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2010年5月

2010/05/27

宗方姉妹

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製作年:1950年
製作国:日本
監 督:小津安二郎

節子(田中絹代)を見ていると、なんとも歯がゆい気持ちに掻きたてられる。誰も望んでそうなることはないだろうが、彼女の選ぶ選択はことごとく裏目になって出てしまう。かつて、宏(上原謙)への気持ちをはっきり定まらないうちに、彼はパリへ留学してしまい結婚の時期を逃してしまう。一緒になった三村(山村聡)は仕事にも就かず、彼女の過去の日記を読んで大いに傷付き、節子に不実な態度を取り続ける。

どれほど懸命に尽くそうとも、心を開かないばかりか暴力まで振るわれる始末。遂に離別を決意し、宏と再生活を築こうとする矢先の悲劇。これでは我慢した甲斐が何もないではないか。あっけらかんと自分の気持ちを表出させる妹の満里子(高峰秀子)の方が正しいとなってしまう。戦後日本の価値観の変移を感じさせる。

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花のあと

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:中西健二

人物の大きさとは、外見では計り知れない。以登(北川景子)の仰天するような願い事を黙って叶えてしまう片桐才助(甲本雅裕)。許婚から身内でもない者の敵討ちをしたいと言われて、どれだけ協力する男がいるだろうか。99.9%反対すると思うが、才助は応援してしまうのである。単にお人好しという訳ではない。ヘラヘラした態度とは裏腹に、優れた情報分析力と判断力を兼ね備えた人物である。

いかに男性にも負けない剣の使い手であるとはいえ、真剣での果し合いが以登にできるのかという疑問も残る。嫉妬心だけではなく、以登を守るため阻止するのが人情というものだろう。逆に、そんな勇ましい彼女から逃げだそうとしても不思議はない。だが、才助はそうしなかった。彼女の想いを汲み取り、援助することで以登の信頼を勝ち取っていくのである。才助の戦いはそこにあった。

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容疑者Xの献身

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:西谷弘

東野圭吾の原作小説を先に読んでいるので、何故、石神(堤真一)が花岡靖子(松雪泰子)、美里(金澤美穂)母子を助けようとしたのか、そのために何をしたのか最初から分かっている。全体的に巧く映画化されていると思うが、彼が泰子に恋しているという気持ちだけでは片手落ちだと思う。

石神は母子二人の醸し出す温かい空気によって心が浄化されたのではないか。泰子は富樫(長塚圭史)の代わりに自分を支配する存在として石神を避けるようになるが、美里はそんな母に批判的になる。彼と美里の間には何がしかの交流があり、最後にその触りが少しだけ描かれていたけれど、ここが強調されないと石神の真意がうまく伝わらないと感じる。

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2010/05/09

NINE ナイン

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ロブ・マーシャル

どんな境遇であろうとも人というものは、いつも何かに悩んでいる。お金があろうがなかろうが、幸せであろうがなかろうが、それは一緒だ。神の元の平等とは、そういうものではないかと思う。

それでも、本作品の主人公、映画監督グイド(ダニエル・デイ=ルイス)のような悩みを抱ける人は、極めて少ないだろう。何しろ、製作の決まっている映画なのに、脚本は未だ完成せず、頭の中も白紙状態というのだ。台本が書き上がらず舞台上演の延期が続いた故・井上ひさし氏なら、共感することも大ではないかと推測するが、常人には遠い世界だ。

普通なら、これだけは訴えたいという明確なモチーフがあって映画はスタートするのであろうが、商業的に確立した映画監督なら、その名前だけで企画が進行してしまうこともあり得る事態。

だが、これはやはり本末転倒というべきことであり、仮にグイドが映画を撮りあげたとしても傑作など望むすべもない。あまたある失敗作はこうして生み出されたのではないか。本当に撮りたいと思えるものが見つけることが、真の芸術への道である。

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2010/05/06

マイレージ、マイライフ

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジェイソン・ライトマン

人生の転機はどこでやってくるか分からない。リストラ宣告人として辣腕を振るい、出張生活を謳歌するライアン(ジョージ・クルーニー)。しかも、同じ価値観を持つキャリアウーマンのアレックス(ヴェラ・ファーミガ)と出会い、楽しい日々が続く。だが、新入社員のナタリー(アナ・ケンドリック)の提唱する施策により出張自体がなくなることに。そして、妹の結婚式に参列し、結婚を不安がる婿に対して諭すライアンの言葉。

こうしたことが重なり、“バックパックに入らない人生の荷物はいっさい背負わない”としていた彼の信条が大いに揺らぐことになるのだ。人とのつながりについて見つめ直していくライアン。それは、正しいことかもしれないし、負担を感じて後悔することかもしれない。何を大切に思うかは、その時の状況によって変わっていくのだ。その答えを模索するラスト・シーンだったと思う。

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2010/05/04

シャーロック・ホームズ

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ガイ・リッチー

印象的な場面がある。ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)は類まれな観察力を発揮して、ワトソン(ジュード・ロウ)の婚約者メアリー(ケリー・ライリー)の人物像を推理していく。次々と彼女の過去を明らかにしていくのであるが、最後の最後で誤ってしまう。相棒のワトソンを奪われたくないという感情が優先してしまったからだろう。天才探偵ホームズといえでも、万能でないことを最初に示している。

また、知覚が敏感であるということは、膨大な情報量が集まり、処理しきれないことも多い。ホームズが酒や麻薬に浸り、自堕落な生活をしているのは、その情報量からの逃避なのだと感じさせる。異能であることは、凡人には窺えない労苦も多いのである。

世界的な天才探偵の物語であっても、自らのスタイルで描ききったガイ・リッチー監督。時世を巻き戻すシークエンスが秀逸であった。

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