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2009年5月

2009/05/30

おと・な・り

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:熊澤尚人

防音設備の整っていない古いアパートから伝わってくる隣人の生活音。その音に苦情を訴えるのであれば、珍しくもないが、互いの孤独に安らぎを与える存在となっている設定がまず面白い。そんなこれまでにない発想から生まれた脚本。常識に縛られない視点からユニークな恋愛映画が誕生した。その世界を成り立たせているのが、氷室(岡田義徳)が七緒(麻生久美子)に語る“基調音”の話である。人それぞれ無意識の内にも求めている基調音があるとすれば、それを手にすることが幸福への道ということになる。

七緒と聡(岡田准一)がいかにして出会っていくのかがドラマの焦点であるけれど、メロドラマの定石どおり、すれ違いの連続だ。互いの夢を叶えようとして海外へ飛び出そうとする二人。いささか作為的ではあるけれど、電話のシーンで観客にあっと言わせた驚きの演出もなかなか良かった。

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2009/05/28

チョコレート・ファイター

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製作年:2008年
製作国:タイ
監 督:プラッチャヤー・ピンゲーオ

世間一般的には評価の高いチャン・フン監督の韓国映画「映画は映画だ」(2008)を私がもう一つ乗り切れなかったのは、いかに殴り合いをリアルに見せようとしても限界があるのではないかと思っていたからである。仮に本気で殴り合ったとしても、その痛みを観客に伝えるのは演出力にかかっているし、それならリアル・ファイトをする意味もないだろうところから離れられないのだ。

だが、本作品のスタントは、リアルであるかどうかということも超越した凄味を秘めていて、ただひたすら圧倒された。戦うヒロイン、ジージャーのたぐいまれなアクションにも感動するが、彼女に倒されていく無数の相手役に目を奪われてしまった。特にビルの側面を使ったクライマックスでのスタント・シーンが圧巻。あの高さから次々と男たちが落ちていくのだ。見た目では分からない安全策を講じているのかもしれないが、躊躇なくよく落ちて行けるものである。こんなスタント・シーンは、いまやタイ映画でしか見られない。活動魂はこうして継承されているのかと、大いに感銘を受けました。

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2009/05/27

重力ピエロ

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製作年:2009年
製作国:日本
監 督:森淳一

人は変わることができるのか。遺伝子レベルで変わらないものもあれば、育った環境で身に付くこともある。それを体現しているのが、春(岡田将生)だと思う。葛城(渡部篤郎)は常人では思いも寄らない思考方法で自らの犯罪行為を声高に正当化する相当変わった人物であるが、奥野正志(小日向文世)も柔和な笑顔の裏側にやはり普通の人には真似できない考え方を隠した男である。いささか強調され過ぎた感じもするが、その特異な二人の間に春は居る。彼も世間の常識に縛られない男の一人だ。偏見に苛まれた過去を消し去ることはできないけれど、“最強の家族”に恵まれたことでピュアの精神を保つことができたのだ。

彼の行った事象を一つ一つ拾っていけば、回り道をたどっているようにも感じるが、その手順を欠かせることはできないのだろう。何も怖いものがないような様子を崩さない彼であるが、大事な時にはそばにいて欲しいと泉水(加瀬亮)に頼る弱さも秘めていて、陰影深い人物像になっている。

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2009/05/24

消されたヘッドライン

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製作年:2009年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:ケヴィン・マクドナルド

記事にすべきか、しないべきか。ベテラン記者カル(ラッセル・クロウ)の逡巡。「クライマーズ・ハイ」(2008)でも、堤真一扮する悠木デスクが最後の最後まで迷い続けていたが、どれだけセンセーショナルな内容であっても、ウラが取れなければボツにしなければならない。周囲からどれほどプレッシャーをかけられようとも、最終的にその判断をできるのがプロフェッショナルというものであろう。

だが、現代はそんなプロ記者を生き難い時代でもある。コングロマリットを形成しているメディアの親会社は売上と利益が全てであり、記者の良心には何の関心もない。真のスクープなど発表されなくなるかもしれないのだ。本作品は二転三転とする意外なストーリー展開によって事件の真相を混沌とさせているが、ややご都合主義とも思える感じも残し、完成度は高くないもしれない。だが、メディアの抱える問題点を描いていて、見応えのある社会派ミステリーであった。

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2009/05/22

スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ジョー・カーナハン

マジシャンという本業を忘れ、裏社会で荒稼ぎを続けた挙句、FBIに目を付けられ、マフィアの犯罪行為を証言する司法取引を持ちかけられているバディ・“エース”・イズラエル(ジェイミー・ピヴェン)。その命にマフィアのボス、プリモ・スパラッザ(ジョセフ・ラスキン)から100万ドルの賞金がかけられたとの噂が飛び交う。しかし、この実態のない噂だけで、凄腕の殺し屋たちが集まるのであろうか。その疑問が一つ。筋の通った依頼なしでは働かないであろうというところから引っ掛かってしまう。まぁ、本作品の主眼は、殺し屋たちのバトルロイヤルで、一体誰がエースを仕留めるのかというディティールにあるのだから、細部のいいのかもしれない。それでも事件の真相はそれに関わるものであり、倒れていった者たちには、徒労と言うしかない。

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2009/05/19

ストリングス 愛と絆の旅路

製作年:2004年
製作国:デンマーク
監 督:アンデルス・ルノウ・クラルン/庵野秀明(ジャパン・バージョン)

日本の文楽を見ていても感じることであるが、最初は違和感の覚える人形の無機質ぶりも、物語が進んでいくうちに人間ドラマとして遜色なく見られるようになる。なんとも不思議なものであるけれど、それが奥行きある芸の力というものであろう。本作品は、5メートルもの糸で一体につき五人の人形師によって操られた人形による物語である。決してスムーズとは言えないぎこちなさの残る人形の動きも、やがて魅力的に映ってくる。糸に操れたということが、その人形劇の世界観にも大きく影響を与えているという設定も素晴らしい。自分の意思で恣意的に行動しているようであっても、実は誰かの糸によって操られているのではないか。我々が暮らす実社会でもそういうことがあるのではないかと感じさせるから、本作品は意義深い。

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2009/05/18

天使と悪魔

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ロン・ハワード

「あなたは神を信じていますか」。カメルレンゴ司祭(ユアン・マクレガー)がロバート・ラングドン(トム・ハンクス)へ投げかける問い掛け。特定の宗教が掲げる神の存在には懐疑的であったにしても、神という概念、神と定義するものを否定することは難しい。現代であっても科学では解明されない自然界の謎が存在しているのだ。本作品の背景となっている宗教と科学の対立だが、神と科学の対立でないことにも注目。

カメルレンゴから教会に相応しい人物のような発言を繰り返すが、どこか距離を置くような態度を変えないラングドン。絶対的な教義を掲げるカトリック教会であっても、その成り立ちの歴史を知るラングドンにとっては容易に頷けないものであったのだろう。その姿勢は映画製作者たちのそれとも重なる。本事件は「ダ・ヴィンチ・コード」(2006)に続き、結果的としてカトリック教会の罪を問うものであった。

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2009/05/15

ウォーロード 男たちの誓い

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製作年:2008年
製作国:中国/香港
監 督:ピーター・チャン

何故、リィエン(シュー・ジンレイ)は、敗残兵として行き倒れになっていたパン(ジェット・リー)を助けたのだろうか。彼女は盗賊団アルフ(アンディ・ラウ)と暮らす村から家出を何度も繰り返していたという女性。一夜を共に過ごした後、何も言わず消えてしまったのだ。やがて、ウーヤン(金城武)によって誘われて村に訪れたパンと再会することになる。そんな導入部であるから、義兄弟の契りを交わした三人の男たちの信義と裏切りを描いた物語に彼女の影響が及ぶだろうと予想させる。

だが、“もっとうまくやりたい”という彼女の意図というか、何を求めて生きているのかが不明瞭なので、リィエンの存在が浮かんでこない。パンがアルフを処罰しようとしたのは、彼女のためでなくあくまで大義のためであったはずだ。彼女に関するエピソードがなくとも、この三人の男たちのドラマに支障はなかったと思える。

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2009/05/13

おっぱいバレー

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:羽住英一郎

「試合に勝ったらおっぱいを見せる」という生徒たちとの約束を反故にできない美香子(綾瀬はるか)の逡巡。“あなたたちのためなら何でもやる”という建前的な台詞を逆手に取られて、自らの勝気な性格も合わせて引くに引けなくなってしまう。いかにも経験の浅い新任教師のジレンマだ。さて、生徒たちは真剣に練習を重ね、本当に試合に勝てるかもしれないという雰囲気が出てくる。

この窮地を美香子先生はいかに乗り切るのかを非常に楽しみにしていたが、最後は大人の論理で決着づけられしまい、かなり拍子抜けしてしまう。現実的にそうなるのは仕方ないかもしれないが、映画としては誰もが唖然とするようなウルトラC級の脱出策を見せて欲しかった。

“動機は何であれ、頑張ることを知ったことが大事だ”という城和樹(仲村トオル)の台詞。そういう認識を誰もが持ち得ればいいのであるが、動機が不純というだけで拒絶してしまう人も多いだろう。そういう頑なな人々へこの映画が届いて欲しいと思う。

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2009/05/12

宮廷画家ゴヤは見た

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製作年:2006年
製作国:アメリカ/スペイン
監 督:ミロス・フォアマン

本作品では、18世紀末のスペインにおける政治権力の推移をロレンソ神父(ハビエル・バルデム)に重ね合わせて描いている。カソリック教会の権威を高める異端審問の強化。フランスのナポレオン軍による軍事占領。イギリス軍を加えた反ナポレオン派の巻き返し。変節を何度も繰り返す風見鶏のような男かと思って見ていたが、最後は意地を貫き通して、命を散らせていくので驚いた。

ロレンソの変節は、一時的なものでなく、真から宗教支配を拒絶した男に変わっていたということだ。無論、イネス(ナタリー・ポートマン)に対する処遇など見れば、誠実に生きているとは言い切れない。非難を浴びても仕方ない男だけれど、彼なりに悟りを開いたものがあったということだ。最後は殉教者のように見える。形は違いますが、「わが命つきるとも」(1966)のトーマス・モアを思い浮かべました。

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2009/05/11

GSワンダーランド

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:本田隆一

実態があるのか、ないのか分からないグループ・サウンズの狂騒ブーム。それに乗ってひと山当てようとする大人の論理。ただ日劇ミュージックホールの舞台に立ちたいという無邪気な若者たちの夢。自分だけの王子様を見つけたいというファンの願望。それが一致した時、白タイツのフリフリ王子様スタイルの“ザ・タイツメン”が一気にブレークすることとなる。しかも、人数合わせのため無理やり男装させてメンバー入りしたミック(栗山千明)が、人気の中心になっていく皮肉さ。そのことでこのバンドの賞味期限はごく短いものだと予感させる。

彼らは日劇の舞台に立てるのか。その岐路に立たされたメンバーたちの決断。大人の論理も乗り越えて、その瞬間を生き抜いた彼らは実に清々しかった。

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2009/05/10

GOEMON

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:紀里谷和明

石川五右衛門(江口洋介)が選んだ自由とは何だったのか。織田信長(中村橋之助)によって超人的な身体能力を持つようになる育てられた五右衛門だったが、恩人とも言える信長を亡くしたとき、忍びの道を捨てる。問題は、その能力をいかに使うかということだ。五右衛門は盗賊として享楽的な生活を続けるが、石田三成(要潤)と徳川家康(伊武雅刀)の暗闘に巻き込まれていく。共に修行を積んだ霧隠才蔵(大沢たかお)は仕官への道を望み、石田三成(要潤)の影の力として生きている。対照的な生き方を選んだ二人が激突する場面が序盤の見せ場だ。

五右衛門は自らの意志で豊臣秀吉(奥田瑛二)を暗殺しようと三度立ち向かうことになる。その時の動機がそれぞれ違っているところに、逡巡を重ねながら進むべき道を見出していく五右衛門の成長を感じさせる。直情的に行動することは、予想だにしなかった災いを呼ぶこともある。“大切な者を守るためには強くなれ ”というテーマは、身体的だけでなく精神的にも要求されるものだと思う。クライマックスの合戦シーンで、一人飛び込んでいくのはあまりに現実離れしているとも思えるが、五右衛門の自由な精神を過剰に表現したものと捉えました。

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2009/05/09

四川のうた

製作年:2008年
製作国:中国/日本
監 督:ジャ・ジャンクー

滅び行くものは、どうしてこれほどまでにもの哀しいのだろうか。都市再開発のために閉鎖される工場など、日本でもよく見られる風景である。無骨で素っ気無い工場跡など、アクション映画やホラー映画の舞台になるくらいしか思い浮かばなかったが、ジャ・ジャンクー監督の手に掛かるとこれほど詩情豊かな場所に変わってしまうから驚きだ。工場で日々働くひとりひとりにそれぞれ喜怒哀楽のドラマがあり、失われた時間を思うと静かに胸を打つものがあります。夢の残滓が次々と浮かんでは消えていき、押し黙った横顔には深い感銘を受けました。

何も知らないで見ればドキュメンタリー映画だと思ってしまいますが、ジャ・ジャンクー作品ではお馴染みのチャオ・タオも出演しており、虚実の境界線がしっかり定まっていない。だからこそ真実味あふれる感情の揺らめきを表現できているのだと感じた。

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2009/05/08

チェイサー

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製作年:2008年
製作国:韓国
監 督:ナ・ホンジン

映画を見終えた後に、自分の中でこんな風に編集していけば、より面白くなるのになぁと思えるときがあります。無論、そうしたからには監督の演出意図もある筈で、安易に否定すべきでないことは分かっております。ゼロから作り上げた苦労を知らず、こうした方が良い、ああした方が良いと言うのは簡単である。だが、そうしたことをあえて無視してもいいのだと考えます。架空の編集を繰り返しながら自分好みの映画を発見していくからです。

さて、本作品で言えば、殺人犯ヨンミン(ハ・ジョンウ)の描写を極力抑え、元刑事ジュンホ(キム・ユンソク)の失踪した女たちへの追跡だけで序盤を進めた方が良かったと思う。交通事故のシーンでヨンミンが初めて登場させれば、警察での唐突な殺人告白のインパクトは数倍高まったでしょう。前半の展開を少し変えるだけで、ミンヨンの底知れぬ不気味さがさらに浮かび上った筈だ。こんな風に書くと否定的意見の方が強く感じられてしまうかもしれませんが、秀作であることに間違いはないと思います。ただ、より傑作になったであろうと惜しまれるのです。

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2009/05/07

闇の子供たち

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:阪本順治

かつて日本映画が作り得なかった幼児売春や臓器密売をテーマに一つの作品を撮ったという意義は大きい。阪本順治監督は撮影中に声が出なくなってしまったというくらい精神的にも追い込まれた過酷な現場だったという。そうした執念の結集した映像は、目をそむけてしまいたくなるような緊迫感がある。

そんなことを全て分かった上でこう書くのは辛いものがあるけれど、一つの作品としてはあまりに欠落が多過ぎるのではないか。そもそも、バンコク支社の記者・南部浩行(江口洋介)の最後の崩壊は一体なんだったのか。危険な取材を果敢に進めていく前半の姿とはかけ離れ、あまりに唐突すぎるのではないか。与田博明(妻夫木聡)へ職業的意義を教えたことがすべて無駄になってしまったように感じる。

子供を犠牲に成り立つタイの現状を許しているのは、世界の無関心であることということ。それを糾弾するのには、ボランティアとしてバンコクの社会福祉センターで働く道を選んだ恵子(宮崎あおい)を中心に展開していった方が収まりのよい映画になったと思う。完成度の高さより、どこか破綻していても感情に引っ掛かる映画を撮り続けるのは、阪本順治監督らしいと言えばそれまでであるが。

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2009/05/06

デュプリシティ スパイは、スパイに嘘をつく

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:トニー・ギルロイ

B&R社のCEOハワード・タリー(トム・ウィルキンソン) とエクイクロム社のCEOディック・ガーシック(ポール・ジアマッテ)同士が格闘する冒頭のシーンが傑作。まるで怪獣映画のように咆哮しながらぶつかり合う様を肉声なしのスローモーションで見せる。これで一片の映像詩になっているから驚きだ。

産業スパイを主題にした翻訳小説をつい最近読んだばかりであるが、基本的なプロットに類似性があり、評判のどんでん返しもある種予想通りで驚きは少ない。ドラマ展開よりも、キャラクター造形で楽しみ映画だと思う。お互いに惹かれ合うレイ(クライヴ・オーウェン)とクレア(ジュリア・ロバーツ)。スパイとして生きる二人は相手を心底から信じることなどできない。会うたびに疑心暗鬼を繰り返す。

はなからうまくいかない二人だと思うのだが、それでも別れないでいるクレアの悲哀に満ちた表情が忘れられない。それにしても、自宅に仕掛けられた盗聴器を見抜けないとは。この二人、さほど優秀なスパイでないのかも。

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2009/05/05

子供の情景

製作年:2007年
製作国:イラン/フランス
監 督:ハナ・マフマルバフ

イラン映画界の巨匠モフセン・マフマルバフ監督の娘として、幼少の頃から映画環境の整った生活を送ってきたことがあるにしても、19歳でこれだけ作家性の強い作品を撮りあげたハナ・マフマルバフ監督には感服した。最初と最後に繰り返し挿入されるバーミヤン石仏の爆破シーン。ユネスコ世界遺産にも登録された遺跡を破壊したタリバンに対して、世界は非難の声をあげたが、そこで暮らし人々に対してどれほどの関心を持っているのか。

学校に行って勉強したいという6歳の少女バクタイ(ニクバクト・ノルーズ)のひとつの希望。それに立ちはだかる様々な障壁。彼女は誰の力も借りず、一人で乗り越えていこうとする。最も大きな壁が戦争ごっこに興じる男の子たちだ。テロ戦争によって世界はタリバンを掃討しようとしたが、その勢力は決して弱体化していない。そんな中、彼らがタリバンを名乗ることに震撼する。アメリカを敵対視し、処刑ごっこを繰り返す。その目は決して遊びとは思えない狂信的なものだ。“自由になりたかったから死ぬんだ”をいう台詞も心に深く突き刺さる。これがアフガニスタンの現状なのか。知るべきことは多い。

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2009/05/03

レイチェルの結婚

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ジョナサン・デミ

騒動が重なったレイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式。この一家に真の和解の日が訪れるのだろうか。その先の事は誰にも分からない。しかし、かつてキム(アン・ハサウェイ)が愚かな選択をして修復することのできない禍根を残したことをこの家族から消すことなどできないことは明らかだ。だから、彼女は一生その罪を背負っていかねばならない。

だが、キムにはその覚悟はなく、薬物依存を克服することができないでいる。キムも辛いであろうが、家族はより複雑な感情を抱かなければならない。事実、両親は離婚してしまい、家族は崩壊してしまった。その罪の意識を減らそうとするキムと母アビー(デブラ・ウィンガー)の衝突の場面が本作品の白眉だったと思う。いくら他人の所為にしても起きてしまったことは変わらない。キムの真の贖罪は、そのことを受け入れることから始まると感じた。

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2009/05/02

スラムドッグ$ミリオネア

製作年:2008年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:ダニー・ボイル

ヴィカス・スワラップの原作「ぼくと1ルピーの神様」をまだ読んでいないけれど、内容紹介をながめてみると、ジャマール(デヴ・パテル)のラティカ(フリーダ・ピント)への一途な想いや、兄サリーム(マドゥル・ミッタル)に対する愛僧入り混じった複雑な感情は映画版の脚色であるらしいことが分かる。クイズ番組の解答にそれまでの生涯を重ねるという秀逸なアイディアを基盤にして、映画としてのプロットの膨らませ方が絶妙だったということだ。

とりわけ、ジャマールとラティカの繰り返される別離と再会の場を駅にしたのが素晴らしい。二人して未来という列車に乗り込もうとするが、ラティカは乗り遅れ、ジャマールは待ち続ける。抜群に評判の良いエンド・クレジットのダンス・シーンも、未来への切符を手にし、堂々と列車に乗り込むことのできる二人の喜びを表現したものと感じました。

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