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2011/01/03

2010年ベストテン

・洋画部門
01 息もできない
02 瞳の奥の秘密
03 白いリボン
04 インビクタス 負けざる者たち
05 ヒックとドラゴン
06 冬の小鳥
07 しあわせの隠れ場所
08 シングルマン
09 17歳の肖像
10 フローズン・リバー

・邦画部門
01 春との旅
02 おとうと
03 カラフル
04 告白
05 悪人
06 パレード
07 孤高のメス
08 BANDAGE バンデイジ
09 君に届け
10 キャタピラー

2010年を振り返れば、3D映画の普及もあって興行収入的には進捗する見込みのようである。だが、昨年来から続く洋画苦戦の状況は変わっておらず、配給会社の倒産に続き、とうとう『恵比寿ガーデンシネマ』の閉館など劇場自体が淘汰される状況に陥っている。アメリカ、韓国、ヨーロッパとも作品の質で衰えているとは思えないが、3大映画祭の最高賞を獲得した映画でさえ、配給が付かない例も増えてきている。映画文化の危機は今年以降も続くのであろうか。大いに懸念される。

洋画の1位から5位には、暴力、不寛容、憎悪という負の連鎖から生まれる社会とは何か大いに思考させられた作品を選びました。正確な事実を把握し、力ある者たちの圧制からいかに逃れるべきか、考えなければなりません。人生という道をいかにして歩んでいけばよいか思いをはせたのが、6位から10位の作品です。時に間違った選択をしてしまうこともある。だが、どこかでやり直せる機会もある筈です。そのチャンスをしっかり見極め、逃さないようにしたいと思います。

1位の『息もできない』は、暴力の連鎖が何故起こっていくのか、身を切るような鋭利さで伝わってくる。自分ではどうにもできない暴力衝動に自ら滅びていく男の最期に訪れた孤独な心の交流には大いに泣かされた。観賞後、今年のベスト1と確信した。

2位の『瞳の奥の秘密』は、アルゼンチン映画の底力を見せつけられた作品。25年前の未解決殺人事件を追い掛けることにより、封印していたはずの愛を甦らせていく巧みな展開の脚本と、絵画のような力強い映像が素晴らしかった。

3位の『白いリボン』は、心の闇を痛烈に炙り出すミステリー・ドラマ。とはいえ、犯人探しが主題ではない。誰がではなく、何のために事件を起こしているのか、分からないところが底知れぬ恐怖を感じる。

4位の『インビクタス 負けざる者たち』は、またもクリント・イーストウッド監督によって放たれた傑作。アパルトヘイト撤廃後も人種間対立が残る南アフリカ。自国開催のラグビーW杯を使って一つにまとめようと画策するネルソン・マンデラ大統領の雄姿が鮮やかに浮かび上がる。

5位の『ヒックとドラゴン』は、果てしない憎しみの戦いを続けるバイキングとドラゴンの姿を通して、戦争の無意味さを教えてくれる。洗脳されることによって何も見えなくなってしまう。互いを知ってしまえば、共存の道は開けてくる。

6位の『冬の小鳥』は、いじらしい少女の姿が深く心に焼き付いています。最愛の父親に捨てられたことが認められず、かたくなに心を閉ざしてしまう苦しみ。様々な児童養護施設の現実を受け入れ、人生を歩み出す姿に感銘を受けました。

7位の『しあわせの隠れ場所』は、アメリカン・ドリームが皆無ではないことを教えてくれる一篇。とは言え、それは奇跡的とも言える出会いの数々がもたらすものであり、成功のチケットを勝ち取るには、相当の困難が付きまとう現実は変わらない。

8位の『シングルマン』は、ファッション・デザイナーの巨匠トム・フォードが映画においても非凡な手腕を発揮させた一作。愛する者を失い、深い絶望の中で自死を決めた男が送る最後の一日を美しい映像で丁寧に描写していく。映像美に圧倒された。

9位の『17歳の肖像』は、真の教育とは何かを大いに考えさせられた。退屈な毎日にうんざりする好奇心旺盛な少女が洗練された30代の男の恋愛を通して、夢にまで見た刺激的な日々を過ごす。だが、そんな時間は僅かなものであった。その経験の果てに彼女は何を学び取ったのか、その心の軌跡がじっくりと描かれている。

10位の『フローズン・リバー』は、幸福を手にするために何をしなければならないのか、教えられた作品。彼女にとって新しいトレーラーハウスは本当に必要だったのか。密入国の違法な仕事に手を染めていく経験を通して、何を守り、何を犠牲にするのか、彼女は自ら判断する。その清々しい心は子供たちにも伝わっていくだろう。

続いて邦画について。昨年は候補作を10作品集めるのさえ悩んでしまったものであるが、今年は全く間逆である。ベストテン級の作品を何作も見落としているにも関わらず、候補作が20作品を越えてしまった。それぐらいあると、ベストテンを組むのも楽しい。大いに順番を入れ替えながら、悩んでまとめたベストテンです。

1位から3位は、家族との関係を静かに見つめた作品で揃えました。人間だから、良いことばかりではなく、悪いときもあります。そんな問題児を突き放さず、僅かな繋がりを温かく守る大切さを感じました。それも程度問題であり、底知れぬ悪意も現実にはあることを教えてくれるのが、4位から6位の作品。間違った選択でしたとでは済まない犯罪行為に怒りと恐怖を覚えます。7位から9位は、口コミのありがたさに感謝したい映画です。予告編だけ見ていたらパスしただろうと思える作品ばかり。信頼すべき目利きたちの評判を聞いて観賞したが、見逃さなくて良かった! 10位は若松孝二監督の新作が見られる喜びだけで別格の扱いです。興行的にも成功させ、次作は三島由紀夫を撮るとのこと。大いに頑張って欲しい。

1位の『春との旅』は、あまりに無茶とも言える疎遠の親類縁者を訪ねる旅に出た老漁師と孫娘の話。兄弟たちとの再会を通して、浮かび上がってくる家族の過去。それでも旅に出るということは、自分と向き合い前へ進む切っ掛けにはなる。この映画の感想をtwitterに上げたところ、すぐに小林政広監督から返信が来たことが、とても嬉しかったです。

2位の『おとうと』は、しっかり者の姉と問題児のまま成長しない弟の再会と別れの日々を、山田洋次監督らしい笑いと涙で切なく描いております。ポイントは吉永小百合と加藤治子の関係。ラスト・シーンの素晴らしさによって2位といたしました。

3位の『カラフル』は、天国に向かう主人公が望まないまま、再挑戦のチャンスをもらい自殺した少年の体を借りて新しい生活を始める物語。家族や周囲の人々との交流を得て、灰色の世界と思えたものは、色彩豊かな世界であることに気付いていく。原恵一監督は今後も注目したい。

4位の『告白』は、担任クラスの生徒たちに娘を殺された女性教師が仕掛ける衝撃の復讐劇。湊かなえの原作小説も面白かったが、それをさらにブラッシュアップした中島哲也監督の脚色が素晴らしい。今年の脚本賞に推したい。松たか子も昨年主演女優賞を総なめにした『ヴィヨンの妻』よりさらに飛躍を遂げている。

5位の『悪人』は、殺人を犯してしまった青年と孤独に押し流される女との逃避行のドラマ。主演の妻夫木聡も深津絵里もいいのだが、脇を添える岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明の四人が素晴らしい。本作品だけでなく他の映画でも存在感を発揮し、日本映画を盛り上げた功労者たちだと思う。

6位の『パレード』は、共同生活を送る若者たちの緩やかな日常が新たな同居人によって崩壊していく様を描く。この映画についての解説やあらすじを読んで、どこかポイントがずれているような感じがして仕方ない。“本当の自分”を装うことで共同生活を守りたかったのは、直輝(藤原竜也)だけだったのではないかと思う。

7位の『孤高のメス』は、常識に囚われないひとりの医師が、その当時また法律に認められない脳死肝移植に挑む迫真の医療ドラマ。こんなお医者さんがいるなんて例外中の例外。助かる命も助からない日本医療の現実を思い知らされる。

8位の『BANDAGE バンデイジ』は、1990年代のバンドブームの裏側を熟知する小林武史監督が描く音楽業界ドラマ。音楽への情熱や成功への野心に流されスタイルが定まらない男と、ひょうなことからマネージャーを引き受けることになった少女の関係を、ありきたりな恋愛感情で描かれていないところが斬新だった。

9位の『君に届け』は、意志伝達が上手くとれないヒロインが、初めての友だちや恋人を通して成長する姿を爽やかに描いた一篇。あらすじだけで追いかければ、典型的な少女マンガの話であるが、多部未華子演じるヒロイン像がかなりユニーク。見た目が暗く『リング』“貞子”とあだ名され、クラスメイトたちから孤立してしまう姿は、極めて異様なものだった。

10位の『キャタピラー』は、四肢をなくし顔が焼けただれた無惨な姿で帰還した夫と介護の日々を送ることになる一組の夫婦を通して戦争の悲劇を伝える作品。隅々まで若松監督の思いがにじみ出た映画であると思う。“軍神”なんている訳がない。

2011年も素晴らしい映画がたくさん待っています。できるだけ映画館に出かけたいものです。

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