製作年:2009年

2011/04/13

エリックを探して

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製作年:2009年
製作国:イギリス/フランス/イタリア/ベルギー/スペイン
監 督:ケン・ローチ

結婚にも二度失敗し、何をしても上手くいかず、しょぼくれた人生を過ごす中年男。仕方なく一緒に暮らしている連れ子がもたらす家族の危機。何故か彼の前に現れる地元マンチェスターの英雄、エリック・カントナ。

人は一人では生きてはいけない。実際問題としてエリック・ビショップ(スティーヴ・エヴェッツ)に訪れた危機を、本作品で示した解決策で解消されるのか大いに疑問であるが、家族や友人との絆の素晴らしさを誇張した表現として提示されたものだと思う。

サッカーにおいて美しいパスが感動のゴールを生むように、的確な意思疎通が人生にかけがえのない豊かさや喜びをもたらすのだ。

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2011/03/29

愛する人

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製作年:2009年
製作国:アメリカ/スペイン
監 督:ロドリゴ・ガルシア

14歳という若さゆえ生まれたばかりの我が子を里子に出さなければならなかった母。暖かい家庭の愛情を知らずに孤独に心を閉ざした娘。37年の時間を経て二人が迎える人生の転機。

ロドリゴ・ガルシア監督の繊細な女性像の描写は極めて魅了的であり、『彼女を見ればわかること』(1999)、『美しい人』(2005)にも大いに感心してきたが、本作品も期待を裏切らない。

カレン(アネット・ベニング)にしろ、エリザベス(ナオミ・ワッツ)にしろ、大きな心の傷のダメージから、人間関係を潤滑に送れない欠落を抱えている。時にひどい行為も犯してしまうが、それすらも哀しく映る。互いに相手を探し始めるのに、37年もかかったのはあまりに長すぎる空白期間であるが、探そうと決意したところから、彼女たちの再生は始まった。

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2011/03/27

ウッドストックがやってくる!

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:アン・リー

歴史にその名を残すロック野外音楽イベントの“ウッドストック・フェスティバル”。思わぬきっかけからその誘致に走り大成功させた一人の男。混乱と狂騒の日々の舞台裏。

その歴史の裏側で何が起きていたのかという実録ドラマより、アン・リー監督らしい崩壊しつつある家族の再生のドラマの方に重きが置かれている。その辺りの期待度の高さによって、本作品の評価は変わってくると思う。

エリオット(ディミトリ・マーティン)が本当に成し遂げたかったのは、両親が経営しているモーテルの再建よりも、強欲的なソニア(イメルダ・スタウントン)の支配から逃れることだった。ロック・フェスティバルという非日常世界から見えてくる何かもあるということだ。

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2011/01/26

人生万歳!

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ウディ・アレン

ウディ・アレンの分身である偏屈な中年学者ボリス(ラリー・デヴィッド)。南部の田舎町から家出してきた世間知らずな若い娘メロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)。ひょんなことから出会った二人の恋愛関係を洒脱なタッチで描くロマンティック・コメディ。

ロンドン三部作の深刻な作風とは打って変わり、故郷ニューヨークを舞台にすると、懐かしいウディ・アレンの世界が広がる。この二人の関係はいつまでも続くものではないけれど、それを悲観せずに変わったところから新たなドラマが始まることを期待したい。

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2011/01/18

白いリボン

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製作年:2009年
製作国:ドイツ/オーストリア/フランス/イタリア
監 督:ミヒャエル・ハネケ

第一次世界大戦前夜、北ドイツの小さな田舎町。次々と連鎖的に起こる不可解な事件。それによって引き起こされる村人たちの疑心暗鬼。

何故、こんなことが起きてしまうのか。悪意の連鎖は権力側だけでなく弱者側にも及んでいる。犯人が誰であるかは、早々に暗示される。だが、何のためにそんな事件を引き起こしているのか、目的がはっきりしない。そこに底知れぬ恐れを感じてしまうのだ。

すべて人々が幸せに暮らしていける理想郷というのは、どんなに探しても見つからないかもしれない。どこの世界にも抑圧された人々が存在する。だから、抑圧のレベルを判断できる知識を、我々は持たなければならないのだ。

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2011/01/17

ザ・ロード

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジョン・ヒルコート

文明が崩壊し荒廃し尽くしたアメリカ大陸。わずかな希望を胸に南へ向かい旅を続ける一組の父子。飢えや寒さ、暴徒たちの襲撃、心休まる日のないサバイバルの日常。

極限状態に置かれたとき、何を基準に判断すればいいのだろうか。母親(シャーリーズ・セロン)のように、希望を失い自殺の道を選ぶのか。父親(ヴィゴ・モーテンセン)のように、息子を守り抜くため旅に出るか。普通に考えれば、父親の方が正しいと思えるけれど、人肉を食べる暴徒たちを相手に旅を続けるのは、あまりに過酷なことである。

いざ、自分の身に何かあれば、幼い息子が一人きりで放り出させることになる。さすれば、母親の思いもあながち否定できるものではない。どちらが正しくて、どちらが間違っているのかという問題ではないのだ。それぞれの思いで選び取るしかないのだ。

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2011/01/06

シングルマン

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:トム・フォード

愛する者を亡くしてから繰り返される絶望の日々。ついに自殺を決意した男が過ごす運命の一日。丁寧に綴ってゆく日常の些事。

とにかく映像が素晴らしい。淡々と過ごすセピア色の色調の中、今まで気付かなかった日常の美しさがヴィヴィッドに浮かび上がってくる。ジョージ(コリン・ファース)の軽い驚きがこちらにも伝わってくる。

非常に謎めいた教え子ケニー(ニコラス・ホルト)の存在。彼の解釈を色んな方々から聞いてみたいものだ。

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2010/12/20

ソフィアの夜明け

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製作年:2009年
製作国:ブルガリア
監 督:カメン・カレフ

社会主義体制の崩壊から経済の自由化という激動の日々を過ごしたブルガリア。そこで生きる閉塞感の中の兄弟。さらに追い討ちをかける薬物中毒治療の苦痛。

あまり見る機会のないブルガリアの街並みが興味深い。“ヨーグルト”や“琴欧州”などで日本でも馴染みのある国ではあるけれど、その実情など知る術がなかった。例えば、トルコ人に対する差別的態度を取る人々がいるなど教えてくれるから、映画とは有効な表現であると思う。

しかし、知らない国とは言え、そこで生きているのは同じ人間であるから、イツォ(フリスト・フリストフ)の苛立ちも、ゲオルギ(オヴァネス・ドゥロシャン)の不安も、十二分に伝わってくる。

イツォが国を出てもすぐに将来が開ける保証などないだろうが、閉塞感を打ち破るのはまず行動するしかない。その肯定的姿勢を映画的に表わしたものだと思う。

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2010/11/24

運命のボタン

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:リチャード・ケリー

見知らぬ人の命と引き換えに大金が手に入る奇妙な箱。経済的に追い詰められた夫妻が選ぶ必然の選択。止めることができない奈落への道。

公開当時、賛否両論あったのが良く分かる内容だ。どうしてそんな箱があり、夫婦に託されるのか。その理由が明らかになったとき、唖然としてしまう。確かにそういうことであれば、ありうることであろうが、フィクションの限界を突き破っており、興醒めしてしまう。

ならば、あくまで箱を持ってきたアーリントン・スチュワード(フランク・ランジェラ)の正体を明らかにせず、疑心暗鬼のまま、ドラマが進んでいく方が面白くなったのではないかと感じる。

なかなか難しい脚本ながら、リチャード・ケリー監督は独特の世界観のある映像を作り上げて、不安感を煽る。

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2010/11/23

冬の小鳥

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製作年:2009年
製作国:韓国/フランス
監 督:ウニー・ルコント

別れの言葉もなく一人取り残される児童養護施設。その状況を認めることが出来ず反抗を繰り返す幼い少女。自分と重ね合わせる傷付いた小鳥。

何故、自分が捨てられたのか。ジニ(キム・セロン)は幼いながらもその理由を分かっている。盲目的に父親が迎えにきてくれると信じているのは、迎えにきてくれないことを無意識の内にも感じているからだろう。

だが、それでも生きてはいけない。養護施設の中にも、様々な人生の縮図があり、ジニは人生の不条理を静かに見つめている。

ウニー・ルコント監督自身の体験から紡ぎだされていくドラマは、切なくて哀しくて、どこか力強さを感じさせてくれました。

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