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2010年4月

2010/04/29

プライド

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:金子修介

境遇も性格も対照的な二人、有名オペラ歌手の忘れ形見で名門音大に通うお嬢様育ちの史緒(ステファニー)。粗暴な母と二人暮らしでバイトを掛け持ちして二流音大の学費を工面する萌(満島ひかり)。萌は貪欲に成功を求め、史緒は鷹揚と成功を待ち望む。もし、何もなければ、二人の人生は平行線のままであっただろう。

だが、そこはドラマの面白さ、史緒の父、麻見総一郎(ジョン・カビラ)が事業に失敗し、金銭的支援を受けられなくなってしまったのだ。境遇が一緒になることで、二人の生き方の違いが鮮明に浮かび上がる。史緒はプライドを捨てることはできず、萌は文字通り人を殺してでもチャンスをつかもうとする。

二人は忌み嫌うようになるのであるが、またも運命の皮肉さ。デュエットしてみれば、二人の声質は絶妙に合ってしまうのだ。憎みあう二人から最高の音楽が生み出される。こうしたところに芸術の不思議さを感じてしまう。

金子修介監督は、こんなドロドロの愛憎劇をケレン味たっぷりに描き、大いに盛り上げる。やはり巧いものだ。

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2010/04/28

色即ぜねれいしょん

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:田口トモロヲ

“格好悪いことが、格好良いことなんだ”という感慨を抱く乾純(渡辺大知)。見た目の格好など所詮、付け焼き刃でしかない。生身の姿をさらし出す覚悟があれば、どんなプレッシャーも乗り越えられる。失敗してもいいのだ。おんなの子に振られても構わない。そうした姿は、やがて他者を惹きつける魅力になる。“音楽は武器なんだ”というヒッピー(岸田繁)の言葉もあった。武器として使えるのは、そんな心境を悟った者だけなのだろう。

彼がクライマックスの文化祭で歌う“エロチシズム・ブルース”が圧巻。それまでの悩みなど吹き飛ばすような迫力があった。ここで映画の様相は大きく変わっていく。

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2010/04/27

渇き

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製作年:2009年
製作国:韓国
監 督:パク・チャヌク

可能性の限界って、乗り越えられない壁も存在するでしょうが、意外に自分の思い込みで壁を作ってしまうことも多いのではないか。義母のラ夫人(キム・ヘスク)と夫ガンウから犬のような仕打ちを受けていると訴えるテジュ(キム・オクビン)。

だが、あれって思った箇所がある。サンヒョン(ソン・ガンホ)に会いたい余り、日曜日の午後に病院でボランティアに参加したいとテジュが嘘をついた時の場面である。あまりに突拍子もないことで驚いたのかもしれないが、ラ夫人は絶対的な反対はしなかったのである。彼女はずっとこの家から離れたいと、真夜中に彷徨う行為を繰り返しているが、出て行こうとすれば不可能ではないのだ。

テジュは、その事を知らず、無駄な惨劇を引き起こし、自ら滅びの道を歩んでいくことになる。それが哀しい。

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2010/04/22

九月に降る風

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製作年:2008年
製作国:台湾
監 督:トム・リン

本作品がありふれた青春ドラマと一線を画するのは、1996年当時、実際に起きた台湾プロ野球の八百長事件と平行して描いていることである。ただの時代背景というには、あまりに多用されて過ぎている。逆の味方をすれば、この問題こそ映画製作者はテーマにしたかったのではないか。スポーツとしての夢と希望を背負ったプロ野球が八百長していたと明らかになった時、真のファンはどれほどの失望と怒りを感じたことか。その激しい感情は、本作品の登場人物たちが直面するものと重なって見えてくる。

バカ騒ぎをして楽しんでいた7人の男子生徒。その関係がいつまでも続いていくと思えたのに、気がつけば一人抜け、二人抜け、バラバラになってしまう。誰もこんな事態は予想もしていかった。その空しさを抱えて、前を進んで行かねばならない。最後にプロ野球選手のリャオ・ミンシュン本人が登場するのは、彼らとプロ野球の再生へのエールとも感じ取れた。

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2010/04/11

ハート・ロッカー

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:キャスリン・ビグロー

例えば、「タクシードライバー」(1976)のトラヴィス。例えば、「ディア・ハンター」(1978)のニック。例えば、「地獄の黙示録」(1979)のカーツ大佐。本作品のジェームズ二等軍曹(ジェレミー・レナー)を見ていると、かつてベトナム戦争で苛まれた男たちを次々と思い出され、止むことがない。戦場の過酷さは、ジャングルから中東に舞台を移しても、変わることがない。

常に死と向き合っていかねばならない兵士たちの神経は、いつしか麻痺してしまいコントロールできなくなってしまう。休暇でアメリカに帰ったとしても、自分の居場所を見つけられないもどかしさ。ジェームズの任務は死ぬことでしか終了できないのではないかと思わせるラスト・シーン。

キャスリン・ビグロー監督は、これまでにも極限状態に置かれた男たちの姿を描いてきたが、その集大成と呼べる作品。全編漲る緊迫感は尋常ではなく、見る者を疲弊させてしまう。

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2010/04/03

初恋のアルバム 人魚姫のいた島

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製作年:2004年
製作国:韓国
監 督:パク・フンシク

なんという強引な設定。失踪した父親を捜しに済州島へ訪れたナヨン(チョン・ドヨン)。そこで、何の説明もなく、結婚する前の若き両親が暮らす時代に彼女はタイムスリップしてしまうのだ。自分とそっくりの母親ヨンスン(チョン・ドヨン)と出会い、当たり前のように暮らし始めてしまう。

青年時代の父ジングン(パク・ヘイル)は、ナヨンに心乱されることなくヨンスンだけに純朴な愛を捧げる。ここまでの展開で、いろいろな葛藤が生じる筈であるが、さらりとやり過ごされてしまう。もう少ししっかりとした設定の説明が欲しい。

という不満はひとまず置いておいて、残酷なドラマであると思う。一途に初恋を育んでいる二人の未来に何が待っているか、ナヨンと観客である我々は、知っているのである。“優しさだけでは生きていけない”というハードボイルドのような台詞もあったが、優しさだけで生きていられた済州島での生活が切なく見えてならない。

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