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2009年7月

2009/07/31

12人の怒れる男

製作年:2007年
製作国:ロシア
監 督:ニキータ・ミハルコフ

なるほど、こんなリメイクの方法があるのか。大いに感心しました。元作であるシドニー・ルメット監督の「十二人の怒れる男」(1957)は映画史に残る名作の一つである。巧みな構成と意外性のあるドラマ展開に魅了されたわけであるが、生半可なことでは元作を超えないことは自明であろう。さすが巨匠と称えられるニキータ・ミハルコフ監督だ。同じ話を語りながら、主題を全く変えてしまっているのだ。そこに50年という時間の重さを思い、大いに感じ入るのである。

養父殺しの罪で起訴された少年の審理。それぞれの事情で早く帰りたい陪審員たち。ひとつの疑問から次々と覆っていく有罪票。その果てに待つものは21世紀のロシアを覆う絶望的な閉塞感。そこまで考えないと陪審員制度など意味をなさないのか。重大な問題提起だったと思う。

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2009/07/28

ディア・ドクター

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:西川美和

こんな筈ではなかった。過疎の進む小さな村で気ままに稼げるだけ稼ぎ、ばれそうになったら逃げてしまえばいい。そのくらいの軽い気持ちだったのではないか。だが、診療を続ける内に、命の重さを実感する局面に何度も遭遇してしまう。結果として患者を助ける事例が続き、周囲から名医と崇め奉られようとも、伊野(笑福亭鶴瓶)には薄氷を踏む思いであったことであろう。だから、夜も徹して医療の勉強を続けるのである。

鳥飼かづ子(八千草薫)の異変に気付いた彼は医者としての資質は高かったと思う。だが、一緒に嘘をついて欲しいという彼女の願いを受け止めることから逃げてしまう。医療知識をどれほど増やそうとも、医師として患者の命を預かる覚悟を持つことはできなかったのである。だが、彼は逃げ続けること拒絶した。あのラスト・シーンは、伊野という男の新たなスタートを感じさせる。

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2009/07/27

それでも恋するバルセロナ

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製作年:2008年
製作国:スペイン/アメリカ
監 督:ウディ・アレン

自分の望む物を知っているヴィッキー(レベッカ・ホール)と、自分の望まない物を知っているクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)の対比が面白い。だが、この二人は本当にそれを知っているのだろうか。フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)の出現によって、バルセロナのバカンスは一転してしまう。つまり、何を大切かに感じるかは相対的なものであり、どこで変わってしまうか分からないのである。今日の幸福は、明日まで続くとは限らない。だから、常に迷い続ける。

ありふれた三角関係ドラマかと思っていたら、意外性を持った四角関係に進み、その着地に目が離せなくなくなる。普通、登場人物の心情を語るナレーションは分かりやすさと共に作品が軽くなってしまうものであるが、さすがウディ・アレン監督は一味違います。独特の味わいを醸し出し、幕後にも余韻を残します。

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2009/07/26

劔岳 点の記

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:木村大作

何をしたかではなく、何のためにしたかが大事なんだ。柴崎芳太郎(浅野忠信)はそんな風に語るけれど、残念ながらこの世の中は、何のためにしたかではなく、何をしたかによって判断される。陸軍参謀本部の命令も、国防のため日本地図の完成を急ぐという名目よりも、劔岳の初登頂を成し遂げろという方に重きを置くものだった。現場での命がけの苦労よりも、あくまで成果だけを求められる。

非情極まりないと思われるが、こうした風潮はすぐに変わるものでない。それを補完するのが、文学であり映画の役割だと思う。圧倒的な自然描写の映像に酔いしれながら、人の世の価値観とは何かを大いに思考させる作品でありました。

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2009/07/22

ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ケニー・オルテガ

テレビ映画から数えて三作目となる本作品。シリーズものの宿命で、何も知らないでいきなり劇場公開版を見ても興趣はわいてこないであろう。わずかな場面にしか登場しない脇役たちにも、過去二作分のエピソードが積み重なっているので、それぞれに重みを感じる。思惑違いで何度もスポットライトから外れてしまうシャーペイ(アシュリー・ティスデール)は精神的成長もなく同じ失敗を繰り返し、逆に姉の踏み台をやめてしまったライアン(ルーカス・グラビール)は振付師として大きく飛躍する。双子の姉弟の対比も面白い。

さて、主人公トロイ(ザック・エフロン)は今回も悩みの人である。才能豊かな彼には、卒業してから、いくつもの選択肢がある。恋人カブリエラ(ヴァネッサ・アン・ハジェンズ)と遠距離恋愛になるのも心が曇る。持たざる者にとっては、なんとも羨ましい話であるが、どんな立場に居ようとも悩みの尽きることはないのである。

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2009/07/09

ハムナプトラ 3 呪われた皇帝の秘宝

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ロブ・コーエン

ジェット・リー。ミシェル・ヨー。アンソニー・ウォン。アジア映画界の至宝と言ってもよい俳優が三人も出演しているのに、なんと平坦で盛り上がりに欠ける作品となってしまったことか。彼らにしか出せない存在感を削いでいるようにも感じられ、これがハリウッド映画の悪癖というものでしょうか。他の役者が演じても映画の出来は変わらないと思えるのであれば、出演している意義はないであろう。せっかくジェット・リーとミシェル・ヨーが敵同士の設定なのだ。火の出るようなカンフー・アクションを期待しない訳にはいかない。それなのに、迫力のない剣戟でお茶を濁す程度とは落胆甚だしい。

もちろん、主人公はリック(ブレンダン・フレイザー)たち一家なので、彼らのエピソードでそれなりの映画にはなっているのであるが、アジア組の見せ場が不足しバランスの悪い作品であったと思う。

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2009/07/08

大統領の陰謀

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製作年:1976年
製作国:アメリカ
監 督:アラン・J・パクラ

新聞報道をきっかけに辞任に追い込まれた現職の大統領。欺瞞、偽装を拭い去り、隠された真実を追い求めた新聞記者。かれらを擁護する腹の太い編集デスク。かつてそんな男たちが存在していたのだ。ウォーターゲート事件の真相を突き止めたワシントン・ポスト紙記者の活躍を描いた本作品は、心奮えるような緊迫感と迫力に満ちたまぎれもない傑作である。そして、時間が経てば経つほど神話性が高まっていく予感がする。

例えば、こんな権力の犯罪を追求できる新聞記者、それを許す新聞社が、いまこの時代にあるのだろうかという思いがある。新聞社の変貌は「消されたヘッドライン」(2009)でも明らかであったが、経済的余裕のなさが報道の根を啄ばむ。ボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)やカール・バーンスタイン(ダスティン・ホフマン)のような真実を追い求めるジャーナリズムの魂が、消されることなく残っていてほしいと祈るのみだ。

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2009/07/06

愛を読むひと

製作年:2008年
製作国:アメリカ/ドイツ
監 督:スティーヴン・ダルドリー

映画を通して、一人の生涯を俯瞰してみることができる。本作品のヒロイン、ハンナ(ケイト・ウィンスレット)も場合もそうだ。彼女がその人生で何を選んできたか知り、それは正しくないと論評することもできる。ハンナは一つの秘密を守り続け、重い罪を背負っていく。時代も国も違う自分には、そんなことぐらいでとも思えるが、この映画には描かれていない部分こそ思いやらなければいけない。例えば、どんな環境で彼女は生まれ、どんな幼少時代を過ごしたのかということ。孤独に生きて、教育を受ける機会もなかったのではないだろうか。絶対に自分の弱さを見せてはいけない。その頑なな姿勢が彼女の生活を守り続けてきたのだ。戦犯裁判でも優先されてしまうくらいの強固な思い。そうした選択を安易に批評することはできないし、実際、その事実に一人気が付いたマイケル(デヴィッド・クロス)も沈黙を守る。

本作品はここから、様々な含みを残す。成人したマイケル(レイフ・ファインズ)が再び朗読を始めることにより、ハンナは誰にも頼らず学習を始める。ここまではいい。感動的な交流である。だが、それだけで終わらない。何故、ハンナの手紙に対して返事を出さないのか。あれだけのテープを送りながら、面会に行って直接朗読をしてあげようとしないのか。一定の距離を崩そうとしない姿勢を貫くマイケル。少なくとも、それはハンナの望むものではなかったはずだ。彼女の孤独は変わることなく続き、最後の決断になってしまったのではないだろうか。

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2009/07/05

スター・トレック

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:J・J・エイブラムス

直感と論理。その対立する二つの概念をジェームズ・T・カーク(クリス・パイン)とスポック(ザカリー・クイント)が体現している。直感で行動を決めることと、論理で行動を決めることは、決して矛盾しているものではない。その判断時間の長短の差だけではないだろうか。直感で決めたからと言ってすべて間違いということではないし、論理で決めたからといってすべて正しいとは限らない。その精度は判断する人物の資質にかかってくる。

本作品を興味深く感じられるのは、ジェームズにしろ、スポックにしろ、まだまだ経験が足りず、二人とも挫折を繰り返すシーンが丹念に描かれているからだと思う。時に対立を繰り返すが、本質的には同じものを性根に抱えている二人である。ロミュラン人ネロ(エリック・バナ)との戦いの中で、共感を覚えるところが眩しい。

それにしても、ウィノナ・ライダーが出演したいたとは、エンド・クレジットを見るまで全く気が付かなかった。ゲスト出演なのかもしれないが、それでもあまり話題になっていないのが寂しかった。

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