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2009年1月

2009/01/31

ここに幸あり

製作年:2006年
製作国:フランス/イタリア/ロシア
監 督:オタール・イオセリアーニ

左遷。失脚。離婚。財産も住む家さえも失ってしまう突然の事態。人生のメインストリームから外れてしまったようで、生きる意欲もなくしてしまうだろう。そんな時、気の置けない友人たちを持っているのといないとでは、大きな違いがある。大臣の職を追われたヴァンサン(セヴラン・ブランシェ)。彼の過去は描かれていないが、大臣になるくらいであるから、エリート街道を歩いてきたのであろう。きっと、そんな時にも地位に胡坐をかいて傲慢な振る舞いなどしてこなかったに違いない。だから、たくさんの失敗を重ねながらも、誰かが救いの手を差し伸べてくれることになるのだ。一緒に食べて、飲んで、歌う。そんな場面の繰り返しで、とてものびやかな気分になれる。だが、誰もがヴァンサンのようになれるわけではない。それまでの生き方が問われている。

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2009/01/29

K-20(TWENTY) 怪人二十面相・伝

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:佐藤嗣麻子

第二次世界大戦を回避したという架空の日本を舞台。そのレトロ・フューチャーな雰囲気は「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」(2004)を想起させる設定であった。現代の日本で起きている格差社会への強烈な批判を込められていることは明らかであるが、あまりにストレート過ぎて深みがない。それでもユーモアを織り交ぜながらのアクションには見応えがあった。ひとつだけではあまり面白くもない台詞も、二度、三度と繰り返されることにより、絶妙な効果を生んでいる。大傑作とは呼べないであろうが、期待しないで見るぶんには十分に楽しめた娯楽作品である。

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2009/01/28

そして、私たちは愛に帰る

製作年:2007年
製作国:ドイツ/トルコ
監 督:ファティ・アキン

ドイツとトルコを行き来する3組の親子の葛藤と絆。運命に翻弄されながら見出していく愛と希望。探している人がすぐそばに居ることを気付かないすれ違い。脚本が本当に素晴らしく、作為的になり過ぎず巧みにドラマを盛り上げていく。悲劇を乗り越えていくには、死者の思いを引き継ぐことだという展開も良い。何より印象深いのがラスト・シーンだ。浜辺に座り込んだ後姿から、この後にどんなことが起こるのか、様々な道を推測させて、実に奥深いものとなっている。映画はすべてを説明しなくてもいいということを感じられた。

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2009/01/27

エグザイル 絆

製作年:2006年
製作国:香港
監 督:ジョニー・トー

ジョニー・トー監督は、熱き男たちの絆とロマンを映像美豊かに描き出したノワール・ムービーを延々と作り続けているような印象を持つが、フィルモグラフィーを眺めればラブ・ストーリーやコメディも多く手がけており、なかなか才能豊かな映画人である。それでも、本領発揮しているのは、やはりノワールものであり、その頂点とも言えるのが本作品だ。脚本なしで撮影を進めていくことを象徴するようなコイントス。それでも破綻することなく、ひとつの結末に収斂していくところが素晴らしい。クールで強面な表情に隠された少年性。それを秘めた男たちだから、義兄弟の絆を守り続けることができたのであろう。ひたすら格好良い映画であった。

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2009/01/26

ブレス

製作年:2007年
製作国:韓国
監 督:キム・ギドク

鑑賞中は気付かなかったが、死刑囚のチャン・ジン(チャン・チェン)とヨン(パク・チア)の面会を許す保安課長をキム・ギドク監督自身が演じているという。現実的にはあり得ないであろう二人の逢瀬は、神のごとくキム・ギドクの采配によって生まれたものなのだ。どこか「うつせみ」(2004)を連想させる二人である。まぁそれにしても、よくこんな設定と展開を考えるものである。面接室に季節の写真を全面貼り付けて、決して上手いとは言えない季節の歌を唄うヨン。最初の春の場面を見たときには唖然とした。リアリティーを超越したところに至上の愛を生み出すキム・ギドクの創造力に感嘆する。

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2009/01/23

永遠のこどもたち

製作年:2007年
製作国:スペイン/メキシコ
監 督:J・A・バヨナ

生者と死者の境界性がはっきり定まらないことを象徴するように、子供の行方不明事件の顛末はリアリティーを越えているようで、ギリギリのところで現実味を保っている。必死に子供の行方を追い続けるラウラ(ベレン・ルエダ)がたどり着いた真相の皮肉さ。だが、彼女だけの過失ではなく、間違いなくトマスの悪意が反映されたものであろう。それでも、助けられたかもしれない、気付くことができたかもしれない、という思いを消し去ることはできない。本作品では、ひとつの救いを見いだせる結末となっており、大変感動的である。だが、誰もが容易に真似できない道でもある。それを思うと悄然とする。

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2009/01/22

その木戸を通って

製作年:1993年
製作国:日本
監 督:市川崑

冒頭の映像から圧巻だ。ふと浮かびあがる正四郎(中井貴一)の姿に、思わず惹きつけられてしまう。徐々に正四郎が何をしているのか明らかになっていくのであるが、この場面だけで、どんな映画か十分に表現しているような気がする。ふさ(浅野ゆう子)は、一体、どこから来て、どこに消えてしまったのか。市川監督の系譜から言えば、「竹取物語」(1987)や、「つる 鶴」(1988)に繋がる寓話かもしれないが、SFドラマを時代劇に応用した話のようにも感じる。無理に説明を加えないところも良く、所在の定まらないふさを受け入れた正四郎の気持ちが切々と伝わり、哀感で心いっぱいになる。

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2009/01/21

愛の予感

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:小林政広

これはなかなか凄い映画であった。日常生活、仕事したり食事をしたりお風呂に入ったりという何も特別でない場面を何度も何度も繰り返されるが、それぞれが微妙に違っている。この違いがなんとも巧い。この辺りの解釈を自分なりにこなしていかないと、ただひたすら退屈な映画になってしまうだろうが、うまくはまってしまえばこれ以上面白い作品はないだろう。唸ったのは、順一(小林政広)が当初、おかずには手をつけず、卵かけご飯と味噌汁しか食べないところである。おかずというは、人生の彩りであると思う。それを拒絶する男の心情が如実に表現されていると感じる。再見する機会があれば、この食事がいかに変わっていくか、大いに注目して見てみたい。

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2009/01/20

オリンダのリストランテ

製作年:2001年
製作国:アルゼンチン
監 督:パウラ・エルナンデス

人生に意欲をなくしてしまったら、少しずつ衰退していくのであろう。イタリカからブエノスアイレスに渡り、たったひとりでオリンダ(リタ・コルテセ)が作り上げた小さなリストランテ。人生に疲れてしまい、その店を手放そうかどうか迷っている時、作り料理も冴えなくなってしまうものなのか。序盤で、オリンダの料理に調味料を求める客が繰り返し登場するのはその表れだろう。そんな彼女の前に現れた不器用なドイツ人ピーター(アドリアン・ウィツケ)。この出会いが人生の転機となるのだから面白い。ピーターを助けている内に、オリンダは新たな道を見つけていくのだ。そして、輝くような存在感を取り戻していく。

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2009/01/15

チェ 28歳の革命

製作年:2008年
製作国:アメリカ/フランス/スペイン
監 督:スティーヴン・ソダーバーグ

現在、読み進めている北方謙三版「水滸伝」はキューバ革命を下地に作られているという。その登場人物、晁蓋のモチーフとなったというのが、チェ・ゲバラだ。この二人が重なり、なんとも奥深く感じる。本作品を見ていても、キューバ革命とは何であったかということはあまり良く分からない。興味を持てば、各々が調べて補足すればいいのであろう。一方、チェ・ゲバラがどういう男であったか、その輪郭はおおよそ掴めたような気がする。ゲリラ兵士をむやみに徴収せず、きちんと見極めようとするところが印象深い。

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2009/01/14

ブロードウェイ ブロードウェイ コーラスラインにかける夢

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ジェームズ・D・スターン/アダム・デル・デオ

ロングランされたブロードウェイの大ヒット・ミュージカル「コーラスライン」の再演が決定。そのオーディションに集まるダンサーたちの姿を追ったドキュメンタリー。そもそも、「コーラスライン」はダンサーのオーディションをモチーフにした作品なので、今回のオーディションで歌われるナンバーが、そのまま現代のダンサーの心情と重なって見える。二重構造になっているようで、実に奥深い作品になっている。普段、見ることのない選ぶ側の本音が聞けるのも興味深い。数か月前にはできた演技が、その場で再現できないために落とされてしまうダンサーのエピソードが心に残る。なんということか。一度出来たものが、いま出来ない。芸術の厳しさを痛感する。

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2009/01/13

ラースと、その彼女

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製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:クレイグ・ギレスピー

なんという優しさに包まれた映画であろう。等身大のリアルドールを本物の彼女と思い込んでしまった青年ラース(ライアン・ゴズリング)。驚き、当惑しながらも、彼を馬鹿にする訳でもなく、彼に話を合わせていこうとする兄夫婦や周囲の人々。そのほほえましい交流がとてもいい。

ダグマー・バーマン医師(パトリシア・クラークソン)の診察を重ねながら、ラースの心の傷は他にもあることが明らかになる。この過程も興味深い。極端にシャイであった訳ではないのだ。人は見た目だけでは分からない。単に奇人として扱われれば、ラースは一生そのままであったろう。ラースの心の治療は、この地域社会の温かさがあってこそ成し遂げられたものなのだ。

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2009/01/12

BOY A

製作年:2007年
製作国:イギリス
監 督:マーク・オロウ

映画は、誰の視点で語られるかによって、同じ事実を見るにしても、感じ方は大いに違ってくる。長い刑期を終えて社会復帰を果たした青年ジャック(アンドリュー・ガーフィールド)。彼が直面する体験は、見る者へ大いなる同情を呼ぶことであろう。しかし、本作品の批評を読んで多く目にしたことであるが、例えば、日本における“酒鬼薔薇事件”の犯人であったと思えば、どうであろう。14年の刑期を終えたから、罪はなくなったと感じるであろうか。例え、遺族でないにしても、そう簡単には容認できないのではないか。中西健二監督の「青い鳥」(2008)では、「いつまでも罪の重さを覚え続けることが加害者の責任だ」とあった。だが、ジャックはその道を選ばない(いや、選ばされるか)。名前も変えて、すべてなかったこととする。そのために起こる悲劇もある。罪を償った者を許容できない社会も許されないであろうが、刑期を終えたら罪が消えるという考え方にも問題提起している作品であると思う。

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2009/01/11

相棒 劇場版 絶体絶命 42.195km

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:和泉聖治

本格的な映画出演は25年ぶりという水谷豊。単独ドラマから始まり、第6シリーズを経て、ついに映画化されていく人気の流れ。期待に違わぬ大ヒットという興行結果。すべてが祝祭的ムードに包まれた作品である。テレビドラマを見ていない自分にも、大いに関心を持つ映画の一つと言える。しかし、ミステリーとしては大いに疑問を抱かせる展開に終始しており、残念な内容であった。チェスに見立てた連続殺人事件と犯人の動機には大きな隔たりを感じるし、“東京ビックシティマラソン”に関わる爆破計画のスケール感に乏しいことと言ったら。確かに無責任なマスコミ報道や政府関係者に対して、怒りを覚えることは多々ある。だが、それを糾弾するために、この犯行はないだろう。中途半端な幕切れに失望感が募った。

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2009/01/09

WALL・E ウォーリー

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:アンドリュー・スタントン

孤独なゴミ処理ロボット“WALL・E(ウォーリー)”が望んだものは、愛おしい人と手をつなぐ事。それは、他者との絆を築く象徴でもある。それには様々な障害もある。相手から手痛い攻撃を受けるかもしれないし、相手のことを心配し、じっとしていられなくなるかもしれない。心穏やかに過ごし時間を失ってしまうことにもなるだろう。それでも、孤独でいるよりはずっといい。楽しみを分かち合うということは何よりも素晴らしいことなのだ。イブのためにどこまでも追いかけるウォーリーの姿は、人間の本質的な欲求を表現していると感じる。

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2009/01/08

青い鳥

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:中西健二

いじめとは何か、それを定義する言葉に感心させられた。直接、いじめに加担したというだけでなく、それに無自覚であるということも問題であるという村内先生(阿部寛)の真摯な言葉。気付くということの大切さ。実際に、いじめ問題を反省していたクラスで、別のいじめが始まっていたのだ。そのことが恐ろしい。では、どうするか。強くなくていい。誰もが弱いんだ。そう続く村内先生の言葉が静かに胸を打つ。それにしても、阿部寛には感服した。このところ映画の出演が相次いでいるが、こうした役柄もこなしてしまうスケールの大きさ。全く見事なものである。

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2009/01/07

ワールド・オブ・ライズ

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:リドリー・スコット

どんなに最新のテクロノジーを駆使しようとも、生の情報は現場で動く工作員からしか入手できない。これはどんなに時代であろうと変わらない。その労を忘れてはいけないし、傲慢になったものは相応の報復を受ける。1万2000メートルの上空から群集の中の1人を探し出せる驚異の無人偵察機。家庭生活を続けながら、現地と打ち合わせ可能な携帯電話。偽情報を次々と捏造できるコンピューター。これほどの情報機器があろうとも、テロリストを追い詰めることができないのである。この皮肉さ。空回りを続けるフェリス(レオナルド・ディカプリオ)とホフマン(ラッセル・クロウ)のアメリカ・コンビに対して、颯爽と存在するヨルダン情報局長官ハニ(マーク・ストロング)。両者の対比が、その矛盾を強く印象付ける。

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2009/01/06

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:マーティン・スコセッシ

40年以上、トップバンドの位置を守り続けたザ・ローリング・ストーンズ。その時間の重みを感じさせるライブ・ドキュメントである。楽曲の間に挿入される過去のインタビューが、それを際立たせる。彼らがこうして生き残ってこられたことを、大いに感慨深く感じさせる。60歳を過ぎて、これだけのパフォーマンスを見せるミック・ジャガーの驚異。皺だらけの顔に、彼らの年輪を想像させる。それにしても、キース・リチャーズがなんと楽しそうに演奏していることか。その姿を見ているだけも、暖かな気持ちになれる。

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2009/01/05

バンク・ジョブ

製作年:2008年
製作国:イギリス
監 督:ロジャー・ドナルドソン

実話に基づいた犯罪ドラマということであるが、どこまで事実で、どこまでフィクションなのであろうか。貸金庫を狙った強奪計画には思いもよらぬ秘密が満載で、厳しい追撃が待ち構えていた。なんとも複雑に入り組んだ物語である。その危機をテリー(ジェイソン・ステイサム)がいかに乗り越えていくかというのが、この映画の白眉。「トランスポーター」(2002)シリーズや、「アドレナリン」(2006)などで、絶体絶命のピンチを何度もくぐり抜けてきたジェイソン・ステイサムだ。どこか上手くやり遂げるという安心感があり、やはりそれは裏切らない。それはそれで面白いのであるが、他の俳優が演じていれば、サスペンス感が大いに高まったであろうと感じられた。

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2009/01/04

2008年ベストテン

2008年は、盛岡から大阪へ移り、新たな生活を始めたということで記憶に残るという一年であった。新たな仕事の環境や引っ越しに関わる様々な用事のため、休日でも時間がなくなってしまうこともしばしば。前年と比べて鑑賞本数は少なくなったが、それでも洋画81本、邦画36本の117本見ることができた。見る機会が減った分、これはと思う作品を厳選しているので、大いに充実感を得られたと思う。その一方、例年、アクションやコメディーを主眼とする裏ベストテンも組んでいたのだが、作品をそろえきらず、今年は見送ることにした。
 2008年は、ガソリン価格の乱高下が象徴するように経済環境が大きく激動した一年でもあった。様々に忍び寄る暗い影の中、家族、そして、人と人との絆を見つめ直す映画に心を動かされ、その当たりを主眼にベストテンを選んでみた。

●外国映画
01 ラスト、コーション
アン・リー監督の映像美に酔いしれる。格調高いとはこのことではないだろうか。時代の波の翻弄されるヒロイン。その任務の末に見つけた禁断の愛。彼女が選ぶ最後の道に、人と人の絆の不可思議を感じざるを得ない。

02 アメリカン・ギャングスター
犯罪者と警察官。正反対の人間ながら、二人とも仕事に関しては非常に勤勉で、どこか共通する資質を感じさせる。仲買人を通さず、直接製造者から仕入れて消費者に販売するというシステムを麻薬密売組織に持ち込んだアイディアに感心した。

03ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ダニエルとイーライ。ふたりの間には愛と憎悪が複雑に絡み合った感情が放電する。似たもの同士であるから、ここまで反発するのではないか。プラス面とプラス面が接着するように。その臨界点がラスト・シーンだと思う。

04 チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
単に一人のお気楽議員が美しい大富豪と出会い、思いもかけない偉業を成し遂げる話ではない。彼はそれ以前から、アフガンの問題に関心を持ち、それを行使できるだけの政治力を持ち合わせていた。それでも、失敗してしまうところに、個人の限界を感じる。

05 フィクサー
人は何をきっかけとして良心に目覚めるのだろうか。利潤優先の資本主義社会では、利益という目的のためには、どんな社会的悪も正当化される。その繰り返しの果てには、何も残っていかないという不毛。マイケル・クレイトンに明日はあるのだろうか。

06ノーカントリー
何故、モスは巨額の金を手にしたのに、現場に戻っていったのか。ここにも、不思議な良心の発露を見る。凄惨な殺し合いと逃走劇を見事な映像でつづったコーエン兄弟の最高傑作。そこでいつまでも残るのは、モスの良心だった。

07この自由な世界で
不況風が強まった2008年の暮れに見ると、その切迫がより強く感じられた。この自由とは何か。生き残るために何をしてもいいが、すべてに自己責任をともなうことを大いに考えさせられた。家族と自分を守るために、アンジーは一線を越えていく。

08 つぐない
まだ恋も何か知らないような思春期の少女。彼女の一面的な思い込みは、二人の恋人の生涯を破綻させてしまう。その意味を知ったとき、彼女はどんな贖罪を行えばいいのか。自分の持てる能力を通して、何かを続けることに意味があると感じる。

09潜水服は蝶の夢を見る
昨日まで当たり前だったことが、今、当たり前ではなくなる。何かを失うことは、違う何かを得る機会だ。そのことを忘れなければ、常に道は開けてくる。視覚と聴覚以外、すべて奪われていることを再現させるカメラが素晴らしかった。

10 ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
どうして、彼らはここまで生き残ってこられたのだろうか。その答えがこの映画の中にある。60歳を過ぎているとは思えないライブ・パフォーマンスの数々に、40年以上トップバンドでいる真髄を見る思いだ。

●日本映画
01歩いても 歩いても
長男の命日に家族が集まるという、ただそれだけの話であるが、是枝裕和監督は絶妙とも言える語り口で家族の一日を追いかける。何気ない会話の節々に、この家族の過去が次々と明らかにされていく見事な脚本だった。

02アフタースクール
「運命じゃない人」は決してまぐれ当たりではなかった。内田けんじ監督は期待に違わぬ面白い映画を作ってくれた。いい人だったと思わせておいて、実は悪い人だったというありきたりなオチでない、もう一歩進めた物語の展開に感嘆した。

03ぐるりのこと
もし、法廷画家という仕事をしてなければ、カナオは翔子を支えられなかったのではないだろうか。その時代の世相を象徴するような凶悪事件の裁判を傍聴することで、人には何が大切なのかを知らず知らずの内に学んでいったと感じる。

04トウキョウソナタ
現実感があるようで、どこか儚げなラスト・シーン。健二の見事なピアノ演奏は誰かの夢なのではないか。崩壊してしまった家族が再生することは容易なことではないであろう。果たして彼らの絆は健在なのか。

05人のセックスを笑うな
主人公みるめを翻弄するユリ。彼女はいったい何を考えているか、さっぱり分からないところが良い。理不尽に思えることが、この世の中にはたくさん起こる。それにどう対処していかねばならないか。その道を見つけることが一つの成長であると思う。

06百万円と苦虫女
深い人間関係を築くことを拒否し、ひっそりとただ一人だけで生きていこうとする鈴子。しかし、社会で暮らすということは、それを許しておいてくれない。そして、旅を続ける。彼女に終着駅が見つかるのだろうか。

07 ハッピーフライト
新人が失敗を重ねながら、その職業の大切さを学んでいくありきたりなドラマになっていないのが良い。綿密に取材された圧倒的なディティールと、映画ながらの脚色が見事に融合した快作。見ていて元気になる作品だ。

08 クライマーズ・ハイ
職業倫理とは何か、激しく問いかける作品である。“チェック、ダブル・チェック”と確認できる規範がどれだけ持ちえているかで、その職業の誇りを知ることができる。食品偽装事件が多発した2008年。その企業社会への批判とも感じられた。

09 青い鳥
こちらは現代の学校教育のあり方に波紋を投げる作品であったと思う。いじめ問題とどう向き合うのか。罪とは何か、罰とはどうあるべきか、考えさせられるポイントが多い。阿部寛が好演。「歩いても 歩いても」と合わせて主演男優賞をあげたい。

10実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
作品の内容も圧巻であったが、本作品を作り上げた若松孝二監督の熱情にほだされてしまう。これを撮らなければ死に切れないという思いを、どれほどの人が抱いているだろうか。映画は産業の一翼でもあるが、それだけはない心意気を感じた。

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