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2009年6月

2009/06/29

真夏のオリオン

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:篠原哲雄

勿体ないではないか。何度も出撃を迫る回天搭乗員に対し、そう答えることで決然と拒絶する。中津航海長(吹越満)から自分の作戦命令に対して異議を唱えられるシーンも繰り返されるが、怯むことなく指示を貫徹する。危機に瀕していても食事の命令を下すことを忘れない。この倉本艦長(玉木宏)がすこぶる魅力的なのは、自分の信念を貫きとおしているからだ。それは、死ぬために戦っているのではなく、生きるために戦っているんだということ。限られた時間と兵力の中で、最大限の効果を上げられるものは何かを模索し、常識にとらわれない奇策を生み出す。それは、何も戦時中に限ったことではなく、いろんな局面で応用できる思考法である。“真夏のオリオン”という聖なる祈りの込められた楽譜の軌跡も感傷的であり、なかなか見応えのある作品でありました。

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2009/06/27

ターミネーター 4

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:マックG

同じ物語を語るにも自分ならこういう構成にした方がいいと明らかに思える場合があるが、本作品もその一つであった。例えば、主人公ジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)がなんとも魅力に乏しい。彼が反乱軍のリーダーとしてどれほどの資質があるのかさっぱり分からないし、指令本部を軽視して勝手な行動を取ること甚だしく、自己中心的人物にしか見えてこないのである。一方、死刑執行後、献体された肉体が機械化され15年ぶりに目覚めたマーカス(サム・ワーシントン)の方が謎に満ちていて陰影深い設定だ。

何故、死刑になるほどの罪を犯したのかなど、彼の後景が明らかにされないのは描写不足だし、“ニ度目のチャンスがあるのか”という主題もあまり効果的でないことが惜しまれる。その辺りをきちんと整理し、ジョン・コナーは伝説の男として脇に回り、マーカスを主人公としてしっかり位置づけた方がはるかに面白くなったと思う。カイル・リース(アントン・イェルチン)との交流も中途半端。彼の救出もマーカス単身でスカイネット本部へ乗り込んだ方が良かったし、T-800との戦いも迫真のバトルになったことであろう。

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2009/06/24

レスラー

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ダーレン・アロノフスキー

人は大切な何かを諦めたとき、大人になるのだと思う。生活のため、現実のため、不運のため、自ら描いた夢を消し去る岐路に立たされるときがある。それを受け入れて大人になるか、拒絶して夢を追い続ける子供のままでいるか。ランディ(ミッキー・ローク)は、80年代に頂点を極めた一流プロレスラーであった。だが、20年後の今はどうだ。老体に鞭打ちながら小さな地方興行に出場し現役を続けている。金銭にも困り、トレーラーハウスからも締め出されてしまう始末である。しかし、ついに心臓発作で倒れてしまい、引退を受け入れなくてはならない。

その間にも、分岐点は何度かあったことだろう。しかし、プロレス以外の生き方を拒否してきたと思われる。娘ステファニー(エヴァン・レイチェル・ウッド)やキャシディ(マリサ・トメイ)との距離の縮め方も、あまりに性急すぎる。そのために大切な関係も破綻してしまう。現実社会で生きるにも見えないルールがあり、それを学ぶ機会を逸してしまったのだ。自己憐憫の中、再びリングに向かうランディ。彼は、最後までレスラーの夢を追い求め、現実社会を拒絶した子供である。その選択を嘆くことなく殉じていった男である。だから、幕切れのダイビングが清々しく感じるのだ。

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2009/06/23

ハイスクール・ミュージカル 2

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製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ケニー・オルテガ

余りにも底の浅いシャーペイ(アシュリー・ティスデール)の策略で、恋人ガブリエラ(ヴァネッサ・ハジェンズ)や仲間たちから孤立してしまうトロイ(ザック・エフロン)。大学の奨学金を得るという目的のためには、やりたくないことでもあえて目をつぶり、自分の心を押し隠そうとする。

ここにもう一人、同じような人物がいる。カントリークラブの支配人である。シャーペイのわがままな命令に嫌な顔を隠しながら従っているのだ。スポーツ万能でルックスも良いトロイを支配下に置こうとする思いは、いつ気まぐれで変わるか分からない。トロイにとって、これはチャンスではなく、転落への一歩だったと思う。真のチャンスとは、仲間から応援され、盛り立ててもらってこそ、巡ってくるものだと思う。

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2009/06/21

ハゲタカ

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:大友啓史

“お前は一体誰なんだ”という台詞が何度も反復されている。一方、劉一華(玉山鉄二)が守山(高良健吾)に熱く語る“誰かになるんだ”という台詞も、対になるように存在している。何故、絶望的な日本のマーケットに見切りをつけた鷲津(大森南朋)が、芝野(柴田恭兵)の要請を受けてアカマ自動車のホワイトナイトになるのか。何故、劉一華が圧倒的な中国資本を背景にアカマ自動車を買収しようとするのか。何故、三島由香(栗山千明)は業務命令を無視して派遣労働者のデモを取材しようとするのか。

心理描写にかなり不足も感じられるが、それぞれの自分の心にある誰かになろうと葛藤してことが分かる。それがうまくいくとは限らない。古谷社長(遠藤憲一)のようにすべて裏目に終わってしまうこともあるのだ。それでも、誰かになろうとする思いは誰にも止められないのである。

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2009/06/19

夏時間の庭

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製作年:2008年
製作国:フランス
監 督:オリヴィエ・アサイヤス

美しい庭園が広がる瀟洒な邸宅。日常生活で何気なく使われる貴重な美術品の数々。名のある画家だった大叔父の思い出。母エレーヌ(エディット・スコブ)は、こうした世界をずっと守ってきた。しかし、永遠に続くものなどない。三人の子供たちは、それぞれの生活があり、もはや、この世界を継承する余力がない。この現実をいかに受け入れるか。彼女は孤独の時間の中で、しっかりと見定めたのだろう。その精神力に感服する。

家も美術品も売却処分することに難色を示す長男のフレデリック(シャルル・ベルリング)であっても、莫大な相続税や遺産を賄うことができないのだ。なすすべなく母の遺言を守るしかない。こうして、母の世界は閉ざされていく。なんとかしたいのになんともできない無力感。その悲哀が胸いっぱいに広がりました。

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2009/06/18

空とコムローイ タイ、コンティップ村の子どもたち

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:三浦淳子

タイ北部の街メーサイ。そこに山岳民族アカ族の子どもと女性たち約150人が家族のように暮らす施設がある。本作品を見ることで、その事実を初めて知ることになる。確かにそれだけでも意義深いと思うが、一つの作品として見ると残念な出来と言わざるを得ない。どんな子供たちもただそこに生きているだけでいいということに三浦淳子監督は深い感銘を受けたことは、監督自身のナレーションで分かる。だが、映像からそのメッセージを受け取ることができないのだ。家族の元を離れ集団生活を送らなければならないタイの実情を描かないと監督は判断したのであろうが、過酷な状況と対比させてこそ無邪気な子供たちの笑顔の意味することが伝わる筈だ。イタリア人のペンサ神父とタイ人女性ノイさんが、この施設をいかに運営しているか、その苦悩の歴史もあるのではないか。裏側の現実をもっと見たかったという思いが消えないのである。

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2009/06/16

ブッシュ

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:オリヴァー・ストーン

オリヴァー・ストーン監督にしてはという惹句がどうしても付いてまわる作品である。オリヴァー・ストーンにしては批判精神が足りないと否定する人も居れば、オリヴァー・ストーンにしては説教臭くなくて良かったという人もいる。まさに賛否両論分かれる映画だと思う。私はと言えば、製作期間中における現職大統領を描くのには、もう一つ物足りないものを感じました。

確かに父親との確執や逮捕歴など興味深い内容ではありますが、そんな欠落だらけの男が何故、アメリカ大統領という地位まで登り詰めることができたのか、分かるようで分かりません。台詞では人を魅了する話芸に長けていると何度も繰り返されますが、果たしてそれだけなのでしょうか。観客のいない野球場で大歓声に包まれながら一人でプレーしているシーンも繰り返される。大統領にこそなったものの、誰にも歓迎されていないことを象徴しているようであるが、これもどうかと思う。本人がどれほど懇願しようと簡単には座ることができないアメリカ大統領の椅子。そこに座れたのであるから、何かある筈なのだ。そこが釈然といたしません。

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2009/06/15

ハイスクール・ミュージカル

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製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ケニー・オルテガ

劇場公開された「ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー」(2008)はシリーズ3作目ということらしいので、1作目から順を追って見ていくことにしました。

バスケット部のキャプテン、トロイ(ザック・エフロン)と天才数学少女のガブリエラ(ヴァネッサ・アン・ハジェンズ)は、旅行先のパーティで偶然選ばれてデュエットすることに。そこで、二人は思いもかけない自分を見つけてしまう。新学期となり、トロイの通う高校へ転校してきたガブリエラ。同じクラスとなって再会する二人。

序盤の展開だけで何度も偶然が重なり、あまりにも作り過ぎではないかと感じさせますが、中盤から主題が浮かび上がり気にならなくなる。いま居る環境から突出することを恐れ、本当にやりたいができないでいる自分。それをいかに克服していくかという話になっていくのだ。そこからの展開にも甘さがあるものの、単なる恋愛学園ものには終わっておらず、見応えある作品になっておりました。

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2009/06/14

シリアナ(2回目)

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製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:スティーブン・ギャガン

最初見た時にはよく理解できなかった人物の背景、例えば、ボブ(ジョージ・クルーニー)が誰のために、何の工作をしているのか、2回目となっても良く分からなかった。それで、鑑賞後、様々な背景資料を読んで、なんとか大筋をつかむことができました。説明的でない分、張り詰めた緊迫感を保った映像が素晴らしい。

石油利権をめぐるアメリカと産油国との熾烈な駆け引き。邪魔するものは暗殺も辞さない強硬な意志。悲劇が悲劇を生む恐るべき連鎖。アメリカが中東諸国に対して何をしてきたか赤裸々に綴られている本作品。よくこんな内容で作られるものだと感心するが、作られるには作られるだけの理由があるのだろうか。単に正義派という言葉だけでは収まらない、もう一つの強い意志があるのではないかと思わずにはいられません。

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2009/06/09

奥さまは魔女

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製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:ノーラ・エフロン

不自由であれば自由を望み、自由であれば不自由を求める。自分に無いものを欲することがこの世の摂理であろうか。魔女イザベル(ニコール・キッドマン)は魔法を使わず普通の生活をしたいと人間界へ舞い降りる。しかし、最初から魔法なしで生活を過ごすことなど出来ない。ポイント、ポイントで魔法を使い続けるのであるが、この辺りの無制限ぶりがいま一つ物足りなく感じる。なんでも思い通りになるのであれば、ジャック(ウィル・フェレル)のことさえもうまく操ることができる筈なのだ。

イザベルにとって何も失うものがないから、何も得るものもないと言える。魔法なしで普通の生活を過ごすという葛藤をドラマに盛り込むべきであった。

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2009/06/08

路上のソリスト

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジョー・ライト

音楽的才能に恵まれながら心を病んで不遇の中で生きる音楽家の映画というと「シャイン」(1995)を想起するが、本作品は「ニキフォル 知られざる天才画家の肖像」(2004)や「ミリキタニの猫」(2006)のような放浪画家と支援者の話に類似性を感じました。助ける、助けられるという人間関係は、一体、どのようなものかを見つめた作品になっています。

ロペス(ロバート・ダウニー・Jr)は悲惨な境遇に暮らすナサニエル(ジェイミー・フォックス)を社会復帰させようと画策する。そこには、自らのコラムを成功させたいという打算も隠されている筈だ。「自分はミスター・ロペスと呼んでいるのに、あなたはナサニエルといつも呼び捨てだ」というナサニエルの叫びが、この二人の関係を全て物語っている。それでは、どうしたらいいのか。本作品では一つの回答が示される。どんな場合にも助けてもらえるということはなく、自らを助けようとしない限り何も始まらない。

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2009/06/07

お買いもの中毒な私

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:P・J・ホーガン

「お買いものをすると世界が素敵になるけれど、素敵な世界はすぐに終わってしまう。だから、またお買いものをしてしまう」。破産寸前になるまでお買いものを続ける理由をレベッカ(アイラ・フィッシャー)が語る場面が出色の出来栄えであった。お買いものの代わりにお酒、薬物、ギャンブルなどと置き換えても通用する話であると思う。私の場合、映画や本がそれに当てはまると言っても良い。中毒者の本音とは、そんなものかもしれない。だが、夢の時間は短く依存性が日々高まっていけば、社会生活を破綻させてしまうことにもなる。素敵な世界と現実世界のバランスをいかに取れるかが大切なのである。

物語はロマンティック・コメディの定石通り進むので意外性はないけど、お買いもの中毒という視点が実にユニークでありました。

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2009/06/03

ヱヴァンゲリヲン新劇場版 序

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製作年:2007年
製作国:日本
監 督:摩砂雪/鶴巻和哉

“何故、戦わなければならないのか”。14歳の少年、碇シンジ(緒方恵美)は、特務機関NERV(ネルフ)の最高司令官で父親でもある碇ゲンドウ(立木文彦)に呼び寄せられた初日からエヴァンゲリオン初号機のパイロットになるよう強要される。そして、そのまま“使途”との戦いに駆り出されるのだ。常識的に考えても乱暴な話である。彼にはその任務に耐えうる適性を秘めているのであるが、そのことについて何も説明は受けていない。シンジは混迷と不信の中で戦い続けるしかない。この出発点からして相当にねじ曲がった物語である。

どうして、ゲンドウはシンジに対してここまで冷淡なのか。その一方で、零号機のパイロット、綾波レイ(林原めぐみ)に対しては、別人のような温かさを示しているのだ。父親に捨てられたという思いをトラウマとして消え去ることができなかったシンジ。ゲンドウの錯綜した感情が、新劇場版では明らかになるのであろうか。

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