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2011年1月

2011/01/28

バーレスク

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製作年:2010年
製作国:アメリカ
監 督:スティーヴン・アンティン

退屈なアイオワの田舎町を飛び出し、単身スターを夢見て“バーレスク”へとやって来た少女アリ(クリスティーナ・アギレラ)。客足が衰え経営難に陥っていたショー・クラブの再生を目指すオーナーのテス(シェール)。二人が築き上げる新たな黄金時代。

スターとして脚光を浴びていくプロットは定番中の定番であるが、細部の甘さが気になる。そんなやっつけ仕事のような画策で、クラブを継続できるのか疑問に感じてしまうが、それよりも勿体ないと思えるところが一つある。

クリスティーナ・アギレラの歌声は最初から隠し、アリがテスに認められる場面で初めて披露する方が、さらにインパクトがあったのではないかと思えることだ。それでも、華麗なステージ・パフォーマンスは満載であり、大いに堪能させられた。

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2011/01/26

人生万歳!

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ウディ・アレン

ウディ・アレンの分身である偏屈な中年学者ボリス(ラリー・デヴィッド)。南部の田舎町から家出してきた世間知らずな若い娘メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)。ひょんなことから出会った二人の恋愛関係を洒脱なタッチで描くロマンティック・コメディ。

ロンドン三部作の深刻な作風とは打って変わり、故郷ニューヨークを舞台にすると、懐かしいウディ・アレンの世界が広がる。この二人の関係はいつまでも続くものではないけれど、それを悲観せずに変わったところから新たなドラマが始まることを期待したい。

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2011/01/25

ノルウェイの森

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:トラン・アン・ユン

学生運動が盛んな昭和40年代。深い喪失感を抱えたまま漂う続ける二人。哀しくも切ない迷いと再生の日々。

なんと言っても映像が素晴らしい。撮影監督マーク・リー・ピンビンの名前はますます高まっていくのではないか。ワタナベ(松山ケンイチ)、直子(菊地凛子)、緑(水原希子)の主要三人をアップで捉え、微細な感情の揺らめきを的確に捉えている。激しい自然気象の中で彷徨うワタナベと直子の二人は、その心象を巧みに表現していると思う。

だが、あまりに自死を選ぶ者が多く登場し、気分として物語に同調できなかった。最愛の人を亡くし、精神的に病んでいくというのは、あまりに分かりやすい表現であるし、誇大的すぎると思えてならなかった。

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2011/01/20

ロビン・フッド

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製作年:2010年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:リドリー・スコット

獅子心王リチャード一世が率いた12世紀末の十字軍遠征隊。憤死した騎士のために使命を引き継ぐひとりの男。やがて取り戻していくアイデンティティ。

物語の展開に荒っぽいところもあるけれど、“ロビン・フッド”になる前のロビン・ロングストライド(ラッセル・クロウ)が極めて魅力的に描かれている。何のために戦うのか。抑圧させた世界を打破するためである。奴隷ではない、市民としての自覚が心強く響くし、射手として技量の高さにも目を張る。

マリアン(ケイト・ブランシェット)との交流も、微笑ましいものであった。

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2011/01/19

ヒックとドラゴン

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製作年:2010年
製作国:アメリカ
監 督:クリス・サンダース/ディーン・デュボア

バイキングが暮らしていた島を襲撃するドラゴンたち。変わった感性のため周囲から孤立してしまう少年。傷ついたドラゴンの間に芽生えた友情の絆。

知ってしまえば、仲間ではないか。ひたすら憎悪の目で見続ければ敵同士でしかないバイキングとドラゴンであるけれど、ドラゴンにはドラゴンの事情がある。その辺りが分かってくれば、おのずと第三の道が見えてくるのである。

バイキングの常識を否定し、ドラゴンとの共存を歩み始めるヒック(ジェイ・バルシェル)の姿に、教えられるものが多い。

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2011/01/18

白いリボン

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製作年:2009年
製作国:ドイツ/オーストリア/フランス/イタリア
監 督:ミヒャエル・ハネケ

第一次世界大戦前夜、北ドイツの小さな田舎町。次々と連鎖的に起こる不可解な事件。それによって引き起こされる村人たちの疑心暗鬼。

何故、こんなことが起きてしまうのか。悪意の連鎖は権力側だけでなく弱者側にも及んでいる。犯人が誰であるかは、早々に暗示される。だが、何のためにそんな事件を引き起こしているのか、目的がはっきりしない。そこに底知れぬ恐れを感じてしまうのだ。

すべて人々が幸せに暮らしていける理想郷というのは、どんなに探しても見つからないかもしれない。どこの世界にも抑圧された人々が存在する。だから、抑圧のレベルを判断できる知識を、我々は持たなければならないのだ。

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2011/01/17

ザ・ロード

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジョン・ヒルコート

文明が崩壊し荒廃し尽くしたアメリカ大陸。わずかな希望を胸に南へ向かい旅を続ける一組の父子。飢えや寒さ、暴徒たちの襲撃、心休まる日のないサバイバルの日常。

極限状態に置かれたとき、何を基準に判断すればいいのだろうか。母親(シャーリーズ・セロン)のように、希望を失い自殺の道を選ぶのか。父親(ヴィゴ・モーテンセン)のように、息子を守り抜くため旅に出るか。普通に考えれば、父親の方が正しいと思えるけれど、人肉を食べる暴徒たちを相手に旅を続けるのは、あまりに過酷なことである。

いざ、自分の身に何かあれば、幼い息子が一人きりで放り出させることになる。さすれば、母親の思いもあながち否定できるものではない。どちらが正しくて、どちらが間違っているのかという問題ではないのだ。それぞれの思いで選び取るしかないのだ。

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2011/01/16

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:東陽一

誰にも同情してもらえないアルコール依存症という病気。血反吐を吐くまで飲むことが止められない苦痛。一人で堕ちていくのを止めることができない家族の哀しみ。

暴力を働く。失禁する。意識を失う。周囲には迷惑このうえないが、本人は止めることができないアルコール依存症の恐ろしさを改めてみる。どこか飄々としながら、苦悩を内に秘めた主人公を浅野忠信が好演している。

主人公の母親役で久々に映画で見た香山美子も良かった。元妻の永作博美と一緒に諦観を持って主人公を見守る姿が心に染みた。

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2011/01/13

さんかく

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:吉田恵輔

彼女の妹である15歳の少女に本気で惚れてしまう男。無自覚にも姉の同棲相手を翻弄してしまう少女。離れていく男を諦めきれず、どこまでも追い掛けていく女。

何も根拠がないのに自分に自信を持ち過ぎる百瀬(高岡蒼甫)。自分自身に自信が持てず恋人や友人の存在に依存してしまう佳代(田畑智子)。全く対照的なカップルが気付かぬ内に、ストーカー行為と言えるような行為を繰り広げていく。百瀬が追いかえる佳代の妹、桃(小野恵令奈)が、どこまで自覚的か分からないのも興味深い。一方方向に走り続ける二人は、自分の姿が全く見えていないのだ。

ラスト・シーンが秀逸。題名通り“さんかく”の位置で立ち尽くしながら、視線が定まらず不安定のまま。そんな中、ふと笑顔を浮かべる佳代に、混沌から抜け出した精神的強さを感じられた。

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2011/01/09

ゲゲゲの女房

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:鈴木卓爾

お見合いから僅か5日後に結婚。売れない妖怪漫画を飄々と描き続ける夫。過酷な極貧生活で深めていく夫婦の絆。

戦後すぐではない。昭和36年。こんな生活が日本に残っていたのだという驚きがある。自分が幼少の頃から『ゲゲゲの鬼太郎』は、相当メジャーな存在になっていたのに、水木しげるがそれまで全く売れていなかったというのが不思議なくらいである。

飄々としている裏側で、秘めたる不屈の闘志を燃やし続ける茂(宮藤官九郎)の存在が強烈に浮かび上がってくる。本来なら結婚生活には向かない男と、なんの因果が結婚してしまう布枝(吹石一恵)。彼女も内に怒りをため込んで新婚生活を始めていくのだ。そのぶつかり合いが興味深かった。

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2011/01/07

武士の家計簿

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:森田芳光

詳細な家計簿から浮かび上がる幕末の下級武士の暮らし。逼迫する家計を立て直す御算用者。質素な倹約生活を支えた家族の絆。

前作「わたし出すわ」(2009)に続き、お金を主題にした作品を森田芳光監督が作った。偶然なのか意図したものか分からないけれど、お金とは何か、様々な思考を誘う機会にはなる。丁度良いお金の量とは何か。多くなるのも少なくなるのも、人がどのようなライフスタイルを望むのかによって決まる。

ただ、不満を言えば、家計簿をつけてライフスタイルがいかに変わっていったのか、もう少しディティールを見たかった。祝いの膳に絵鯛を添える。弁当をふかし芋にする。印象的なエピソードもあるにはあるが、家財道具を売り払った後に、いかにした借金を返済していったのかを知りたかった。

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2011/01/06

シングルマン

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:トム・フォード

愛する者を亡くしてから繰り返される絶望の日々。ついに自殺を決意した男が過ごす運命の一日。丁寧に綴ってゆく日常の些事。

とにかく映像が素晴らしい。淡々と過ごすセピア色の色調の中、今まで気付かなかった日常の美しさがヴィヴィッドに浮かび上がってくる。ジョージ(コリン・ファース)の軽い驚きがこちらにも伝わってくる。

非常に謎めいた教え子ケニー(ニコラス・ホルト)の存在。彼の解釈を色んな方々から聞いてみたいものだ。

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2011/01/05

信さん・炭坑町のセレナーデ

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:平山秀幸

日本各地で繰り返された炭鉱町の盛衰。厳しい毎日を互いに支え合い一生懸命に生きる人々の毎日。複雑な感情を抱きながら成長していく少年たち。

小規模公開の作品ながら、平山秀幸監督の力なのか、大変に豪華な俳優たちが出演している。若手からベテランまで演技巧者たちがずらりと並んでいる。決して目新しい主題ではないが、じっくりと観賞できるのはプロの技量がいかんなく発揮されているからだろう。

信さん(小林廉)が美智代(小雪)へ募らせていく恋愛のような母性のような想いは、決して適うことなどないのであるから、見ていて切なくなる。

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2011/01/03

2010年ベストテン

・洋画部門
01 息もできない
02 瞳の奥の秘密
03 白いリボン
04 インビクタス 負けざる者たち
05 ヒックとドラゴン
06 冬の小鳥
07 しあわせの隠れ場所
08 シングルマン
09 17歳の肖像
10 フローズン・リバー

・邦画部門
01 春との旅
02 おとうと
03 カラフル
04 告白
05 悪人
06 パレード
07 孤高のメス
08 BANDAGE バンデイジ
09 君に届け
10 キャタピラー

2010年を振り返れば、3D映画の普及もあって興行収入的には進捗する見込みのようである。だが、昨年来から続く洋画苦戦の状況は変わっておらず、配給会社の倒産に続き、とうとう『恵比寿ガーデンシネマ』の閉館など劇場自体が淘汰される状況に陥っている。アメリカ、韓国、ヨーロッパとも作品の質で衰えているとは思えないが、3大映画祭の最高賞を獲得した映画でさえ、配給が付かない例も増えてきている。映画文化の危機は今年以降も続くのであろうか。大いに懸念される。

洋画の1位から5位には、暴力、不寛容、憎悪という負の連鎖から生まれる社会とは何か大いに思考させられた作品を選びました。正確な事実を把握し、力ある者たちの圧制からいかに逃れるべきか、考えなければなりません。人生という道をいかにして歩んでいけばよいか思いをはせたのが、6位から10位の作品です。時に間違った選択をしてしまうこともある。だが、どこかでやり直せる機会もある筈です。そのチャンスをしっかり見極め、逃さないようにしたいと思います。

1位の『息もできない』は、暴力の連鎖が何故起こっていくのか、身を切るような鋭利さで伝わってくる。自分ではどうにもできない暴力衝動に自ら滅びていく男の最期に訪れた孤独な心の交流には大いに泣かされた。観賞後、今年のベスト1と確信した。

2位の『瞳の奥の秘密』は、アルゼンチン映画の底力を見せつけられた作品。25年前の未解決殺人事件を追い掛けることにより、封印していたはずの愛を甦らせていく巧みな展開の脚本と、絵画のような力強い映像が素晴らしかった。

3位の『白いリボン』は、心の闇を痛烈に炙り出すミステリー・ドラマ。とはいえ、犯人探しが主題ではない。誰がではなく、何のために事件を起こしているのか、分からないところが底知れぬ恐怖を感じる。

4位の『インビクタス 負けざる者たち』は、またもクリント・イーストウッド監督によって放たれた傑作。アパルトヘイト撤廃後も人種間対立が残る南アフリカ。自国開催のラグビーW杯を使って一つにまとめようと画策するネルソン・マンデラ大統領の雄姿が鮮やかに浮かび上がる。

5位の『ヒックとドラゴン』は、果てしない憎しみの戦いを続けるバイキングとドラゴンの姿を通して、戦争の無意味さを教えてくれる。洗脳されることによって何も見えなくなってしまう。互いを知ってしまえば、共存の道は開けてくる。

6位の『冬の小鳥』は、いじらしい少女の姿が深く心に焼き付いています。最愛の父親に捨てられたことが認められず、かたくなに心を閉ざしてしまう苦しみ。様々な児童養護施設の現実を受け入れ、人生を歩み出す姿に感銘を受けました。

7位の『しあわせの隠れ場所』は、アメリカン・ドリームが皆無ではないことを教えてくれる一篇。とは言え、それは奇跡的とも言える出会いの数々がもたらすものであり、成功のチケットを勝ち取るには、相当の困難が付きまとう現実は変わらない。

8位の『シングルマン』は、ファッション・デザイナーの巨匠トム・フォードが映画においても非凡な手腕を発揮させた一作。愛する者を失い、深い絶望の中で自死を決めた男が送る最後の一日を美しい映像で丁寧に描写していく。映像美に圧倒された。

9位の『17歳の肖像』は、真の教育とは何かを大いに考えさせられた。退屈な毎日にうんざりする好奇心旺盛な少女が洗練された30代の男の恋愛を通して、夢にまで見た刺激的な日々を過ごす。だが、そんな時間は僅かなものであった。その経験の果てに彼女は何を学び取ったのか、その心の軌跡がじっくりと描かれている。

10位の『フローズン・リバー』は、幸福を手にするために何をしなければならないのか、教えられた作品。彼女にとって新しいトレーラーハウスは本当に必要だったのか。密入国の違法な仕事に手を染めていく経験を通して、何を守り、何を犠牲にするのか、彼女は自ら判断する。その清々しい心は子供たちにも伝わっていくだろう。

続いて邦画について。昨年は候補作を10作品集めるのさえ悩んでしまったものであるが、今年は全く間逆である。ベストテン級の作品を何作も見落としているにも関わらず、候補作が20作品を越えてしまった。それぐらいあると、ベストテンを組むのも楽しい。大いに順番を入れ替えながら、悩んでまとめたベストテンです。

1位から3位は、家族との関係を静かに見つめた作品で揃えました。人間だから、良いことばかりではなく、悪いときもあります。そんな問題児を突き放さず、僅かな繋がりを温かく守る大切さを感じました。それも程度問題であり、底知れぬ悪意も現実にはあることを教えてくれるのが、4位から6位の作品。間違った選択でしたとでは済まない犯罪行為に怒りと恐怖を覚えます。7位から9位は、口コミのありがたさに感謝したい映画です。予告編だけ見ていたらパスしただろうと思える作品ばかり。信頼すべき目利きたちの評判を聞いて観賞したが、見逃さなくて良かった! 10位は若松孝二監督の新作が見られる喜びだけで別格の扱いです。興行的にも成功させ、次作は三島由紀夫を撮るとのこと。大いに頑張って欲しい。

1位の『春との旅』は、あまりに無茶とも言える疎遠の親類縁者を訪ねる旅に出た老漁師と孫娘の話。兄弟たちとの再会を通して、浮かび上がってくる家族の過去。それでも旅に出るということは、自分と向き合い前へ進む切っ掛けにはなる。この映画の感想をtwitterに上げたところ、すぐに小林政広監督から返信が来たことが、とても嬉しかったです。

2位の『おとうと』は、しっかり者の姉と問題児のまま成長しない弟の再会と別れの日々を、山田洋次監督らしい笑いと涙で切なく描いております。ポイントは吉永小百合と加藤治子の関係。ラスト・シーンの素晴らしさによって2位といたしました。

3位の『カラフル』は、天国に向かう主人公が望まないまま、再挑戦のチャンスをもらい自殺した少年の体を借りて新しい生活を始める物語。家族や周囲の人々との交流を得て、灰色の世界と思えたものは、色彩豊かな世界であることに気付いていく。原恵一監督は今後も注目したい。

4位の『告白』は、担任クラスの生徒たちに娘を殺された女性教師が仕掛ける衝撃の復讐劇。湊かなえの原作小説も面白かったが、それをさらにブラッシュアップした中島哲也監督の脚色が素晴らしい。今年の脚本賞に推したい。松たか子も昨年主演女優賞を総なめにした『ヴィヨンの妻』よりさらに飛躍を遂げている。

5位の『悪人』は、殺人を犯してしまった青年と孤独に押し流される女との逃避行のドラマ。主演の妻夫木聡も深津絵里もいいのだが、脇を添える岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明の四人が素晴らしい。本作品だけでなく他の映画でも存在感を発揮し、日本映画を盛り上げた功労者たちだと思う。

6位の『パレード』は、共同生活を送る若者たちの緩やかな日常が新たな同居人によって崩壊していく様を描く。この映画についての解説やあらすじを読んで、どこかポイントがずれているような感じがして仕方ない。“本当の自分”を装うことで共同生活を守りたかったのは、直輝(藤原竜也)だけだったのではないかと思う。

7位の『孤高のメス』は、常識に囚われないひとりの医師が、その当時また法律に認められない脳死肝移植に挑む迫真の医療ドラマ。こんなお医者さんがいるなんて例外中の例外。助かる命も助からない日本医療の現実を思い知らされる。

8位の『BANDAGE バンデイジ』は、1990年代のバンドブームの裏側を熟知する小林武史監督が描く音楽業界ドラマ。音楽への情熱や成功への野心に流されスタイルが定まらない男と、ひょうなことからマネージャーを引き受けることになった少女の関係を、ありきたりな恋愛感情で描かれていないところが斬新だった。

9位の『君に届け』は、意志伝達が上手くとれないヒロインが、初めての友だちや恋人を通して成長する姿を爽やかに描いた一篇。あらすじだけで追いかければ、典型的な少女マンガの話であるが、多部未華子演じるヒロイン像がかなりユニーク。見た目が暗く『リング』“貞子”とあだ名され、クラスメイトたちから孤立してしまう姿は、極めて異様なものだった。

10位の『キャタピラー』は、四肢をなくし顔が焼けただれた無惨な姿で帰還した夫と介護の日々を送ることになる一組の夫婦を通して戦争の悲劇を伝える作品。隅々まで若松監督の思いがにじみ出た映画であると思う。“軍神”なんている訳がない。

2011年も素晴らしい映画がたくさん待っています。できるだけ映画館に出かけたいものです。

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