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2010年10月

2010/10/27

バーダー・マインホフ 理想の果てに

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製作年:2008年
製作国:ドイツ/フランス/チェコ
監 督:ウーリー・エデル

世界中の学生たちの間へ急速に広まった反戦主義。純粋な思想の中からドイツに生まれた反権力組織。過激化する闘争の中で、やがて崩壊していく哀しい末路。

彼ら若者たちの革命思想が何故、成功しなかったのだろうか。世界史の中で成功してきた革命との違いに思いを馳せれば、革命運動を支援する資本組織がなかったからではないか。彼らがどんな正論を吐こうともアメリカ資本主義を乗り越えることはできず、武装化していく内に本来の目的を見失っていく。

日本でも同時期に若松孝二監督によって「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2007)が製作されている。実に興味深い。この二本を続けて見れば、精神的に参ってしまうと思うが、感ずるものも多いだろう。

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2010/10/25

乱暴と待機

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:冨永昌敬

引っ越し先で再会する因縁の二人。実の兄弟でもないのに一緒に暮らす捩れ曲がった男と女。歪んだ愛と欲望が織りなす人間模様。

原作の本谷有希子の系譜でいれば、いつも他人の顔色を気にし愛想笑いを浮かべてオドオド生きる奈々瀬(美波)は、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(2007)の和合待子(永作博美)と容易に重なるキャラクターである。謙虚に生きるということは美徳とされることであるが、それも程度問題ということだ。

まるで芝居を見てるようにエキセントリックな四人であり、映画としては最初馴染めないが、慣れてくると独特の台詞回しが笑いを誘う。中でも、浅野忠信の「救急車を呼べ」は爆笑ものであった。

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2010/10/24

ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い

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作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:トッド・フィリップス

ハメを外し過ぎたバチェラー・パーティ。行方不明になった花婿。記憶を辿ってゆく前夜の記憶。

大味なアメリカン・コメディーではあるけれど、ミステリー趣向の織り込まれていることがゴールデングローブ作品賞を取った所以だろうか。目覚めると記憶がなく、虎は居るは、赤ん坊は居るは、花婿は居ないはといういう出発点からどこに辿りつくのか。

鍵を握るのはアラン(ザック・ガリフィナーキス)であるけれど、単に精神破綻者なのか、ブラックジャックでカウンティングできるくらいの天才的頭脳を秘めている人物なのか。彼を大いに笑えるのであればいいのであるが、複雑な思いも残る。

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ユー・キャン・カウント・オン・ミー

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製作年:2000年
製作国:アメリカ
監 督:ケネス・ロナーガン

借金のために故郷に戻った弟。日々の生活を余裕なく暮らすシングルマザーの姉。どうでもいいと呟きを重ねる幼い息子。

山田洋次監督「おとうと」(2009)のアメリカ版のような物語。大人になりきずいつも周囲に騒動を巻き起こしてしまうテリー(マーク・ラファロ)の姿は笑福亭鶴瓶と容易に重なるが、姉の設定は吉永小百合とは随分違っている。しっかり者のようでありながらサミー(ローラ・リニー)自身、非常に危うさを秘めた女性である。テリーのことを叱る一方で、彼女自身が大人になりきれていない様子が何度も繰り返される。家族にトラブルがあったとしても無断欠勤は許されないものであるし、誘惑に負けて不倫の道を進んでいくなど見ている方がヒヤヒヤさせられる。

頼るべき誰かがいることはとても幸せなことであるが、それに甘えすぎてはいけないと感じる。

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2010/10/17

ナイト & デイ

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製作年:2010年
製作国:アメリカ
監 督:ジェームズ・マンゴールド

偶然なのか運命なのか、出会ってしまった男と女。女が危機に遭遇すると突如救出に現われる男。世界中を駆け巡る壮絶な逃走劇。

こんな不死身なスパイなどいないとか、圧倒的な武力を有しながら一人の男を仕留められない悪役が弱すぎるとか、話がどう考えてもご都合主義だとか、いろいろ指摘することも多い。だが、そんなことを忘れてしまうことだ。トム・クルーズとキャメロン・ディアスのロマンティック・コメディーとして大いに楽しんでしまえばいい。娯楽作とは、本来こういうものではないだろうか。

効果的な台詞を反復させるなどニヤリとさせるポイントも多く、気持ち良く鑑賞できた。

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2010/10/12

君に届け

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製作年:2010年
製作国:日本
監 督:熊澤尚人

“貞子”と恐れられる常人離れした佇まい。その裏に隠された人を思い遣るピュアな心。初恋を優しく見守る桜の木。

原作コミックを読んだことがないので、予告編の印象とは全く違うヒロイン黒沼爽子(多部未華子)のキャラクターには驚いた。よくぞここまでコミュニケーション不全に陥りながら、学園生活を一人で送れるものだと感心する。現実ではありえない純情さは、ある種の壁を作り強固に彼女の神経を守っているのかもしれない。

それにしても爽子の母親役が富田靖子であるとは全く分からなかった。エンドクレジッドを見て初めて気付く。最後にもう一度登場し、その横顔に面影を認められるが、ずいぶん変わったものだ。「アイコ十六歳」(1983)や「さびしんぼ」(1985)の彼女が母親になっているとは。実に感慨深い。

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2010/10/09

何も変えてはならない

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製作年:2009年
製作国:ポルトガル/フランス
監 督:ペドロ・コスタ

フランス人女優ジャンヌ・バリバールのミュージシャンとしての5年に渡る足跡。レコーディングやリハーサルを見つめる研ぎ澄まされたモノクロの映像。ジャンヌであって、ジャンヌではない複数のイメージの集積。

これまでの音楽ドキュメンタリーと決定的に違うのは、演奏シーンの合間にミュージシャンへのインタビューやバックステージ風景などが全く挿入されていないことだ。固定したカメラがジャンヌ・バリバールの音楽の真髄を追求していく。

モノクロ映像の凄みを感じる。これはただ漠然と撮影したものでは生まれないものであろう。陰影が際立つ映像美に圧倒される。だが、気を許すとすぐに睡魔に襲われます。

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ノーマ・レイ

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製作年:1979年
製作国:アメリカ
監 督:マーティン・リット

劣悪な労働条件の紡績工場で働くしかないアメリカ南部のある街。たった一人で労働組合結成を目指す活動家。彼との交流を経て少しずつ成長を遂げていく一人の女工。

「エリン・ブロコビッチ」(2000)、「スタンドアップ」(2005)に先立つシングルマザーの奮闘ドラマ。生活のためには働かなければならないが、理不尽な仕打ちには俄然と立ち向かっていく。アメリカ映画には、こうした系譜が続いているのだ。

ノーマ(サリー・フィールド)が最後の一線を越え「UNION」と書いた紙を掲げて立つシーンは映画史に残る名場面だ。やがて労働組合結成が実現し良かった良かったとなるのであるが、安い労働力を求めて資本家たちはアジアへ生産拠点を移していくアメリカ経済を思うとそう素直には喜べない。彼女たちのその後を想像すると暗澹たる気持ちとなる。

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2010/10/06

ミレニアム 3 眠れる女と狂卓の騎士

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製作年:2009年
製作国:スウェーデン/デンマーク/ドイツ
監 督:ダニエル・アルフレッドソン

瀕死の重傷で病院で静養するリスベット。恐るべき巨悪の脅迫にも怯まずリスベット救済のために戦い続けるミカエル。ついに最終局面を迎えた裁判での迫真の攻防。

未読である原作でもそうなのであろうと予想するが、三作品とも趣向の違っているところが良い。1作目は本格ミステリー、2作目はアクション、3作目となる本作は法廷ミステリーと、続けて見ても飽きさせない作りになっている。

テンポ良く進んでいく展開で大いに楽しませていただいたが、留保点も残る。法廷ミステリーとして致命的なのは、リスベット(ノオミ・ラパス)の切り札が最初から明示されていることだ。これではいくら検察側が攻勢を強めようとも、緊迫感が高まらないではないか。

とは言え、これでもかというくらいの黒のパンクファッションで出廷するリスベットには、彼女の闘争心を感じさせ、大きなインパクトを残す。

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2010/10/05

ミレニアム 2 火と戯れる女

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製作年:2009年
製作国:スウェーデン/デンマーク/ドイツ
監 督:ダニエル・アルフレッドソン

殺人者の濡れ衣を着せられたリスベット。逃亡を余儀なくされたヒロインの孤独の戦い。やがて、明らかとなっていく衝撃の過去。

前作ではサブ・ストーリーだったリスベット(ノオミ・ラパス)の過去が前面に出てくる第2作は、彼女の独壇場である。ミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)の手を借りて事件解決に当ろうとせず、とことん一人だけで旧悪と対決に臨む。その判断は決して正しいものではなかったかもしれないが、強い気概には感じいってしまう。

第3作への感心を大いに募らせる巧妙な語り口の作品となり、第2作としてはなかなかの出来栄えであると思う。

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