★★★★★作品

2006/10/04

嫌われ松子の一生

「嫌われ松子の一生」★★★★★
(盛岡東宝)2006年日本
監督:中島哲也
原作:山田宗樹
脚本:中島哲也
出演:中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 柄本明

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嫌われ松子の一生@映画生活

愛し方、愛され方というのもあると思う。ただ好きだから、愛しているからの気持ちだけで、良好な関係を継続的に築いていこうとすることはできないのだ。自分の思いを100%伝えようとせず、相手がどんな風に感じていることを知る必要がある。

本作品のヒロイン松子(中谷美紀)は、常に一生懸命、相手を愛そうとして愛されようとするが、ことごとくうまくいかない。彼女にはそのノウハウを認知していなかった。その遠因は彼女の家族関係にある。

病弱な妹久美(市川実日子)のために父親(柄本明)から愛されていないと誤認する松子。それが為、妹との関係も愛憎混じる歪なものとなってしまう。ここで気になるのは、母親との関係が映画の中でほとんど描かれていないことだ。

父親の笑顔がみたいため考察した変な顔。松子の登っていく階段で待っている妹。家出した松子を嫌な顔をしながらも郷里で迎える弟(香川照之)。彼らとの関係を表すエピソードが反復して何度も登場されるのに、母親との関係は全く描かれていないのだ。ここにこのドラマの異質性がある。

それが母親の役目と限定すべきではないが、直情的に行動する松子へサポートすべき存在が誰もいなかったことの大きさ。母親との関係が希薄であったこと。それが彼女の生涯を決定づける一因であったと感じさせる。

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2006/09/24

ナイロビの蜂

「ナイロビの蜂」★★★★★
(ルミエール2)2005年イギリス
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ジェフリー・ケイン
出演:レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ
   ユベール・クンデ ダニー・ヒューストン

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ナイロビの蜂@映画生活

ジャスティン(レイフ・ファインズ)とテッサ(レイチェル・ワイズ)の出会いの場面が効いている。二人の人物像はこの場だけでよく伝わってくる。外交官という職種には、テッサの行動はマイナス評価になるのは分っていても、彼女と結婚したジャスティン。

常識に縛られない奔放な彼女を愛したはずなのに、一緒に行動していたアフリカ人医師アーノルド(ユベール・クンデ)との関係を疑ってしまった嫉妬心。冒頭で飛行機に乗る二人を見送るジャスティンの姿が示唆的であった。

ジャスティンの飽くなき真相追及は彼女の非業な死に対する義憤というよりも、彼女の不実を疑ってしまった贖罪であったのではないだろうか。

フェルナンド・メイレレス監督の演出にも唸った。謀略ミステリーとしても、ラブ・ストーリーとしてもなかなかの味わいを保っているが、もう一つ「アフリカ人の命は安い」という重厚な主題が全編を貫いている。イギリス人居住区とアフリカ人居住区を絶妙なタッチで切り替え、観る者をハッとさせる。両者の深い隔たりを感じさせるのだ。

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2006/09/13

かもめ食堂

「かもめ食堂」★★★★★
(京都シネマ1)2005年日本
監督:荻上直子
原作:群ようこ
脚本:荻上直子
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ ヤルッコ・ニエミ

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かもめ食堂@映画生活

本作品の中でもっとも特徴的なエピソードは、マサコ(もたいまさこ)のトランクをめぐるもの。飛行機の乗り継ぎで紛失したまま、いつまでも出てこない旅行用トランク。やっと見つかり部屋で開けてみると、意外なものが一杯で光輝いていた。

映画全体が現実的なようで現実的でない、不思議な世界となっているが、それを象徴させる挿話となっている。これは彼女の探し求めていた<生命の輝き>を表現したものであろうか。

小林聡美の存在感が際立っている。優しさの中にもドライな感じを滲ませ、凛とした佇まいを見せる。「人はみな変わっていくものですから」という台詞には、重々しい説得力があった。久々の映画主演であるが、さすがと感じさせる。「転校生」(1982)で発揮された演技力は健在である。

彼女の温かな笑顔によって、かもめ食堂は満席になっていくのであった。

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2006/08/30

ブロークバック・マウンテン

「ブロークバック・マウンテン」★★★★★
(盛岡フォーラム1)年アメリカ
監督:アン・リー
原作:アニー・プルー
脚本:ラリー・マクマートリー ダイアナ・オサナ
出演:ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール
   ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ

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ブロークバック・マウンテン@映画生活

ジャック(ジェイク・ギレンホール)が亡くなった時の様子をイニス(ヒース・レジャー)がラリーン(アン・ハサウェイ)から電話で聞いている場面。唐突にリンチされているシーンが挿入されてくる。これは一体なんであろうか。ラリーンが言っていることが嘘なのか本当なのか、微妙に揺れてしまう。

そして、イニスがジャックの実家へ弔いに訪れたとき、父親から聞かされたジャックの計画。そこでは、イニスから別の男の名前に変わっていたこと。それが、彼の死因とかかわりあっているのではないかと感じさせる。

イニスの選択した生き方に間違いはなかった。ジャックの望むままに、二人で生活していたとしても破滅が待っていたことだろう。しかし、同時にそれは不遇の生涯を選んだことでもあった。

相応しくない場所で相応しくない相手を愛してしまった悲劇。それが重々しく心に残り続ける。

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2006/07/18

灯台守の恋

「灯台守の恋」★★★★★
(盛岡フォーラム1)2004年フランス
監督:フィリップ・リオレ
脚本:フィリップ・リオレ エマニュエル・クールコル
   クリスチャン・シニジェ クロード・ファラルド
出演:サンドリーヌ・ボネール フィリップ・トレトン
   グレゴリ・デランジェール エミリー・ドゥケンヌ

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思いもよらず亡き母の悲恋を記した書物の存在を知り、母の隠されていた表情に感銘を受けるという構成は、クリント・イーストウッド監督の「マディソン郡の橋」(1995)を想起させます。一番身近である筈の親子でされ、知られることのない秘密を抱えて生きているところに人生の趣がある。

ありふれた不倫ドラマに終っていないのは、イヴォン(フィリップ・トレトン)が際立った存在感を発揮しているからであろう。最初は強面でアントワーヌ(グレゴリ・デランジェール)に冷たく当たっているが、一緒に業務をこなしていく内に、友情を深めていく。

灯台で過ごす時間の中、誰も望まぬ椅子を作り続ける心情とは何か。ちょっとした仕草や表情に、心の隅でくすぶっている不満や失望を滲ませるところが秀逸でありました。

クライマクッスの暴風雨の夜も素晴らしかった。イヴァンが陥る魔の刻。抑えられない感情。踏み止まる良心。緊迫感に満ちた一場面でした。

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2006/07/14

オアシス

「オアシス」★★★★★
(DVD)2002年韓国
監督:イ・チャンドン
脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング ムン・ソリ
   アン・ネサン チュ・グィジョン

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オアシス@映画生活

とにかくストーリー展開が巧妙に練られている。前科者で本気になって人生に向き合うことを避けているジョンドゥ(ソル・ギョング)を見ていて、およそ共感など呼ばないであろう。反発心を覚え、こんな男が回りにいたら非常に迷惑だろうと思わせる。

だが、物語の後半で、ある事実を知るとき、彼に対する見方ががらりと一転する。表面には現れない彼の心情に胸が締め付けられる。逆に、彼を邪魔者扱いにする家族の非情さが腹立たしく感じられる。ここで、人は見た目では分らないというテーマが浮かび上がってくる。

後半の展開でコンジュ(ムン・ソリ)が健常者の姿となって何度も登場してくるが、このことに賛否両論分かれているようだ。ここで大切なのは、コンジュが最初に登場する場面。彼女は手鏡の光で遊ぶところが描かれている。ここで、彼女は空想を楽しめることが示されているので、私には唐突には感じられない。コンジュの心象風景として秀逸であると感じます。

そして、ラスト・シーンもほのぼのとした希望と明るさに包まれて魅了された。第三者には理解されない二人の関係というと、往年の名作「シベールの日曜日」(1962)を思い浮かべるが、あんな哀しい結末にならなくて良かった。

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2005/08/30

アザーズ

「アザーズ」★★★★★
2001年アメリカ スペイン フランス
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ニコール・キッドマン フィオヌラ・フラナガン
   クリストファー・エクルストン エレイン・キャシディ

1945年。イギリス、チャネル諸島のジャージー島。グレースはこの島に建つ広大な屋敷に娘アンと息子ニコラスと3人だけで暮らしていた。夫は戦地に向かったまま未だ戻らなかった。屋敷は光アレルギーの子どもたちを守るため昼間でも分厚いカーテンを閉め切り薄暗かったが…。

鑑賞後、M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」(1999)のことが頭をよぎりました。その映画との共通点がいくつかあります。ドラマ展開、テーマ性、作家性などなどです。そして、クライマックスのサプライズ。この結末を知って後味が悪くないところも似ていると思いました。

そのシャマラン監督がホラー色にこだわり「シックス・センス」を越える作品を作れず評価が低迷しているのに対して、アレハンドロ・アメナーバル監督はホラー路線を変更し「海を飛ぶ夢」(2004)のような秀作を撮り、さらに注目を浴びました。なかなか対照的な二人です。

本作品のプロデューサーはトム・クルーズ。この当時、まだ結婚していたニコール・キッドマンとの最後のコラボレーションとなりました。その当時はベスト・カップルだと言われていたのに。本作品が日本で公開されたときには、二人は離婚してしまっていて複雑な思いがよぎりました。

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2005/08/03

アポロ13

「アポロ13」★★★★★(BS)
1995年アメリカ 監督:ロン・ハワード
原作:ジム・ラヴェル ジェフリー・クルーガー
出演:トム・ハンクス ケヴィン・ベーコン
   ゲイリー・シニーズ エド・ハリス

ベテラン宇宙飛行士のジムはアポロ14号に乗る予定だったが、13号のクルーが病気となりジムのチームが繰り上がることに。しかし、着陸船操縦士ケンは風疹の疑いで降板させられ、ジムは断腸の思いで代替要員のジャックを受入れる。そして1970年4月11日、アポロ13号は月に向って出発するが…。第68回アカデミー賞で編集賞、音響賞を受賞。

本作品を何度観ても胸を打つのは、どんな困難な状況でも諦めることなく、ひとつのチーム全体が励まし合い知恵を絞り出せば解決策が見つかってくるというテーマ性によるものだ。無論、最善策を講じても100%解決する保証はない。人智を尽くし、後は神に祈るということを克明に描いている。

俳優陣もみな熱演であるが、極限状態に追いつめらた船内クルーたちを必死になって救おうとするフライトディレクターのジーン(E・ハリス)、そして病気を理由に船から降ろされたケン(G・シニーズ)の二人が際立って素晴らしい。

皮肉さと言えば、アポロ計画自体が飽きられてしまい中継放送も断られていたのに、事故発生によってメディアの注目が一斉に集まってしまうこと。ある種、仕方がないとは言え、当事者にとってはやりきれない思いが残ることでしょう。

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2005/07/29

カイロの紫のバラ

「カイロの紫のバラ」★★★★★
1985年アメリカ 
監督:ウディ・アレン
出演:ミア・ファロー ジェフ・ダニエルズ
   ダニー・アイエロ ダイアン・ウィースト

30年代半ば、不況のニュージャージー。セシリアは夫のモンクが失業中であるのでウェイトレスをして生活を支えていた。そんな彼女の楽しみは大好きな映画を見るために映画館に行くこと。ある時、いつものように映画を観ていると、スクリーンの中から主人公のトムが銀幕を飛び出してきたのだが…。

第38回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。第11回セザール賞で外国映画賞を受賞。

傑作、秀作ぞろいのW・アレンの作品で、一番好きな作品だ。シネマファンにとって映画の登場人物と現実の世界で恋におちるという話はまさに夢であろう。そういう物語を見せてもらった喜びがひとつ。

とにかく楽しくて笑えるが、その裏側に人生の悲哀がきちんと描かれている。中盤からのファンタジックな展開もいいが、ラストシーンがしみじみと残る。夢に裏切れても人生は続いていく。哀しみの中から芽生えていく希望。

当時のパートナーであったW・アレンとM・ファロー。その後、二人は痛ましい別れ方をするので、余計にこの映画の中のM・ファローの輝きを感慨深く見つめる。

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2005/06/06

エイブル

「エイブル」★★★★★(BS)
2001年日本 監督:小栗謙一 (ドキュメンタリー作品)
出演:渡辺元 高橋淳 キャサリン・ルビ マーク・ルビ

アリゾナに住むキャサリンとマーク夫妻は、日本から知的障害のある少年、ゲンとジュンをホストファミリーとして受け入れた。ゲンはダウンシンドローム、ジュンは自閉症であった。夫妻は障害に関してあまり知識も経験もなく、少年2人にとっても受け入れる2人にとっても冒険であったが…。

現代は情報化社会となり、一つの仕事に要する処理時間が年々短縮されていく。知的障害者は一つの仕事を決してできないわけでない。ただその処理に時間がかかるだけである。スピードが要求されるこの時代に知的障害者はますます暮らし難くなるであろう。

本作品は知的障害者でも、チャンスがあれば何でも学ぶことができることを描いた作品である。ホストとなったキャサリンとマークの夫婦の優しい時間の中で、二人は可能性をどんどん伸ばしていく。

気球に乗ったエンドクレジットは二人の飛躍を感じさせ、余韻の残る幕切れとなった。

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