で開けてみると、意外なものが一杯で光輝いていた。

映画全体が現実的なようで現実的でない、不思議な世界となっているが、それを象徴させる挿話となっている。これは彼女の探し求めていた<生命の輝き>を表現したものであろうか。

小林聡美の存在感が際立っている。優しさの中にもドライな感じを滲ませ、凛とした佇まいを見せる。「人はみな変わっていくものですから」という台詞には、重々しい説得力があった。久々の映画主演であるが、さすがと感じさせる。「転校生」(1982)で発揮された演技力は健在である。

彼女の温かな笑顔によって、かもめ食堂は満席になっていくのであった。

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2006/08/30

ブロークバック・マウンテン

「ブロークバック・マウンテン」★★★★★
(盛岡フォーラム1)年アメリカ
監督:アン・リー
原作:アニー・プルー
脚本:ラリー・マクマートリー ダイアナ・オサナ
出演:ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール
   ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ

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ブロークバック・マウンテン@映画生活

ジャック(ジェイク・ギレンホール)が亡くなった時の様子をイニス(ヒース・レジャー)がラリーン(アン・ハサウェイ)から電話で聞いている場面。唐突にリンチされているシーンが挿入されてくる。これは一体なんであろうか。ラリーンが言っていることが嘘なのか本当なのか、微妙に揺れてしまう。

そして、イニスがジャックの実家へ弔いに訪れたとき、父親から聞かされたジャックの計画。そこでは、イニスから別の男の名前に変わっていたこと。それが、彼の死因とかかわりあっているのではないかと感じさせる。

イニスの選択した生き方に間違いはなかった。ジャックの望むままに、二人で生活していたとしても破滅が待っていたことだろう。しかし、同時にそれは不遇の生涯を選んだことでもあった。

相応しくない場所で相応しくない相手を愛してしまった悲劇。それが重々しく心に残り続ける。

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2006/07/18

灯台守の恋

「灯台守の恋」★★★★★
(盛岡フォーラム1)2004年フランス
監督:フィリップ・リオレ
脚本:フィリップ・リオレ エマニュエル・クールコル
   クリスチャン・シニジェ クロード・ファラルド
出演:サンドリーヌ・ボネール フィリップ・トレトン
   グレゴリ・デランジェール エミリー・ドゥケンヌ

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灯台守の恋@映画生活

思いもよらず亡き母の悲恋を記した書物の存在を知り、母の隠されていた表情に感銘を受けるという構成は、クリント・イーストウッド監督の「マディソン郡の橋」(1995)を想起させます。一番身近である筈の親子でされ、知られることのない秘密を抱えて生きているところに人生の趣がある。

ありふれた不倫ドラマに終っていないのは、イヴォン(フィリップ・トレトン)が際立った存在感を発揮しているからであろう。最初は強面でアントワーヌ(グレゴリ・デランジェール)に冷たく当たっているが、一緒に業務をこなしていく内に、友情を深めていく。

灯台で過ごす時間の中、誰も望まぬ椅子を作り続ける心情とは何か。ちょっとした仕草や表情に、心の隅でくすぶっている不満や失望を滲ませるところが秀逸でありました。

クライマクッスの暴風雨の夜も素晴らしかった。イヴァンが陥る魔の刻。抑えられない感情。踏み止まる良心。緊迫感に満ちた一場面でした。

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2006/07/14

オアシス

「オアシス」★★★★★
(DVD)2002年韓国
監督:イ・チャンドン
脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング ムン・ソリ
   アン・ネサン チュ・グィジョン

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オアシス@映画生活

とにかくストーリー展開が巧妙に練られている。前科者で本気になって人生に向き合うことを避けているジョンドゥ(ソル・ギョング)を見ていて、およそ共感など呼ばないであろう。反発心を覚え、こんな男が回りにいたら非常に迷惑だろうと思わせる。

だが、物語の後半で、ある事実を知るとき、彼に対する見方ががらりと一転する。表面には現れない彼の心情に胸が締め付けられる。逆に、彼を邪魔者扱いにする家族の非情さが腹立たしく感じられる。ここで、人は見た目では分らないというテーマが浮かび上がってくる。

後半の展開でコンジュ(ムン・ソリ)が健常者の姿となって何度も登場してくるが、このことに賛否両論分かれているようだ。ここで大切なのは、コンジュが最初に登場する場面。彼女は手鏡の光で遊ぶところが描かれている。ここで、彼女は空想を楽しめることが示されているので、私には唐突には感じられない。コンジュの心象風景として秀逸であると感じます。

そして、ラスト・シーンもほのぼのとした希望と明るさに包まれて魅了された。第三者には理解されない二人の関係というと、往年の名作「シベールの日曜日」(1962)を思い浮かべるが、あんな哀しい結末にならなくて良かった。

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2006/01/27

ウィスキー

「ウィスキー」★★★★★
(DVD)2004年ウルグアイ アルゼンチン
          ドイツ スペイン
監督:フアン・パブロ・レベージャ パブロ・ストール
出演:アンドレス・パソス ミレージャ・パスクアル
   ホルヘ・ボラーニ ダニエル・エンドレール

ウルグアイの町で、初老の男ハコボは父親から譲り受けた靴下工場を細々と経営している。そこでは控えめで忠実な中年女性マルタが働いている。ある時、1年前に亡くなった母親の墓石建立式のため、弟エルマンが訪れてくることになる。ハコボは弟が滞在する間だけ夫婦のフリをして欲しいとマルタに頼み込むのだが…。

変われない男の悲劇。マルタはこの偽装夫婦の時間の中で、胸の奥底に秘められていた感情に気付いてしまう。その感情に従って行動を起していく。だが、ハコボはその感情のざわめきに気が付かないふりをして、自分の日常を守ることを優先させる。自分を変えたくないという頑迷さは大切なものを失わせてしまう。その苦さが鑑賞後に広がる。

シャッターの鍵を開ける。電灯をつける。ラインの電源を入れる。着替える。お茶を入れる。当初、淡々とした朝の作業が繰り返し映される。ただ、工場の日常を紹介するのであれば一度でも構わない筈だ。何かあるなぁと予想していると、果たしてこの反復した描写がクライマックスで見事に活かされている。

日本で初めて一般公開されたウルグアイ映画であるが、この成熟した演出ぶりに驚嘆する。登場人物たちの台詞も少なく、設定も極力省略されている。だが、それでいて登場人物たちの振る舞いや反応で、彼らの性格や過去がそれとなく伝わってくる。こうしたところも実に巧い。

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2006/01/22

ベルンの奇蹟

「ベルンの奇蹟」★★★★★(DVD)
2003年ドイツ 監督:ゼーンケ・ヴォルトマン
原作:クリストフ・ジーメンス
出演:ルーイ・クラムロート ペーター・ローマイヤー
   ヨハンナ・ガストドルフ ミルコ・ラング

1954年ドイツの工業地帯エッセン。サッカーの大好きな11歳のマチアスは地元のサッカー選手ヘルムートの荷物持ちをしている。ある時、先の大戦でソ連軍の捕虜となり消息不明だった父リヒャルトが11年ぶりに帰還する。リヒャルトは戦後の新しい価値観になじめず厳格な態度で家族と接するが…。

1954年という時代背景。まだまだ帰還兵がいて、不況で失業者もたくさんいる。敗戦国として暗い影が覆っている。今の我々からすれば、ドイツはサッカーの強国として認知されているが、この頃のワールドカップの状況ではハンガリーが無敵の勝者であったことが興味深い。ドイツ国民ですらこんなに勝ち進めるとは思っていなかった。そうした暗い状況での優勝がどれだけドイツ国民を勇気づけたものなのか、容易に想像がつく。

不在であった父親の突然の帰還。家族たちはバー、音楽、サッカーと未来に向かって生きているが、父は戦争で負った心の傷が癒えず過去に囚われたままでいる。彼らは最初から大きな溝があって、容易に埋めることができないでいる。家族たちに不協和音が鳴り響くのは必然なのだ。この父親が傑出しているのは、周りの助言に聞く耳を持っていたことだ。家族も仕事もうまくいかず自分自身の身の置き場所を見つけることができない。こうした状態が続けば、身を持ち崩してしまっても不思議ではないだろう。だが、彼は神父や妻のアドバイスに従って行動を起す。彼が変わったことで家族は再生するのだ。自分の弱さ、苦しみを認めてしまうことから新しい何かが始まっていく。

家族。記者夫婦。サッカーチームと3つのドラマが平行して進んでいく展開も秀逸だ。記者夫婦の会話がいいアクセントになっている。最初はサッカーに興味がなかった妻の変貌がおかしかったし、そのことによって三者が結びつくになる。

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2006/01/13

バタフライ・エフェクト

「バタフライ・エフェクト」★★★★★(DVD)
2004年アメリカ
監督:エリック・ブレス マッキー・J・グラバー
出演:アシュトン・カッチャー エイミー・スマート
   ウィリアム・リー・スコット エルデン・ヘンソン

幼い頃から奇妙な行動を繰り返すエヴァンはその時の記憶を失っていた。治療のため日記を付け始めることになる。13歳の頃、彼は幼なじみのケイリーたちと悪戯をして何か大事故をひき起こしたようだが、その記憶も空白だった。やがて、大学生となったエヴァンは記憶を失うこともなくなっていたのだが…。

常人には持ち得ない特殊な能力を有しているといっても、それだけでは決して自分の思い通りの世界を作り上げることはできない。要はその力をいかにして使いこなせるか、ということである。下手に使用すると、その力に振り回せてしまって、自分自身に破滅をもたらすことになる。まずそのことを本作品は見事に描かれている。

エピソードの構成も見事である。幼児期の記憶喪失の場面がジグソーパズルのようにピタピタで当てはまっていく。その符合も素晴らしい。特に特殊能力を正しく使いこなせなかった父と再会する場面がいい。悪戦苦闘するエヴェンの将来の姿か、それとも乗り越えていくのか。どちらに転んでいくのか、固唾を呑んで見守りました。

そして、刻々と変わっていく現在の描写も秀逸だった。主要な登場人物がそれぞれに変わっていく境遇を巧みに演じ分けている。その趣向にも感服した。最後に選んだエヴェンの行動にも涙。切ない。

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2006/01/06

Dear フランキー

「Dear フランキー」★★★★★
(盛岡フォーラム2)
2004年イギリス 監督:ショーナ・オーバック
出演:エミリー・モーティマー ジェラルド・バトラー
   ジャック・マケルホーン シャロン・スモール

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Dear フランキー@映画生活

何故、フランキーは女の子をダンスに誘わなかったのか。少年が父性を求める中で精神的成長を遂げていくドラマであるならば、フランキーは女の子に声をかけるのが重要なエピソードとなる筈だ。本作品は懸命に生きてきたリジーにギフトが与えられる話なのである。ジェラルド・バトラー扮する臨時の父親との会話の中で、「自分は本当のことを話せないひどい母親だ」というリジーに、「君は立派にフランキーを守ってきたんだ」と返されて、観る者をほろっとさせるのはそういう事であろう。

フランキーの聡明さも光る。あの最後の手紙の伏線は、最初から散りばめられている。彼は小高い丘から港全体を見たり、ペットショップで魚をじっとみつめたりと、観察力に卓越していることを感じさせる。そういう彼は父のいない寂しさを手紙に託しているのだが、虚構は虚構として認識しているのが切なくなる。

ラストシーンもいい。この種のドラマにありがちな結末にしてしまわない。母子、二人が並んで海を見つめる。そこに彼らの新たな関係性を予感させて、胸が熱くなる。

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2006/01/04

ビヨンド the シー

「ビヨンド the シー~夢見るように歌えば~」
★★★★★
(DVD)2004年アメリカ 
監督:ケヴィン・スペイシー
出演:ケヴィン・スペイシー ケイト・ボスワース
   ジョン・グッドマン ボブ・ホスキンス

ブロンクスの貧しい家庭に生まれて、心臓病で15歳までの命と診断された少年ボビー。義兄チャーリーからピアノをプレゼントされ、むかし歌手だった母ポリーから音楽の喜びを教えてもらう。病気を克服し青年となったボビーは本格的にプロの道を目指す。苦労の末にトップスターの仲間入りを果たすのだが…。

「五線譜のラブレター」といい「Ray/レイ」といい、20世紀のアメリカで大活躍した音楽家の伝記映画が2004年に続いて製作されているのは、興味深い符合だ。本作品もそうであるが、ただ音楽家の生涯を劇的に描いているのではなく、セクシャリティーや幼児期のトラウマなど人間心理を奥深く追及しており見応えのある映画になっている。

本作品のテーマはアイデンティティーの追求である。それが様々な趣向を凝らしてダイナミックに描かれている。子供時代の自分の幻との会話。青年期まで父性を求めている事。音楽家としての成功は母の夢の実現が根底にあること。どんなに成功を収めても真の達成感を得ることはない。その象徴的なエピソードが、アカデミー賞にノミネートされただけでも大変な名誉であるのに落選すると尋常ではない怒り方をする場面。すべて、自分とは何か、一体何をしたいのは、分からないまま過ごしてきたことを表している。

後半になると自己発見への展開となっていくが、そのエピソードの配列も秀逸。クライマックスのステージで心が大いに揺さぶられる。腕時計の使い方も巧い。その時計がボビー・ダーリンの命の象徴になっている。

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2005/12/24

トラフィック

「トラフィック」★★★★★(BS)
2000年アメリカ 監督:スティーヴン・ソダーバーグ
原作:サイモン・ムーア
出演:マイケル・ダグラス
   キャサリン=ゼタ・ジョーンズ
   ベニチオ・デル・トロ デニス・クエイド

ティファナ。メキシコ州警察の警官ハビエールはサラサール将軍の密命を受け麻薬カルテル一味の壊滅に協力する。オハイオ。新任の麻薬取締最高責任者ロバートは娘が麻薬に溺れていることを知る。サンディエゴ。麻薬王の妻は夫と子供を守る為、自らも悪の組織に手を染めていくのだが…。
第73回アカデミー賞でベニチオ・デル・トロが助演男優賞、監督賞、脚色賞、編集賞を受賞。第51回ベルリン国際映画祭でベニチオ・デル・トロが銀熊賞(男優賞)を受賞。

アメリカは麻薬戦争に負けた。その無念の呟きが深く胸に焼き付く。本作品は、麻薬の供給源をいくら取り締まっても不毛であることを感じさせる。ひとつの組織を壊滅させたとしても、別の組織の台頭を生みだすことになるだけだ。アメリカ社会を蝕んでいる麻薬の実態を、麻薬の輸出側、麻薬の流通業者、麻薬を取り締まる側、麻薬の消費者という複数の視点から描く。麻薬は産業として確立されてしまっているのだ。

ハビエール(ベニチオ・デル・トロ)は子供たちのために野球場の照明を作り、ロバート(マイケル・ダグラス)は仕事を辞めて娘の治療に専念する。彼らの決断の重さ。その麻薬に対抗するため本当に大切で必要なものは、子供たちへの教育ではないかと本作品では訴えかけている。

臨場感ある映像にも魅了された。本作品を観るのはこれで3回目になるが、メキシコ=黄色、ワシントン=青の色分けは何度観ても斬新で鮮烈な印象を受ける。

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2005/12/10

スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐

「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」★★★★★
(盛岡フォーラム1)
2005年アメリカ 監督:ジョージ・ルーカス
出演:ヘイデン・クリステンセン ナタリー・ポートマン
   ユアン・マクレガー イアン・マクディアミッド

クローン大戦の勃発から3年、依然としてジェダイの騎士団と分離主義者たちとの戦闘は各地で繰り広げられていた。そんな中、パルパティーン最高議長がドゥークー伯爵によって誘拐される事件が発生する。オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーの活躍によって無事救出されるが…。

何故、アナキンはダークサイドに落ちていったか。その過程が見事に描かれている。パドメの死を防ぎたいという愛の思いからという表面的な理由も出ているが、その裏側に巨大な力を有したいとする内なる欲望に抗しきれなったという事も感じさせる。どちらか片面だけであれば、アナキンはダークサイドを選ばなかったと思う。両面が渾然一体となったために、アナキンは逃れる術を失ってしまったのだ。この辺はシェイクスピア劇を見ているようだった。

そして、ジェダイたちがアナキンのことをどうして防ぐことができなかったのか。フォースを有するジェダイとはいえ、人の心の内を探ることも変えることもできないということか。その力の限界が物語の世界をより豊かなものにしている。全6作の中で最も見応えのあるドラマに仕上がっていると感じました。

ほんとうにこのシリーズが終ってしまうのだという寂寥感。エンド・クレジットのジョン・ウィリアムスの音楽を聴きながら、自分の28年間を思い出し感慨深かったです。

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2005/12/05

バットマン ビギンズ

「バットマン ビギンズ」★★★★★
(盛岡フォーラム1)2005年アメリカ 
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベイル リーアム・ニーソン
   モーガン・フリーマン ゲイリー・オールドマン

大富豪の家庭に育ったブルース・ウェインは少年時代、井戸で遭遇したコウモリの大群に圧倒的な衝撃を受け、さらに両親が目の前で殺されて大きなショックを抱え込んだまま成長した。ある時、デュガードと出会い、彼の薦めによりヒマラヤの奥地に潜む“影の同盟”という自警団のもとで心身を鍛えるが…。

まずクリスチャン・ベイルの肉体に注目したい。短い期間で「マシニスト」(2003)と本作品を続けてみたので、その肉体の変貌に恐れ慄いた。肋骨が浮いて見えるような痩せ細った体が、筋肉隆々の肉体へ変わっているのだ。これが同じ人間かという驚きがひとつ。

いかにしてバットマンが誕生していったか、その過程を克明に描いている。「正義は復讐ではない」、「転落したのはまた這い上がるためだ」など印象深い台詞が反復して使用され、哲学的な興趣を持つ仕上りになっている。腐敗した都市を再生させたいとする思いはバットマンも秘密結社「影の同盟」も同じなのに、その手法を巡って両者は対立する。単に善と悪を明確に分けらない奥深い物語となっている。

モノレールを乗っ取り、都市を象徴する巨大なビルに突っ込んでいくというプロットは、9・11同時多発テロを連想させ絵空事でない重いリアリティを与えている。

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2005/11/27

靴に恋して

「靴に恋して」★★★★★(盛岡フォーラム2)
2002年スペイン 監督:ラモン・サラサール
出演:アントニア・サン・ファン ナイワ・ニムリ
   ビッキー・ペニャ アンヘラ・モニーナ

スペイン、マドリッド。高級靴店の店員をしている23歳のレイレ。キャバレーの雇われママをしている49歳のアデラ。アデラの娘で25歳になる知的障害者アニータ。タクシードライバーをしている43歳のマリカルメン。高級官僚の妻である45歳のイザベル。5人の女性たちはそれぞれの運命を交錯させていくが…。

5人の女性の生活が無関係に並べられて語られていく。その5人がクライマックスに近付くと、ひとつの関係へ収斂されていく。その繋がり方も微妙な距離感を持っているので、実に自然に見える。また、最後に全員がハッピーエンドを迎えるわけではない。苦い思いを抱いたまま終っていく者も居る事によって、深い余韻を残すことになった。

彼女たちを繋ぐ場面の移動で、歌や飛行機、街の音などが絶妙に使用させている。そのために物語の流れがスムーズになり、見事な場面展開となっている。

恋に破れたものが苦しい迷いの時間を経て、新たに自分の人生を立て直していく様を優しく描いている事にも好感を持つ。

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2005/11/26

香港国際警察

「香港国際警察/NEW POLICE STORY」
★★★★★(盛岡フォーラム2)
2004年香港 中国 
監督:ベニー・チャン
出演:ジャッキー・チェン ニコラス・ツェー
   チャーリー・ヤン ダニエル・ウー

香港のアジア銀行が襲撃された。その一味は犯行後、自ら警察へ通報し、駆けつけた警察官たちを重装備で返り討ちに遭わせる。香港警察のチャン警部は一味のアジトを特定し、ただちに特捜部を率いて現場へ向かう。だが、残忍な罠が仕掛けられチャンの部下たちは次々と殺されてしまうのだが…。

毎晩泥酔し薄汚い路地裏を徘徊している。ここまで人生のどん底に落ちた役を演じたジャッキー・チェンを見たことがない。それだけでも彼の意気込みが伝わってくる。ユーモアは極力抑えられ、一つ一つのアクション場面に情感が込められている。それが鑑賞後も深く胸に残り続けている。と言ってもレゴ会場での格闘シーンなど、いつもながらの趣向が凝られていてJ・チェンは健在だ。

犯人役のダニエル・ウーもジャッキーを助ける謎の男のニコラス・ツェーも、ジャッキーに父性を求めているところが興味深い。現実でも香港若手スターに手を差し伸べているジャッキーの姿に重なって見える。

「罪を憎んで人を憎まず」というチャン警部(J・チェン)の言葉がクライマックスへ見事に繋がっていき、そのことでチャン警部自身も救われるという展開も鮮やかだった。

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2005/11/17

ホワイト・ライズ

「ホワイト・ライズ」★★★★★(盛岡フォーラム3)
2004年アメリカ 監督:ポール・マクギガン
出演:ジョシュ・ハートネット ダイアン・クルーガー
   ローズ・バーン マシュー・リラード

広告代理店で働くマシューは、結婚を目前に控え仕事もプライベートも順風満帆な日々を送っていた。そんなある時、故郷のシカゴへ戻ると、2年前に彼の前から突然姿を消した恋人リサらしい声を聞く。リサの本当の気持ちを確かめたくて、マシューは中国への出張を取り止め彼女の行方を探し始めるが…。

本作品はあまり前情報を仕入れずに観た方が楽しめます。私は予告編を観ただけで臨んだのですが、ここから受けた印象のドラマとは全く違う展開を見せました。まずそのことに驚く。同じような物語として日本でも竹下昌男監督の「ジャンプ」(2003)がありますが、謎の仕掛けも共通している点が興味深い。

脚本が非常によくできていて、ミステリーとしてもメロドラマとしても秀逸な一本。リサ(D・クルーガー)の失踪に関して映画当初に感じていた違和感がどんどん解明されていく展開に魅了されました。

オリジナルのフランス映画「アパートメント」(1996)も観てみたいですが、現在、DVDは発売されていないようです。観られる機会を気長に待つとしましょう。

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2005/11/16

フライ,ダディ,フライ

「フライ,ダディ,フライ」★★★★★(ピカデリー)
2005年日本 監督:成島出
原作:金城一紀
出演:岡田准一 堤真一 松尾敏伸 須藤元気

詳しくはこちらで・・・
フライ,ダディ,フライ@映画生活

人はある境地に達すると今まで知ることもなかった風景が見えるになる。ある能力を極めれば今まで気付くことのなかった存在を認知できるようになる。

勉強、修行、訓練、なんでもそうであるが、誠心誠意打ち込むことで新たな世界が開けることって現実にあるのであろう。そんなことを、ロープを使い樹木の上へ登りきった鈴木一(堤真一)とスンシン(岡田准一)の会話の場面で思いました。

岡田准一が素晴らしい。本作品の成功要因はいくつもあるのだが、その中でも彼の存在感は上位にくるであろう。鷹の舞いの場面など実にしなやかでモダンバレーを見ているようであった。こんなにいい役者だったかと瞠目する。

単なる復讐ドラマに終らず、シリアスとユーモアのバランスも絶妙。哲学的な会話劇が深い余韻を残す。

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2005/11/13

海を飛ぶ夢

「海を飛ぶ夢」★★★★★
(盛岡フォーラム3)2004年スペイン フランス
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ハビエル・バルデム べレン・ルエダ
   ロラ・ドゥエニャス マベル・リベラ

スペイン、ラ・コルーニャの海で育ったラモンは25歳のとき岩場から引き潮の海へダイブして海底で頭部を強打、首から下が不随となってしまう。以来、家族に支えられながらベッドの上で過ごさなければならなくなった。彼は想像の世界で自由に空を飛び、詩をしたためていた。こうして20数年が経つが…。

第77回アカデミー賞で外国映画賞を受賞。第61回ヴェネチア国際映画祭でハビエル・バルデムの主演男優賞、審査員特別賞を受賞。

尊厳死と望むラモンもそれを止めようとする家族も、どちらが正しくてどちらが間違いということはない。それぞれが正しいのである。だから、本作品の中で延々と葛藤が続くのだ。それは尊厳死にまつわる議論そのものである。すべての正しさの中から、自分自身で正しさを選び取ることができるという事が、真の自由ではないだろうか。

ラモンの想像の中に浮かんでくる海。それこそが自由の象徴ではないか。現実に海に飛び込む事故からラモンは半身不随のなったのだが、それ行為が実に暗喩的だ。

そんなラモンをハビエル・バルデムがチャーミングに演じている。柔らかな笑顔と鋭い英知に、周囲の者たちが魅了されるのが良く分る。

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2005/11/11

ミリオンダラー・ベイビー

「ミリオンダラー・ベイビー」★★★★★
(名劇2)2004年アメリカ 
監督:クリント・イーストウッド
原作:F・X・トゥール
出演:クリント・イーストウッド ヒラリー・スワンク
   モーガン・フリーマン アンソニー・マッキー

ロサンジェルスのダウンタウンにある小さなボクシング・ジムを営む老トレーナー、フランキー。古い付き合いとなる雑用係のスクラップとボクサーを育成している。選手を大切に育てるあまり、有望株のウィリーは彼のもとを去ってしまう。そんな時、31歳の女性マギーがフランキーに弟子入りを志願するのだが…。

第77回アカデミー賞で作品賞、監督賞、ヒラリー・スワンクの主演女優賞、モーガン・フリーマンの助演男優賞の4部門を受賞。

この脚本は絶妙に考え抜かれたエピソードの配置になっており大いに魅了された。ありきたりな展開で逃げていないところが秀逸です。特に感心したところがあります。故郷の母や妹から冷たい仕打ちを受けて打ちひしがれているマギー(H・スワンク)。その帰り道のガソリンスタンドで、彼女は犬を連れた少女を見つめます。私はそこで温もりのない家族の変わりにマギーが犬を飼うのだろうという次のドラマ展開を予想しました。しかし、それは大きく外れます。ここは後半のテーマに繋がる重大な起点であったのです。他にも色々とあるのですが、このような伏線の張り方に舌を巻きました。

C・イーストウッド監督の充実ぶりにも驚嘆する。成熟の極みであります。これならアカデミー賞受賞も納得です。罪の意識を背負って生きていくというテーマは、前作「ミスティック・リバー」(2003)を継承していくものだ。

モーガン・フリーマンのナレーションも効果的であった。その絶妙な間合いが深い余韻を残す。幕切れになって語りの意味が明らかになり感銘が深まります。

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2005/11/07

機動警察パトレイバー2 the Movie

「機動警察パトレイバー2 the Movie」
★★★★★(BS) 
1993年日本 監督:押井守
原作:ヘッドギア
アニメ声の出演:冨永みーな 古川登志夫 大林隆介 榊原良子

2002年。謎の戦闘機がミサイルで横浜ベイブリッジを爆破する。それが自衛隊機であると報道されたことから、警察と自衛隊の対立を招き日本は緊張状態に陥る。警視庁特車二課の後藤は1999年、東南アジアでのPKF任務後、行方不明になっている元自衛隊員、柘植をこの事件の容疑者と特定し捜査を開始するが…。

パトレイバーシリーズといっても前作同様、レイバーが活躍するアクションは少なく、犯罪ドラマとしてゾクゾクするような興奮に満ちている。しかも特車二課のお馴染みの面々はバラバラになっており、コメディー的要素は押さえられている。

また「俺達は何を守ろうとしているのか?」というテーマ性が確固に全編貫かれて、ポリティカル・スリラー映画としても完成度は高い。「正義の戦争か、不正義の平和か」という問い掛けも深く胸に響く。事件究明を追い続けるミステリー展開もよく、荒川という陸幕調査員と後藤隊長とのやりとりも秀逸。南雲隊長の過去がドラマに絡んでくるなど大いに魅了されるドラマ展開であった。

そして、東京都内の日常生活の中に戦車が置かれているというシュールな風景にも峻然とした思いになる。

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2005/11/04

39 刑法第三十九条

「39 刑法第三十九条」★★★★★(Gyao)
1999年日本 監督:森田芳光
出演:鈴木京香 堤真一 吉田日出子 岸部一徳

大学で心理学の研究をしている精神鑑定人の小川香深は、精神医学者の藤代の助手として司法精神鑑定に参加することになった。若い夫婦の殺害事件で逮捕された劇団員の柴田容疑者は犯行当時の記憶がなく殺意を否認していた。そこで国選弁護人・長村が被告の精神鑑定を請求したのだったが…。

本作品が見応えあるのは、柴田(堤真一)の事件の謎を追いかける展開を縦糸に、母との関係、事件を起こした父の記憶などに悩む香深(鈴木京香)の私生活が横糸になって、奥深いドラマ構成になっているためである。そして、「心神喪失者の行為は、罰しない」「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」という刑法を激しく糾弾するテーマ性も鋭く胸を突く。

出演者たちの巧みな演技にも感心した。多重人格を見事なくらいに演じ分けた堤真一。手の震えなどのディティールが活かされている。藤代教授を演じた杉浦直樹と、刑事役の岸部一徳も個性的であった。

森田芳光監督の食べ物に関する目配りはいつもながら見事である。香深の食卓にならぶ食べ物の異質さ。例えば洋菓子だけが何種類も並んでいたりして、普通に見ていると見逃してしまうがそのバランスの悪さは特筆ものである。そこに母(吉田日出子)の心にありようが映っている。

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2005/10/19

シンデレラマン

「シンデレラマン」★★★★★
(ルミエール2)2005年アメリカ 
監督:ロン・ハワード
出演:ラッセル・クロウ レニー・ゼルウィガー
   ポール・ジアマッティ コナー・プライス

ライトヘビー級のボクサーだったジム。一度は将来を嘱望されていたが右手を骨折したため精彩を欠き、ついにライセンスを剥奪されてしまう。折からの大恐慌のために職もなく生活費も滞るようなどん底の暮らしを続ける。そんなある時、怪我をしたボクサーの代わりに急遽リングへカムバックすることになるが…。

人間、何が幸いするか分からない。骨折した右手をかばい続けて荷役をしているうちに、左手が強化されていた。これが奇跡の復活の一因になっている。人生において苦しい時期があったとしても懸命に生きていれば、次の道が自然と開けてくるかもしれない。

オスカー俳優二人の演技もいいが、マネージャー役のP・ジアマッティが素晴らしかった。コミショナーにジムの復帰を談判している時の微妙な表情が秀逸。そして、彼のアパートにメイ(R・ゼルウィガー)が訪れる場面も印象深い。

そして、ボクシングシーンの編集も見事。彼が怪我をしたときに白色となるところが衝撃を持って観る者に伝わってくる。

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2005/10/02

エレニの旅

「エレニの旅」★★★★★(ルミエール1)
2004年ギリシャ フランス イタリア ドイツ
監督:テオ・アンゲロプロス
出演:アレクサンドラ・アイディニ ニコス・プルサニディス
   ヨルゴス・アルメニス ヴァシリス・コロヴォス

1919年頃。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群がテサロニキ湾岸に降り立った。少女エレニはオデッサで両親を失い、リーダー格の男スピロス一家に拾われる。その10年後。スピロスたちは住み着いた土地に“ニューオデッサ”という村を築いていたが…。

アンゲロプロス監督でしか作り得ない深みのある映像美にまず圧倒される。冒頭のオデッサから逃れてくる集団の描写から素晴らしい。ここだけで神話的雰囲気を漂わせる。単に絵画のように美しいということだけでなく、観る者に重々しい衝撃を与える何かを秘めている。巨匠の風格を感じさせます。

常に映像で語る様式が続くので、少ない台詞が異彩を放っている。例えばこの場面。エレニが獄中から釈放され息子の戦死を知って気を失ってしまう。そのうわ言で「水がありません。石鹸がありません。息子に手紙を書く紙がありません」と何度も繰り返す。これはまさに詩そのものだ。

「忌まわしい内戦」という呟きもあった。内戦の悲劇は劇中のように兄弟同士が戦うような事例を生むことにある。韓国映画の「ブラザーフッド」(2004)の兄弟を思い出す。そして、幕切れでのエレニの慟哭。この哀しい響き。胸の抉られるような思いが今も続く。

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2005/09/24

ベルリン・フィルと子どもたち

「ベルリン・フィルと子どもたち」★★★★★
(盛岡フォーラム3)
2004年ドイツ
監督:トマス・グルベ エンリケ・サンチェス・ランチ
出演:サー・サイモン・ラトル 
   ロイストン・マルドゥーム
   スザンナ・ブロウトン 

2003年1月。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者兼芸術監督に就任したサー・サイモン・ラトルの呼び掛けで新たな教育プロジェクトがスタートした。それは、地元のごく普通の子どもたちがバレエの名曲“春の祭典”を踊るものであった。そして出身国や文化の異なる子ども達250名が集められたが…。

何故、おちこぼれと言われる子供たちが、大人たちのいうことを聞かず騒いだり反抗したりするのか。その理由が本作品を観ていてよく分かった。大人たちに不信感を抱き将来への夢を持ちえない子供たちは真剣に自分に向き合うこともなく無規則な行動で自信のなさをごまかしてしまうのだ。この子供たちは日本にもたくさんいると思う。そのことがひとつ。

一つのことを真剣になって取り込むことの素晴らしさ。それが子供たちを大きく成長させる。それは子供だけでなく大人にも通じる真理です。形を変えた周防正行監督の「Shall We ダンス?」(1996)だと思います。

集中力を欠いていた子どもたちへ時に厳しく時に粘り強く指導を続ける振付師のロイストン。音楽の素晴らしさを子どもたちに訴える指揮者ラトル。彼らの箴言に満ちた言葉が続く。一度観ただけでは覚えきれないくらい。何度も繰り返し観たい作品だ。

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2005/09/23

さゞなみ

「さゞなみ」★★★★★(DVD)
2002年日本 監督:長尾直樹
出演:唯野未歩子 豊川悦司 松坂慶子 きたろう

山形県米沢市。稲子は市の職員として温泉の水質調査をしていた。ある時、彼女はその調査中に便利屋の玉水に出会う。何度か顔を会わせているうちに稲子は玉水に心惹かれていく。稲子の母・澄江は和歌山県太地町でカメラ店を営んでいた。夫はブラジルに渡航しているとき、事故死したと娘には言っていたが…。

まずどっしりとカメラを据えた映像が素晴らしい。ひとつひとつの場面が絵画のように計算された構図で捉えられている。その映像に合わせた静謐なドラマ展開がいい。稲子(唯野未歩子)の思いが台詞でなく映像から強く伝わってくる。

後半の母娘の凌雲峡への旅行が印象深い。小津安二郎監督の「晩春」(1949)を思い出す(こちらは父と娘だったが)。夫、または父の不在でどこか欠落感のある二人であったが、この旅はそれを乗り越え新しい生活へ進んでいく機会になったのであろう。

豊川悦司が好演。どこか崩れている男の哀しさと優しさが見事に表現されている。

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2005/09/17

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔

「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」★★★★★(BS)
2002年ニュージーランド アメリカ
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イライジャ・ウッド ヴィーゴ・モーテンセン
   イアン・マッケラン ショーン・アスティン

中つ国では、アイゼンガルドのオルサンクの塔を拠点とするサルマンと、モルドールのバラド=ドゥアの塔にいる冥王サウロンが手を結んだことで闇の勢力がますます力を増大させていた。そんな中、離ればなれとなってしまった旅の仲間たちは三方に分かれたまま旅を続けているのだが…。第75回アカデミー賞で特殊効果賞、音響効果賞を受賞。

三部作の中篇としてとてもよく出来ている。本作品は旅の仲間たちの内面が丁寧に描写されております。1作目では添え物で終ったサム、メリー、ピピンの3人のホビットたちも力を発揮し、アルゴルン、レゴラス、ギムリの3人が友情を深めていく過程もよく分かります。

その分、フロドは指輪を持つ苦しみばかりであまり活躍しませんが、これも3作目への布石である。本作品で印象深いのはゴラムの存在である。サムが徹底して嫌悪しているのに対してフロドはゴラムをかばい続ける。ゴラムの中に指輪の魔力に屈してしまう自分の姿を見ているからであろう。強烈な二重人格ぶりもスリリングで目が離せなくなる。

そして、エント族の長老“木の髭”も忘れ難い。ローハンでの壮絶な戦いの鍵を握っていたのはエント族だった。彼らを甘く見ていたサルマンに油断があった。こういう傍役が優れているから、この3部作は見飽きることがない。

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2005/08/30

アザーズ

「アザーズ」★★★★★
2001年アメリカ スペイン フランス
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ニコール・キッドマン フィオヌラ・フラナガン
   クリストファー・エクルストン エレイン・キャシディ

1945年。イギリス、チャネル諸島のジャージー島。グレースはこの島に建つ広大な屋敷に娘アンと息子ニコラスと3人だけで暮らしていた。夫は戦地に向かったまま未だ戻らなかった。屋敷は光アレルギーの子どもたちを守るため昼間でも分厚いカーテンを閉め切り薄暗かったが…。

鑑賞後、M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」(1999)のことが頭をよぎりました。その映画との共通点がいくつかあります。ドラマ展開、テーマ性、作家性などなどです。そして、クライマックスのサプライズ。この結末を知って後味が悪くないところも似ていると思いました。

そのシャマラン監督がホラー色にこだわり「シックス・センス」を越える作品を作れず評価が低迷しているのに対して、アレハンドロ・アメナーバル監督はホラー路線を変更し「海を飛ぶ夢」(2004)のような秀作を撮り、さらに注目を浴びました。なかなか対照的な二人です。

本作品のプロデューサーはトム・クルーズ。この当時、まだ結婚していたニコール・キッドマンとの最後のコラボレーションとなりました。その当時はベスト・カップルだと言われていたのに。本作品が日本で公開されたときには、二人は離婚してしまっていて複雑な思いがよぎりました。

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2005/08/29

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」★★★★★
2002年アメリカ 監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス レオナルド・ディカプリオ
   クリストファー・ウォーケン マーティン・シーン

1960年代。16歳のフランクは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしまう。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。大手航空会社のパイロットに成りすますと誰もがみごとに騙され、巨額の資金を手に入れるのだが…。

フランク(L・ディカプリオ)が詐欺行為を続けるのは単にお金のためだけでない。父と母が得意げにダンスするような暖かい家族の再現を夢見て、カール(トム・ハンクス)から逃走を続ける。その夢が破れ、彼の戻る場所がないと悟った時、フランクの逃走劇は終った。

失った家族を取り戻そうと主人公が逃走を続けるのは、近年の「A.I.」(2001)や「マイノリティ・リポート」(2002)、「宇宙戦争」(2005)に共通するモチーフであり、S・スピルバーグ監督の関心の高さが窺われて興味深い。

タイトルバックのアニメーションが洒落ていて素晴らしい。

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2005/08/28

ペイチェック 消された記憶

「ペイチェック 消された記憶」★★★★★
2003年アメリカ 監督:ジョン・ウー
原作:フィリップ・K・ディック
出演:ベン・アフレック ユマ・サーマン
   アーロン・エッカート コルム・フィオール

情報化が一段と進んだ近未来社会。フリーのコンピュータ・エンジニア、ジェニングスは、ハイテク企業の開発部門を渡り歩き、機密保持のため、報酬と引き替えに開発期間中の記憶を抹消するという仕事を請け負っていた。今、ジェニングスはオールコム社の極秘プロジェクトを終了させ、3年間の記憶を抹消したが…。

SFの舞台設定でありながら、ミステリー色も強く出ている。そして、ジョン・ウー監督ならではの華麗なアクションシーンも盛り込まれているところが非常に面白かった

記憶をなくした男、自分の過去を追い駆けるというプロットは珍しいものではない。本作品の魅力は小道具の使い方。一見、関連性がないものが、ひとつひとつ繋がっていく展開が小気味良くグイグイと惹きつけられました。

初めてヴァージンシネマズ六本木ヒルズに行き、本作品を観たというのも忘れられない思い出です。

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2005/08/24

グッバイ、レーニン!

「グッバイ、レーニン!」★★★★★
2003年ドイツ 監督:ウォルフガング・ベッカー
出演:ダニエル・ブリュール カトリン・サス
   チュルパン・ハマートヴァ マリア・シモン

1989年、東ベルリン。テレビ修理店に勤めるアレックスの父は、10年前に家族を捨て西側に亡命してしまった。その反動から母のクリスティアーネは愛国心を強めていた。建国40周年を祝う夜、アレックスが反政府デモに参加している姿を見て、クリスティアーネは心臓発作を起こし昏睡状態に陥ってしまうが…。第53回ベルリン国際映画祭でヨーロピアンフィルム賞を受賞。第29回セザール賞でEU(欧州連合)作品賞を受賞。

吊り下げられたコカコーラの赤い幕。ペリコプターで運ばれていくレーニン像。東ベルリンが崩壊し社会が変革していく街の姿を鮮やかにとらえたショットが素晴らしい。

そして、宇宙飛行士・ロケット・衛星放送らが映画の中で何度も登場してくるが、それらはアレックスの抱く新しい社会への期待、夢の象徴であると思いました。

病気の母のために始めた嘘のドイツが、やがてアレックスにとって理想のドイツに変遷していくところが非常に興味深かった。反社会主義運動を支持してきた彼が、社会主義から資本主義に変わっていく姿を目の当たりにして、全てが良くなるものでないことに気付かされるのであった。現実の社会はいい面も悪い面も両方兼ね備えているのだろう。

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2005/08/22

初恋のきた道

「初恋のきた道」★★★★★
1999年アメリカ 中国 監督:チャン・イーモウ
出演:チャン・ツィイー チョン・ハオ
   スン・ホンレイ チャオ・ユエリン

中国、華北の小さな村。父の死の知らせを聞き都会から青年が母の元へ戻ってきた。悲しみに暮れる母の願いは病院から遺体を担いで村に戻るという伝統的な葬儀をしたいということだった。そのかたくなな母の姿に、青年は当時、村で話題になった両親の恋物語を思いだすのだったが…。第50回ベルリン国際映画祭で審査員特別賞を受賞。

割れた丼を修繕する。なくしてしまった髪留めが見つかる。初恋の物語は悲劇で終るというのが一般的であるが、本作品では一途な少女(チャン・ツィイー)の想いは困難にあってもいつか叶うのではないかと予感させるエピソードが続く。

その恋心はやがて村中に知れ渡ってしまう。最初はその恋に反対する母親であるが、少女のひたむきな想いにやがて情が移っていく。そして村人からも応援してもらえる。恋であっても、一生懸命な姿は周りの人々も幸福にしてくれる。この想いの象徴として村から町へ続く一本道が的確に描かれている。そのため、プロローグへ感動的に結びついていくのだ。

走るたびに揺れる三つ編みの髪。厚地の上着とモンペのようなズボン。教師のために一生懸命作る手料理。そんな素朴な田舎の少女をチャン・ツィイーが好演しています。

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