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2009年4月

2009/04/30

グラン・トリノ

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:クリント・イーストウッド

暴力の連鎖をいかに断ち切るか。その一つの道筋をかつて西部劇や刑事ドラマで暴力の力を遺憾なく発揮していたクリント・イーストウッド自身が演じているから、実に感慨深い。細かな設定には差異があるものの、私はジョン・ウェインの遺作となった「ラスト・シューティスト」(1976)を思い出しました。それは古き良き西部劇の終焉をジョン・ウェイン自身の生涯に重ねた作品。身体はいつか病み衰えていくが、その猛々しい自尊心は滅びることなく若い世代へ継承されていく。

その監督はドン・シーゲル。彼はクリント・イーストウッドの代表作「ダーティハリー」(1971)の監督でもある。ジョン・ウェインからクリント・イーストウッドへ確実に受け継がれているものがある。それを今度はモン族というあまりなじみのないラオス移民の少年へ託す。そうしたところに本作品の今日性を感じた。

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2009/04/27

ミルク

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ガス・ヴァン・サント

40歳になろうとしているのに、まだ何も成し遂げていない。そんな感慨を抱けるからこそ、歴史に名を残すことができるのであろう。それにしても、アメリカという国は怖いものである。リンカーン、ケネディ兄弟、キング牧師。社会の変革を成し遂げようとする勢力を、ことごとく暗殺という手段で抹殺してしまう。ゲイをはじめとするあらゆるマイノリティの社会的地位向上のために立ち上がったハーヴィー・ミルク(ショーン・ペン)もその一人だ。本当に暗殺という手段が有効だったのだろうか。

もし、彼らが生き残り、職務を全うしていたら、どうなっていただろうか。これこそというような理想が実現されているかもしれないが、意外に今の社会とあまり変わらないかも知れない。例えば、同じショーン・ペンが政治家を演じた「オール・ザ・キングスメン」(2006)のウィリー・スタークのように、理想に燃えた男が、いつしか変質し、汚職の中心にいたりすることもあるからだ。悲劇のヒーローとして未来永劫君臨し、永遠に民衆へ希望を与える存在へと昇華していった男たち。無理して排除する必要があったのだろうか。

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2009/04/26

落語娘

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:中原俊

香須美(ミムラ)の前に示された二つの道。正道を歩む三松家柿紅(益岡徹)と邪道を進む三々亭平佐(津川雅彦)。禁断の演目“緋扇長屋”を巡る騒動の中、どちらを選ぶべきか岐路に立たされる。元々、柿紅の古典落語を指標に落語家を目指したが、柿紅から女性を理由に弟子入りを断られ、仕方なく平佐を師匠に選んだ彼女。一度も稽古を付けてくれないばかりか、不祥事を起こした謹慎中でも香須美にまで遊びの金をせびる破天荒ぶり。一も二もなく、柿紅を選んだとしても不思議ではない境遇だ。

しかし、彼女は平佐を選ぶ。日常の何気ない会話の中で聞く平左の言葉が、香須美の既成概念を打ち破ったのだ。ラスト・シーンでの演目が、古典ではなく創作落語になっていたところに、彼女の落語家としての未来を見た。

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2009/04/25

バーン・アフター・リーディング

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:イーサン・コーエン/ジョエル・コーエン

オープニング。人工衛星から垂直に落ちてくるようなカメラの動き。それは見る者に神の視点を感じさせる。勘違いと思い込みがパラノイアを増長させていく登場人物たち。観客の我々は、それがいかに間違っているか知っている。だから、彼らの加速的に暴走していく様を可笑しく感じながら、どこかもの悲しさで一杯になる。降格されたことを不服として、CIAを辞めたオズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)。その意趣返しにと暴露本を執筆しようとする。だが、降格の原因となったアルコール中毒にその自覚はない。ここから勘違いの連鎖が始まっていく。

偶然、CIAの機密情報が書き込まれた1枚のCD-ROMを手にして恐喝を思いつくチャド(ブラッド・ピット)。出会い系にハマる財務省連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)。その彼と新たな生活を築こうとする神経症的女医ケイティ(ティルダ・スウィントン)。全身整形を切望するリンダ(フランシス・マクドーマンド)。彼女を見守るフィットネスセンターのマネージャー、テッド(リチャード・ジェンキンス)。彼らの望むものは、それを入手しても幸福を得られるとは限らないのである。自分の姿をきちんと見られない者たちの悲劇。鏡を多く登場させるのは、その強調だと感じました。

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2009/04/22

ドロップ

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:品川ヒロシ

台詞というものは、それ自体どれほど陳腐であろうとも何度も何度も反復されると、だんだん興趣が増していくものだ。本作品では徹底して、それが貫かれている。“人はそう簡単に死なねーよ”、“ケンカするのに理由が必要か”、“また喧嘩に負けたのかよ”などなど、3回、4回と繰り返され、最後のはその台詞が出てくるだけで、思わず微笑んでしまうことになる。

原作・脚本・監督の品川ヒロシをお笑い芸人として見たことがないので、そのギャップがつかみにくいのであるが、確かに新人監督とは思えない手堅い演出ぶりである。いじめなどの不良としてのダークな部分は全く描かれていなく、スポーツのように喧嘩に明け暮れるヒロシ(成宮寛貴)や達也(水嶋ヒロ)たちの姿にはある種の清々しさがある。その分、現実感が薄れるかもしれないけれど、喧嘩を続けていた者同士がやがて仲間になっていくところなど心惹かれるものがありました。

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2009/04/21

公共の敵

製作国:2002年
製作国:韓国
監 督:カン・ウソク

イ・ソンジェ扮する犯人役チョ・ギュファンの冷酷非情な殺人シーンにも驚かされたが、それ以上に唖然とさせられたのは、ソル・ギョング演じる悪徳刑事カン・チョルジュンのあまりにも無責任で身勝手な行動。確かに、証拠も何も無く独自の勘で、チョ・ギュファンが犯人であると見破ったことは凄いことかもしれない。だが、彼を追い詰めていく手法は、誉められたものでないだろう。これはフィクションで犯人は分かっているからいいものの、こうして冤罪が生まれていくのかもしれないと思うと心が落ち着かない。

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2009/04/20

初雪の恋 ヴァージン・スノー

製作年:2006年
製作国:日本/韓国
監 督:ハン・サンヒ

ラブ・ストーリーの胆は、恋する男女の前にいかなる障壁を設けるかにかかっている。その壁が高ければ高いほどいいというものでもない。あまりに非現実的すぎると、興ざめになってしまうからだ。越えられそうで越えられない微妙な高さこそいい。主人公たちの頑張りを心から応援できる。さて、本作品のミン(イ・ジュンギ)と七重(宮崎あおい)の間にも壁は用意されている。言葉が違う、文化や歴史が違うという日韓という壁だけでも十分にドラマが作れる筈なのに、七重の家族環境というシリアスな背景はいささか余分ではなかったか。当初の神社で働く巫女姿の七重というイメージが、中盤から活かされていないのも惜しまれる。100日記念、初雪デート、トルダムギルのジンクスなど、初めて知る韓国の風習も興味深かったが、効果的にドラマへ反映されていないのも残念だった。

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2009/04/16

善き人のためのソナタ

製作年:2006年
製作国:ドイツ
監 督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

人の気持ちが変わっていくは、ほんの一瞬かもしれないが、そうなるにはそれなりの潜在的な理由が積み重なってのことである。ある切っ掛けを持って、それらが一気に発露し、心が動いていくものだと思う。秘密警察“シュタージ”のヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)が変わっていったのは、何も監視対象のドライマン(セバスチャン・コッホ)がピアノで弾いた“善き人のためのソナタ”に感銘を受けたからではない。国家に忠誠を誓った優秀な男が何を得て、何を失ってきたのか、日々の活動の中で懐疑的になってしまったからだろう。善き人とは、一体どんな者なのかという問いかけ。そうした思索を続けることができる世界こそ、自由というものではないか。キャリア的には破滅したが、彼の選んだ道に間違いはないと感じる。

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2009/04/15

エンパイア・オブ・ザ・ウルフ

製作年:2005年
製作国:フランス
監 督:クリス・ナオン

夫の記憶だけなくしてしまうという奇病にかかった内務省高級官僚の妻アンナ(アーリー・ジョヴァ-)。パリ10区のトルコ人街で起きた連続猟奇殺人事件。実在しているというトルコの国粋主義組織“灰色の狼”。無関係と思えるそれらが一つに収斂されていく展開は、意外性に富んでおり、もっと面白く感じてもいい筈だ。だが、結果はそうならない。ひとつひとつのエピソードに現実味が乏しく、物語が進むごとに気持は離れていく感じがしました。

若手刑事ポール(ジョスラン・キヴラン)と悪徳警官シフェール(ジャン・レノ)のコンビもバランスが悪い。一番気になるのは、ポールが単身“灰色の狼”のアジトへ乗り込んでいくところ。いくらなんでも無防備すぎるであろう。いくら肉親を犯罪で失ったからとはいえ、ここまで暴走するとは思えない。ここからはご都合主義のオンパレード。なんとも残念な作品でした。

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2009/04/13

珈琲時光

製作年:2003年
製作国:日本
監 督:ホウ・シャオシェン

小津安二郎の生誕100年を記念して製作されたホウ・シャオシェン監督による東京を舞台にしたドラマ。直接的には小津安二郎を感じさせる作風ではなかったと思いますが、静謐な人間描写が心地よい作品でした。フリーライターの陽子(一青窈)と古書店の二代目主人、肇(浅野忠信)。二人は恋人同士だろうという最初に受けた雰囲気が、突然に覆されるドラマ展開に驚きました。普通でありながらどこか普通でない感じ。それでも違和感なく見られてしまったのは、詩情あふれる映像の力からでしょうか。いつまでも見続けていたい気分にさせられました。

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2009/04/12

ダイアナの選択

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ヴァディム・パールマン

「人間の体の75%は水でできている」という台詞を中心に、水に関わるシーンが何度も反復されている。プール。スプリンクラー。浴槽。雨。銃撃され、噴き出してくる配管。本作の水はダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)の心情を表現していると思う。留守宅のプールへ何度も飛び込んでいくのは、彼女のこの街から離れたい、新しい人生を始めたいという変身願望を表しているのだろう。逆に32歳のダイアナ(ユマ・サーマン)が浴槽に全身浸かっているのは、人生に行き詰った閉塞感を感じさせる。

まぁ、それにしても、こんな結末が待っているとは驚愕した。公式ホームページで監督自身の答えが提示されているけれど、それが全てではない。幾通りにも解釈できる話である。合評会などで、いろんな感想を聞いてみたくなる作品でした。

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2009/04/11

レッドクリフ Part 2 未来への最終決戦

製作年:2009年
製作国:アメリカ/中国/日本/台湾/韓国
監 督:ジョン・ウー

日本では予想を越える大ヒットとなり成功を収めた「Part 1」であるが、自分的には留保をつけた。その最大の要因は金城武が演じた孔明にあった。とても歴史に名を残す名軍師には見えなかったのだ。だが、本作品ではそれを一気に挽回する活躍ぶりだ。10万本の矢を集める奇策。気象を読み、開戦時期を見据える決断力。謎めいた雰囲気を増し、ケレン味たっぷりに孔明を造形している。何といっても、勝敗を決したのは天候であった点が興味深い。風向きか変わるまでの駆け引きとサスペンス感。こうしたディティールは、例えば「エリザベス ゴールデン・エイジ」(2007)の無敵艦隊との海戦シーンなどをはるかに凌ぐ豊富さで瞠目した。登場人物それぞれに見せ場があり、結末が分かっている話であっても、飽きることなく見ることができた。

唯一、曹操の愛人になった麗姫(ソン・ジア)に何もなかったのが残念だった。曹操(チャン・フォンイー)の元に単身乗り込んだ小喬(リン・チーリン)と暗闘があるのではないかと予想していたのですが・・・。

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2009/04/09

トワイライト 初恋

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:キャサリン・ハードウィック

今までにないバンパイアの造形。孤独に生きる少女との禁断の恋。どれほど惹かれあっていても想いを遂げられない状況。様々な批評を読んでみるとなかなか好評を得ている作品のようだが、私には合いませんでした。演出にタメがないというか、盛り上がりが感じられなかった。

例えば、エドワード(ロバート・パティンソン)がベラ(クリステン・スチュワート)と最初に会った教室の場面。あれだけ嫌な表情を見せていたのに、数日後には当たり前のように自己紹介などしている。エドワードの心情の変化がよく分からない。後に、不快な態度は彼女の魅了に対する過剰反応だと分かるのであるが、それにしてもあまり意味のないシーンである。それまでは全く無視していたのに、ベラを交通事故から救う場面で二人の距離が一気に縮まるようになる展開の方が、ずっと良かった筈だ。

あまり意味のない場面が多い一方で、何故、彼女の心だけ読めないのかとか、暴言を吐いたしまった父親との関係改善はどうなったのかなど、重要とも言える場面はカットされている。バランスが悪く最後まで乗ることができませんでした。

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2009/04/08

映画は映画だ

製作年:2008年
製作国:韓国
監 督:チャン・フン

現実的に考えれば、現役の幹部クラスのヤクザが商業映画で助演クラスの出演をすることなどあり得ない話だ。いくらリアリズムの追求と言っても、こんな映画が劇場公開されることはまず不可能である。だから、最初の設定からしてリアリティーがないのであるが、ひとまずそれを置いておいて、演技とは何か、現実とは何かを思考するには面白い作品であった。

真剣に殴り合うという撮影シーンであるが、それ自体も実は演技であるという二重の意味で膨らみを持つ。演技らしい殴り合いと、真剣に殴り合っているように見えるリアリティー。その差が、明確にあるようにも見えるが、実はすべては演技なのだ。映画は現実味を持たせないと成立しないが、現実を越えたところにその真価が問われるのだと感じる。

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2009/04/07

ザ・バンク 堕ちた巨像

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製作年:2009年
製作国:アメリカ/ドイツ/イギリス
監 督:トム・ティクヴァ

組織の中にありながら孤高の一匹狼として巨悪を倒すべき正義を貫く男。例えば、ダーティハリー・シリーズのハリー・キャラハン刑事などアクション映画では定番的なキャラクターだ。様々な障害を経て犯人を倒すことで一応のクライマックスを迎えるのが常道であるが、本作品のサリンジャー(クライヴ・オーウェン)はどうであろう。冒頭での彼の憂鬱な表情が象徴するように、そんな安易なカタルシスなど用意されていない。ここに現代性を感じる。

単に一企業の犯罪行為だけではないのだ。複雑な国際情勢が絡まりあって、取り締まる側も取り締まれる側も境界性が曖昧となっている。本気で追及しようとすれば、どこで火の粉がかかるか分からない。そのため、サリンジャーの捜査も妨害を受けるのだ。彼の選んだ方法で一応の決着を見せるが、果たしてこれが正義の道と言えるのか。別の悪を助長することになりかねない。ヒーローが苦難する時代なのだ。

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2009/04/05

接吻

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:万田邦敏

これは形を変えた「UNloved」(2002)だ。万田邦敏と万田珠実夫妻の共同脚本から生み出された本作品は、前作同様に異形のヒロインを生み出している。「UNloved」の光子(森口瑤子)と「接吻」の京子(小池栄子)は、表面的には勿論差異があるけれど本質的な心象風景は全く同じと言ってよい。ありのままの自分でいられる男性を追い求めて、ついに見つかった時の絶頂感。しかし、至福はわずかな時間しかなく、徐々に開いていく隔絶感。どうしようもなく破滅への道を歩み続ける緊張感。

そんなヒロインの恋愛対象から外れ、見守る立場にしかなれない人物に仲村トオルがキャスティングされているのも、関連性を感じる。彼女たちに共感を覚えるのは難しいが、世間一般の規範だけがすべてでないのだ。万田夫妻が次作でどんなヒロインを創造するのか、非常に興味深い。

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2009/04/03

ワルキューレ

製作年:2008年
製作国:アメリカ/ドイツ
監 督:ブライアン・シンガー

シュタウフェンベルク大佐のヒトラー暗殺未遂事件は、以前これに関連した小説を読んだこともあり知っておりました。しかし、“ワルキューレ作戦”が単に総統を暗殺するだけでなく、政権及び国内を掌握することを目論んだ作戦であったとは、知らなかったです。これは間違いなくクーデターでありますが、何故、彼らが失敗していったのかもよく分かりました。それは、情報戦で、ことごとく後手に回ってしまったからでしょう。

ヒトラーの安否が確認できないまま、シュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)の狂信的な確信によって作戦がスタートしてしまったことが一つ。次に、通信室やラジオ局など管理下に置けなかったこと。ヒトラーの生存が明らかになり、彼らの蜂起は一瞬の内に潰えてしまいました。ヒトラーの強運もさることながら、こうした手順の誤りが致命的であったと感じます。正義のために立ち上がる勇気は尊いものかもしれないが、それだけではうまくいかないという歴史の教訓を見た思いです。

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2009/04/02

フロスト×ニクソン

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ロン・ハワード

政治家という者は、例え、明らかに非があると分かっていても謝罪してはいけないものなのか。どれほど厳しく追及されようとも、巧みにかわす話術と厚顔があれば、現役を続けることができる。逆に良心の呵責に負けてしまえば、第一線を退くしかない。

本作品は、デヴィッド・フロスト(マイケル・シーン)のインタビューを機会に、ニクソン元大統領(フランク・ランジェラ)のカムバックを目論見ながら、その思いを断念しなければならなくなる話だ。何故、深夜にフロストをかけた電話のことをニクソンは覚えていなかったか。インタビュー最終日の冒頭で、そのことを触れられ動揺するニクソン。敗北への道はここから始まっていたとも思えるが、格下のフロストを翻弄させていた政治家とは、別の人格が存在していたことを感じさせる。政治家としては敗北しても、人間としては勝利をおさめたのではないか。だから、鑑賞後も心地よい余韻にひたることができたのだと思う。

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2009/04/01

ウォッチメン

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製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ザック・スナイダー

世界の平和を守るのは誰か。それは正義のヒーローである。では、その平和を守るために何を犠牲にするのか。その回答の模索が本作品であると思う。まさに哲学的なテーマを重厚な作りで映像化している。登場人物たちごとに、何を犠牲にするのかという判断基準が違っており、そのための軋轢と葛藤が生まれる。悪の結社の世界征服を防ぐというおとぎ話ではないのだ。誰に共感できるか、誰を拒絶するかで、見る者によって、それぞれ主人公は変わっていく話だと感じる。

映画的興奮を高めたのは、ロールシャッハ(ジャッキー・アール・ヘイリー)を助けるため、刑務所に向かったナイトオウル(パトリック・ウィルソン)とシルク・スペクター(マリン・アッカーマン)の乱闘シーン。それまでの抑圧された心情を一気に解放させ、炸裂させるアクションに酔いしれた。

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