« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月

2009/03/31

マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:デヴィッド・フランケル

飼い主の命令をきかない飼い犬に振り回されるコメディーかと当初思っていましたが、夫婦間の成長も並行して描かれており、しみじみとした感動を誘う作品でありました。ジョン(オーウェン・ウィルソン)は新聞記者としての成功を夢みながら、コラムニストとして大成していく。だが、そのことに納得できないでいる。親友記者の派手な躍進を横目に見て、家族がいなければという思いを消せないでいるのだ。トラブルを連発するマーリーは、ジョンにとって家庭生活の象徴のようであった。なりたいことと、できることは違うという。そのことをいかに得心していくかという物語でもありました。

あぁ、それにしてもマーリーにやっつけられてしまうドッグ・トレーナーはキャスリーン・ターナーが演じていたとは。鑑賞中は全く気がつきませんでした。容姿の変貌ぶりもさることながら、あれだけ80年代に主演を張った女優が、こんな小さな役柄で出演していることに驚きました。

| | コメント (0) | トラックバック (11)

2009/03/29

DRAGONBALL EVOLUTION

1236966818

製作年:2009年
製作国:アメリカ
監 督:ジェームズ・ウォン

世界征服を企むピッコロ大魔王(ジェームズ・マースターズ)を倒すため、7つのドラゴンボールを集める旅に出る孫悟空(ジャスティン・チャットウィン)というプロットは、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズを思い出すようにファンタジー映画の典型と言ってよい。鳥山明の原作コミックを全く読んでいない自分にすれば、元作との違いを意識することなく一つのファンタジー映画と見ることができる。その結果としては、残念な出来と言わざるを得ない。

亡き祖父の言葉“自分を信じろ”を体現するための旅でもあった筈だが、武芸にしても精神面にしても、その修業的エピソードが決定的に不足しており、適当に強くなってしまった感じである。一番の鍵を握る亀仙人(チョウ・ユンファ)の設定も極めて不明瞭。言ってみれば「スター・ウォーズ」シリーズのヨーダに相当する登場人物であるのに、神秘性も意外性も皆無であり、なんとも残念であった。“自分を信じろ”というテーマを実現させたのは、ピッコロ大魔王の手下マイ役という悪役でハリウッド大作に出演を果たした田村英里子でないか。

| | コメント (0) | トラックバック (12)

2009/03/26

アニー・ホール

製作年:1977年
製作国:アメリカ
監 督:ウディ・アレン

ウディ・アレンの映画はほとんど見ているけれど、何故かアカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞に輝く本作品を見る機会がなかった。いつかいつかと思っておりましたが、とうとう叶うことができました。都会に生きる男女の恋と別れを語る一連のウディ・アレン映画の出発点とも言える作品。ということを再確認できたのは良かったのですが、逆に言えば既視感にあふれ、あまり新鮮な感動を得られなかった。その分、期待はずれという感じもしないではない。印象深いのは、数年後に再会した二人の場面。どれほど別れに傷つき苦しんでいたとしても、時間が解決することもある。こんな風にまた会えるのも良い風情だと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2009/03/25

ひゃくはち

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:森義隆

レギュラー争いでなく、ベンチ入り争いでしのぎを削る戦い。だが、ベンチ入りしたとしても試合出場はないと監督から言われてしまうのだ。これまで甲子園を目指す野球映画は数々作られてきたが、補欠部員を主人公とした作品は珍しく画期的と言ってよい。誰でも思うであろう。レギュラーになれないと分かっていながら、どうしてこれほどまで練習に取り組むのか。戦うべきは他者でなく、自分の中にあるからであろう。

例え、どんなに努力しても越えることができない“才能の壁”。プロを目指すような天才球児に敵わないとしても、昨日できなかったことが今日できるようになる喜びというものは、誰の心の中でも見つけられる筈だ。そのための苦しい鍛練である。スポーツというものは勝ち負けという結果がはっきりした形となって出てくる。だが、その厳しい結果だけでは測れない何かがある。

| | コメント (0) | トラックバック (5)

2009/03/24

フィッシュストーリー

Fishstory02

製作年:2009年
製作国:日本
監 督:中村義洋

“フィッシュストーリー”とは、ほら話を意味するとは本作品を見るまで知らなかったが、近年これだけ爽快な気分にさせられる“ほら話”はない。彗星の衝突で滅亡の危機に瀕した地球。物語の焦点は、このピンチを一体、誰が救うのかに絞られる訳であるが、答えはなかなか見えてこない。5つの時代のエピソードが自由自在に交錯し、それぞれ魅力的な登場人物が配置され、大いに惹きつけられてしまう。特にバンドのリーダーを演じた伊藤淳史の好演が光る。これまでの彼にはない新たな魅力で輝いておりました。

この物語はどんな着地をするのか。決してありきたりではない、考え抜かれた運命の流れが明らかになったとき、上手いなぁと大いに唸りました。正義の味方は、一体誰だったのか。それは、この登場人物たち全員と言っても良い。何気ない人と人との関係によって、ある者は喜び、ある者は悔しがり、ある者は未来に夢を託す。“この時代で届かなかった想いが、時空をこえてつながっていく”という言葉が重々しく響きます。

| | コメント (0) | トラックバック (15)

2009/03/23

ポチの告白

328721_01_03_02

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:高橋玄

カーティス・ハンソン監督の「L.A.コンフィデンシャル」(1997)や、クリント・イースドウッド監督の「チェンジリング」(2008)など、腐敗した警察組織を描いたアメリカ映画をたくさん見てきたが、日本もこれほどひどいものなのかという暗澹たる気持ちにさせられる作品でした。空出張による裏金作りなんて可愛いもので、暴力団の麻薬取引の用心棒を務めたり、闇の組織の商売を黙認することで、膨大なヤミ金を手にするシステムが構築されているのだ。日本一の暴力団という指摘に唖然とさせられます。

何より不気味なのは、上司の命令を盲目的に従う集団体制。そして、マスコミとの癒着の酷さ。どこまでフィクションなのか分かりませんが、こんなことが行われていても不思議でないと感じさせます。よくぞここまで、警察批判、マスコミ批判に徹した作品を作り上げたものです。その不屈な映画魂に感服いたしました。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2009/03/22

リリィ、はちみつ色の秘密

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ジーナ・プリンス=バイスウッド

何故、ジューン(アリシア・キーズ)は、頑なに恋人の求婚を拒み続けるのか。まだ黒人差別が公然と行われていた時代、養蜂業を営むボートライト姉妹は特異な存在に見える。経済的にも自立していて、成功者としての毅然とした雰囲気が窺える。だが、そんな表面では知るよしもない暗い過去を抱えている。その具体的に披露されていないエピソードの恐れからやジューンは結婚に踏みきれないのではないか。

精神的に脆弱なメイ(ソフィー・オコネドー)が分かりやすく表現されているが、独身を守る長女オーガスト(クイーン・ラティファ)も癒し難い思いを抱えて生きていると思わせる。そんな家族であるから、母の誤殺事件で傷を癒えないリリィ(ダコタ・ファニング)を、優しく包み込むことができたのだ。彼女の精神的成長が、迎えにきた父T・レイ(ポール・ベタニー)にも決然とした態度で対応させる。この親子の関係もいい方向に変わっていくと予感させます。

| | コメント (0) | トラックバック (9)

2009/03/21

ホノカアボーイ

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:真田敦

まず驚いたのは、あの倍賞千恵子がこれほど風変わりなキャラクターを演じていること。「男はつらいよ」シリーズ以降、主演クラスの作品は久々のものなのに、さくらのイメージとは大きく異なる悪戯好きの不思議な老女を選ぶとは。だが、成功していると言い難いのが残念だ。彼女が演じるビーという女性がもう一つ理解し難いからだ。極端に人見知りするようで、レオ(岡田将生)に対してすぐにご飯を作ってやろうとするところの心情の流れがもう一つ分からない。夫の死後、50年間孤独に生きてきたのなら、それが変わっていく瞬間をもっとじっくり見たかった。

それは、レオにも言える。恋人カオル(蒼井優)と別れ、何故、ホノカアに惹かれて住み着いたのか。異国の地で擬似親子のような関係を大切にしていくが、実際の家族とはどうなっているのか。その辺りも触れられていない。実話に基づいた話なのかもしれないが、出発点が定かでなく、登場人物への共感度が低い。せっかくの風光明媚な風景や、美味しそうな食べ物も、あまり効果的でなかった。

| | コメント (2) | トラックバック (4)

2009/03/18

いのちの戦場 アルジェリア1959

L_ennemi_intime2

製作年:2007年
製作国:フランス
監 督:フローラン・シリ

これまで様々なフランス映画の中で、アルジェリア戦争帰りという登場人物が出てきたが、どこか暗い影を帯びているところが共通していた。そのアルジェリア戦争を舞台とした映画では、ジッロ・ポンテコルヴォ監督の「アルジェの戦い」(1965)や、マーク・ロブソン監督の「名誉と栄光のためでなく」(1966)があるらしいが、共に未見であり、なかなか実感する機会が少なかった。何より、60年代以降、それに関した作品が作られなかったことからも、相当タブー視されていたのだろうと感じられる。

そのアルジェリア戦争を真正面から描いた本作品は、並大抵でない熱気を感じる秀作であった。第二次世界大戦以降、軍隊同士が正面からぶつかる戦争は影を潜め、局地的なゲリラ戦が主流となっていく。一般民間人の中に紛れた相手との戦いが、いかに兵士たちを疲労し消耗していくのか。簡単に正邪を分けることのできない戦い。兵士の人間性は粉々に砕け散ってゆく。その過酷さはべトナム、イラク、アフガニスタンの戦場へ続き、いまなお絶えることがないのである。

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2009/03/17

告発のとき

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ポール・ハギス

父ハンク(トミー・リー・ジョーンズ)のようになりたかった息子マイク(ジョナサン・タッカー)。誇るべき軍隊経験を持つ父親。厳格なる自尊心を持ち、“愛国心”は疑う余地のないはずのものだった。だが、そんな理念は、エミリー(シャーリーズ・セロン)の幼い息子に話すゴリアテ退治の逸話のように、いまやおとぎ話だ。どれほどの勇気を絞っても、良心が崩壊していく現代の戦場の存在。決して停まってはいけないという車両のエピソードが象徴的だ。

その過酷な現状に耐えられる者こそ、異常と言わなければならない。そんな若者に対して何も手を差し伸べようとしない国家とは一体何か。悲劇はマイクだけでなく、ペット殺しの家族のように多岐に渡っている。ラスト・シーンでハンクが掲げる国家の救難信号の意味を持つ逆さまの星条旗。ここに、本作品のすべてがあると感じた。

| | コメント (0) | トラックバック (8)

2009/03/15

7つの贈り物

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ガブリエレ・ムッチーノ

前半、たくさん散りばめられた謎めいた行動の意味も、最後にはすべて明らかになる。さりげなく伏線が張り巡らされていて、効果的に利用されている。それはそれで感心するのであるが、それでも、これを単に感動したとの一言で終わらせることはできない。ベン・トーマス(ウィル・スミス)が選んだ贖罪の道。この衝撃は大きい。決して間違いではない。それによって救われる人々がいるからだ。それでも、肯定できない思いが残る。誰かを救うために自分を犠牲にする行為は崇高なものだ。

しかし、それはそれしか残っていないという選択肢のない場合に限られる。ベンはそれに値しないであろう。他にも贖罪の道はあったはずである。形はどうであれ、最終的に自殺という答えしか選んでいないのだ。それが引っかかってならない。

| | コメント (0) | トラックバック (14)

2009/03/14

ダウト あるカトリック学校で

I_240_150040

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ジョン・パトリック・シャンリィ

予告編の印象ではウィリアム・ワイラー監督の「噂の二人」(1961)のように、あるいは、周防正行監督の「それでもボクはやってない」(2007)のように、あらぬ疑いをかけられた主人公が事実無根であることを証明できず、悲劇的な結末を迎える物語かと予想しておりました。序盤こそ、その流れで進んでいきますが、中盤から大きくずれていきます。まず、この展開に唖然となりました。

それは追求されるフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)にも、追求するシスター・アロイシアス(メリル・ストリープ)にも、白でもなく、黒でもない、灰色の世界にいるという視点から進んでいくからでしょう。規則に厳格なシスター・アロイシアスにしても、老化の進んだ修道女のために嘘を突き通すエピソードが印象深い。何かを守るために嘘は必要な時もあり、そのことを一つ一つ糾弾していけば、この社会は成り立っていかない。どこで折り合いをつけるべきか考えることが必要だと感じました。

| | コメント (0) | トラックバック (14)

2009/03/13

シリアの花嫁

製作年:2004年
製作国:イスラエル/フランス/ドイツ
監 督:エラン・リクリス

イスラエル占領下のゴラン高原。複雑な中東情勢というのはニュースでよく聞く言葉でありますが、本作品を見ることで、その意味を改めて教えられました。自由に行き来できないため、写真でしか見たことのない相手に嫁ぐということ。しかも、一度シリア領に渡ってしまえば、二度と故郷に戻ることができなくなってしまうということ。結婚は家族との永別でもあるということなのだ。仮に結婚に失敗したとしても実家には戻ることはできない。結婚を決めるまでに相当の覚悟がいることだろう。

それなのに、いざ軍事境界線を越えようとすると、通行証の手続きトラブルで立ち往生を余儀なくされる。なんとも不条理な話であるが、これこそ現実ということか。こうした背景だけでも見ごたえのある作品であるが、それだけで終わっていないは花嫁モナ(クララ・フーリ)の姉ラウルのドラマでもあるからだ。境界線とは何も国境だけを意味するのではない。自分の望む場所に行けない自由の制限は家族の中にもあることを明らかにし、より奥深い映画に仕上がっている。

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2009/03/10

ヤッターマン

330690_01_02_02

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:三池崇史

これだけ決め事の多い作品の中でも、しっかり自分の色を出した三池崇史監督に感心する。ヤッターマンとドロンボー一味との殺気のない微笑ましい戦いだけで、十分に楽しく作れてしまうはずである。それだけに、行方不明となった海江田博士(阿部サダヲ)の娘・翔子(岡本杏理)の扱いの汚れぶりに唖然としてしまう。

悲劇のヒロインとして清楚に佇んでいてもいいのにである。サソリに刺された彼女の太ももに毒を吸い出すという名目で櫻井翔が口を付ける場面の官能性も突出している。深田恭子のドロンジョが注目を浴びる裏側で、ひっそりと彼女を嗜虐しているようにも見え、やはり三池崇史は只者でありません。

| | コメント (2) | トラックバック (23)

2009/03/08

ジェネラル・ルージュの凱旋

General_1

作年:2009年
製作国:日本
監 督:中村義洋

ドラマ的に弱いなと感じるところは多々ある。速水救急救命センター長(堺雅人)への二つの異なる告発文への謎は、早い段階で予想できるものだし、そもそも速水が救急医療に常軌を逸するほどのこだわりを抱いているのか、その過去や背景が見えてこないので、彼への共感度は浅いままである。それでも、日本医療の現状がヴィヴィッドに伝わり、心穏やかで見られない。

病院経営と救急救命が相容れない対立軸にあるとは思ってもいなかった。絶えることない医療に関する事件や事故。その実情を知れば知るほど増してくる不安感。いざ自分が利用するかもしれないという時に機能不全に陥っているかもしれないのだ。前作「チーム・バチスタの栄光」(2006)より、切実に感じられる作品だった。

「L change the WorLd」(2008)に続き、怪演ぶりを大いに発揮している高嶋政伸。ローソンのCMなどの好感度の高いイメージが印象深いので、この変貌ぶりにはたいへん驚きました。

| | コメント (0) | トラックバック (22)

2009/03/07

悲しみが乾くまで

製作年:2008年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:スサンネ・ビア

「しあわせな孤独」(2002)、「ある愛の風景」(2004)、「アフター・ウェディング」(2006)と、スサンネ・ビア監督がこれまで撮ってきた作品に繋がっていく主題であった。突然の凶事(交通事故、戦死、病気、銃犯罪)によって幸福な家庭が崩壊。傷ついた男女が思わぬ者と心を通じ合わせ、再生の道を歩んでいくところが共通している。ハリウッド作品であっても、自分のスタイルを変えず、ありきたりなラブ・ロマンスに仕立てないところが見事である。

それにしても、いかに夫の死が認められないと言え、オードリー(ハル・ベリー)がブライアン(ベニチオ・デル・トロ)に対する仕打ちはあまりに非常識で身勝手なもの。普通であればブライアンもすぐに怒って出て行きそうなものであるが、麻薬中毒である自身の負い目とこれまで自分を見捨ててこなかった親友ブライアン(デヴィッド・ドゥカヴニー)への贖罪の思いから、耐えてこられたのであろう。しかし、それにも限界があった。破綻を修復し、真の再生の道は始まるのだ。複雑な心理描写を表現する瞳や結婚指輪のクローズ・アップもこの監督らしかった。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2009/03/06

オーストラリア

製作年:2008年
製作国:オーストラリア
監 督:バズ・ラーマン

なかなか賛否両論分かれる作品のようであるが、自分はとても気に入りました。メロドラマの基本のようなすれ違いの運命の果てに再会する恋人たち。物語の展開がことごとく読めてしまうのであるけれど、それがとても心地よい。リアルであるか否かは置いておいて、物語というものは一つの定番の中でこそ、魅力を増していくと感じました。「オズの魔法使」(1939)が全編にフューチャーされているが、映画の主題と密接に結びついているところが絶妙に巧いと思う。ナラ(ブランドン・ウォルターズ)が向かうアボリジニの旅立ちの儀式“ウォークアバウト”とも重なるし、サラ(ニコール・キッドマン)がはるばる異国のオーストラリアにやってきて経験する様々な試練も、ドローヴァー(ヒュー・ジャックマン)が真の愛を手にするまでの逡巡も、冒険旅行を経て自分の居場所を見出す旅であったと見ることができるのだ。

「オズの魔法使」は特定の世代に限定されたものでなく、年齢性別を越えて、それぞれに当てはめることのできる自分探しの物語であると改めて認識いたしました。

| | コメント (2) | トラックバック (15)

2009/03/05

チェチェンへ アレクサンドラの旅

製作年:2007年
製作国:ロシア/フランス
監 督:アレクサンドル・ソクーロフ

チェチェンのロシア軍駐屯地にいる孫デニス(ヴァシリー・シェフツォフ)と会うために祖母アレクサンドラ(ガリーナ・ヴィシネフスカヤ)が訪ねてくる。ただそれだけの話であるが、注意深く見ていかないとドンドン取り残されていくタイプの作品だ。例えば、彼女がどこから来てどこへ向かうとしているのか、その地理的感覚が全くつかめないし、日本人の自分からみて、ロシア人とチェチェン人の違いも明確には判断できない。そもそも、こうして祖母が孫に会うというだけで駐屯地に何日も滞在できるのが、一般的なことなのか、それとも特別のことなのか。その前提もはっきりしなく、どうも落ち着きが悪い。そんな中、随所に異質なカットが挿入され、劇中何度もハッとさせられる。例えば、デニス以外の兵士たちの表情をクローズアップで捕らえたショットの多用。何か次のエピソードの繋がるかと思えば、そんなこともない。もう一つ、現地で親しくなったチェチェン人の女性マリカ(ライサ・ギチャエワ)が最後にアレクサンドラを見送る時、すぐに列車と反対方向を向いてしまうこと。一緒に見送った女性たちは列車の方向を向いているのに、それが二回も反復されていて、どうも気になって仕方ない。そうした意味を考えてもすぐに答えは見つからないが、このような違和感が刺激的であるとも言える。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2009/03/03

アウェイ・フロム・ハー 君を想う

製作年:2006年
製作国:カナダ
監 督:サラ・ポーリー

「アイリス」(2001)、「きみに読む物語」(2004)、「私の頭の中の消しゴム」(2004)、「明日の記憶」(2005)と、近年、アルツハイマー症に見舞われた夫婦の葛藤を主題とする映画の製作が続いている。多少の波風があったにしてもお互いを慈しみ合い暮らしてきた夫婦が、記憶をなくしていくという病気の前でそれまでの関係を変えていかざるを得ない。どんなに相手のことを想い、尽くそうとしても応えてもらえない無力感。その苦悩をいかに乗り越えていくのか。見る者に様々なことを思考させて、普遍性のあるテーマであると感じます。

本作品もその一つ。「好きなものばかり求めちゃいけないわ。それじゃ何も見つからない」など、台詞の一つ一つに深みがあり、ハッとさせられることが多かった。際立った存在感を見せるジュリー・クリスティも素晴らしい。

| | コメント (0) | トラックバック (7)

2009/03/02

ホルテンさんのはじめての冒険

090402ohorten01

製作年:2007年
製作国:ノルウェー
監 督:ベント・ハーメル

青春ドラマは何かを得ていく物語だとすれば、老人ドラマは何かを失っていく物語でないか。全く逆の話のようで、結局は同じである。何かを獲得することは違う何か喪失していくことだし、何かを失うことは違う何かを得ることにもなるからだ。人生とは延々とその繰り返しが続いていく。本作品はそうしたテーマを寡黙に謳いあげた秀作だ。

ノルウェー鉄道の真面目な運転士ホルテン(ボード・オーヴェ)は、定年の最後の勤務に遅刻してしまう。ここで明らかになるのは、彼がいなければ列車が出発できない訳はなく、彼でなくても列車は定刻どおりにスタートしていくということである。40年以上、ただこの仕事に打ち込んできたホルテンには激しいショックを受けただろうと推測されるが、仕事というものは大概にしてそういうものである。だから、仕事以外の部分でも人生を充実させなければならない。「人生は手遅ればかり。だが逆に考えれば何でも間に合う」という台詞がいい。気がついたところから再出発できる。

| | コメント (2) | トラックバック (6)

2009/03/01

少年メリケンサック

330915_01_03_02

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:宮藤官九郎

映画自体の完成度は高くないかもしれないが、音楽とは何か、ということを考え始めると止まらなくなる作品だった。25年前、空中分解したパンク・バンドの再結成ツアー。あり得ないことがあり得ないタイミングで重なり、巻き起こる珍道中。この辺りはコメディーの常套かもしれないが、現代の音楽シーンに対する痛烈な批判ともなっている。栗田かんな(宮崎あおい)が、好みではない“少年メリケンサック”の音楽に対し、どこか気持ちにひっかかるものを感じるという冒頭での台詞。ここに、本作品の真髄があると思う。

遠藤ミチロウ(ザ・スターリン)、仲野茂(ザ・スターリン)、日影晃(THE STAR CLUB)という、実際に日本のパンク・シーンで大活躍したバンドのフロントマン達がさりげなく出演していたところも、洒落が利いていて良かったと思う。鑑賞中は、誰だか全く気が付かなかったが。

| | コメント (0) | トラックバック (15)

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »