« 2009年7月 | トップページ | 2009年9月 »

2009年8月

2009/08/31

人生に乾杯

製作年:2007年
製作国:ハンガリー
監 督:ガーボル・ロホニ

年金だけでは生活できず、借金の取り立てに追われる老後を過ごす81歳となったエミル(エミル・ケレシュ)と70歳のヘディ(テリ・フェルディ)の老夫婦。ついに、出会いのきっかけになったダイヤのイヤリングも借金のカタに取られてしまう事態に。怒ったエミルは強盗を繰り返すようになるという話になっていくのであるが、どこか設定に無理がある。

「俺たちに明日はない」(1967)の設定を老人と現代のハンガリーでよみがえさせるアイディアは秀逸であると思う。だが、思いつきで起こした強盗がそうそう巧くゆく筈はないし、それを成り立たせるには主人公の造形をもっと作りこまなければならない。ただの政府高官の運転手にできることではないのである。コメディーとして楽しい場面も多々あるが、ドラマ的には必然性を欠けているように感じられた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/23

扉をたたく人

Img2cc1eba5zikazj

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:トム・マッカーシー

何故、ウォルター(リチャード・ジェンキンス)はマンハッタンの別宅で不法に暮らしていた見知らぬ若いカップル、タレク(ハーズ・スレイマン)とゼイナブ(ダナイ・グリラ)に対して温情を掛けたのであろうか。冒頭からの二場面を見れば、とてもそんな情けをかけるような男には思えないのである。ポイントは、アパートの扉を開けると、すぐ目につくところに飾ってあった花ではなかったかと思う。

実は彼らも詐欺に遭っていたのだが、それでも部屋を乱雑に使っていれば、助けようとする気も起きなかったであろう。頑迷なまでに自己を閉ざしてきたウォルターに欠けていたのは、美しい花を飾ろうとするような潤いの心だったのではないか。この花瓶のアイテムは、タレクの母親モーナ(ヒアム・アッバス)が滞在する時も、繰り返されている。ジャンベ(アフリンカン・ドラム)に魅了されていくのも、溶け始めた心にその響きが沁み入ったからである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/19

ファニーゲーム U.S.A.

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ミヒャエル・ハネケ

ポール(マイケル・ピット)とピーター(ブラディ・コーベット)の侵入を、ジョージ(ティム・ロス)とアン(ナオミ・ワッツ)の夫妻は防ぐことができたのだろうか。例えば、ピーターが卵を借りにくる場面でのアンの対応は、決してほめられたものではなかった。ジョージが先に暴力をふるいことも頂けない。夫妻を苛立たせそうと誘導する二人に、まんまと乗せられてしまったのだ。

人を支配するのは法や秩序ではなく、暴力であるということ。社会の成功者であろう夫妻には、そうした本質を忘れてしまったのだろう。どんな法治国家とは言え、最終的に身を守るのは個人でしかあり得ない。どんな場合でもそう肝に銘じながら、他者と付き合っていくしかないのである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/16

シークレット・サンシャイン

製作年:2007年
製作国:韓国
監 督:イ・チャンドン

人は幸せを求め、ベストと思える道を選択する。すべてうまくいけばいいのであるが、逆に不幸を呼び込んでしまう場合もある。その差はどこにあるのであろうか。シネ(チョン・ドヨン)が、亡き夫の故郷・密陽(ミリャン)で幼い息子ジュン(ソン・ジョンヨプ)と再出発しようとしたのは、間違いとは言えない。

だが、あまりにも準備不足だったのではないだろうか。乗用車の故障というトラブルから始まるのも、何か象徴的なものを感じる。彼女は普通にしているつもりでも、結果として凶事を引き寄せてしまうことになったのだ。シネの不幸は、つねに幻想を追いかけ、事実を見ようとしなかったことから生まれたのだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/12

サンシャイン・クリーニング

Sunshine_01

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:クリスティン・ジェフズ

時間が経てば哀しみを乗り越えられると言われるが、どんなに時間が経とうと乗り越えられない哀しみもあるのではないか。本作品のローズ(エイミー・アダムス)とノラ(エミリー・ブラント)の姉妹を見ていると、そんな風に思えてくる。幼児期に遭遇してしまった悲劇の姿。どんなに自分を鼓舞しようとも人生のメインストリームから外れてしまったのは、その悲劇の影が付きまとって離れないからだろう。

偶然に偶然が重なって始めた事件現場のクリーニング事業。それが、彼女たちのトラウマを見つめ直すきっかけとなった。人生の転機とは、自己を見つめ直すところから始まっていくのである。

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2009/08/11

休暇

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:門井肇

なぜ、平井(小林薫)は死刑執行の補佐役を買って出たのか。勿論、新婚旅行のための休暇が欲しかったのは分かる。だが、無邪気な好奇心旺盛の新人刑務官大塚(柏原収史)とは違い、その補佐役がどれほど精神的に過酷であるのか知らないはずはない。しかも、中年になっての初婚、相手は子連れの再婚で、その男の子とは打ち解けることができないでいる。けっして楽しいだけの旅行ではないのだ。平井にとって新しい生活を始めるというは、並々ならぬ決意を持つことだったのだろう。案の定、旅行の最中も死刑執行までの日々がフラッシュバックされ、心痛の晴れることはない。

それでも、この旅行が美香(大塚寧々)と達哉(宇都秀星)の心を通い合わせる機会になったのだ。もし、この旅行がなければ、寒々しい家庭生活を過ごすことになったかもしれない。その代償に見合う休暇になったことは間違いない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/09

ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:摩砂雪/鶴巻和哉

新劇場版第2作の見所は、碇シンジ(緒方恵美)、綾波レイ(林原めぐみ)、式波・アスカ・ラングレー(宮村優子)のエヴァ・パイロットたちが、少しずつ気持ちを通い合わせ、距離が近付いていくところにあると思う。父ゲンドウ(立木文彦)に認められたいという思いが先走っていたシンジであるが、戦う、戦わないという意志をレイとアスカの関係性で判断するようになる。ゲンドウに対して、自分はエヴァ・パイロットだと言い切ったシンジ。その場面の高揚感が凄い。ここでシンジは父を超えることになるのであろうか。それとも。これもゲンドウの策術なのか。次作への期待が募る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/07

イースタン・プロミス

製作年:2007年
製作国:イギリス/カナダ/アメリカ
監 督:デヴィッド・クローネンバーグ

緊急搬送された10代の幼い妊婦。おびただしく腕に残された注射跡。生命の限りを振り絞って生まれた乳児。彼女に付き添った助産婦のアンナ(ナオミ・ワッツ)は、ロシア語で書かれた日記を基に親族を探し始める。この尋常ではないこの状況を考えれば、例え親族を見つけたとしても、乳児に明るい未来が待っているとは思えない。家族が反対しても調査を続けるのは、アンナの消し去ることができない過去のためだ。

もし、彼女が幸福な家族生活を過ごしておれば、そこまで執着することはなかっただろう。危惧したとおり、アンナはロシアン・マフィアの暗部に触れてしまう。もし、ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)と出会わなければ、あっさり処分されていたことだろう。彼女の行動は決して賞賛されるようなものではない。間違いといってもいいだろう。だが、行動しなければ、ラスト・シーンの笑顔を取り戻すことは出来なかった。彼女は幸福の運命を自ら引き寄せたのだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009/08/06

マン・オン・ワイヤー

製作年:2008年
製作国:イギリス
監 督:ジェームズ・マーシュ

フィリップ・プティがワールド・トレード・センターのツインタワーの間を綱渡りすることは、最初から分かっている。それでも、ぐいぐいと引き込まれてしまうのは、プティはじめ関係者の証言、その当時の映像、再現ドラマを織り交ぜていく演出方法にある。「運命を分けたザイル」(2003)でも試された手法であるが、ドラマチックに盛り上げる効果は満点であり、今後も多用されるかもしれない。

ここで重要なのは、単にプティが気まぐれで起こしたことでなく、周到な作戦計画と多くの仲間たちの支援があって実現できたものであったということ。一種の偉業と言ってもよいこの綱渡り。賞賛を浴びるプティの裏側で、辛酸をなめた仲間たちもいるのであった。このコントラストも印象深い。切ない余韻を残す幕切れとなった。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009/08/04

サガン 悲しみよ こんにちは

E0123392_23314898

製作年:2008年
製作国:フランス
監 督:ディアーヌ・キュリス

その著書を読んだこともなく特定の思い入れもない自分にとって、初めて知るフランソワーズ・サガンの生涯である。18歳という若さで掴んでしまった誰もが欲する富と名声。その果てにあるものは何か。容易に想像できるような成功と挫折の物語である。例えば、新作を批評されることで動揺、それを紛らわすようにスポーツカーを暴走、運転を誤り自損事故の末、瀕死の重傷。

その治療から生涯についてまわる薬物中毒が始まってしまうとは、なんという悪循環か。彼女は立ち直るきっかけも掴めないまま、孤独に生きる。生涯を通して自由人であったという小説家の内面は、なんと脆くて弱々しいものなのか。代表作「悲しみよ こんにちは」は時代を超えて残っていくであろうが、その代償はあまりに大きかったと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009/08/03

トランスフォーマー リベンジ

Ed8f9108_2

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:マイケル・ベイ

よくぞここまでという驚嘆の極限のビジュアル・エフェクトに圧倒される映画であるが、物語の背後にはキリスト教の意向を強く感じる。正義(オートボット)と悪(ディセプティコン)のトランスフォーマー軍団が、地球で全面戦争を開始するところなど黙示録のようであるし、オプティマス・プライムの死と復活はイエス・キリストを容易に連想させる。マイケル・ベイ監督はかつて「アルマゲドン」(1998)も撮っているし、娯楽大作の裏で聖書の趣向を盛り込むのが得意なのかもしれない。

激しいアクションだけでなく、随所に盛り込まれたコメディー要素も効果的であり、なかなか飽きさせない作りになっている。娯楽作としては大いに満足できる出来栄えであった。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

« 2009年7月 | トップページ | 2009年9月 »