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2009年11月

2009/11/30

わたし出すわ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:森田芳光

何故、摩耶(小雪)が友人たちにお金を振舞うのか。その理由は終盤には明らかにされるので、さほど重要なテーマではないと思う。ただ、その行為が正しいとは限らないことである。彼女は本当に必要としている者にお金を渡しているのではない。自分の感謝の気持ちとして、なかば押し付けのような形でも提供しているのである。

それは、川上孝(山中崇)の治療費や引っ越し屋さんの旅行費のように幸福へ繋がる場合もあれば、道上保(井坂俊哉)の妻かえで(小山田サユリ)のように不幸への道を作ってしまう場合もある。摩耶のように物欲に左右されない金銭感覚が、誰にも備わっていないのだ。お金は権力と同じだ。その力を正しく使えなければ、自ら滅ぼされてしまう。

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2009/11/29

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:マキノ雅彦

“野生の領域には触れてはならなかった”。不慮の事故で亡くなった韮崎(長門裕之)の通夜の席で、新人飼育員の吉田(中村靖日)は、昂然と言い放つ。それに対して、“後出しジャンケンみたいなことはするな”と烈火のごとく怒る滝沢園長(西田敏行)。この場面が印象深い。

閉園の危機に追い込まれながらも、日本一の観客動員を記録する人気動物園へと復活させた旭山動物園。その成功を得るまで試行錯誤の連続だった。動物の飼育方法についても、これが正しいという答えなどなかったのだろう。だから、時に間違える。その結果だけを見て、けなすことは誰でもできる。この動物園は、やがて正解を見つけていくのだが、そのことを誉めることだって誰でもできる。何か答えを見つけようと懸命に努力続ける姿勢にこそ、感銘を受けるのだ。

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2009/11/25

僕の彼女はサイボーグ

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製作年:2007年
製作国:日本
監 督:クァク・ジェヨン

タイムトラベルが出来たとして、過去を変えることができるのか。どんな事をしたって歴史の流れを変えることはできないという虚無感を抱かせるか、細かいことなど気にせず過去の禍根を断って、明るい未来を築くことができるのか。それこそ、作者の姿勢が問わる命題だと思う。どれだけのタイムトラベラーがいるのか分からないが、それぞれが過去を干渉してしまえば、大混乱が起きるのは必至なので、歴史の流れは変えられない、変えてはならないという方が正しい道だと思うのであるが、どうであろう。

本作品も未来から来たサイボーグ(綾瀬はるか)が悲惨な事件を止めようと大活躍してしまう物語だ。正確に事件現場や発生時刻が分かっているので、常人を越える能力を発揮し、事件を未然に防いでしまう。それをいいけれど、いささか無邪気過ぎるのではないだろうか。それが映画の夢と言ってしまえばそれまでであるが、あまり感心できなかった。

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2009/11/24

きみがぼくを見つけた日

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ロベルト・シュヴェンケ

タイムトラベルができると言えば、誰もが羨む特殊能力であろうが、それも自分の意思で行きたい時代が選べることができればという条件付きである。本作品のヘンリー(エリック・バナ)のように、何の前触れもなく、突然に過去や未来へ飛ばされてしまい、しかも、着いた先では真っ裸ということであれば、誰もその能力を望む者はいない。治療不能の奇病と言ってもよく、ヘンリーの苦悩は続く。

だが、その能力があってこそ、クレア(レイチェル・マクアダムス)と出会い、結ばれることになったのだ。その力を賢く利用することさえあった。特殊能力は神からの授かりものであり、それがあるから必ず幸福になるとか不幸になるということではない。その力といかに付き合え、プラス面を引き出していくは、個人の心一つである。何を選び、何を諦めるか。そのことで道は開けていくのだと思う。

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2009/11/23

ロックンローラ

製作年:2008年
製作国:イギリス
監 督:ガイ・リッチー

2008年のリーマン・ショック以降、世界的な金融危機に見舞われ、経済的に大変な打撃を受ける。そうしたことを踏まえて、本作品を見ると何か感慨深いものがある。不動産バブルに沸くロンドン。東欧の資本が続々と流入し台頭してくるロシア・マフィア。不動産界を暗然と支配する裏社会。こうした世界そのものが、やがて崩壊していくのである。

ガイ・リッチー監督の出世作「ロック、ストック & トゥー・スモーキング・バレルズ」(1998)を彷彿させる複雑に入り組んだ群像劇。巧みな編集と魅力的な人物造形で大いに感心させられるが、その行末は暗い。すべてを欲しがるのが“ロックンローラ”というが、彼はこの不況下でも生き残れるのだろうか。

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2009/11/22

純喫茶磯辺

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:吉田恵輔

今時の女子高生が自称小説家に憧れ、いかに作品を読んで欲しいと言われからとはいえ、二人だけの小説家の家へ上がり込んだりしないのではないか。父親と違うタイプに惹かれるというところを見せるためとはいえ、もっと警戒心があってしかるべきだと思う。

そんないかにも作りごとめいたエピソードも多いのであるが、キャラクター造形はなかなかのものである。特に凄かったのは、麻生久美子の素子。近年、日本映画に多数出演している彼女であるが、これほどイライラするような女性を演じきっているのは驚いた。計算づくではなく、本当に人の気持ちが分からず、他者との関係性を深めることできない欠落感を見事に表現していたと思う。

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2009/11/20

パラダイス・ナウ

製作年:2005年
製作国:フランス/ドイツ/オランダ/パレスチナ
監 督:ハニ・アブ・アサド

いまなお世界各地で起きている自爆テロ。その実行犯を描いた作品では「シリアナ」(2005)に衝撃を受けたが、本作品も相当に力のある映画である。イスラエルへの自爆攻撃を行うパレスチナの青年。サイード(カイス・ナシフ)とハーレド(アリ・スリマン)。この二人を主人公とすれば、自爆攻撃の犠牲者遺族から激しい抗議が出ることは止める術はないであろう。だが、本作品は彼らを英雄視して描いている訳ではない。そこに至るまでの様々な逡巡を見せることで、現実の一端を焼きつけようとしているのだ。こうした男たちが今日も命を散らしていく。

サイードの母を演じるヒアム・アッバスは、「シリアの花嫁」(2004)、「扉をたたく人」(2007)、「リミッツ・オブ・コントロール」(2009)など注目作品に出演を続け、注目しておきたい女優さんの一人です。

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2009/11/18

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:根岸吉太郎

ファム・ファタールと言えば、男を破滅させる魔性の女、いわゆる悪女のことを意味する用語として使われることが多い。まさに、男にとっての運命の女、決して逃れる術もなく、ひたすら堕ちていくしかない。本作品の佐知(松たか子)も、その一人ではないかと感じた。才能に恵まれながらも、私生活では酒を飲み歩き、借金を重ね、浮気を繰り返す小説家の大谷(浅野忠信)。そんな身勝手な振る舞いにも、文句も言わず夫を支える佐知を、誰もが誉めるであろう。

だが、本当にそれだけであろうか。元々、破滅型志向があったとはいえ、佐知と家庭を持つようになってから、大谷のそれは加速されてしまっている。佐知が何も言わないから甘えているのだという一面もありつつ、別の側面も隠させているのではないか。佐知は、いわゆる良妻賢母という女性ではない。思い切った行動の裏側には、彼女自身、破滅志向を秘めているのではないかと予感させるのだ。無意識的にも男を狂わす何かを秘めた女ではないだろうか。

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2009/11/17

ハルフウェイ

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:北川悦吏子

大学進学のため、東京へ向かう男の子と地元に残る女の子の話といえば、遠く太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(1975)でも歌われたくらい決して珍しいモチーフではない。極めて今日的と思えたのは、ヒロ(北乃きい)は暴力的行動も加え強い調子で「東京に行くな」と言い、シュウ(岡田将生)も、早稲田進学を翻意し地元に残ると言ってしまうところである。ヒロのわがまま、シュウの優柔不断と言ってしまえばそれまでであるが、自分にとっての正解が見つからず、悩み続けるという高校生の日々は、過ぎ去ってしまった自分にとって非常に眩しく見える。

“halfway”(ハーフウェー)を間違えて、(ハルフウェイ)と呼ぶエピソードが印象的。二人はどんなに間違えても、修正の効く時間がたくさん残されているのだ。

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2009/11/16

私の中のあなた

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ニック・カサヴェテス

遺伝子操作によって生まれてくるドナーになるべく宿命をおった子供。といえば、さる著名な作家の小説を思い浮かべます(その作家とタイトルは、その小説のネタバレとなりますので、ここでは伏せておきます)。いかに重病人を救うためとはいえ、選択の余地もなく切り刻まれていく子供たちの行末に暗然といたしました。

本作品のアナ(アビゲイル・ブレスリン)もその一人。彼女はドナーを拒否すべく母親サラ(キャメロン・ディアス)相手に裁判を起こす。その真意は、注意深く見ていれば、すぐに分かってくるものだ。白血病の姉ケイト(ソフィア・ヴァジリーヴァ)を救うべく、あらゆる手立てを講じるサラ。不撓不屈、決して諦めないという精神は、本来、誉められるべき美徳であるが、果たして、そればかりではなのではないかというのが本作品の問い掛けだ。正しい、間違っているという二元論ではなく、どれを選んでみても正しい。問題は誰が選ぶのかということではないだろういか。

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2009/11/15

ジャージの二人

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:中村義洋

“ワケあり父子(おやこ)の、何もしない夏休み”というセールスコピーであったが、何もしないというよりも何もできないと言った方が相応しいのではないか。北軽井沢の山荘へと避暑に来たというより、それぞれの苦悩の日々から逃げ出してきて、つかの間の休息をとっているような感じだ。

父(鮎川誠)にしろ、息子(堺雅人)にしろ、それぞれに悩みを打ち明けることはしない。無表情の中で自問自答を繰り返す。買い物の後、山道で道の迷ってしまうエピソードが印象的。まさに息子の現状そのものだ。彼らの悩みは、1年経っても解決していない。だが、解決の糸口はどこかにある。ジャージは一人きりになって、それを見つけていくのだろうと思う。

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2009/11/12

マンマ・ミーア

製作年:2008年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:フィリダ・ロイド

本作品の妙はメリル・ストリープをキャスティングしたところにある。毎年のようにアカデミー賞にノミネートされる当代一の名女優が、単に歌って踊るというだけなく、幼女のようにベッドの上を飛び跳ねたり、勢い余って海に飛び込んだり、けばけばしいステージ衣装を着て大熱唱したりしてしまうのである。これを異質と言うべきか、怪演と呼ぶべきか、大いに迷ってしまうところである。ABBAのヒットナンバーを素直に楽しむミュージカル映画であるが、他のキャストもその歌声に感嘆するというレベルまでなく、最後までどこかズレてしまっている感じがぬぐえない。それはそれで独自の魅力となっているのだが・・・。

同じような趣向でビートルズのヒット曲で作られたミュージカル映画「アクロス・ザ・ユニバース」(2006)という作品もあるが、話のトーンはかなりシリアスだった。アーティストの特性が映画の色まで決めていくのだろう。

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2009/11/11

ベガスの恋に勝つルール

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:トム・ヴォーン

どんなにいがみ合っていようとも、最後に二人は惹かれあっていくのは最初から予想が付くし、実際そうなっていく。いかにもハリウッド映画らしいロマンティック・コメディーであり、気楽に見ることができる。定番化したドラマの中でしみじみと考えさせてくれるのは、自分の心と率直に向き合うことができる機会をいかに持てるかということである。

ジョイ(キャメロン・ディアス)にしろ、ジャック(アシュトン・カッチャー)にしろ、それまでの価値観に縛られすぎて本当に自分というものが見えなくなっている。スロットマシンで大当てした300万ドルのために、半年間の結婚生活を過ごさなければならない二人。無理に無理を重ねることで、お互いの違う一面を発見し改めて恋に落ちていくのであるが、それと同時に新しい価値観にも気付いていくのだ。再生していく道はどこから始まるか分からないのである。

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2009/11/08

空気人形

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:是枝裕和

この映画の成功は、ペ・ドゥナをキャスティングできたことによる。日本の女優さんでも成り立つ話ではあるが、片言の日本語が、絶妙に“空気人形”の設定に合う。何より儚げな存在感を見事に体現している。心を持った人形と心をなくした人間たちの対比も興味深い。では、心とは何か? この世界に美しさを見出せることができるか否かというのが、本作品のテーマではないか。

ただ、難を言えば、“空気人形”がこの世界を体感していくところを省略し過ぎではないだろうか。いきなりレンタルビデオ店で働き始め、洋服をショッピングしている。その購入費用はどうしたのか。無論、是枝監督はその辺りのことも分かっていて、あえて省いているのだろうと思うのであるが、やはり、きちんと説明は欲しい。

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2009/11/04

あの日、欲望の大地で

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ギジェルモ・アリアガ

マリアーナ(ジェニファー・ローレンス)の事を責めることはできない。無論、自業自得と突き放すこともできるのであるが、愛を拒絶して、自らを罰するように生きる姿は実に痛々しい。いかにもギジェルモ・アリアガ監督の脚本らしい時制を交錯させた巧みな語り口で炙り出されていくのは、彼女の原罪だ。

シルヴィア(シャーリーズ・セロン)と名前を変え、高級レストランのマネージャーとして社会的成功を収めていても、自傷行為を繰り返す。決して消し去ることのできない罪の意識。だが、自分の娘マリア(テッサ・イア)が訪ねてきて、彼女の転機が訪れる。果たして、幸福への道を歩むことができるのかどうか分からない。それでも、一歩前に踏み出したのである。何か変わっていくのは間違いない。

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2009/11/01

サマーウォーズ

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:細田守

世界のインフラを支えるデジタル・ネットワークと生々しいヒューマン・ネットワークの対比。どちらかが良くで、どちらかが悪いという問題ではない。既にどちらもないと成り立っていかない世界となっているのだ。本作品のすぐれているところは、どちらの世界も魅力的に描かれているところだと思う。

ヒューマン・ネットワークで一番感動的だったのは、栄おばあちゃん(富司純子)の人脈。黒電話を使って、政財界の大物たちに“あんたならできる”との決め台詞で次々と指示を与えていく。これに対し、デジタル・ネットワークでの見せ場は、夏希(桜庭ななみ)の花札勝負。絶体絶命のピンチを救ったのは誰か? この辺りから涙が止まらなくなりました。

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