★★★★★作品

2018/11/07

青空エール

青空エール ★★★★★

『くちびるに歌を』の三木孝浩監督が河原和音の同名コミックスを映画化した青春ドラマ。内気でうつむいてばかりいる少女が野球部員のクラスメイトを甲子園で応援したいという夢を抱き、初心者ながら名門吹奏楽部に入部した事から始まる奮闘の日々を爽やかに描く。

頑張れという言葉は重過ぎると言って敬遠されるむきもあるが、応援してもらえるという事は有り難いものだ。期待に応えなければと結果にこだわってしまえば、重い足枷の言葉にしかなれないだろうが、自分の能力を高める手段を鼓舞してくれると思えばいいだけの事だ。

2018/10/8(月)
Amazon プライムビデオ

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2018/10/11

寝ても覚めても

寝ても覚めても ★★★★★

『ハッピーアワー』の濱口竜介監督が柴崎友香の同名小説を映画化した恋愛ドラマ。突然姿を消してしまった恋人の痛手から立ち直れないまま、大阪から東京へ移り住んだ女性が仕事先で恋人と同じ顔を持つ男性で出会った事から始まる心の軌跡をスリリングに描く。

彼女は躊躇しない。瞬間的に全てを捨て去る事ができてしまう。まっすぐに手を伸ばしていく力強さは麦とそっくりである。だから、共鳴できるように惹かれ合ったかもしれないが、長くは続かないものだ。亮平との新しい時間は彼女の違う側面を導き出した。

2018/10/6(土)
シネマート心斎橋-01

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2018/10/05

マイ・インターン

マイ・インターン ★★★★★

『恋するベーカリー』のナンシー・マイヤーズ監督によるハートフルドラマ。ファッション通販サイトを運営している女性が短期間で会社を成功させ公私ともに大きな問題に直面するが、シニア・インターン制度で採用した70歳の男と出会い再生していく姿を温かく描く。

人は生きている限り苦悩を続ける。人がうらやむような成功を遂げていたとしても、安穏としている時間は短い。彼女はすべてを抱え込んでうまく対応できなくなっていた。思わぬ出会いが彼女をリセットさせた。心に余裕を取り戻し、果敢に判断を下す力を取り戻す。

2018/9/29(土)
Amazon ビデオ

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2018/10/04

判決、ふたつの希望

判決、ふたつの希望 ★★★★★

レバノン映画として初めて外国語映画賞にノミネートされるなど国際的に高い評価を獲得したジアド・ドゥエイリ監督の法廷ドラマ。キリスト教徒であるレバノン人男性とパレスチナ難民の男性との口論が裁判沙汰となり、やがて全国的な事件へと発展していく姿を描く。

知ってしまえば同じ人間である。差別的発言はいつの時代でも許されるものではない。けれど、直視したくない事実から目を背けていたいだけかもしれない。それぞれの生涯を理解する事など不可能だが、そこに隠された何かがあるのではと推察するだけでも違うだろう。

2018/9/24(月)
大阪ステーションシティシネマ-07

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2006/10/04

嫌われ松子の一生

「嫌われ松子の一生」★★★★★
(盛岡東宝)2006年日本
監督:中島哲也
原作:山田宗樹
脚本:中島哲也
出演:中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 柄本明

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嫌われ松子の一生@映画生活

愛し方、愛され方というのもあると思う。ただ好きだから、愛しているからの気持ちだけで、良好な関係を継続的に築いていこうとすることはできないのだ。自分の思いを100%伝えようとせず、相手がどんな風に感じていることを知る必要がある。

本作品のヒロイン松子(中谷美紀)は、常に一生懸命、相手を愛そうとして愛されようとするが、ことごとくうまくいかない。彼女にはそのノウハウを認知していなかった。その遠因は彼女の家族関係にある。

病弱な妹久美(市川実日子)のために父親(柄本明)から愛されていないと誤認する松子。それが為、妹との関係も愛憎混じる歪なものとなってしまう。ここで気になるのは、母親との関係が映画の中でほとんど描かれていないことだ。

父親の笑顔がみたいため考察した変な顔。松子の登っていく階段で待っている妹。家出した松子を嫌な顔をしながらも郷里で迎える弟(香川照之)。彼らとの関係を表すエピソードが反復して何度も登場されるのに、母親との関係は全く描かれていないのだ。ここにこのドラマの異質性がある。

それが母親の役目と限定すべきではないが、直情的に行動する松子へサポートすべき存在が誰もいなかったことの大きさ。母親との関係が希薄であったこと。それが彼女の生涯を決定づける一因であったと感じさせる。

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2006/09/24

ナイロビの蜂

「ナイロビの蜂」★★★★★
(ルミエール2)2005年イギリス
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ジェフリー・ケイン
出演:レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ
   ユベール・クンデ ダニー・ヒューストン

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ナイロビの蜂@映画生活

ジャスティン(レイフ・ファインズ)とテッサ(レイチェル・ワイズ)の出会いの場面が効いている。二人の人物像はこの場だけでよく伝わってくる。外交官という職種には、テッサの行動はマイナス評価になるのは分っていても、彼女と結婚したジャスティン。

常識に縛られない奔放な彼女を愛したはずなのに、一緒に行動していたアフリカ人医師アーノルド(ユベール・クンデ)との関係を疑ってしまった嫉妬心。冒頭で飛行機に乗る二人を見送るジャスティンの姿が示唆的であった。

ジャスティンの飽くなき真相追及は彼女の非業な死に対する義憤というよりも、彼女の不実を疑ってしまった贖罪であったのではないだろうか。

フェルナンド・メイレレス監督の演出にも唸った。謀略ミステリーとしても、ラブ・ストーリーとしてもなかなかの味わいを保っているが、もう一つ「アフリカ人の命は安い」という重厚な主題が全編を貫いている。イギリス人居住区とアフリカ人居住区を絶妙なタッチで切り替え、観る者をハッとさせる。両者の深い隔たりを感じさせるのだ。

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2006/09/13

かもめ食堂

「かもめ食堂」★★★★★
(京都シネマ1)2005年日本
監督:荻上直子
原作:群ようこ
脚本:荻上直子
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ ヤルッコ・ニエミ

くわしくはこちらで・・・
かもめ食堂@映画生活

本作品の中でもっとも特徴的なエピソードは、マサコ(もたいまさこ)のトランクをめぐるもの。飛行機の乗り継ぎで紛失したまま、いつまでも出てこない旅行用トランク。やっと見つかり部屋で開けてみると、意外なものが一杯で光輝いていた。

映画全体が現実的なようで現実的でない、不思議な世界となっているが、それを象徴させる挿話となっている。これは彼女の探し求めていた<生命の輝き>を表現したものであろうか。

小林聡美の存在感が際立っている。優しさの中にもドライな感じを滲ませ、凛とした佇まいを見せる。「人はみな変わっていくものですから」という台詞には、重々しい説得力があった。久々の映画主演であるが、さすがと感じさせる。「転校生」(1982)で発揮された演技力は健在である。

彼女の温かな笑顔によって、かもめ食堂は満席になっていくのであった。

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2006/08/30

ブロークバック・マウンテン

「ブロークバック・マウンテン」★★★★★
(盛岡フォーラム1)年アメリカ
監督:アン・リー
原作:アニー・プルー
脚本:ラリー・マクマートリー ダイアナ・オサナ
出演:ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール
   ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ

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ブロークバック・マウンテン@映画生活

ジャック(ジェイク・ギレンホール)が亡くなった時の様子をイニス(ヒース・レジャー)がラリーン(アン・ハサウェイ)から電話で聞いている場面。唐突にリンチされているシーンが挿入されてくる。これは一体なんであろうか。ラリーンが言っていることが嘘なのか本当なのか、微妙に揺れてしまう。

そして、イニスがジャックの実家へ弔いに訪れたとき、父親から聞かされたジャックの計画。そこでは、イニスから別の男の名前に変わっていたこと。それが、彼の死因とかかわりあっているのではないかと感じさせる。

イニスの選択した生き方に間違いはなかった。ジャックの望むままに、二人で生活していたとしても破滅が待っていたことだろう。しかし、同時にそれは不遇の生涯を選んだことでもあった。

相応しくない場所で相応しくない相手を愛してしまった悲劇。それが重々しく心に残り続ける。

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2006/07/18

灯台守の恋

「灯台守の恋」★★★★★
(盛岡フォーラム1)2004年フランス
監督:フィリップ・リオレ
脚本:フィリップ・リオレ エマニュエル・クールコル
   クリスチャン・シニジェ クロード・ファラルド
出演:サンドリーヌ・ボネール フィリップ・トレトン
   グレゴリ・デランジェール エミリー・ドゥケンヌ

詳しくはこちらで・・・
灯台守の恋@映画生活

思いもよらず亡き母の悲恋を記した書物の存在を知り、母の隠されていた表情に感銘を受けるという構成は、クリント・イーストウッド監督の「マディソン郡の橋」(1995)を想起させます。一番身近である筈の親子でされ、知られることのない秘密を抱えて生きているところに人生の趣がある。

ありふれた不倫ドラマに終っていないのは、イヴォン(フィリップ・トレトン)が際立った存在感を発揮しているからであろう。最初は強面でアントワーヌ(グレゴリ・デランジェール)に冷たく当たっているが、一緒に業務をこなしていく内に、友情を深めていく。

灯台で過ごす時間の中、誰も望まぬ椅子を作り続ける心情とは何か。ちょっとした仕草や表情に、心の隅でくすぶっている不満や失望を滲ませるところが秀逸でありました。

クライマクッスの暴風雨の夜も素晴らしかった。イヴァンが陥る魔の刻。抑えられない感情。踏み止まる良心。緊迫感に満ちた一場面でした。

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2006/07/14

オアシス

「オアシス」★★★★★
(DVD)2002年韓国
監督:イ・チャンドン
脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング ムン・ソリ
   アン・ネサン チュ・グィジョン

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オアシス@映画生活

とにかくストーリー展開が巧妙に練られている。前科者で本気になって人生に向き合うことを避けているジョンドゥ(ソル・ギョング)を見ていて、およそ共感など呼ばないであろう。反発心を覚え、こんな男が回りにいたら非常に迷惑だろうと思わせる。

だが、物語の後半で、ある事実を知るとき、彼に対する見方ががらりと一転する。表面には現れない彼の心情に胸が締め付けられる。逆に、彼を邪魔者扱いにする家族の非情さが腹立たしく感じられる。ここで、人は見た目では分らないというテーマが浮かび上がってくる。

後半の展開でコンジュ(ムン・ソリ)が健常者の姿となって何度も登場してくるが、このことに賛否両論分かれているようだ。ここで大切なのは、コンジュが最初に登場する場面。彼女は手鏡の光で遊ぶところが描かれている。ここで、彼女は空想を楽しめることが示されているので、私には唐突には感じられない。コンジュの心象風景として秀逸であると感じます。

そして、ラスト・シーンもほのぼのとした希望と明るさに包まれて魅了された。第三者には理解されない二人の関係というと、往年の名作「シベールの日曜日」(1962)を思い浮かべるが、あんな哀しい結末にならなくて良かった。

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