« 2011年1月 | トップページ | 2011年3月 »

2011年2月

2011/02/28

BOX 袴田事件 命とは

336399_01_04_02

製作年:2010年
製作国:日本
監 督:高橋伴明

人が人を裁くことの重さと困難さ。警察捜査への重大な疑問点。決して消し去ることができない苦悩。

日本の裁判制度に対して疑問符を投げかけたのは周防正行監督の『それでもボクはやってない』(2007)であったが、本作品もそれに続くものである。実際の死刑判決を下した元裁判官の告発を受けて製作された本作品は、いかにして冤罪が生まれていくのか、克明に描写されている。

熊本典道(萩原聖人)のように苦悩するものが少数派であり、ほとんどは膨大な仕事量の中に埋没してしまう。自分が当事者となってと想像するだけに身震いが起こるようである。この悲劇は珍しいことでない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/21

アンストッパブル

337734_01_01_02

製作年:2010年
製作国:アメリカ
監 督:トニー・スコット

化学物質を大量に積んだまま暴走を始めた無人貨物列車。刻々と迫ってくる大惨事の危機。命懸けで事故防止に挑むベテラン機関士と新米車掌。

プロフェショナルとは自分の世界を知っている者のことを呼ぶのであろう。勤続28年のベテラン機関士フランク(デンゼル・ワシントン)もその一人である。何が適切で、何が異常か瞬時に判断できる男だ。

本作品で起こる暴走事故に対しても的確な判断を下すことで、数々の危機を未然に防ぐすることができた。仕事のできる男は輝いて見える。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/20

海炭市叙景

337735_01_02_02

製作年:2010年
製作国:日本
監 督:熊切和嘉

大規模なリストラが断行される造船所。再開発地域にただ一軒残る老女の古い家。水商売の仕事を始めた妻と日々深まっていく溝。

佐藤泰志の未完の連作短編集を映画化されたものであるが、自ら命を絶った小説家の絶望感が色濃く反映された作品である。日々を静かに暮らしていきたいだけなのに、時代と社会がそれを許してくれない。重大な岐路に立たされたとき、人は何を思い、何を迷い続けるのか。

新しい道へ進んでいければよいのであるが、決断できずに過ごす毎日。それを不幸とは簡単には言えないのであるが、その立ち止った姿がなんとも哀しく映る。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2011/02/17

ヒーローショー

336045_01_01_02

製作年:2010年
製作国:日本
監 督:井筒和幸

つまないことで始まった暴力の応酬。呆然としている内に深みへはまっていく絶望感。死地を経て取り戻す望郷の念。

原因と結果というものは切り離せないと思うが、こうすればどんなことになるか予想ができない者が増えているではないか。あまりに軽いノリで、暴力と報復が始まっていく。井筒和幸監督が描く新たな暴力映画は、現代の風潮を反映させたものであり、大いに見応えがあった。

この話の展開ならもっとブラックな終末もあり得るのであろう。そこに一途の希望を残す辺り、監督の思いを感じました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/15

モンガに散る

337941_01_01_02

製作年:2010年
製作国:台湾
監 督:ニウ・チェンザー

不良グループから因縁をつけられてしまう転校生。台北一の歓楽街で裏社会へと足を踏み入れた少年グループ。乱闘の日々の中で高める熱き友情とその後のほろ苦い運命。

ただ一緒にいるだけで楽しかった。義兄弟の契りを交わし、固い絆で結ばれているはずなのに、何故、道を違えてしまったのだろうか。モンク(イーサン・ルアン)に対して、悪魔のような囁きが心の奥にたまり始めていく。それが一つ、二つではないのが実に巧い。

彼の心の動きが見るものへ的確に伝わってくる。やがて大きく引き裂かれていくことになるのであるが、それがとても切なく感じられます。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2011/02/13

最後の忠臣蔵

336590_01_05_02

製作年:2010年
製作国:日本
監 督:杉田成道

故あって、赤穂浪士でありながら名誉の死を果たせなかった二人の男。忠義を忘れず私心を捨て、自らの使命を全うするべく生き抜いた瀬尾孫左衛門(役所広司)。その過酷な人生を見守る寺坂吉右衛門(佐藤浩市)。

愚直といえばあまりに愚直。いくら主君大石内蔵助(片岡仁左衛門)の申し付けとは言っても、再会した吉右衛門に対して問答無用の斬り合いに望む孫左衛門の姿には、共感よりも痛々しさを覚える。そんな彼であるから可音(桜庭ななみ)の祝言の後、自分の人生を再スタートしても良い筈なのに、忠義の道を選んでしまうのだ。

それはそれでいいのだが、残された可音やゆう(安田成美)のことを思うと、すっきりしないものが残り続ける。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/12

アリスの恋

1416_01_01_02

製作年:1974年
製作国:アメリカ
監 督:マーティン・スコセッシ

夫を事故で亡くした機会に、歌手になる幼い頃からの夢を実現させようとするアリス(エレン・バースティン)。生意気な一人息子トミー(アルフレッド・ラッター)を連れて故郷を目指す旅立ち。そんな彼女の前に現れてくる男たち。

そんな甘い考えで母子二人生きていけるのだろうかと心配になってしまうアリスであるが、長い抑圧から逃れた解放感は少しぐらいの失敗にもめげることなく、たくましく旅を進めていく。デヴィッド(クリス・クリストファーソン)との関係が続いていくのかどうか分からないが、自己主張できる強さは失うことはないであろう。

男の子のように見える若きジョディ・フォスターの姿も新鮮だった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/09

キック・アス

337482_01_05_02

製作年:2010年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:マシュー・ヴォーン

冴えない毎日を忘れるようにアメコミ・ヒーローに憧れる高校生デイヴ(アーロン・ジョンソン)。あまりに無謀な自警活動が動画サイトで流れ、人気者になっていく“キック・アス”。彼の影で暗躍する真のスーパーヒーローたち。

賛否両論が出てくるのは当然とも思える“ヒット・ガール”(クロエ・グレース・モレッツ)の大活躍。いくら映画の中とは言え躊躇なく人を殺める姿は、どこか背筋が寒くなるような感じも残る。ではあるけれど、魅力的であることは変わらない。映画史に残るようなキャラクターではある。

映画としても“アメコミ”に対する批評性がうかがわれ、興味深く観賞する。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/07

キャバレー

Img_565254_7473602_0

製作年:1972年
製作国:アメリカ
監 督:ボブ・フォッシー

女優を夢見て“キャバレー”で腕を磨くサリー(ライザ・ミネリ)。奔放な彼女と恋に落ちるロンドンから来た語学生ブライアン(マイケル・ヨーク)。狂乱の中、ヒタヒタと近づいて来る不気味な足音。

『バーレスク』(2010)の映画評を読んでいると、本作品と比較されることも多く、この機会に初観賞。てっきり『バーレスク』のようなスター誕生の話かと思っておりましたが、かなり趣きが違います。

ナチスの台頭に合わせるように、退廃的な空気が“キャバレー”の中にたちこめてくる。ラブストーリーがメインの筈なのに、どこか気持ちが弾んでこないのはそのためだろう。

サリーは、その後どうなっていったのか、気になって仕方ありません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011/02/06

アフリカの光

F094fb2a41b3ef1762c4a9ea3e5d7a88

製作年:1975年
製作国:日本
監 督:神代辰巳

無軌道で喧嘩っ早い性分の青年順(萩原健一)。下品であるけれど根が真面目な中年カツヒロ(田中邦衛)。二人が夢見るアフリカ大陸。

いかにも70年代の日本映画という感じで、その一翼を担った神代辰巳の世界で一杯である。順と勝弘の関係、アメリカを目指す理由など、分かるようでよく分からない曖昧さが残り続ける。こんな二人に共感ができるのか、奇怪であるとして敬遠してしまうかで、全く評価が分かれてしまうと思う。残念ながら、私は後者に入ってしまう。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年1月 | トップページ | 2011年3月 »