★★★★★作品

2006/10/04

嫌われ松子の一生

「嫌われ松子の一生」★★★★★
(盛岡東宝)2006年日本
監督:中島哲也
原作:山田宗樹
脚本:中島哲也
出演:中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 柄本明

詳しくはこちらで・・・
嫌われ松子の一生@映画生活

愛し方、愛され方というのもあると思う。ただ好きだから、愛しているからの気持ちだけで、良好な関係を継続的に築いていこうとすることはできないのだ。自分の思いを100%伝えようとせず、相手がどんな風に感じていることを知る必要がある。

本作品のヒロイン松子(中谷美紀)は、常に一生懸命、相手を愛そうとして愛されようとするが、ことごとくうまくいかない。彼女にはそのノウハウを認知していなかった。その遠因は彼女の家族関係にある。

病弱な妹久美(市川実日子)のために父親(柄本明)から愛されていないと誤認する松子。それが為、妹との関係も愛憎混じる歪なものとなってしまう。ここで気になるのは、母親との関係が映画の中でほとんど描かれていないことだ。

父親の笑顔がみたいため考察した変な顔。松子の登っていく階段で待っている妹。家出した松子を嫌な顔をしながらも郷里で迎える弟(香川照之)。彼らとの関係を表すエピソードが反復して何度も登場されるのに、母親との関係は全く描かれていないのだ。ここにこのドラマの異質性がある。

それが母親の役目と限定すべきではないが、直情的に行動する松子へサポートすべき存在が誰もいなかったことの大きさ。母親との関係が希薄であったこと。それが彼女の生涯を決定づける一因であったと感じさせる。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006/09/24

ナイロビの蜂

「ナイロビの蜂」★★★★★
(ルミエール2)2005年イギリス
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ジェフリー・ケイン
出演:レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ
   ユベール・クンデ ダニー・ヒューストン

詳しくはこちらで・・・
ナイロビの蜂@映画生活

ジャスティン(レイフ・ファインズ)とテッサ(レイチェル・ワイズ)の出会いの場面が効いている。二人の人物像はこの場だけでよく伝わってくる。外交官という職種には、テッサの行動はマイナス評価になるのは分っていても、彼女と結婚したジャスティン。

常識に縛られない奔放な彼女を愛したはずなのに、一緒に行動していたアフリカ人医師アーノルド(ユベール・クンデ)との関係を疑ってしまった嫉妬心。冒頭で飛行機に乗る二人を見送るジャスティンの姿が示唆的であった。

ジャスティンの飽くなき真相追及は彼女の非業な死に対する義憤というよりも、彼女の不実を疑ってしまった贖罪であったのではないだろうか。

フェルナンド・メイレレス監督の演出にも唸った。謀略ミステリーとしても、ラブ・ストーリーとしてもなかなかの味わいを保っているが、もう一つ「アフリカ人の命は安い」という重厚な主題が全編を貫いている。イギリス人居住区とアフリカ人居住区を絶妙なタッチで切り替え、観る者をハッとさせる。両者の深い隔たりを感じさせるのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2006/09/13

かもめ食堂

「かもめ食堂」★★★★★
(京都シネマ1)2005年日本
監督:荻上直子
原作:群ようこ
脚本:荻上直子
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ ヤルッコ・ニエミ

くわしくはこちらで・・・
かもめ食堂@映画生活

本作品の中でもっとも特徴的なエピソードは、マサコ(もたいまさこ)のトランクをめぐるもの。飛行機の乗り継ぎで紛失したまま、いつまでも出てこない旅行用トランク。やっと見つかり部屋で開けてみると、意外なものが一杯で光輝いていた。

映画全体が現実的なようで現実的でない、不思議な世界となっているが、それを象徴させる挿話となっている。これは彼女の探し求めていた<生命の輝き>を表現したものであろうか。

小林聡美の存在感が際立っている。優しさの中にもドライな感じを滲ませ、凛とした佇まいを見せる。「人はみな変わっていくものですから」という台詞には、重々しい説得力があった。久々の映画主演であるが、さすがと感じさせる。「転校生」(1982)で発揮された演技力は健在である。

彼女の温かな笑顔によって、かもめ食堂は満席になっていくのであった。

| | コメント (4) | トラックバック (8)

2006/08/30

ブロークバック・マウンテン

「ブロークバック・マウンテン」★★★★★
(盛岡フォーラム1)年アメリカ
監督:アン・リー
原作:アニー・プルー
脚本:ラリー・マクマートリー ダイアナ・オサナ
出演:ヒース・レジャー ジェイク・ギレンホール
   ミシェル・ウィリアムズ アン・ハサウェイ

詳しくはこちらで・・・
ブロークバック・マウンテン@映画生活

ジャック(ジェイク・ギレンホール)が亡くなった時の様子をイニス(ヒース・レジャー)がラリーン(アン・ハサウェイ)から電話で聞いている場面。唐突にリンチされているシーンが挿入されてくる。これは一体なんであろうか。ラリーンが言っていることが嘘なのか本当なのか、微妙に揺れてしまう。

そして、イニスがジャックの実家へ弔いに訪れたとき、父親から聞かされたジャックの計画。そこでは、イニスから別の男の名前に変わっていたこと。それが、彼の死因とかかわりあっているのではないかと感じさせる。

イニスの選択した生き方に間違いはなかった。ジャックの望むままに、二人で生活していたとしても破滅が待っていたことだろう。しかし、同時にそれは不遇の生涯を選んだことでもあった。

相応しくない場所で相応しくない相手を愛してしまった悲劇。それが重々しく心に残り続ける。

| | コメント (4) | トラックバック (12)

2006/07/18

灯台守の恋

「灯台守の恋」★★★★★
(盛岡フォーラム1)2004年フランス
監督:フィリップ・リオレ
脚本:フィリップ・リオレ エマニュエル・クールコル
   クリスチャン・シニジェ クロード・ファラルド
出演:サンドリーヌ・ボネール フィリップ・トレトン
   グレゴリ・デランジェール エミリー・ドゥケンヌ

詳しくはこちらで・・・
灯台守の恋@映画生活

思いもよらず亡き母の悲恋を記した書物の存在を知り、母の隠されていた表情に感銘を受けるという構成は、クリント・イーストウッド監督の「マディソン郡の橋」(1995)を想起させます。一番身近である筈の親子でされ、知られることのない秘密を抱えて生きているところに人生の趣がある。

ありふれた不倫ドラマに終っていないのは、イヴォン(フィリップ・トレトン)が際立った存在感を発揮しているからであろう。最初は強面でアントワーヌ(グレゴリ・デランジェール)に冷たく当たっているが、一緒に業務をこなしていく内に、友情を深めていく。

灯台で過ごす時間の中、誰も望まぬ椅子を作り続ける心情とは何か。ちょっとした仕草や表情に、心の隅でくすぶっている不満や失望を滲ませるところが秀逸でありました。

クライマクッスの暴風雨の夜も素晴らしかった。イヴァンが陥る魔の刻。抑えられない感情。踏み止まる良心。緊迫感に満ちた一場面でした。

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2006/07/14

オアシス

「オアシス」★★★★★
(DVD)2002年韓国
監督:イ・チャンドン
脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング ムン・ソリ
   アン・ネサン チュ・グィジョン

詳しくはこちらで・・・
オアシス@映画生活

とにかくストーリー展開が巧妙に練られている。前科者で本気になって人生に向き合うことを避けているジョンドゥ(ソル・ギョング)を見ていて、およそ共感など呼ばないであろう。反発心を覚え、こんな男が回りにいたら非常に迷惑だろうと思わせる。

だが、物語の後半で、ある事実を知るとき、彼に対する見方ががらりと一転する。表面には現れない彼の心情に胸が締め付けられる。逆に、彼を邪魔者扱いにする家族の非情さが腹立たしく感じられる。ここで、人は見た目では分らないというテーマが浮かび上がってくる。

後半の展開でコンジュ(ムン・ソリ)が健常者の姿となって何度も登場してくるが、このことに賛否両論分かれているようだ。ここで大切なのは、コンジュが最初に登場する場面。彼女は手鏡の光で遊ぶところが描かれている。ここで、彼女は空想を楽しめることが示されているので、私には唐突には感じられない。コンジュの心象風景として秀逸であると感じます。

そして、ラスト・シーンもほのぼのとした希望と明るさに包まれて魅了された。第三者には理解されない二人の関係というと、往年の名作「シベールの日曜日」(1962)を思い浮かべるが、あんな哀しい結末にならなくて良かった。

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2005/10/02

エレニの旅

「エレニの旅」★★★★★(ルミエール1)
2004年ギリシャ フランス イタリア ドイツ
監督:テオ・アンゲロプロス
出演:アレクサンドラ・アイディニ ニコス・プルサニディス
   ヨルゴス・アルメニス ヴァシリス・コロヴォス

1919年頃。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群がテサロニキ湾岸に降り立った。少女エレニはオデッサで両親を失い、リーダー格の男スピロス一家に拾われる。その10年後。スピロスたちは住み着いた土地に“ニューオデッサ”という村を築いていたが…。

アンゲロプロス監督でしか作り得ない深みのある映像美にまず圧倒される。冒頭のオデッサから逃れてくる集団の描写から素晴らしい。ここだけで神話的雰囲気を漂わせる。単に絵画のように美しいということだけでなく、観る者に重々しい衝撃を与える何かを秘めている。巨匠の風格を感じさせます。

常に映像で語る様式が続くので、少ない台詞が異彩を放っている。例えばこの場面。エレニが獄中から釈放され息子の戦死を知って気を失ってしまう。そのうわ言で「水がありません。石鹸がありません。息子に手紙を書く紙がありません」と何度も繰り返す。これはまさに詩そのものだ。

「忌まわしい内戦」という呟きもあった。内戦の悲劇は劇中のように兄弟同士が戦うような事例を生むことにある。韓国映画の「ブラザーフッド」(2004)の兄弟を思い出す。そして、幕切れでのエレニの慟哭。この哀しい響き。胸の抉られるような思いが今も続く。

| | コメント (1) | トラックバック (11)

2005/08/30

アザーズ

「アザーズ」★★★★★
2001年アメリカ スペイン フランス
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ニコール・キッドマン フィオヌラ・フラナガン
   クリストファー・エクルストン エレイン・キャシディ

1945年。イギリス、チャネル諸島のジャージー島。グレースはこの島に建つ広大な屋敷に娘アンと息子ニコラスと3人だけで暮らしていた。夫は戦地に向かったまま未だ戻らなかった。屋敷は光アレルギーの子どもたちを守るため昼間でも分厚いカーテンを閉め切り薄暗かったが…。

鑑賞後、M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」(1999)のことが頭をよぎりました。その映画との共通点がいくつかあります。ドラマ展開、テーマ性、作家性などなどです。そして、クライマックスのサプライズ。この結末を知って後味が悪くないところも似ていると思いました。

そのシャマラン監督がホラー色にこだわり「シックス・センス」を越える作品を作れず評価が低迷しているのに対して、アレハンドロ・アメナーバル監督はホラー路線を変更し「海を飛ぶ夢」(2004)のような秀作を撮り、さらに注目を浴びました。なかなか対照的な二人です。

本作品のプロデューサーはトム・クルーズ。この当時、まだ結婚していたニコール・キッドマンとの最後のコラボレーションとなりました。その当時はベスト・カップルだと言われていたのに。本作品が日本で公開されたときには、二人は離婚してしまっていて複雑な思いがよぎりました。

| | コメント (2) | トラックバック (10)

2005/08/03

アポロ13

「アポロ13」★★★★★(BS)
1995年アメリカ 監督:ロン・ハワード
原作:ジム・ラヴェル ジェフリー・クルーガー
出演:トム・ハンクス ケヴィン・ベーコン
   ゲイリー・シニーズ エド・ハリス

ベテラン宇宙飛行士のジムはアポロ14号に乗る予定だったが、13号のクルーが病気となりジムのチームが繰り上がることに。しかし、着陸船操縦士ケンは風疹の疑いで降板させられ、ジムは断腸の思いで代替要員のジャックを受入れる。そして1970年4月11日、アポロ13号は月に向って出発するが…。第68回アカデミー賞で編集賞、音響賞を受賞。

本作品を何度観ても胸を打つのは、どんな困難な状況でも諦めることなく、ひとつのチーム全体が励まし合い知恵を絞り出せば解決策が見つかってくるというテーマ性によるものだ。無論、最善策を講じても100%解決する保証はない。人智を尽くし、後は神に祈るということを克明に描いている。

俳優陣もみな熱演であるが、極限状態に追いつめらた船内クルーたちを必死になって救おうとするフライトディレクターのジーン(E・ハリス)、そして病気を理由に船から降ろされたケン(G・シニーズ)の二人が際立って素晴らしい。

皮肉さと言えば、アポロ計画自体が飽きられてしまい中継放送も断られていたのに、事故発生によってメディアの注目が一斉に集まってしまうこと。ある種、仕方がないとは言え、当事者にとってはやりきれない思いが残ることでしょう。

| | コメント (1) | トラックバック (4)

2005/07/29

カイロの紫のバラ

「カイロの紫のバラ」★★★★★
1985年アメリカ 
監督:ウディ・アレン
出演:ミア・ファロー ジェフ・ダニエルズ
   ダニー・アイエロ ダイアン・ウィースト

30年代半ば、不況のニュージャージー。セシリアは夫のモンクが失業中であるのでウェイトレスをして生活を支えていた。そんな彼女の楽しみは大好きな映画を見るために映画館に行くこと。ある時、いつものように映画を観ていると、スクリーンの中から主人公のトムが銀幕を飛び出してきたのだが…。

第38回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。第11回セザール賞で外国映画賞を受賞。

傑作、秀作ぞろいのW・アレンの作品で、一番好きな作品だ。シネマファンにとって映画の登場人物と現実の世界で恋におちるという話はまさに夢であろう。そういう物語を見せてもらった喜びがひとつ。

とにかく楽しくて笑えるが、その裏側に人生の悲哀がきちんと描かれている。中盤からのファンタジックな展開もいいが、ラストシーンがしみじみと残る。夢に裏切れても人生は続いていく。哀しみの中から芽生えていく希望。

当時のパートナーであったW・アレンとM・ファロー。その後、二人は痛ましい別れ方をするので、余計にこの映画の中のM・ファローの輝きを感慨深く見つめる。

| | コメント (1) | トラックバック (6)

2005/06/06

エイブル

「エイブル」★★★★★(BS)
2001年日本 監督:小栗謙一 (ドキュメンタリー作品)
出演:渡辺元 高橋淳 キャサリン・ルビ マーク・ルビ

アリゾナに住むキャサリンとマーク夫妻は、日本から知的障害のある少年、ゲンとジュンをホストファミリーとして受け入れた。ゲンはダウンシンドローム、ジュンは自閉症であった。夫妻は障害に関してあまり知識も経験もなく、少年2人にとっても受け入れる2人にとっても冒険であったが…。

現代は情報化社会となり、一つの仕事に要する処理時間が年々短縮されていく。知的障害者は一つの仕事を決してできないわけでない。ただその処理に時間がかかるだけである。スピードが要求されるこの時代に知的障害者はますます暮らし難くなるであろう。

本作品は知的障害者でも、チャンスがあれば何でも学ぶことができることを描いた作品である。ホストとなったキャサリンとマークの夫婦の優しい時間の中で、二人は可能性をどんどん伸ばしていく。

気球に乗ったエンドクレジットは二人の飛躍を感じさせ、余韻の残る幕切れとなった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005/06/03

息子の部屋

「息子の部屋」★★★★★(BS)
2001年イタリア 監督:ナンニ・モレッティ
出演:ナンニ・モレッティ ラウラ・モランテ
   ジャスミン・トリンカ ジュゼッペ・サンフェリーチェ

精神分析医のジョバンニは、息子のアンドレアを海の事故で突然失う。残された彼は、妻、娘とともに悲しみと後悔にさいなまれる。悲劇に耐えかねた家族はバラバラになりかけていた。そんなある時、息子に、夏休みのキャンプで知り合ったガールフレンドがいたことがわかるが…。

第54回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞。

日常生活が切り取られ、断片が綴られる構成となっている。その映らなかった余白の中に、息子を事故で亡くした喪失感、後悔、哀しみなどが込められている。そして、その感情が痛いくらいに伝わってくる。

ラストシーンも非常に印象深い。バラバラになっても同じ海の方向を見ている3人。そこには本来あるべき家族の姿があった。

ニコラ・ピオヴァーニの音楽が優しく響く。

| | コメント (0) | トラックバック (6)

2005/05/08

シャイン

「シャイン」★★★★★(BS)
1995年オーストラリア 監督:スコット・ヒックス
出演:ジェフリー・ラッシュ ノア・テイラー
 アレックス・ラファロウィッツ  アーミン・ミューラー=スタール

デイヴィッドは幼少の頃から音楽狂の父にピアノを仕込まれ、天才少年として評判になった。最初は息子の才能に鼻高々だった父だが、アメリカついで英国の王立音楽院に留学の話が出ると、家族から離れることを暴力的に拒否する。彼は周囲の励ましを受け、家を出てロンドンへ向うが…。第69回アカデミー賞でJ・ラッシュが主演男優賞を受賞。

これほどに愛憎入り混じった父と息子の親子関係を見たことがない。一方的に虐待するならまだしも、時に滋味深い愛情を施す父親だけに、父親との関係をどう構築したらよいのか息子は迷い続ける。いつまでも息子を自分の支配下に置き続けたいと願う父親。ここに息子への愛情と才能への嫉妬が入り混じっている。

そのために父親は決定的に子離れのタイミングを誤ってしまった。結果的に精神障害を患い、大成功したとはいえないイギリス留学だったが、父親との離反を決断した息子の勇気は称賛されるべきものだろう。

父親役のアーミン・ミューラー=スタールが凄まじい存在感。

| | コメント (4) | トラックバック (7)

2005/04/19

L.A.コンフィデンシャル

「L.A.コンフィデンシャル」★★★★★(BS)
1997年アメリカ 監督:カーティス・ハンソン
原作:ジェイムズ・エルロイ
出演:ケヴィン・スペイシー ラッセル・クロウ
   ガイ・ピアース キム・ベイシンガー

暗黒街のボスが逮捕され縄張り争いが激化する50年代のロス。街のコーヒーショップで元刑事を含む6人の男女が惨殺される事件が発生した。殺された刑事の相棒だったバドが捜査を開始し、被害者の女性と一緒にいたリンに接近する。彼女はハリウッドスターに似せた女を集めた高級娼婦組織の一員であったが…。第70回アカデミー賞でキム・ベイシンガーが助演女優賞、また脚色賞も受賞。

本作品を観るのは、これで3回目。原作を読み終えてから観てみると、絶妙な脚色に感嘆する。原作のエッセンスを残しながら、きちんと本筋の通ったドラマに仕上がっている。

原作にはなかった“ロロ・トマシ”のエピソードが絶妙に効いている。登場する3人の刑事のキャラクター造形も見事。三者三様の思いが、すれ違いながらもやがてひとつにまとまっていく展開も秀逸だった。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2005/04/12

サウンド・オブ・ミュージック

「サウンド・オブ・ミュージック」★★★★★(BS)
1965年アメリカ 監督:ロバート・ワイズ
出演:ジュリー・アンドリュース クリストファー・プラマー
   エレノア・パーカー リチャード・ヘイドン

修道女見習いのマリアは、規律を守ることが出来ず問題児であった。そこで修道院長はマリアをトラップ大佐の家に送り、7人の子供たちの家庭教師にする。大佐は亡くなった妻を思い出させることをすべて禁じ厳格に子供たちと接していた。マリアは大佐の留守中に子供たちを山に連れ出し歌う喜びを教えるが…。第38回アカデミー賞で作品賞、監督賞、ミュージカル映画音楽賞、編集賞、録音賞を受賞。

堅く閉ざされたトラップ大佐(C・プラマー)の心を開いていったのは子供たちの歌声。マリア(J・アンドリュース)が大佐への恋心を気付かせたのは二人で踊ったダンス。人の心の微妙な変化を歌や踊りを使って見せるところが絶妙にうまい。登場人物たちが躍動してみえる。

そして、二人の結婚式の鐘の音からナチスの行進に移行するカメラワークも秀逸。一瞬で祝福の明るさから戦争の暗い影へ変わっていく。有名な楽曲に頼ることなく陰影深いドラマに仕上がっているのは、こうした演出の冴えによるものだろう。

| | コメント (2) | トラックバック (4)

2005/04/02

砂と霧の家

「砂と霧の家」★★★★★(盛岡フォーラム1)
2003年アメリカ 監督:ヴァディム・パールマン
原作:アンドレ・デビュース三世
出演:ジェニファー・コネリー ベン・キングズレー 
    ショーレ・アグダシュルー ロン・エルダード

父の形見である家に住むキャシーは、夫に去られ無気力な日々を送っていた。ある日、税金未納を理由にその家を強制退去させられてしまう。実は行政の手違いであったが、既に競売にかけられ、家を失ってしまうが…。

差し押さえ物件の競売に寄って引き起こされる悲劇というと、宮部みゆきの小説「理由」を思い出します。格安で入手できるというのは、安い分だけのリスクがあるということでしょうか。

本作がひたすら哀しいのは、特別に悪い人がいないというのに、登場人物全員がどんどん不幸になっていくところ。個々の思いに間違いはない。だが、その思いを実現させようとする行為そのものが結果として間違いであったのだ。

| | コメント (2) | トラックバック (13)

2005/03/01

太陽に灼かれて

「太陽に灼かれて」★★★★★(BS)
1994年ロシア フランス 監督:ニキータ・ミハルニコフ
出演:オレグ・メンシコフ インゲボルガ・ダクネイト
    ナージャ・ミハルコフ ニキータ・ミハルニコフ

1936年、ある日。突然ドミトリはマルーシャの家を訪れる。マルーシャはロシア革命の英雄コトフ大佐の妻となり、ナージャという娘がいた。二人は恋人同士であったが、ドミトリは突然、姿を消してしまった過去があったが…。1994年第47回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞。

劇中、何度が出てくる不思議な発光体。それは、ドミトリ(オレグ・メンシコフ)の復讐の炎、なくしてしまった恋人へ
の想い、家族の団欒へ憧れなど様々な感情が集積したものではないだろうか。

ナージャ(ナージャ・ミハルコフ)の無邪気な笑いと対比して鮮明に浮かび上がってくる運命の刃。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005/02/28

父、帰る

「父、帰る」★★★★★(盛岡フォーラム1)
2003年ロシア 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演:ウラジーミル・ガーリン イワン・ドブロヌラヴォフ
   コンスタンチン・ラヴロネンコ ナタリヤ・ヴドヴィナ

ロシアの片田舎。2人の兄弟、アンドレイとイワンは母とつつましくも幸せに暮らしていた。ある日突然、音信不通だった父親が12年ぶりに帰ってくる。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝、父は彼らを小旅行に連れ出すが…。

2003年第60回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞。

A・ズビャギンツェフ監督のインタビューを読んでいると、「本当に重要なことは語るのではなく示唆するだけでいい」との発言がありました。正にその言葉通りの映画でありました。

登場人物の背景説明が足りないとキャラクターに深みを欠くことになるのが一般的です。だが、本作はそれをぼやかすことによって宗教的にも政治的にも神話的にも表現されているように感じられ、奥行き深い作りになっている。映像も、音楽も実に効果的である。非常に力のある作品です。

本作撮影終了後、ロケ地だった湖で兄アンドレイ役のウラジーミル・ガーリンが不慮の事故で溺死する不幸な出来事があったとの事。映画の世界を引きずるような悲劇。

| | コメント (0) | トラックバック (11)

2005/01/26

風の歌が聴きたい

「風の歌が聴きたい」★★★★★(BS)
1998年日本 監督:大林宣彦
出演:天宮良 中江有里 勝野洋 入江若葉

昌宏は3歳のときに罹った風邪が元で耳が聞こえなくなった。中学生の時に文通している奈美子も聾唖者である。二人は様々な困難にぶつかりながら互いに励ましあい、結婚する。共に過酷なトライアスロンへの挑戦を始めるが…。

多彩な登場人物を細やかに描いており、奥行き深い話になっている。特に登場する場面こそ少ないが奈美子(中江有里)の姉が印象深い。彼女の孤独がさりげなく描かれ、大林監督の巧さを感じる。

そして、昌宏(天宮良)の父親の言葉が胸に残る。「耳が聞こえないのなら、目で見えるものを楽しめ」、「なくしたものを数えるな」など、大いに勇気づけられる名言であった。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005/01/18

バッファロー‘66

「バッファロー‘66」★★★★★(DVD)
1998年アメリカ 監督:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロ クリスティナ・リッチ
 ベン・ギャザラ アンジェリカ・ヒューストン

5年の刑期を経て出所してきたビリー。トイレを借りに寄ったダンススクールで偶然会ったレイラを拉致する。ビリーは両親に仕事で家を離れ、結婚したと偽っていたのだ。彼はレイラに妻の代役を頼むが…。

どうしようもないほど身勝手でわがまま、そして自意識過剰な男ビリー(V・ギャロ)。普通であれば唾棄したくなるような人物であるが、なんと魅力的に描かれていることか。

キング・クリムゾンなど音楽の挿入が絶妙な効果を与えている。

C・リッチのタップダンスが名場面。何度見ても楽しめる。

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2005/01/06

ナビィの恋

「ナビィの恋」★★★★★
(BS)1999年日本 
監督:中江裕司
出演:西田尚美 村上淳 登川誠仁 平良とみ

奈々子は都会の喧騒に疲れて久しぶりに粟国島へ帰ってきた。島までの小さな船には一人旅の福之助と伊達な白スーツの老紳士が同乗していた。その老紳士は60年前に奈々子の祖母ナビィが最も愛していた人だった…。

60年前は因習にしばれて別れることになった二人。時は経ち、島は他国の人々や文化を受け入れ、自由な風が吹き渡っている。

そしてナビィ(平良とみ)は旅立っていき、奈々子(西田尚美)は福之助(村上淳)と結ばれる。島の文化は新しい風に影響を受けつつ、大事な芯の部分は揺ぎ無い。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005/01/03

泥の河

「泥の河」★★★★★(BS)
1981年日本 監督:小栗康平
原作:宮本輝
出演:朝原靖貴 桜井稔 藤田弓子 田村高廣

日本が高度成長期を迎えようとしていた昭和31年。大阪・安治川の河口で食堂を営む板倉晋平のひとり息子・信雄。ある日、彼は対岸に繋がれているみすぼらしい船を見つけ、そこに住む姉弟と知り合うが…。

少年がイノセンスを喪失していく11歳の夏。信雄(朝原靖貴)は船で去っていく友を追い駆けて名前を呼び続ける。それは過ぎ去っていく少年時代を惜しむようにも聞こえる。

戦後10年、必死で生きてきた人々。ふと、実感する心の空白。「戦地で死んだ方が良かった」との述懐が重く響く。

人生の陰影を感じさせる美しいモノクロの映像。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2004/12/30

眠る男

「眠る男」★★★★★(BS)
1996年日本 監督:小栗康平
出演:役所広司 アン・ソンギ 
    クリスティン・ハキム 田村高廣

温泉の湧く山間の町・一筋町。その農家に、山から転落して以来、意識不明のまま眠りつづける男・拓次がいる。両親や同級生の上村は言葉を返すことのない拓次へ語りかけるが…。1997年第47回ベルリン国際映画祭で国際芸術映画連盟賞を受賞。

山々や自然を敬う昔ながらの生活に都市化の波が押し寄せてくる。精霊が宿る自然を無くしてしまうのではない
か? ”眠る男”は、そういう村の象徴であろう。

絵画のように落ちついた構図が美しい。この映像を見ているだけで、静かで素朴な心が呼び起こされる。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2004/12/13

コラテラル

「コラテラル」★★★★★
(盛岡フォーラム1)2004年アメリカ 
監督:マイケル・マン 
出演:トム・クルーズ ジェイミー・フォックス
    ジェイダ・ビンケット=スミス
    マーク・ラファロ

ロサンゼルスでタクシーの運転手を勤めているマックス。ある晩、乗客から多額のチップと引き換えに一晩の専属ドライバーとなり、今夜中に5箇所を回るよう依頼を受ける。だが、その男の正体はプロの殺し屋であった…。

さすがマイケル・マン。「ヒート」(1995)や「インサイダー」(1999)など大好きな映画を撮った監督だけはある。ただのサスペンス・アクションに終っていない。

アクションの合間に交わされるヴィンセント(T・クルーズ)とマックス(J・フォックス)の会話が秀逸である。二人の間に友情らしき感情が芽生えつつ敵対を続けるという微妙な関係を巧みに描いている。

| | コメント (0) | トラックバック (16)

2004/12/10

タクシードライバー

「タクシードライバー」★★★★★(DVD)
1976年アメリカ 監督:マーティン・スコセッシ 
出演:ロバート・デ・ニーロ ジョディ・フォスター
   ハーベイ・カーテル シビル・シェパード

ベトナム帰りのトラヴィスは夜の街をタクシーで流しながら、世界の不浄さに苛立ちを感じていた。大統領候補の選挙事務所に勤めるベッツィと親しくなるが、初デートでポルノ映画館に誘ったことで絶交されてしまう。やがて、闇ルートから銃を手に入れるが…。1976年第29回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。

抑えきれない破壊衝動。クシャクシャになった紙幣。何度観ても、見応えのある作品である。観ている内に、どんどんと疑問点がたまる。

トラヴィス(R・デ・ニーロ)がどうしてあんな行為に走るのか?その行動要因は常識では窺えないものがある。不眠症として残る戦争の傷。

| | コメント (1) | トラックバック (4)

2004/11/23

アンダーグラウンド

「アンダーグラウンド」★★★★★(BS)
1995年フランス ドイツ ハンガリー 
監督:エミール・クストリッツァ 
出演:ミキ・マノイロヴィッチ ミリャナ・ヤコヴィッチ 
    ラザル・リストフスキー スラヴコ・スティマツ

1941年、セルビアの首都ベオグラード。ナチス・ドイツがユーゴ王国を侵略。マルコはクロを誘い、チトーの共産パルチザンに参加する。マルコは自分の祖父の地下室に弟やクロの妻などをかくまう。やがて重傷を負ったクロも地下室に運び込まれてくるが…。

旧ユーゴの歴史をきちんと把握している訳ではないので、単なる直感でしかありません。このドラマに出てくる人々は、ユーゴの国々を象徴しているのではないかと。

マルコとクロは、共にナチス・ドイツと戦ってきたが、戦後、マルコはクロを地下生活に追いやり、情報操作を続けて支配続ける。20年間地下生活を続けるというのは現実的でありませんが、そこは寓話的描写として納得できます。

やがて、二人は道を違えていきますが、そこに悲惨なユーゴ内戦を連想させます。ラストシーンはなくなって
しまった国を追悼するようで、哀しく残り続けます。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2004/11/09

スキャンダル

「スキャンダル」★★★★★(宝塚シネ・ピピア)
2003年韓国 監督:イ・ジョスン 
出演:ペ・ヨンジュン イ・ミスク チャン・ドヨン イ・ソユン

18世紀末、李王朝末期の朝鮮。政府高官ユ長官の妻チョ夫人は子宝に恵まれず、長官は16歳のソオクを側室に迎えることを決める。チョ夫人は従兄弟のチョ・ウォンにソオクを誘惑しろと持ちかける。だが、チョ・ウォンは簡単すぎてつまらないと一蹴。彼は別の女性を狙っていたのだ…。

旅先の宝塚の映画館で鑑賞。

とにかく美術が素晴らしい。衣装から装身具、調度品にいたるまで、美しさに陶然となりました。

また、その小道具の使い方が非常にうまい。とくにチョン・ヒヨン(チャン・ドヨン)に巻かれた赤い首掛が印象深い。彼女の燃える恋心の象徴であったと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2004/11/05

インサイダー

「インサイダー」★★★★★(BS)
1999年アメリカ 監督:マイケル・マン 
出演:アル・パチーノ ラッセル・クロウ
   クリストファー・プラマー ダイアン・ヴェノーラ

人気報道番組「60ミニッツ」のプロデューサー、バーグマンのもとに匿名の書類が届けられる。それは、あるタバコメーカーの極秘ファイルだった。彼はその書類の意味を探るうち、ワイガンドという人物に行き当たるが…。

「ヒート」(1995)でもそうだったのですが、プロフェッショナルな男達の秘術を尽くした攻防が見事でありました。

自分の信条のため、妥協することなく戦い続ける男の輝き。後半のバーグマン(A・パチーノ)の姿に、惚れ惚れします。

最後になって<インサイダー>のタイトルが重く響いてきます。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2004/11/04

ヒート

「ヒート」★★★★★(DVD)
1995年アメリカ 監督:マイケル・マン 
出演:アル・パチーノ ロバート・デ・ニーロ 
    ヴァル・キルマー ジョン・ヴォイド

犯罪のプロフェッショナル、ニールは、仲間達と現金輸送車を襲い有価証券を奪う。捜査にあたるロス市警のヴィンセントは、少ない手掛かりから次第にニール達へ近づいていく。ニールはイーディと出逢い、次の銀行強盗を最後に堅気の暮らしに入ろうと決意していたが…。

何度観ても、大好きな作品です。心に染み入る名場面の連続で、実に得がたい一作である。複数のカップル達が
登場してきますが、情感豊かに描かれております。

特に更生しようとする中、ニール(R・デ・ニーロ)に誘われドライバーになった男とその彼女のカップルが悲しかったなぁ。出番こそ少なかったですが、胸に痛みが走るエピソードでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)