ベストテン発表

2012/01/03

2011年ベストテン

・洋画部門
01 リメンバー・ミー
02 未来を生きる君たちへ
03 マネーボール
04 英国王のスピーチ
05 ヒア アフター
06 ザ・ファイター
07 ブルーバレンタイン
08 愛する人
09 アンストッパブル
10 パレルモ・シューティング

・邦画部門
01 冷たい熱帯魚
02 一枚のハガキ
03 八日目の蝉
04 まほろ駅前多田便利軒
05 奇跡
06 マイ・バック・ページ
07 アントキノイノチ
08 婚前特急
09 劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ
10 大鹿村騒動記

最近はツイッターばかりとなってしまい、ココログの更新ができないでおりますが、ベストテンぐらいは残しておきたいので、久々にアップしてみます。

2011年を振り返れば、東日本大震災を抜きには語れない。毎年、様々な災害に見舞われる日本列島であるが、死者1万5千人以上、行方不明者3千人以上という想像を絶する被害をもたらした。さらに、原発事故も引き起こすこととなり、復旧にはどれだけの時間がかかるのか、全く見通せない事態に陥っている。暗澹たる1年でありました。

映画界でも直接的にして、間接的にしろ大影響を被ることとなり、興行収入も減少することになります。しかし、楽天イーグルスの嶋選手に倣えば、“映画の底力”を発揮させてくれた1年であったとも言えるのです。どんな時でも、映画は人々から求められるものであり、誇りをもって2012年も秀作を生み出して欲しいと祈念いたします。

洋画の1位の『リメンバー・ミー』は、こうした2011年に相応しい作品。とにかく、終盤の展開に驚かされ、映画の様相が見事に一変する。2位の『未来を生きる君たちへ』は、昨年の『息もできない』のように、暴力の連鎖が何故起こっていくのか痛烈に描いた作品。子供たちに語ることの難しさも感じました。3位の『マネーボール』は、あまり日の目の見ないメジャー・リーグのジェネナル・マネージャーを主人公としたところが新鮮。野球界の深部を見せてくれます。4位の『英国王のスピーチ』は、コンプレックスをいかに克服していくか、その過程を興味深く描く。5位の『ヒア アフター』も、死後の世界というクリント・イーストウッド監督には合わないような題材と思わせながら、きちんとまとめてしまうところは流石。生き残った者の負い目を静かに描いています。

6位の『ザ・ファイター』、7位の『ブルーバレンタイン』、8位の『愛する人』と、家族とは、夫婦とは、という普遍的な問いかけを投げかげてくれる作品群。愛するだけでも駄目、憎しみ合っても駄目ということを思考させる。9位の『アンストッパブル』は、あまり話題にならなかったが、職業人としての誇りと心意気を見せてくれ、気持良い作品。10位の『パレルモ・シューティング』は、異国の街を彷徨い続ける夢幻性が心地よく、デニス・ホッパーの追悼の意を込めて入れました。

日本映画の1位は『冷たい熱帯魚』。園子温監督は意欲作、話題作を撮り続けているが、正直あまり好きな作品は少ないのである。だが、この映画は別格。何故、犯罪に巻き込まれていくのか、この過程が克明に描かれている。人物造形も巧みであれ、でんでんや黒沢あすかの笑い声が不気味に残り続ける。

2位の『一枚のハガキ』は、新藤兼人の最後の監督作品ということだが、若々しいエネルギーに満ち溢れ驚かされた。3位の『八日目の蝉』、4位の『まほろ駅前多田便利軒』は傑作小説を見事に脚色させた。小説の世界を見事に映像化し、より深化させている好例である。5位の『奇跡』も是枝監督の子供の使い方のうまさが光る一編。奇跡は起きるものではなく、起こすものである。

6位の『マイ・バック・ページ』は青春の残滓を苦々しく描いた作品。夢や希望が叶うことは少なく、敗北の味を噛みしめて生きていかねばならない。7位の『アントキノイノチ』も、高校生という多感なときに過酷な状況に置かされて道を外れてしまった二人のドラマ。傷を受けたものしか分からない共感が二人をメインロードへ導いていく。

8位の『婚前特急』、9位の『ロックンロールは鳴り止まないっ』は新鋭監督の秀作。完成度は高くないかもしれないが、勢いの良さと今後の期待につなげる。10位の『大鹿村騒動記』は、原田芳雄の追悼の意を込めて。

2012年も素晴らしい映画がたくさん待っています。できるだけ映画館に出かけたいものです。

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2011/01/03

2010年ベストテン

・洋画部門
01 息もできない
02 瞳の奥の秘密
03 白いリボン
04 インビクタス 負けざる者たち
05 ヒックとドラゴン
06 冬の小鳥
07 しあわせの隠れ場所
08 シングルマン
09 17歳の肖像
10 フローズン・リバー

・邦画部門
01 春との旅
02 おとうと
03 カラフル
04 告白
05 悪人
06 パレード
07 孤高のメス
08 BANDAGE バンデイジ
09 君に届け
10 キャタピラー

2010年を振り返れば、3D映画の普及もあって興行収入的には進捗する見込みのようである。だが、昨年来から続く洋画苦戦の状況は変わっておらず、配給会社の倒産に続き、とうとう『恵比寿ガーデンシネマ』の閉館など劇場自体が淘汰される状況に陥っている。アメリカ、韓国、ヨーロッパとも作品の質で衰えているとは思えないが、3大映画祭の最高賞を獲得した映画でさえ、配給が付かない例も増えてきている。映画文化の危機は今年以降も続くのであろうか。大いに懸念される。

洋画の1位から5位には、暴力、不寛容、憎悪という負の連鎖から生まれる社会とは何か大いに思考させられた作品を選びました。正確な事実を把握し、力ある者たちの圧制からいかに逃れるべきか、考えなければなりません。人生という道をいかにして歩んでいけばよいか思いをはせたのが、6位から10位の作品です。時に間違った選択をしてしまうこともある。だが、どこかでやり直せる機会もある筈です。そのチャンスをしっかり見極め、逃さないようにしたいと思います。

1位の『息もできない』は、暴力の連鎖が何故起こっていくのか、身を切るような鋭利さで伝わってくる。自分ではどうにもできない暴力衝動に自ら滅びていく男の最期に訪れた孤独な心の交流には大いに泣かされた。観賞後、今年のベスト1と確信した。

2位の『瞳の奥の秘密』は、アルゼンチン映画の底力を見せつけられた作品。25年前の未解決殺人事件を追い掛けることにより、封印していたはずの愛を甦らせていく巧みな展開の脚本と、絵画のような力強い映像が素晴らしかった。

3位の『白いリボン』は、心の闇を痛烈に炙り出すミステリー・ドラマ。とはいえ、犯人探しが主題ではない。誰がではなく、何のために事件を起こしているのか、分からないところが底知れぬ恐怖を感じる。

4位の『インビクタス 負けざる者たち』は、またもクリント・イーストウッド監督によって放たれた傑作。アパルトヘイト撤廃後も人種間対立が残る南アフリカ。自国開催のラグビーW杯を使って一つにまとめようと画策するネルソン・マンデラ大統領の雄姿が鮮やかに浮かび上がる。

5位の『ヒックとドラゴン』は、果てしない憎しみの戦いを続けるバイキングとドラゴンの姿を通して、戦争の無意味さを教えてくれる。洗脳されることによって何も見えなくなってしまう。互いを知ってしまえば、共存の道は開けてくる。

6位の『冬の小鳥』は、いじらしい少女の姿が深く心に焼き付いています。最愛の父親に捨てられたことが認められず、かたくなに心を閉ざしてしまう苦しみ。様々な児童養護施設の現実を受け入れ、人生を歩み出す姿に感銘を受けました。

7位の『しあわせの隠れ場所』は、アメリカン・ドリームが皆無ではないことを教えてくれる一篇。とは言え、それは奇跡的とも言える出会いの数々がもたらすものであり、成功のチケットを勝ち取るには、相当の困難が付きまとう現実は変わらない。

8位の『シングルマン』は、ファッション・デザイナーの巨匠トム・フォードが映画においても非凡な手腕を発揮させた一作。愛する者を失い、深い絶望の中で自死を決めた男が送る最後の一日を美しい映像で丁寧に描写していく。映像美に圧倒された。

9位の『17歳の肖像』は、真の教育とは何かを大いに考えさせられた。退屈な毎日にうんざりする好奇心旺盛な少女が洗練された30代の男の恋愛を通して、夢にまで見た刺激的な日々を過ごす。だが、そんな時間は僅かなものであった。その経験の果てに彼女は何を学び取ったのか、その心の軌跡がじっくりと描かれている。

10位の『フローズン・リバー』は、幸福を手にするために何をしなければならないのか、教えられた作品。彼女にとって新しいトレーラーハウスは本当に必要だったのか。密入国の違法な仕事に手を染めていく経験を通して、何を守り、何を犠牲にするのか、彼女は自ら判断する。その清々しい心は子供たちにも伝わっていくだろう。

続いて邦画について。昨年は候補作を10作品集めるのさえ悩んでしまったものであるが、今年は全く間逆である。ベストテン級の作品を何作も見落としているにも関わらず、候補作が20作品を越えてしまった。それぐらいあると、ベストテンを組むのも楽しい。大いに順番を入れ替えながら、悩んでまとめたベストテンです。

1位から3位は、家族との関係を静かに見つめた作品で揃えました。人間だから、良いことばかりではなく、悪いときもあります。そんな問題児を突き放さず、僅かな繋がりを温かく守る大切さを感じました。それも程度問題であり、底知れぬ悪意も現実にはあることを教えてくれるのが、4位から6位の作品。間違った選択でしたとでは済まない犯罪行為に怒りと恐怖を覚えます。7位から9位は、口コミのありがたさに感謝したい映画です。予告編だけ見ていたらパスしただろうと思える作品ばかり。信頼すべき目利きたちの評判を聞いて観賞したが、見逃さなくて良かった! 10位は若松孝二監督の新作が見られる喜びだけで別格の扱いです。興行的にも成功させ、次作は三島由紀夫を撮るとのこと。大いに頑張って欲しい。

1位の『春との旅』は、あまりに無茶とも言える疎遠の親類縁者を訪ねる旅に出た老漁師と孫娘の話。兄弟たちとの再会を通して、浮かび上がってくる家族の過去。それでも旅に出るということは、自分と向き合い前へ進む切っ掛けにはなる。この映画の感想をtwitterに上げたところ、すぐに小林政広監督から返信が来たことが、とても嬉しかったです。

2位の『おとうと』は、しっかり者の姉と問題児のまま成長しない弟の再会と別れの日々を、山田洋次監督らしい笑いと涙で切なく描いております。ポイントは吉永小百合と加藤治子の関係。ラスト・シーンの素晴らしさによって2位といたしました。

3位の『カラフル』は、天国に向かう主人公が望まないまま、再挑戦のチャンスをもらい自殺した少年の体を借りて新しい生活を始める物語。家族や周囲の人々との交流を得て、灰色の世界と思えたものは、色彩豊かな世界であることに気付いていく。原恵一監督は今後も注目したい。

4位の『告白』は、担任クラスの生徒たちに娘を殺された女性教師が仕掛ける衝撃の復讐劇。湊かなえの原作小説も面白かったが、それをさらにブラッシュアップした中島哲也監督の脚色が素晴らしい。今年の脚本賞に推したい。松たか子も昨年主演女優賞を総なめにした『ヴィヨンの妻』よりさらに飛躍を遂げている。

5位の『悪人』は、殺人を犯してしまった青年と孤独に押し流される女との逃避行のドラマ。主演の妻夫木聡も深津絵里もいいのだが、脇を添える岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明の四人が素晴らしい。本作品だけでなく他の映画でも存在感を発揮し、日本映画を盛り上げた功労者たちだと思う。

6位の『パレード』は、共同生活を送る若者たちの緩やかな日常が新たな同居人によって崩壊していく様を描く。この映画についての解説やあらすじを読んで、どこかポイントがずれているような感じがして仕方ない。“本当の自分”を装うことで共同生活を守りたかったのは、直輝(藤原竜也)だけだったのではないかと思う。

7位の『孤高のメス』は、常識に囚われないひとりの医師が、その当時また法律に認められない脳死肝移植に挑む迫真の医療ドラマ。こんなお医者さんがいるなんて例外中の例外。助かる命も助からない日本医療の現実を思い知らされる。

8位の『BANDAGE バンデイジ』は、1990年代のバンドブームの裏側を熟知する小林武史監督が描く音楽業界ドラマ。音楽への情熱や成功への野心に流されスタイルが定まらない男と、ひょうなことからマネージャーを引き受けることになった少女の関係を、ありきたりな恋愛感情で描かれていないところが斬新だった。

9位の『君に届け』は、意志伝達が上手くとれないヒロインが、初めての友だちや恋人を通して成長する姿を爽やかに描いた一篇。あらすじだけで追いかければ、典型的な少女マンガの話であるが、多部未華子演じるヒロイン像がかなりユニーク。見た目が暗く『リング』“貞子”とあだ名され、クラスメイトたちから孤立してしまう姿は、極めて異様なものだった。

10位の『キャタピラー』は、四肢をなくし顔が焼けただれた無惨な姿で帰還した夫と介護の日々を送ることになる一組の夫婦を通して戦争の悲劇を伝える作品。隅々まで若松監督の思いがにじみ出た映画であると思う。“軍神”なんている訳がない。

2011年も素晴らしい映画がたくさん待っています。できるだけ映画館に出かけたいものです。

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2010/01/03

2009年ベストテン

洋画部門
1 母なる証明
2 チェンジリング
3 私の中のあなた
4 グラン・トリノ
5 縞模様のパジャマの少年
6 イングロリアス・バスターズ
7 ジュリー & ジュリア
8 レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで
9 キャピタリズム マネーは踊る
10 マイケル・ジャクソン THIS IS IT

邦画部門
1 フィッシュストーリー
2 サマーウォーズ
3 ディア・ドクター
4 空気人形
5 ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ
6 劔岳 点の記
7 沈まぬ太陽
8 誰も守ってくれない
9 ポチの告白
10 風が強く吹いている

2009年は興業的に洋画苦戦の年と言われるが、作品の質では劣っているとは思えず、ベストテン候補作をざっと選んでみても、軽く20タイトルを越えてしまう。そこから10作品選ぶのに大いに苦労しました。字幕離れ、ミニシアター離れと、洋画を取り巻く環境は厳しいですが、洋画はまだまだ侮れないと感じさせた一年でありました。

さて、当初、「チェンジリング」、「グラン・トリノ」を見たときに、今年もクリント・イーストウッド監督作品の1-2フィニッシュで決まりかと思っていましたが、それを越える作品が出てこようとは。大いなる驚きと完成度の高さに感服したのは「母なる証明」でありました。冒頭のシーンが象徴しているように、見る者の予断を大きく裏切る展開が続く、全編飽きることはありません。ポン・ジュノ監督はさらに進化しております。

1位「母なる証明」、2位「チェンジリング」と並びが良いので、母性愛三部作として3位には「私の中のあなた」を。どんな犠牲を払おうとも我が子を守るために戦い続ける母親たちの姿が心に焼き付いて離れません。

4位「グラン・トリノ」 はマカロニ・ウェスタンやダーティ・ハリーのようなアクション・スターを演じ続けてきたクリント・イーストウッド自身が暴力の連鎖を断ち切る主人公を演じる。その意味は非常に重い。

5位「縞模様のパジャマの少年」は、なんと痛烈なラスト・シーンであるか。終盤からその展開が読めてくるのであるけれど、悲劇を止められない無力感を呪わずにはいられません。そのタイトルの意味が深く響いてきます。

6位「イングロリアス・バスターズ」は、タランティーノ監督の最高傑作ではないか。会話劇にあれほどのサスペンス感を持たせたことに感心する。

7位「ジュリー & ジュリア」と8位「レボリューショナリー・ロード」は好対照に位置付けられる。理想と現実の差を埋めようとするヒロインの出発点は同じなのに、この到着点の違いは何か。理想を手にするためには何をしたら良いかを考えさせられました。

9位「キャピタリズム」は、この世の中の仕組みを理解することの大切さを痛感。政治経済ニュースを額面的ではなく、裏の意味を考えなければいけない。中流家庭を崩壊させるアメリカ社会から何を学び取るかだ。

10位「THIS IS IT」は、マイケル・ジャクソンの偉大な才能を再認識。奇人変人でもなく、過去のスターでもない。最後までアーティストであり続けたのだ。その死去が今更ながら惜しまれてならない。

続いて邦画の総評であるが、洋画とは逆に、候補作を10タイトル集めるのでさえ大いに悩んでしまった。ベストテン級の作品を何作も見落としていることもあるのだけれど、それを差し引いても邦画は質的苦戦と言わざるを得ない。毎年、ベストワンはこれしかないという風格を感じさせる作品があるものだけれど、そういう強いインパクトが感じられなかった。来年に期待したい。

「フィッシュストーリー」は、絶対的な作品がない中、気持ちの良いラストに惹かれて1位に選びました。誤訳から始まった「フィッシュストーリー」がロック・ナンバーとなり、巡り巡って地球を救うことになっていく展開が実に痛快。表現者たちに理想と言ってよい。伊坂幸太郎の小説が続々と映画化されているが、その中でもトップに位置すると思う。

2位「サマーウォーズ」は、アナログ世界もデジタル世界も両立してこそ、人の生活は安定していくのではないかと教えてくれる。それぞれのフィールドで戦う主人公たちに感動する。

3位「ディア・ドクター」、4位「空気人形」は、西川美和と是枝裕和の師弟コンビを並べてみる。「ディア・ドクター」を1位にしても良かったのではあるが、もはや西川美和監督ならこれぐらい当たり前という期待度が高い。そんな期待を大きく突き抜けてしまったポン・ジュノとの差がここにある。

5位「ヴィヨンの妻」は、風格を感じさせる根岸吉太郎監督作品。だが、数々の主演女優賞を獲得した松たか子の熱演を認めるものの、よりイメージを一新するような飛躍を遂げて欲しいという思いも残る。

6位「劔岳」、7位「沈まぬ太陽」は大変な労作。映画としての満足度はいささか低いのだけれど、製作されたこと自体を賞賛したい。

8位「誰も守ってくれない」、9位「ポチの告白」は警察の知られざる一面を描いた社会派ドラマ。警察官といえども、当たり前であるが、生身の人間。社会正義の使命感だけを求めてはいけないのであろう。

10位「風が強く吹いている」は爽やかなスポーツドラマ。なんといっても小出恵介が絶品。彼の言葉は真実味を持って聞く者へ伝わってくる。時間の制約もあって、個々の人物背景が描ききれていないのは仕方ない。完成度は高くないかもしれないが、心地よい風を感じるようであった。

2009年は洋画87本、邦画36本の123本を劇場鑑賞。2010年も素晴らしい映画に出会いたいものです。

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2009/01/04

2008年ベストテン

2008年は、盛岡から大阪へ移り、新たな生活を始めたということで記憶に残るという一年であった。新たな仕事の環境や引っ越しに関わる様々な用事のため、休日でも時間がなくなってしまうこともしばしば。前年と比べて鑑賞本数は少なくなったが、それでも洋画81本、邦画36本の117本見ることができた。見る機会が減った分、これはと思う作品を厳選しているので、大いに充実感を得られたと思う。その一方、例年、アクションやコメディーを主眼とする裏ベストテンも組んでいたのだが、作品をそろえきらず、今年は見送ることにした。
 2008年は、ガソリン価格の乱高下が象徴するように経済環境が大きく激動した一年でもあった。様々に忍び寄る暗い影の中、家族、そして、人と人との絆を見つめ直す映画に心を動かされ、その当たりを主眼にベストテンを選んでみた。

●外国映画
01 ラスト、コーション
アン・リー監督の映像美に酔いしれる。格調高いとはこのことではないだろうか。時代の波の翻弄されるヒロイン。その任務の末に見つけた禁断の愛。彼女が選ぶ最後の道に、人と人の絆の不可思議を感じざるを得ない。

02 アメリカン・ギャングスター
犯罪者と警察官。正反対の人間ながら、二人とも仕事に関しては非常に勤勉で、どこか共通する資質を感じさせる。仲買人を通さず、直接製造者から仕入れて消費者に販売するというシステムを麻薬密売組織に持ち込んだアイディアに感心した。

03ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ダニエルとイーライ。ふたりの間には愛と憎悪が複雑に絡み合った感情が放電する。似たもの同士であるから、ここまで反発するのではないか。プラス面とプラス面が接着するように。その臨界点がラスト・シーンだと思う。

04 チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
単に一人のお気楽議員が美しい大富豪と出会い、思いもかけない偉業を成し遂げる話ではない。彼はそれ以前から、アフガンの問題に関心を持ち、それを行使できるだけの政治力を持ち合わせていた。それでも、失敗してしまうところに、個人の限界を感じる。

05 フィクサー
人は何をきっかけとして良心に目覚めるのだろうか。利潤優先の資本主義社会では、利益という目的のためには、どんな社会的悪も正当化される。その繰り返しの果てには、何も残っていかないという不毛。マイケル・クレイトンに明日はあるのだろうか。

06ノーカントリー
何故、モスは巨額の金を手にしたのに、現場に戻っていったのか。ここにも、不思議な良心の発露を見る。凄惨な殺し合いと逃走劇を見事な映像でつづったコーエン兄弟の最高傑作。そこでいつまでも残るのは、モスの良心だった。

07この自由な世界で
不況風が強まった2008年の暮れに見ると、その切迫がより強く感じられた。この自由とは何か。生き残るために何をしてもいいが、すべてに自己責任をともなうことを大いに考えさせられた。家族と自分を守るために、アンジーは一線を越えていく。

08 つぐない
まだ恋も何か知らないような思春期の少女。彼女の一面的な思い込みは、二人の恋人の生涯を破綻させてしまう。その意味を知ったとき、彼女はどんな贖罪を行えばいいのか。自分の持てる能力を通して、何かを続けることに意味があると感じる。

09潜水服は蝶の夢を見る
昨日まで当たり前だったことが、今、当たり前ではなくなる。何かを失うことは、違う何かを得る機会だ。そのことを忘れなければ、常に道は開けてくる。視覚と聴覚以外、すべて奪われていることを再現させるカメラが素晴らしかった。

10 ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
どうして、彼らはここまで生き残ってこられたのだろうか。その答えがこの映画の中にある。60歳を過ぎているとは思えないライブ・パフォーマンスの数々に、40年以上トップバンドでいる真髄を見る思いだ。

●日本映画
01歩いても 歩いても
長男の命日に家族が集まるという、ただそれだけの話であるが、是枝裕和監督は絶妙とも言える語り口で家族の一日を追いかける。何気ない会話の節々に、この家族の過去が次々と明らかにされていく見事な脚本だった。

02アフタースクール
「運命じゃない人」は決してまぐれ当たりではなかった。内田けんじ監督は期待に違わぬ面白い映画を作ってくれた。いい人だったと思わせておいて、実は悪い人だったというありきたりなオチでない、もう一歩進めた物語の展開に感嘆した。

03ぐるりのこと
もし、法廷画家という仕事をしてなければ、カナオは翔子を支えられなかったのではないだろうか。その時代の世相を象徴するような凶悪事件の裁判を傍聴することで、人には何が大切なのかを知らず知らずの内に学んでいったと感じる。

04トウキョウソナタ
現実感があるようで、どこか儚げなラスト・シーン。健二の見事なピアノ演奏は誰かの夢なのではないか。崩壊してしまった家族が再生することは容易なことではないであろう。果たして彼らの絆は健在なのか。

05人のセックスを笑うな
主人公みるめを翻弄するユリ。彼女はいったい何を考えているか、さっぱり分からないところが良い。理不尽に思えることが、この世の中にはたくさん起こる。それにどう対処していかねばならないか。その道を見つけることが一つの成長であると思う。

06百万円と苦虫女
深い人間関係を築くことを拒否し、ひっそりとただ一人だけで生きていこうとする鈴子。しかし、社会で暮らすということは、それを許しておいてくれない。そして、旅を続ける。彼女に終着駅が見つかるのだろうか。

07 ハッピーフライト
新人が失敗を重ねながら、その職業の大切さを学んでいくありきたりなドラマになっていないのが良い。綿密に取材された圧倒的なディティールと、映画ながらの脚色が見事に融合した快作。見ていて元気になる作品だ。

08 クライマーズ・ハイ
職業倫理とは何か、激しく問いかける作品である。“チェック、ダブル・チェック”と確認できる規範がどれだけ持ちえているかで、その職業の誇りを知ることができる。食品偽装事件が多発した2008年。その企業社会への批判とも感じられた。

09 青い鳥
こちらは現代の学校教育のあり方に波紋を投げる作品であったと思う。いじめ問題とどう向き合うのか。罪とは何か、罰とはどうあるべきか、考えさせられるポイントが多い。阿部寛が好演。「歩いても 歩いても」と合わせて主演男優賞をあげたい。

10実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
作品の内容も圧巻であったが、本作品を作り上げた若松孝二監督の熱情にほだされてしまう。これを撮らなければ死に切れないという思いを、どれほどの人が抱いているだろうか。映画は産業の一翼でもあるが、それだけはない心意気を感じた。

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2008/01/01

2007年ベストテン

2007年を総括したときに、今年もドキュメンタリー映画の秀作が多く公開されたことが目を引きます。こうした作品が当たり前のように映画館で上映されることをまず喜びたいと思います。

その映画を見て初めて知る事実も多々あり、自分の視野の狭さを痛感することの繰り返しでありました。ベスト10の選出にあたり、一時はこうしたドキュメタリー映画をずらりと並べるようなランキングも考えました。

しかし、あえて外す事にしました。驚愕の事実は事実として、それらを物語に昇華させていく中で、映画製作者の力量が問われていると思います。そうしたフィクションの力を私は評価することにしたのです。

さて、個々のベスト10を選んだポイントですが、「その時、何を選択したか」という人生の岐路を描いた映画を集めてみました。人は生きていくなかで、意識的にしろ無意識的にしろ様々な岐路に立たされます。その選択の中で、幸福になるか不幸なるかが決まっていきます。

運命は選びとるものであると感じさせてくれた20作品です。

●外国映画
01 グッド・シェパード
エドワードは耳の不自由な女性ローラとの別れを選び、諜報活動の闇に堕ちていく。久々に風格を感じさせる大作でした。167分の上映時間、固唾を飲んで展開を見つめました。

02 ツォツィ
ツォツィは強奪した自動車の中に赤ん坊を見つけたとき、人間的な感情を取り戻していく。これまで見たことのない南アフリカのスラム街の描写が圧巻でした。

03 善き人のためのソナタ
ヴィースラーは芸術家の監視を続けながら、監視国家の欺瞞に気付いていく。ソナタはひとつのきっかけでしかない。人の心は日々の生活の中から定まっていくのである。

04 約束の旅路
シュロモはエチオピアの内紛から逃れるためユダヤ人になりすましイスラエルに向かう。生きるとは衣食住が足りているだけでは満たされない。自分のアイデンティティを求めるシェロモが悲しい。

05 サン・ジャックへの道
母親の遺産相続のため聖地巡礼の旅に渋々向かった仲の悪い三兄弟。彼らが旅のなかで見つけたものは。生きていると、無意識の内に様々な荷物を背負い込んで身動きできなくなることもある。

06 バベル
モロッコ、アメリカ、メキシコ、日本。見えないところで繋がっていく運命の不思議さ。孤独な魂が生み出す悲劇と喜び。菊地凛子のアカデミー賞ノミネートは快挙でした。

07 ストリングス 愛と絆の旅路
ハル王子は父の仇を探す旅のなかで、復讐と愛の意味を見つけていく。いくつもの糸で操られたマリオネットの世界。その舞台設定が秀逸でした。

08 ミルコのひかり
両目の視力を失ったミルコは全寮制の盲学校で古いテープレコーダーを見つけ、新たな物語を作り出していく。視力を失ったことは悲劇である。だが、別な何かを始める出発点でもあった。

09 世界最速のインディアン
バート・マンローは62歳でニュージーランドからはるばるアメリカへ渡り世界最速記録を打ち立てた。夢を追い続けたことも素晴しいが、その実現は多くの人たちの善意と援助に寄るものだ。

10 ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団
ハリーはヴォルデモート卿の陰謀により窮地に立たされるが、自らの意志力で乗り越えていこうとする。シリーズ5作目にして、もっとも感銘を受けた。

●日本映画
01 それでもボクはやってない
徹平は身に覚えのない痴漢容疑で逮捕され、長期にわたる裁判の道を選んでいく。えぇ、日本の司法制度はこんな状況なのという驚愕を覚えた衝撃作。周防正行監督はやはり凄い。

02 河童のクゥと夏休み
康一は学校帰りに不思議な石を拾うが、なんと河童の子供であった。クゥと名付けられ河童のため、康一とその家族は様々な試練に立ち向かっていく。もっとも評価されて欲しいアニメ作品。

03 めがね
タエコはかたくなに拒んでいたサクラの氷あずきを食べて、世界を一新させる。たそがれの世界は、微妙な距離感で成り立っていた。来るも、去るのも自由であるが、永遠には居られない。

04 夕凪の街 桜の国
父の行動を不審に思って後をつけた七波は、そのまま広島までやって来てしまう。原爆の悲劇は、今尚続いていることを実感する。けっして、仕方ないでは済まされない。

05 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
オトンに愛想を尽かしたオカンは幼いボクを連れ、小倉から筑豊の実家に戻る。オカンの生き方は簡単なようでいて、なかなか真似できないものである。だから、胸を打たれる。

06 アヒルと鴨のコインロッカー
大学入学のため引っ越してきた椎名は隣人の河崎という不思議な青年に声を掛けられる。伊坂幸太郎の原作も読んでみましたが、見事に脚色しております。ラストシーンなど映画版の方が素晴しい。

07 魂萌え!
急死した夫が長年浮気していたことを知り驚愕する敏子。身勝手な長男の振る舞いにも怒り、家を飛び出してしまうが。自分の人生を見つめてやり直すのは、いつからでも始められる。

08 幸福な食卓
佐和子は家族崩壊危機の中でも朝の食卓だけは大切にしていたが、ボーイフレンドの大浦の事故死に心を塞いでしまう。悩み傷つきながらも成長していくことを象徴したラストシーンが素晴しい。

09 天然コケッコー
中学2年の右田そよは都会から来た転校生の大沢広海に心波立つが。もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やあ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう。この台詞が良かったです。

10 あしたの私のつくり方
高校生になった寿梨はいじめにあっていた小学校時代の同級生日南子に携帯メールを送るようになる。自分自身を肯定することがいかに難しいか。本当の自分を求めて揺れ動くさまを静かに描写。

●エンターテインメント度を重視した裏ベスト
01 アポカリプト
02 ボーン・アルティメイタム
03 ダイ・ハード4.0
04 ドリームガールズ
05 ヘアスプレー
06 ハッピー フィート
07 デス・プルーフ in グラインドハウス
08 キサラギ
09 スキヤキ・ウェスタン・ジャンゴ
10 バブルへGO!! タイムマシンはドラム式

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2007/01/03

2006年度ベストテン

    外国映画
 1位 硫黄島からの手紙
 2位 父親たちの星条旗
 3位 ユナイテッド93
 4位 シリアナ
 5位 ナイロビの蜂
 6位 ホテル・ルワンダ
 7位 戦場のアリア
 8位 ミュンヘン
 9位 SPIRIT
10位 クラッシュ

日本映画
 1位 武士の一分
 2位 花よりもなほ
 3位 ゆれる
 4位 フラガール
 5位 手紙
 6位 かもめ食堂
 7位 間宮兄弟
 8位 シムソンズ
 9位 博士の愛した数式
10位 嫌われ松子の一生

    裏ベストテン(娯楽性を重視した作品)
 1位 007/カジノ・ロワイヤル
 2位 トゥモロー・ワールド
 3位 16ブロック
 4位 トランスポーター2
 5位 Vフォー・ヴェンデッタ
 6位 デスノート the Last name
 7位 ダ・ヴィンチ・コード
 8位 GOAL
 9位 カサノバ
10位 RENT/レント

「お前は敵を知っているのか」

「硫黄島からの手紙」の中で西中佐が部下に問い掛ける。奇しくも「出口のない海」でも戦争に向かう息子へ父親がそう語りかける場面があった。

戦争とは何か、何故、戦わなくてはいけないのか。2006年はその事を考えさせてくれる秀作が多く、それらを中心にベストテンを選びました。

ひとつの価値観に縛られて盲目的に敵を憎むことの愚かしさ。戦う前に「自分は敵を知っているのか」のかと自問することで、どれだけの悲劇を防げたのであろうか。

クリント・イーストウッド監督の硫黄島2部作は、日米双方の視点から硫黄島の戦いを描くという画期的な試みによって、どちらか一方が善であり、どちらか一方が悪であるというような単純な線引きをすることなどできないことを鮮明にしました。そうしたことを知らずに、双方が多大な犠牲を払ってしまったことを忘れないでいたい。

なぜ、敵の姿を憎しみで隠そうとするのか。その方が体制側には都合の良いことなのだ。戦争とは善悪の戦いではなく経済的側面の方が強い。戦えば得をするから。戦わなければ損をするから。それだけのことである。それは国家権力の損得勘定であり、戦場に駆り出される一般庶民には何の関係もないことだ。それをごまかすために、様々な誤魔化しが行われる。

「ホテル・ルワンダ」では、敵を人と思わず害虫であると見なしたとき、恐ろしい虐殺が起きてしまうことを教えてくれた。

「戦場のアリア」では、徹底的に敵を憎むように子供たちを洗脳していく冒頭シーンが恐ろしい。憎むべき敵であろうとも、クリスマス休日を一緒に過ごしてみれば、同じ人間でしかないことに気付いてしまう。それからは、敵とは見なさず仲間になってしまうのだ。

しかし、時に人は戦わなければならない状況に置かれる。人としての尊厳を守るため、相手の横暴に屈しないため、大切なものを残そうとするために、戦いを選ばなければならない。

「ユナイテッド93」では、自らの運命を知ってもなお、ハイジャック犯に屈せず戦い続ける乗客たちの姿が感銘深い。

「シリアナ」では、何故自爆テロが起こってしまうのか、その克明なディティールに圧倒された。自国の利益確保のために実施される陰謀が、巡り巡って我が身に跳ね返ってしまう。

だが、その戦いが復讐の目的であれば、不毛なことでしかない。殺戮は殺戮しか生まないのだ。それらを「ミュンヘン」、「SPIRIT」、「花よりもなほ」等から学ぶ。

「知らない方が良かっただろうか。いや、そうではない」

この台詞に深い感銘を受けた「武士の一分」。事実を知れば悩み苦しむことになるかもしれない。だが、知らないでいる事は、より大きな悲劇を生む要因ともなるし、克服すべき手腕を鍛錬する機会を奪うことにもなるのだ。心して、物事に当たろう。

2006年は12月に「マルチプレックスシアター盛岡フォーラム」が開館されたことで記念的な一年となった。旧盛岡フォーラムで最後に観た「武士の一分」を邦画の1位に、新盛岡フォーラムで最初に観た「硫黄島からの手紙」を外国映画の1位に選出したのも、その感傷的想いによるものである。

2006年は劇場で160本、DVD、GyaO等で89本の鑑賞となりました。映画館で観る本数が増えた分、DVDが落ちてしまいました。来年も盛岡フォーラムでの公開本数が増える見込みのですので、頑張って追い掛けていきたいと思います。

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2006/01/01

2005年度ベストテン

新年明けましておめでとうございます。

2006年のスタートは2005年度ベストテンです。

日本映画
1位 パッチギ!
2位 誰がために
3位 運命じゃない人
4位 フライ,ダディ,フライ
5位 ALWAYS 三丁目の夕日
6位 リンダ リンダ リンダ
7位 メゾン・ド・ヒミコ
8位 火火
9位 青空のゆくえ
10位 サヨナラ COLOR

外国映画
1位 ミリオンダラー・ベイビー
2位 シンデレラマン
3位 プライド 栄光への絆
4位 ネバーランド
5位 Ray/レイ
6位 イン・ハー・シューズ
7位 きみに読む物語
8位 エレニの旅
9位 Dear フランキー
10位 ウィスキー

裏ベストテン
1位 カンフーハッスル
2位 セルラー
3位 マシニスト
4位 ソウ2
5位 バタフライ・エフェクト
6位 サマータイムマシーン・ブルース
7位 キング・コング
8位 ボーン・スプレマシー
9位 ダーク・ウォーター
10位 香港国際警察

表のベストテンは“INNOCENCE&GROWING UP”という私のベストテン基準に則って選んだものです。映画の中で無垢なる心を取り戻し、精神的に成長をしていくドラマを私は最も評価いたします。

裏のベストテンは、映画本来の楽しみである、ハラハラドキドキ、ワクワクするようなアクションやミステリー、ホラーなどを対象として選びました。良かった映画が表のベストテン、面白かった映画が裏のベストテンになると言ってもいいでしょう。

日本映画では、上位3本どれを1位にするか大いに迷いました。韓流ブームに沸いている昨今、日本と朝鮮は一体どういう関係にあったのかを再考させてくれた「パッチギ!」を1位に据えました。井筒監督の集大成とも言える仕上がりぶりにも評価したい。クライマックスで流れる「イムジン河」を思い出すと、今も感情が大いに揺さぶられます。

外国映画では、アメリカ映画に秀作が多かったと印象付けられるベストテンになりました。ありきたりなスポーツドラマと思わせておいて、中盤で物語がガラリと転調する驚きの強さから「ミリオンダラー・ベイビー」を1位に。C・イーストウッド監督の円熟極まる演出にも感銘を受けました。ダーティー・ハリーの頃からの大ファンとして大いに喜びたいです。

2005年の映画鑑賞本数は、映画館で141本、DVD、衛星放送、Gyaoなどで140本となりました。特別に意識したわけではありませんが、いいバランスになっていたようです。このペースで2006年もシネマライフを充実させていきたいと思います。

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