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2009年2月

2009/02/28

チェンジリング

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製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:クリント・イーストウッド

本作品を見ていて頭に浮かんだのは、北朝鮮拉致被害者家族会の人々である。忽然と姿を消した子供。理不尽とも言える当局の扱い。数年後になって明らかとなる驚愕の事件真相。本作品は1928年を舞台にしているが、不条理な事件は後を絶たないし、帰宅しない子供を待つ家族の苦悩も変わりません。最後に語るクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)の台詞が、心に突き刺さります。

惜しくもオスカーが逃してしまいましたが、アンジェリーナ・ジョリーは、そのキャリアの中でも最高峰といえる名演技を発揮。内面の悲痛と、一気にほとばしる激情を巧みに表現しておりました。それを引き出したクリント・イーストウッド監督の演出手腕も燦然と輝きます。

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2009/02/27

セックス・アンド・ザ・シティ

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:マイケル・パトリック・キング

どんなに気持ちを通じあった恋人たち(もしくは、夫婦たち)であっても、時間が経ってくるとどこかですれ違いが生じてくる。相手を気遣う気持ちと自分の気持ちを優先したいと気持ちが、絶えず心の中で葛藤しているからではないか。どちらか偏り過ぎると苛立ちが募り、いつしか相手との関係に歪みが生じてくる。どこかでバランスを取れるといいのであるが、なかなか難しい。

そんな時、気の置けない友人たちがいると、どんなに救われるだろうと思える本作品である。テレビシリーズを全く見ていない自分でありますが、それでも面白く鑑賞できたのは、4人の女性たちのキャラクター分けがしっかりしているからだろう。それぞれがどこかで悩み、どこかでつまずき、どこかで克服していく。その前向きな姿勢を見ているだけで、どこか励まされます。

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2009/02/25

キャラメル

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製作年:2007年
製作国:レバノン/フランス
監 督:ナディーン・ラバキー

日本で一般公開されるのは非常に珍しいレバノン映画。本作品で描かれているのは、ベイルートのエステサロンに集う女性たちの群像劇。それぞれ恋に悩んだり翻弄されたりする姿が赤裸々に語られております。その様子は、中東というイメージと大いにかけ離れており驚きました。舞台がベイルートでなくても、成り立つような話で、世界は広いようで狭いと感じます。

レバノンとは、イスラム教を信仰する人たちばかりでなく、宗教人口としては、キリスト教徒が三割以上もいるということ。そんな事情も全く知らなかったが、この映画を見ることで大いに認識を改めました。

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2009/02/24

ディファイアンス

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:エドワード・ズウィック

映画によって教えられる事が多いが、本作品を見て初めて知る事実があった。1941年、ベラルーシでもナチス・ドイツに占領されてユダヤ人狩りが行われていたこと。それに対抗し約1,200人ものユダヤ人の命を守ったビエルスキ兄弟。「シンドラーのリスト」(1993)、「戦場のピアニスト」(2002)を見た時にも驚いたが、まだまだホロコーストを主題にした映画は製作され続け、尽きることはない。

思いもかけずレジスタンス活動のリーダーとなってしまうトゥヴィア(ダニエル・クレイグ)。最初から絶対的指導者でないのがいい。様々な問題に直面し、失敗を重ねながら、何とか踏み留まって成長していくところに感心する。ジェームス・ボンドとは一味違う凄みを見せたダニエル・クレイグが好演している。

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2009/02/23

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:デヴィッド・フィンチャー

老人として生まれた子供が、成長するごとに若返り、赤ん坊として死ぬ。そんな特異な登場人物が異常と感じられないのは、人間ドラマとして適格に作られているからである。例え、変えることのできない宿命を背負ったとしても、どう生きていくか運命は選ぶことができる。何度も登場するハリケーンは過酷な宿命の暗喩であると感じた。旅を続けるベンジャミン(ブラッド・ピット)には、帰るべき港と呼べるデイジー(ケイト・ブランシェット)の存在があった。それがひとつの幸福だったと思う。これまでダークな内面世界を撮り続けてきたデヴィッド・フィンチャーが挑む新境地。167分という上映時間が長く感じられない巧みな構成。数奇な生涯の映像化を可能にした特殊撮影技術。

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2009/02/22

ロルナの祈り

製作年:2008年
製作国:ベルギー/フランス/イタリア
監 督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ

何も考えず楽しめる映画もあるが、本作品は全く逆。神経を集中して必死に画面を見ていないと、取り残されてしまうのだ。例えば、この場面。国籍を取得するため麻薬中毒者クローディ(ジェレミー・レニエ)と偽装結婚したロルナ(アルタ・ドブロシ)。最初は疎ましく感じながらも、懸命に麻薬から足を洗おうと苦しむ姿を見ていつしか情が移ってくる。禁断中毒で苦しむ時、裸身を投げ出して止めるロルナ。

だが、次のカットでは、もうクローディは亡くなっているのだ。一体、この間に何があったのだろう。しかも、この間にロルナは確実に変わっている。それまでとは真逆とも思える方向に進んでいくからだ。この省略を埋めるべき働かさなければならない想像力。それを不親切とみるか、特異な表現とみるかで、本作品の評価は変わっていくと思う。

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2009/02/17

ある愛の風景

製作年:2004年
製作国:デンマーク
監 督:スザンネ・ビア

人は変わっていく。例えば、戦争という異常な状況に置かれたとき、人は思いもかけない自分の姿を見出して驚愕することになる。その過去といかに折り合いを付けるか。映画の中でも、何度も繰り返し描かれてきた主題であるが、決して古びることはない。現実に、戦争は繰り返されているからだ。デンマークという戦地から遠く離れた国でも、その苦悩と無縁でないことを示したのが本作品である。

エリート兵士のミカエル(ウルリク・トムセン)は、誰もが羨むような理想的な家庭人であった。だが、戦争捕虜における過酷な経験が彼を別人に変えていく。逆に、問題児であった弟のヤニック(ニコライ・リー・コス)は、失意の兄家族を見て、頼りがいのある暖かな人となっていく。この皮肉な対照。スザンネ・ビア監督が用意した一つの回答は、ラスト・シーンからうかがえる。苦しみを一人で抱えるものではないということ。例え、過去を変えることはできないにしても、赤裸々な心を明らかにすれば、何かが変わっていくかもしれない。

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2009/02/16

幻影師アイゼンハイム

製作年:2006年
製作国:アメリカ/チェコ
監 督:ニール・バーガー

ウール警部(ポール・ジアマッティ)が最後に得心した事件の真相。鮮やかなどんでん返しで胸を空く結末であるが、鑑賞後、時間が立つと、どうも腑に落ちない。果たしてそれが正しいかどうか疑問に残るのだ。本当にレオポルド皇太子(ルーファス・シーウェル)に仕掛けたアイゼンハイム(エドワード・ノートン)の罠だったのか。いや、それはウール警部の想像であって、やはりアイゼンハイムの復讐だったとも取れるのである。

そもそも、本作品の中ではアイゼンハイムのイリュージョンは、トリックなのか幻術なのかも、はっきりと結論づけていない。そのため余計に幻惑的に感じられるのだ。何をもって真実とするか。人それぞれに確信するものによって変わってくるということを思わせるラスト・シーンであった。

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2009/02/15

20世紀少年 第2章 最後の希望

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:堤幸彦

"血の大みそか"事件を救おうとしたケンジ(唐沢寿明)が逆にテロリストの首謀者とすり替えられてしまう歴史の皮肉。その汚名をそそごうとする姪カンナ(平愛梨)。彼女がタイトルの"最後の希望"ということであるらしいが、その意味を本作品から知ることはできない。それは最終章につながっていくのかもしれないから、それはいい。だが、カンナの行動は全体主義社会の中で、あまりにも無防備で破天荒なものではないか。それとも、"ともだち"によって容認されているものなのか。原作未読者である自分にとって、設定の意味が汲み取れず、どこまでリアリティーがあって、どこから荒唐無稽なのか、判断基準が定まらなかった。ただ、オッチョ(豊川悦司)の脱獄の安易さ。あれはないだろうと思う。

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2009/02/13

英国王 給仕人に乾杯

製作年:2006年
製作国:チェコ/スロヴァキア
監 督:イジー・メンツェル

駅のソーセージ売りからプラハ随一のホテルで主任給仕まで昇格していくヤン(イヴァン・バルネフ)。どんな地位にあろうとも彼のシニカルな視線は変わらない。そのことを表しているのが、何度も繰り返される小銭のばら撒きであろうと思う。どんな富豪であっても、わずかな小銭のために四つん這いになってしまう姿は実に滑稽だ。それでいてどこか物悲しい。あさましいと言ってしまえばそれまでであるが、人の営みというものはそういうものなのかもしれない。富める者がいつか凋落し、別のものが台頭する。その波のような繰り返し。ヤンの数奇な生涯は、チェコの現代史に沿って綴られている。

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2009/02/12

レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで

製作年:2008年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:サム・メンデス

例え、当初の予定通りパリへ移住したとしても、エイプリル(ケイト・ウィンスレット)とフランク(レオナルド・ディカプリオ)夫妻は、すぐに行き詰ってしまったのだろうと思う。今ある自分を肯定せず、理想の自分を追及することは、決して間違いでない。だが、今の自分を全て否定しまうことはどうであろう。いくら生活する環境を変えてみたとしても、それまでの自分をすべて消せることなどはできないのだ。

パリ行きにしても、実際に仕事のあてがあったとも思えない。行けばなんとかなることもあるだろうが、家族を抱えた者にはそれでは済まされない。新天地での過剰な期待は、それに比例した絶望が待ち構えている。何かを変えるのであれば、今この場でできることから始めなければいけないのだ。エイプリルの悲劇は起きるべくして起きたのだと思う。

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2009/02/10

チェ 39歳 別れの手紙

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製作年:2008年
製作国:フランス/スペイン
監 督:スティーヴン・ソダーバーグ

何故、エルネスト・チェ・ゲバラ(ニチオ・デル・トロ)は、ボリビアの革命に失敗したのか。自分の思う正しい道というものは、他者のそれと必ずしも重ならない。キューバ革命の成功は、様々な思惑を調整できるフィデル・カストロ(デミアン・ビチル)がいたことに因ってもたらせたものである。まさに政治力が必要だったのだ。それを得られることなく、ゲバラの一途な想いはボリビア国民に理解されることなく散っていく。

だが、彼はそのことを後悔しているようには見えない。そもそも、キューバでの安定した生活を捨てて、ボリビアに行く義務はなかった筈である。あえてその道を選んだ。それが気高く感じられるし、稀代の英雄と呼ぶに相応しい行動だったと思う。

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2009/02/09

君のためなら千回でも

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:マーク・フォースター

いくら兄弟同様に育っていったとしても、主人と使用人という立場の違いは超えることができなかった。ハッサン(アフマド・ハーン・マフムードザダ)がどれほど献身的にアミール(ハリド・アブダラ)に仕えようとしても、アミールは同等の力を注ぐことはしない。勇気がないという事もあるだろうが、心の片隅に使用人だからという冷たい認識が横たわっていたからであろう。後年になって、ハッサンの遺志を継ぐために、タリバン政権下のアフガニスタンに潜入するアミール。何のための贖罪か。幼い頃の友情に応えるためという理由だけでない。隠された真実があったためだろう。自分が何をしてきたか。その意味をかみ締めることになる。単に友情ドラマとなっていない分だけ、様々なことを考えさせてくれた。

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2009/02/08

誰も守ってくれない

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製作年:2008年
製作国:東宝
監 督:君塚良一

それまでの生活が一瞬で変わってしまい、二度と元には戻れない。被害者の家族も苦しいが、同情されることなく責任の一端を糾弾される一方の加害者の家族も辛い。そのことが何故、分からないのか。警察が加害者の家族を守る必要があるのか、その是非を問うことは簡単である。だが、何故、守らなければならないのか、その理由を一歩進めて考えれば、見えてくるものもある。

同種のテーマとして生野慈朗監督の「手紙」(2006)という作品もあったが、人の痛みを想像することのできない、いや想像することを放棄した現代社会の暗部を強く感じさせます。現実的にはオーヴァーに表現していると思える箇所もあるが、その根となるものは間違いなくある。このまま、放置していれば、こんな暴走も珍しくないかもしれないという警鐘と感じました。

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2009/02/05

エレジー

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:イザベル・コイシェ

奔放な恋愛遍歴を重ねてきた男が思いもかけず30歳年下の恋人に溺れてしまう葛藤。これまでの生涯で味わったことのない嫉妬心と独占欲。二人の関係を進めることができない切ない想いのすれ違い。この種の物語では、若い恋人に振り回され破滅的な結末を迎えるのが一つのパターンであると思う。

だが、本作品は違う。デヴィッド(ベン・キングズレー)が惹かれていくコンスエラ(ペネロペ・クルス)は、悪女的要素もなく従順に愛を深めていこうとするのだ。彼女を失うことを恐れながら、一方でそれに応える勇気が見いだせないデヴィッド。一線を越えられないもどかしさ。この辺りは、「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」(1982)の寅さんを思い出させます。普通であればそのまま終わってしまうであろう二人に見舞われた人生の悲劇。新たな絆が生まれるラスト・シーンは深い余韻を残します。繊細な心情を高めていくピアノの響きも素晴らしかったです。

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2009/02/02

007 慰めの報酬

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製作年:2008年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:マーク・フォースター

冒頭のカー・チェイスから痛みが伝わるアクション・シーンまで、スピード感あふれる編集になっている。異例の成功をおさめたマット・デイモンの「ジェイソン・ボーン」シリーズに影響を受けたものではないか。その激しさは往年の007ファンなどから否定的意見も多く、賛否両論分かれるところであろうが、私は支持する。これ以上ないというくらい固定したイメージのあるジェームズ・ボンドを、これほどまでに進化させるとは。大いに感心させられた。

真相を追求するジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、目的のためには手段を選ばず死者の山を築いていく。このボンドは死神にようにも見えてくる。どんなときもポーカーフェイスを貫き、己の想いを容易に語らない。信念を曲げない寡黙さが最高に痺れるヒーローの資質だ。

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2009/02/01

嘆きのテレーズ

製作年:1952年
製作国:フランス
監 督:マルセル・カルネ

テレーズ(シモーヌ・シニョレ)の不幸は、自分で自分の道を選べない境遇に陥ってしまったこと。両親に早く死に別れた彼女は、伯母(シルヴィ)によって養育を受けており、その病弱な息子カミーユ(ジャック・デュビー)と結婚させられる。何かにつけて辛く当たる伯母の前で、テレーズは人生に失望しきっていた。そんな彼女の前に現れたイタリア人のトラック運転手ロラン(ラフ・バローネ)。二人は一目で惹かれあう。

さて、その先の展開がなんとももどかしい。テレーズの選択がことごとく裏目に出てしまうのである。こんなことなら、ロランの言うとおり駆け落ちしてしまった方がどんなによかったか。いや、仮にそうしたとしてもテレーズは不幸になるような気がする。選択する自由は多くないかもしれないが、そんな中でも自分の最善を見つけるようにしたい。でないと、いざ幸福のチャンスが訪れても、手にすることはできないだろう。

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