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2009年9月

2009/09/29

スフィア

製作年:1998年
製作国:アメリカ
監 督:バリー・レヴィンソン

最初から最後まで中途半端さが付きまとって離れない感じであった。ダスティン・ホフマン、シャロン・ストーン、サミュエル・L・ジャクソンの主演クラスだけでなく、脇に回ったピーター・コヨーテ、リーヴ・シュレイバー、クイーン・ラティファという俳優陣もかなり豪華であるのに、それが活かされていない。巨大な球体“スフィア”の影響を受けたのは誰かということも早々に映しているので、ミステリー的興趣も高まってこない。海中サヴァイバルへの展開も予想されただけに意外性に乏しい。

彼ら三人が最後に選んだ願望が唯一、おっと思わせるものであったけれど、その結論であるなら、この2時間を越えるドラマは一体何だったのかという、徒労感だけが残ってしまうのであった。

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2009/09/28

D-WARS ディー・ウォーズ

製作年:2007年
製作国:韓国
監 督:シム・ヒョンレ

90分というタイトな上映時間は好ましいとは思うけれど、これではあまりにも説明不足ではないか。脚本にはあるものの、編集でカットしたのではないかと思えるような唐突感と不自然さが、ずっと付いて回るのだ。その最たるものは、何故、500年に一度の戦いが朝鮮からロセンジェルスに移っていったのか、さっぱり分からないことだ。

勿論、巨大モンスターをアメリカの都市部で暴れさせたいという映像的意図が最優先なのは良く理解できる。それならそれで成り立つような物語を生み出せばいいことだ。古美術店の店主ジャック(ロバート・フォスター)の行動意図もさっぱり不明。サラ(アマンダ・ブルックス)を守るのであれば、イーサン(ジェイソン・ベア)に託すのではなく、自分で戦う方が早いだろうにと、思えてしまう。

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2009/09/27

肉弾

製作年:1968年
製作国:日本
監 督:岡本喜八

2009年8月シネ・ヌーヴォで“映画のアルチザン・岡本喜八”という、全作品39品上映される魅力的な特集上映があった。結構、岡本喜八作品は見ているような気がしていたが、あらためて数え直してみると、確実に見たと言えるのが6本。見た筈だけど記憶があやふやなのが4本だった。できれば毎日に様に通いたいと思っていたが、そうそう時間もなく代表作として挙げられる本作品をなんとか見ることが出来た。

テンポよい展開。洒脱なスタイル。ユニークな風刺精神。やはり期待に違わぬ傑作であった。その当事者でなければ分からない想いがあると思う。太平洋戦争終戦末期、学徒招集されて特攻作戦を命じられる“あいつ”(寺田農)。作戦遂行直前に一日だけ与えられた休日。そこで出会う様々な人々。強烈な作家性を感じられるのは、なんといってもラスト・シーンだ。あの骸骨は岡本監督自身の怨念なのだろう。果たされることもなく、今も海に漂っているのではないか。

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2009/09/21

ヤング@ハート

製作年:2007年
製作国:イギリス
監 督:スティーヴン・ウォーカー

平均年齢80歳のコーラス隊“ヤング@ハート”の歌声に魅了される。決してうまいわけではない。素人芸と言ってしまえばそれまでであるが、パフォーマンスとは演者の技能レベルだけで評価されるものではないことに気付かされる。まず、取り合わせの妙がある。老人たちが、ロック・ミュージックを歌う。それも、ビートルズのような大スタンダード・ナンバーでない。クッラシュやラモーンズといったパンク・バンドの楽曲を歌うのである。

若者の不平不満を爆発させた歌詞と老人では、どうしたってイメージが合わない。だが、実際、演じてみると、どうであろう。奥深い、味わい深いとしか表現できない仕上がりぶりである。最大の聴きどころは、Coldplayの“Fix You”だ。公演間際に亡くなった友への鎮魂歌をして、しみじみと心の中へ響き渡っていく。こういう形でオリジナル・ナンバーを超えることもできるのだ。彼らをまとめる、厳しくも暖かい指揮者ボブ・シルマンの選曲が素晴らしい。

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2009/09/20

ハリー・ポッターと謎のプリンス

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製作年:2008年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:デヴィッド・イェーツ

シリーズ第5作「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」(2007)を私は高く評価していたのは、ハリー(ダニエル・ラドクリフ)が自らの気力を振り絞り戦いを続けようとした姿勢にあった。それまで肝心のところで他者の助けを借りて難をしのぎ、これで本当に救世主なのだろうかと疑問を残していたから、いよいよ真のヒーロー譚がスタートすると期待を持たせる前作であったのだ。

だが、その思いはあっさりと裏切られる。本作品のハリーは前に戻ってしまったようで、失望感が募る。宿敵ヴォルデモートの知られざる過去が明らかになるのが本作品の見どころと言えるが、それでも、謎のプリンスの存在が唐突にあらわれ、興を削ぐような印象を持つ。最終決戦を前にしては、学園内で色めき立つ恋愛ムードも物語の求心力を弱めているように思える。いずれにせよ、次作も見ることになるであろうが、あまり期待はしないでおこう。

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2009/09/14

HACHI 約束の犬

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ラッセ・ハルストレム

ハチは本当にパーカー(リチャード・ギア)が亡くなったのを知らなかったのだろうか。だって、パーカーに異変が起きる朝、それまで見向きもしなかったボール遊びをしようとして気を引くくらい、パーカーの出勤を拒もうとしたのではないか。日課としている夕方5時にパーカーが駅に現れなかっただけで、ハチには何があったか察した筈だ。

そんな彼が、ただ無為にパーカーの死後10年以上も、駅へ迎えに行くわけがない。帰ってこないパーカーを待ち続けるのは、人間と犬の垣根を越えた絆を持ちえた感謝の気持ちからではないであろうか。パーカーの代わりは他に誰もいない。娘夫婦の家庭では生きていけないのだ。忠実にリメイクされているようで、実は忠犬ハチ公という概念を見事に解体しているように感じた。

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2009/09/13

20世紀少年 第1章 終わりの始まり

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:堤幸彦

かつて、ロックは娯楽ではなく思想だった。周囲からの押し付けでなく自分自身で生き方を選ぶ覚悟であり、世界は大きく変わっていくことを肯定した音楽だった。だが、現実はその通りいかない。ロックは産業化していき、個々の生き方を問い質すこともなくなっていった。ロックミュージシャンだったケンヂ(唐沢寿明)の挫折は、その象徴だったと思う。

失意の中で生きる彼は、カルト教団“ともだち”の事件に巻き込まれていき、ついに自宅まで放火されてしまう。ケンヂが捨てたはずのギターを取り延々とソロ演奏を続けるのは、反抗する決意を固めたからであろう。これぞロックだと思う。商業的に成功するかどうか否かは重要ではない。夜の商店街で路上ライブを続けるのは、ロッカーとして再生したからである。

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2009/09/12

湖のほとりで

製作年:2007年
製作国:イタリア
監 督:アンドレア・モライヨーリ

確かに、殺人事件の捜査を通して、村人一人ひとりが隠し持っていた悩みや葛藤が浮かび上がる様子を丁寧に静謐な映像で描き出したアンドレア・モライヨーリ監督の手腕は素晴らしいと思う。だがその一方で、美しい少女アンナ(アレッシア・ピオヴァン)が何故、全裸で殺されなければならなかったのか、その意味が掴みとれないでいる。

一応、事件の真相は明らかにされるのであるけれど、アンナの真意は、復讐なのか、それとも、告発なのか。いずれにしてもどこか狂気じみた様子が浮かんでくるのである。だが、そのイメージと、眠るように死んでいたという冒頭の一場が噛み合わない。どこかで読み間違えてしまったのではないかという気がしてならない。

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2009/09/09

きみの友だち

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:廣木隆一

単に同じ速さで歩いてくれるから交通事故で足が不自由になった主人公・恵美は、病弱な少女・由香と親友になったのではない。自分自身をも切り刻む辛辣な恵美の言葉をしっかりと受け止め、由香が応えようとしたからだと思う。雨の朝、恵美を迎えにきた由香の姿を見て、大いに感涙いたしました。

こうした優しさの洗礼を受けて恵美自身も大いに救われたと思う。だから、近寄りがたい態度を見せながら、ハナ(吉高由里子)や佐藤(柄本時生)たちに対して優しい言葉を掛けることができるのだ。二人の少女から生まれた思いやりの心が、時間を経て少しずつ広がっていく。その余波がとても心地よく感じました。

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2009/09/07

セントアンナの奇跡

製作年:2008年
製作国:アメリカ/イタリア
監 督:スパイク・リー

黒人として過酷な差別を受けながら、自分たちを差別するアメリカという国のために戦う矛盾。しかも、無能な上官のために、自分たちの命は無残に散っていくのだ。どうしたって、戦いのモチベーションなど上がる筈はないのだ。そして、偶然迷い込んだトスカーナの小さな村。これまで、まともな扱いをされなかった黒人兵たちが、差別をされずに初めて人間らしい扱いを受ける。この驚き、そして、喜び。人種や言葉の壁を越えた交流が芽生えていくのだが、その時間はあまりにも短い。

冒頭の殺人シーンから始まる現代は、いささか作り過ぎのエピソードであったと思う。歴史的に重要なイタリアの彫像が発見されるなら、ヘクター(ラズ・アロンソ)が静かな生涯を終えた後でもよかったのではないか。

セントアンナであのような大虐殺が行われたとは、この映画を観て初めて知る。

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2009/09/06

ボルト

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:バイロン・ハワード/ クリス・ウィリアムズ

やはり映画は脚本が大切であると思う。飼い主の少女ペニー(マイリー・サイラス)を守るために改造されたスーパードッグであると信じていた世界は虚構であったと突き付けられるボルト(ジョン・トラヴォルタ)。こうした物語自体、けっして珍しいものではない。だが、この映画にグイグイと惹きつけられてしまうのは、ドラマ展開に必然性が感じられるよう説得力を持ったシーンが丁寧に作られているからだろう。

例えば、ボルトがトレーラーハウスから抜け出してしまうくだり。いじわる猫が関わることになるが、ここも場当たり的でなくきちんと伏線の張ったものである。この出発点からして上手いと思う。ここから始まるボルトの冒険は、そうした丁寧な作りで語られていく。その繰り返しが最後の大感動を呼ぶのだ。

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2009/09/05

敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生

製作年:2007年
製作国:フランス
監 督:ケヴィン・マクドナルド

何故、元ナチスの親衛隊員だった男が戦犯として裁かれることなく、生き延びることができたのか。その理由は本作品をみるとよく分かることになるが、戦勝国の勝手な論理ということもあるであろう。だが、それだけではなく、この世の中には正義の戦争というものはなく、単に利害関係の対立が原因で戦争が起こるということも明らかになってくる。クラウス・バルビーはドイツ占領下のリヨンで卓越した手腕を発揮し、次々とユダヤ人を強制収容所へ送り込んだ。戦後、糾弾されてしかるべきであるのに、その腕を買われて、ソ連と敵対することになるアメリカ合衆国の戦力となっていくのだ。この矛盾こそ国際政治の真骨頂だと思う。

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