製作年:2009年

2009/12/03

母なる証明

製作年:2009年
製作国:韓国
監 督:ポン・ジュノ

こんな凄い映画だとは思わなかった。「ほえる犬は噛まない」(2000)、「殺人の追憶」(2003)、「グエムル 漢江の怪物 」(2006)と、過去のポン・ジュノ監督長編作品は、それぞれ傑作ばかりで、期待感いっぱいで観賞したのであるが、それを大きく上回る出来栄えである。殺人事件の容疑者となった息子を救出するため、真犯人を探し続ける母親のドラマ。それだけなら、決して珍しい話ではない。その枠をどんどん飛び出していくから、目が離せなくなる。

冒頭のシーン。ここからして傑作の始まりを思わせる。とにかく、見る者の予兆を打ち破るようなドラマ展開がどんどん続いていくのだ。ただのドンデン返しではない。決して明朗とは言えない結末を知ってなお、何度も見直したくなるのは、非常に優れた脚本と共に、鮮烈な映像に魅了されたためであろう。人間の業の深さとは何か、大いに考えさせられました。

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2009/11/30

わたし出すわ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:森田芳光

何故、摩耶(小雪)が友人たちにお金を振舞うのか。その理由は終盤には明らかにされるので、さほど重要なテーマではないと思う。ただ、その行為が正しいとは限らないことである。彼女は本当に必要としている者にお金を渡しているのではない。自分の感謝の気持ちとして、なかば押し付けのような形でも提供しているのである。

それは、川上孝(山中崇)の治療費や引っ越し屋さんの旅行費のように幸福へ繋がる場合もあれば、道上保(井坂俊哉)の妻かえで(小山田サユリ)のように不幸への道を作ってしまう場合もある。摩耶のように物欲に左右されない金銭感覚が、誰にも備わっていないのだ。お金は権力と同じだ。その力を正しく使えなければ、自ら滅ぼされてしまう。

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2009/11/29

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:マキノ雅彦

“野生の領域には触れてはならなかった”。不慮の事故で亡くなった韮崎(長門裕之)の通夜の席で、新人飼育員の吉田(中村靖日)は、昂然と言い放つ。それに対して、“後出しジャンケンみたいなことはするな”と烈火のごとく怒る滝沢園長(西田敏行)。この場面が印象深い。

閉園の危機に追い込まれながらも、日本一の観客動員を記録する人気動物園へと復活させた旭山動物園。その成功を得るまで試行錯誤の連続だった。動物の飼育方法についても、これが正しいという答えなどなかったのだろう。だから、時に間違える。その結果だけを見て、けなすことは誰でもできる。この動物園は、やがて正解を見つけていくのだが、そのことを誉めることだって誰でもできる。何か答えを見つけようと懸命に努力続ける姿勢にこそ、感銘を受けるのだ。

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2009/11/24

きみがぼくを見つけた日

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ロベルト・シュヴェンケ

タイムトラベルができると言えば、誰もが羨む特殊能力であろうが、それも自分の意思で行きたい時代が選べることができればという条件付きである。本作品のヘンリー(エリック・バナ)のように、何の前触れもなく、突然に過去や未来へ飛ばされてしまい、しかも、着いた先では真っ裸ということであれば、誰もその能力を望む者はいない。治療不能の奇病と言ってもよく、ヘンリーの苦悩は続く。

だが、その能力があってこそ、クレア(レイチェル・マクアダムス)と出会い、結ばれることになったのだ。その力を賢く利用することさえあった。特殊能力は神からの授かりものであり、それがあるから必ず幸福になるとか不幸になるということではない。その力といかに付き合え、プラス面を引き出していくは、個人の心一つである。何を選び、何を諦めるか。そのことで道は開けていくのだと思う。

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2009/11/18

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:根岸吉太郎

ファム・ファタールと言えば、男を破滅させる魔性の女、いわゆる悪女のことを意味する用語として使われることが多い。まさに、男にとっての運命の女、決して逃れる術もなく、ひたすら堕ちていくしかない。本作品の佐知(松たか子)も、その一人ではないかと感じた。才能に恵まれながらも、私生活では酒を飲み歩き、借金を重ね、浮気を繰り返す小説家の大谷(浅野忠信)。そんな身勝手な振る舞いにも、文句も言わず夫を支える佐知を、誰もが誉めるであろう。

だが、本当にそれだけであろうか。元々、破滅型志向があったとはいえ、佐知と家庭を持つようになってから、大谷のそれは加速されてしまっている。佐知が何も言わないから甘えているのだという一面もありつつ、別の側面も隠させているのではないか。佐知は、いわゆる良妻賢母という女性ではない。思い切った行動の裏側には、彼女自身、破滅志向を秘めているのではないかと予感させるのだ。無意識的にも男を狂わす何かを秘めた女ではないだろうか。

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2009/11/17

ハルフウェイ

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:北川悦吏子

大学進学のため、東京へ向かう男の子と地元に残る女の子の話といえば、遠く太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(1975)でも歌われたくらい決して珍しいモチーフではない。極めて今日的と思えたのは、ヒロ(北乃きい)は暴力的行動も加え強い調子で「東京に行くな」と言い、シュウ(岡田将生)も、早稲田進学を翻意し地元に残ると言ってしまうところである。ヒロのわがまま、シュウの優柔不断と言ってしまえばそれまでであるが、自分にとっての正解が見つからず、悩み続けるという高校生の日々は、過ぎ去ってしまった自分にとって非常に眩しく見える。

“halfway”(ハーフウェー)を間違えて、(ハルフウェイ)と呼ぶエピソードが印象的。二人はどんなに間違えても、修正の効く時間がたくさん残されているのだ。

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2009/11/16

私の中のあなた

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ニック・カサヴェテス

遺伝子操作によって生まれてくるドナーになるべく宿命をおった子供。といえば、さる著名な作家の小説を思い浮かべます(その作家とタイトルは、その小説のネタバレとなりますので、ここでは伏せておきます)。いかに重病人を救うためとはいえ、選択の余地もなく切り刻まれていく子供たちの行末に暗然といたしました。

本作品のアナ(アビゲイル・ブレスリン)もその一人。彼女はドナーを拒否すべく母親サラ(キャメロン・ディアス)相手に裁判を起こす。その真意は、注意深く見ていれば、すぐに分かってくるものだ。白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)を救うべく、あらゆる手立てを講じるサラ。不撓不屈、決して諦めないという精神は、本来、誉められるべき美徳であるが、果たして、そればかりではなのではないかというのが本作品の問い掛けだ。正しい、間違っているという二元論ではなく、どれを選んでみても正しい。問題は誰が選ぶのかということではないだろういか。

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2009/11/08

空気人形

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:是枝裕和

この映画の成功は、ペ・ドゥナをキャスティングできたことによる。日本の女優さんでも成り立つ話ではあるが、片言の日本語が、絶妙に“空気人形”の設定に合う。何より儚げな存在感を見事に体現している。心を持った人形と心をなくした人間たちの対比も興味深い。では、心とは何か? この世界に美しさを見出せることができるか否かというのが、本作品のテーマではないか。

ただ、難を言えば、“空気人形”がこの世界を体感していくところを省略し過ぎではないだろうか。いきなりレンタルビデオ店で働き始め、洋服をショッピングしている。その購入費用はどうしたのか。無論、是枝監督はその辺りのことも分かっていて、あえて省いているのだろうと思うのであるが、やはり、きちんと説明は欲しい。

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2009/11/01

サマーウォーズ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:細田守

世界のインフラを支えるデジタル・ネットワークと生々しいヒューマン・ネットワークの対比。どちらかが良くで、どちらかが悪いという問題ではない。既にどちらもないと成り立っていかない世界となっているのだ。本作品のすぐれているところは、どちらの世界も魅力的に描かれているところだと思う。

ヒューマン・ネットワークで一番感動的だったのは、栄おばあちゃん(富司純子)の人脈。黒電話を使って、政財界の大物たちに“あんたならできる”との決め台詞で次々と指示を与えていく。これに対し、デジタル・ネットワークでの見せ場は、夏希(桜庭ななみ)の花札勝負。絶体絶命のピンチを救ったのは誰か? この辺りから涙が止まらなくなりました。

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2009/10/29

リミッツ・オブ・コントロール

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジム・ジャームッシュ

何かジム・ジャームッシュ監督の集大成と感じさせる作品でした。過去の作品の残像が次々と重なってきて、まさにジム・ジャームッシュの映画であるなぁと感じさせます。とはいえ、これまでの作品の中で一番難解である。

「世界で一番偉いと思っている男を殺す」。その指令を受けた“孤独な男”(イザック・ド・バンコレ)。スペインの各地でコードネームだけで呼ばれる仲間たちから指令を受け取り続ける。その細かい反復の連続。宇宙には中心も端もないという言葉には、どんな意味が込められているのか。謎が謎のまま、すべて明らかにならない。現実と非現実が錯綜する風景を色彩感覚豊かにとらえたクリストファー・ドイルの映像美に酔い痴れました。

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