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2008年7月

2008/07/31

三池 終わらない炭鉱(やま)の物語

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:熊谷博子

冒頭、炭鉱跡の施設をカメラはとらえている。もうニ度、使用されることのない建物や機械を見ていると、なんともノスタルジックな気分に陥っていく。しかし、映画が進んでいくと、そうした感情は一変する。三池炭鉱で起こった歴史の数々を知ると、それらが冷徹な表情を浮かべているように思えてくるのだ。そこに関わった人々の悲喜交々を全て見てきた峻厳を感じる。

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2008/07/30

マッチポイント

製作年:2005年
製作国:イギリス/アメリカ/ルクセンブルグ
監 督:ウディ・アレン

ネットに当たったボールが相手側に落ちるか、自分側に落ちるか。その結果で人生は大きく変わってしまう。相手側に落ちれば幸運、自分側に落ちれば不運ということになりそうであるが、果たしてそうであるのか。クリス(ジョナサン・リス・マイヤーズ)にとって、あの結末はけっして幸運ではないような気がする。罰を受ける機会をなくしたということは、果てることのない罪を生涯にかけて背負わなければならないことを意味するのではないか。どんなに社会的成功を収めようとも、罪を償い無垢の心を取り戻せない限り、幸福は訪れてこない。

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2008/07/29

譜めくりの女

製作年:2006年
製作国:フランス
監 督:ドゥニ・デルクール

何故、アリアーヌ(カトリーヌ・フロ)は、入学試験の審査中、試験会場に入り込んだファンへサインに応じるという無神経な行為をしたのか。しかも、試験会場へ入場する前には、一度、断っているのだから。魔が差したとしか思えない。そんなこと、大した問題ではないと思うのは相対的なもので、その試験の生涯のすべてを賭けて臨んだ少女には、絶対に許せない行為だったのだ。相手が悪いと言ってしまえば、それまであるが、恐るべき復讐劇を招いたのは彼女自身であることに間違いはない。

それにしても、メラリー(デボラ・フランソワ)の不気味な存在感が圧巻である。試験が終わった瞬間から、彼女は破壊者となってしまう。練習中の少女へピアノの蓋をわざと落とそうする行為から、背筋の凍るような恐怖を感じる。十数年後、二人は再会することになるが、これとて容易周到に準備した計画という訳でもなさそうだ。ただ、その場、その場の機会を巧妙に利用した結果だと思う。復讐達成を急がない。忘れることなく、ひたひたとアリアーヌへ迫っていくのだ。

後味の悪い作品ではあるが、全体的に説明的でなく見る者の想像力を掻き立てる作りになっており、惹かれるものがあった。

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2008/07/28

欲望

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:篠原哲雄

第10回みちのく国際ミステリー映画祭で鑑賞。上映後に篠原監督のティーチ・インがあり、色々な裏話を聞くことができました。そのことで、鑑賞中、釈然としない理由も分かる。プロローグで類子(板谷由夏)の回想からドラマが始まっていくのだが、この時代の類子の描写はこの場だけで、エピローグの類子はもっと年を重ねているのだ。回想に次ぐ回想でどこか収まりの悪い構成だと感じていましたが、脚本ではそのプロローグを受けるシーンが存在してあったという。だが、2時間を越える上映時間となってしまい、編集で切ってしまったようなのです。映画を観ていて、どこか辻褄の合わない感じを受けるときは、編集でカットしていることが多いのかもしれません。

そうした事で、完成度は高くないかもしれませんが、乗用車、三島由紀夫の書籍、沖縄の海と正巳(村上淳)にまつわるディティールがブルーの色彩で繋がっているところなど、篠原監督のこだわりが発見でき、心に残る作品であった。

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2008/07/27

美しい人

製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:ロドリゴ・ガルシア

「彼女を見ればわかること」(1999)と同様に、様々な女性を主人公とした短編を集めたオムニバス映画であるが、単なる続編ではない。本作品ではなんと短編すべてが、ワンシーン・ワンカットで撮られているのだ。これが凄い。ドラマの内容もさることながら、俳優陣たちの凄まじい集中力が迫真の熱演を生んでいる。なにげない一言で感情が揺れていく様を感心して見つめる。他のエピソードの主人公がさりげなく違うエピソードに登場するのも前作同様であるが、とても示唆的だ。生きていれば、一人一人にドラマがある。傍役として現れる冷静な表情の裏側に複雑な感情が感じられ、より強い印象を持つ。

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2008/07/26

ピンクパンサー

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ショーン・レヴィ

自分の運命すら定かではないのに、他人を利用して何かを画策することは最初から無謀極まりないことである。自分の出世のためにクルーゾー警部(スティーヴ・マーティン)の利用しようとしたドレイフェス(ケヴィン・クライン)。ところが、全て裏目に出てしまうのである。その反復の中で大いに笑えるのであるが、ここにも大いなる人生の願望が見つけられる。例え、失敗を重ねようとも、無垢の者には幸福が訪れて欲しいということだ。

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2008/07/25

ジェイン・オースティンの読書会

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ロビン・スウィコード

課題作品について複数の人々が語り合う合評会。これまでの私の経験から言っても、こんな楽しい場はない。同じ作品なのに、受け止める人々によって、こんなに感じ方が違うものなのか。そのことに驚かされながら、作品の別の側面を知ることになる。そして、人それぞれの感性や人生観を改めて学ぶ機会にもなっている。いつかまた自分も参加したいものである。

本作品は、ジェイン・オースティンの小説を主題としており、それぞれの作品を読んでいると、より一層の興趣を味わえるのであろうが、読んでいない自分には想像で補うしかない。それが残念。

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2008/07/24

さよなら。いつかわかること

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ジェームズ・C・ストラウス

年齢を重ねれば、大人になるというものでない。スタンレー(ジョン・キューザック)は二人の娘たちを厳しく躾ているが、ひとつの挫折を乗り越えられずにいた。そこに起きた突然の妻の訃報。彼は、その事実を娘たちに告げられず、時間稼ぎの旅に出る。それは大人の対応と言えないであろう。12歳の長女ハイディ(シェラン・オキーフ)など、妹ドーン(グレイシー・ベドナルジク)と、いつもじゃれ合っているように見えるが、眠れぬ夜を過ごしているなど、母親の不在に深いところで傷つき苦しんでいる。その様子をスタンレーは今回の旅まで察することができない。そうした視野の狭さも気になる。大人と子供の違いは何か。どんなに辛い事実であろうと、逃げることなく受け止めることができるかどうかで分かれる。

やっぱり、クリント・イーストウッドの音楽はいい。心に染み入るようだ。

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2008/07/23

トム・ヤム・クン

製作年:2005年
製作国:タイ
監 督:プラッチャヤー・ピンゲーオ

動物園でしか見たことのない我々にとって、象と言えば愛らしくなごみを与えてくれる動物である。だが、神聖なものとして日常の中で当たり前のように共存しているタイ人とって、象の存在意義は大きなものなのであろう。兄弟のように暮らした小象を奪回するためタイからオーストラリアへ向かうというプロットは大袈裟にも思えるが、そうした背景を理解しなければならない。トニー・ジャーの鮮やかなアクション・シーンを楽しみながら、文化の違いを感じる。

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2008/07/22

クライマーズ・ハイ

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:原田眞人

1996年7月、アメリカでトランスワールド航空800便が墜落。乗客・乗員230名が犠牲になった航空機事故の真相に迫ったのが、ネルソン・デミルの小説「ナイトフォール」であったが、1985年8月に起きた日航機123便事故にも釈然としない隠蔽工作の疑惑があるとは本作品を見るまで知らなかった。横山秀夫の原作小説とは主題がずれてしまうため、原田眞人監督は声高に描いていないが、随所にその疑惑を散りばめている。そのことと、悠木(堤真一)の最後の決断が密接に繋がっている。それがなかなか巧い。スクープの追求と登山を重ね合わせた構成は、ひとつのことに夢中となるときの落とし穴を警鐘するものだと感じる。ギリギリのところで踏みとどまるには、自分なりの規範をもつことだ。悠木にとってのそれは、「チェック、ダブルチェック」であった。

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2008/07/21

プルートで朝食を

製作年:2005年
製作国:アイルランド/イギリス
監 督:ニール・ジョーダン

パトリック(キリアン・マーフィ)の人生に対する前向きな姿勢。生まれてすぐに捨て子となるところから始まり、数々の苦難が彼の前に立ち塞がる。それでも、彼は明るさを失わない。一般社会から見れば異物かもしれないが、卑屈にならず胸を張って生きているところが良い。70年代ポップソングの起用も絶妙な効果を上げておあり、この世界に魅了される。

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2008/07/20

ニュースの天才

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:ビリー・レイ

スティーブン(ヘイデン・クリステンセン)の捏造記事による栄光と転落を描いた作品であるが、それだけでは終わっていない。チャック(ピーター・サースガード)の成長ドラマとしてみることができる。二人を対比させる構成がなかなか巧い。人望の篤かったマイケル(ハンク・アザリア)の後任として新編集長に抜擢されたチャック。就任早々に巻き起こる捏造疑惑。スティーブンを庇おうとする社内の空気に対して、どう対処するか。ケイトリン(クロエ・セヴィニー)へ語る報道誌の思いが激しく胸を打ちます。

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2008/07/19

いま、会いにゆきます

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:土井裕泰

亡くなった妻が甦ってくる。ありがちな設定であるが、本作品はそれにもう一捻りある。それが明らかになったとき、怒涛のような感動が打ち寄せてくる構成だ。前半、状況説明の伏せられていたことが巧みな伏線となっている。見事な脚本であった。無論、こんなことは現実的でない、都合が良すぎると切り捨てるのは容易い。だが、こんなことが現実に合って欲しいという願望を見る者は心に内に秘めているのではないか。こうした奇跡は自分に訪れることはないと知っているから、夢幻の世界に酔いたいのである。

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2008/07/18

アンダーワールド エボリューション

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:レン・ワイズマン

仕組まれた戦い。前作でも種族同士の戦いの無意味さが根底に流れていたが、本作品もそれを継承している。家族を殺した復讐のため処刑人となったセリーン(ケイト・ベッキンセイル)。彼女が封印された記憶を取り戻していく過程の中で、ヴァンパイア(吸血鬼族)とライカン(狼男族)の激しい抗争の真実が明らかにされていく。セリーンとマイケル(スコット・スピードマン)の恋愛関係にあまり必然性が感じられず、ドラマ展開に不自然さを感じるところも多々ある。そうした弱点もあるが、権力闘争に利用される個人の哀しさが胸を衝く。

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2008/07/17

カンナさん大成功です

製作年:2006年
製作国:韓国
監 督:キム・ヨンファ

最初からドラマ展開の読める映画であるが、いい台詞が出てきて、おっと思う。したいことができるのは神様だけ。できることで人は生きていく。なるほど、したいこと、できること、この見極めが人生の秘訣かもしれない。カンナ(キム・アジュン)が秘かに想いを寄せていたプロデューサー、サンジュン(チュ・ジンモ)。あまりに木村拓哉と雰囲気が似ていてビックリする。

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2008/07/16

ナンバー 23

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ジョエル・シューマカー

あらゆる情報が“23”という数字に符合している事実。その謎に取り憑かれてしまった男。だが、数字に結びついていく計算式はかなり独善的である。32は23の反対であるというのは、やはりこじつけであろう。気になるのはウォルター・スパロウ(ジム・キャリー)に何度も登場する犬のテッドである。23という数字ではなく、こちらが運命の導き手である。この犬にこそ、隠されたメッセージが込められているように思える。

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2008/07/15

4ヶ月、3週と2日

製作年:2007年
製作国:ルーマニア
監 督:クリスティアン・ムンジウ

何故、オティリア(アナマリア・マリンカ)はガビツァ(ローラ・ローラ・ヴァシリウ)のために、あれほどの時間とお金を手助けするのであろうか。単に友情厚いというレベルではないのだ。まさに犠牲的と言ってもよい。しかも、助け甲斐がないほど、ガビツァはすべてのことにルーズで、トラブルが続いていくのだ。オティリアが終始、不機嫌なのも当然と思えるが、怒りに任せて投げ出さないところが本作品のポイントだと思う。チャウシェスク政権下のルーマニア。どんな手を使ってでも自分で何とかしなければという必死な思い。誰にも頼ることができないという非常な社会。しかしである。なんということか。唖然とする幕切れ。ガビツァこそ、恐るべき生命力があると感じさせる。

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2008/07/14

長江哀歌(エレジー)

製作年:2006年
製作国:中国
監 督:ジャ・ジャンクー

携帯電話とペットボトル。日本でもお馴染みの小道具であるが、それぞれに愛する人を捜しに水没する運命にある古都・奉節(フォンジェ)を訪れた本作品の主人公、ハン・サンミン(ハン・サンミン)とシェン・ホン(チャオ・タオ)たちが持っていると、どこか違和感を覚える。変貌していく中国。長江の三峡ダム建設プロジェクト。急速な変化に飲み込まれてしまった市井の人々のアンバランスを象徴しているように思える。詩情性豊かな映像が秀逸。これならキネマ旬報外国映画1位も納得。

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2008/07/13

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:若松孝二

こんなの革命じゃない。まるで部活や社員研修のような雰囲気で始まった自己総括。それが、集団リンチの末の殺人へと変質していく恐怖。その現実の前に、思わずこぼれた心情。どんな高尚な思想も観念も大義も、無意識に溢れ出る心には勝てない。それを乗り越えていこうとするのが宗教家なのかもしれないが、革命という権力闘争には相応しくない。勇気がなかったのだという、少年の叫びは若松監督の思いと重なると思う。悲劇の連鎖を止めるには、心情を認める勇気が必要なのである。原田眞人監督の「突入せよ あさま山荘事件」(2002)を痛烈に批判して、生み出された本作品。そのアンチテーゼのようにあさま山荘事件では、警察側の描写を一切排除し、山荘内部の様子だけをカメラに収めている。ここにも、監督の反権力意識が感じられ、興味深かった。

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2008/07/12

アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:バーバラ・リーボヴィッツ

本作品を見て、初めてアニー・リーボヴィッツという女流写真家の名前を知る。しかし、知らないうちにも彼女の作品はどこかで見ており、改めて感心いたしました。従来のポートレイト写真の枠には収まれない絵画的な写真は圧巻の一語。見飽きることはありません。だが、そうした写真がいかにして生まれていったのかという創造の真髄に触れることがなく、ドキュメンタリー作品としては物足りなさが残る。彼女がどのような生涯を歩んできたのかは分かる。被写体の内面に迫るという説明は何度もあった。それはありきたり過ぎて、新味にかけるのだ。作品としては、彼女の写真に遠く及ばない印象を受ける。

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2008/07/11

タロットカード殺人事件

製作年:2006年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:ウディ・アレン

親子というよりも孫ほどに歳の差があるウディ・アレンとスカーレット・ヨハンソン。この二人のテンポよい会話劇が最大の魅力である。スカーレット・ヨハンソンがウディ・アレンを痛烈に罵るとことがおかしい。前作の「マッチポイント」(2005)がシリアスな内容だっただけに、この軽妙なミステリー・コメディが一層楽しく感じる。シニカルな視点というのは共通しているけれど。

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2008/07/10

靖国 YASUKUNI

製作年:2007年
製作国:日本/中国
監 督:リ・イン

ドキュメンタリー映画を見る醍醐味というのは、知っているようで知らない事実を教えてもらうことにある。靖国神社というテーマも、日本人監督では作り得ることのできないタブーであるだけに、興味深く見る。だが、そういう意識で見始めると、拍子抜けしてしまう。確かに、8月15日に靖国神社で何が起きているのか、初めて知る風景ばかりで、圧倒される。その一方で靖国神社とは何なのか、その精神構造については、表層的しか描かれておらず、何も掴むものがなかった。意外なくらい「靖国刀」を作る刀匠・刈谷直治の映像やインタビューが多用されている。何故か。この作品は靖国神社を深く解明する内容ではなく、靖国が象徴するものは何かを考察した映画なのだ。靖国神社、天皇制、刀。このキーワードから見えてくるのは、二面性である。戦争というものは、国と国の利害が衝突し、経済的理由で起きるものだ。だが、戦場で死闘を繰り広げる兵隊や残された家族たちにとって、そんな理由では動かせない。お国にため、天皇陛下のためという宗教的理由が必要となってくるのだ。靖国神社のご神体として崇め奉っている刀の本質は、100人斬りをも行える殺戮兵器である。そうしたことを大いに考えさせられた。

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2008/07/09

題名のない子守唄

製作年:2006年
製作国:イタリア
監 督:ジュゼッペ・トルナトーレ

巧みなミスリード。イレーナ(クセニア・ラパポルト)が北イタリアのトリエステに訪れアダケル家に近付こうとする意図は何か。衝撃的な過去をフラッシュバックで見せるが、なかなかパズルは繋がっていかない。その意味がすべて明らかになるクライマックスで、心が深く揺り動かされる。なんという生涯。なんという選択。なんという哀しみ。

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2008/07/08

インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:スティーヴン・スピルバーグ

あまり芳しくない感想ばかり目にしておりましたので、それなりの覚悟を持って見に行きました。そう思って見ると不思議なもので、なかなか面白く感じました。マイナス評価に挙げられたポイントを一つ一つ確認しつつ、それでも娯楽作に徹した余裕ある作りに感心いたしました。老いたハリソン・フォードにアクション・シーンは辛いものもありますが、全般的にシリアスになりすぎず、ユーモア感たっぷりなのに惹かれます。冷徹なソ連士官イリーナ(ケイト・ブランシェット)にしても、軍隊アリに遭遇したときの表情など、なんとも可笑しい。そうは言って、笑って許せない描写もある。放射能被爆の件だ。いかに1950年代を舞台にした映画であっても、製作されているのは2008年だ。被爆によって、どれほどの悲劇が起っているか、製作者たちに正確な認識があるのか。ないから、あんなシークエンスになるのであろう。唯一の被爆国に暮らす我々としては、異議申し立てをしたい。

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2008/07/07

サルバドールの朝

製作年:2006年
製作国:スペイン/イギリス
監 督:マヌエル・ウエルガ

時の独裁政権に反発、反体制活動に加わった末に死刑に処せられたというと「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々」(2005)を思い出させる。これと比べて共感が薄いのは、主人公サルバドール(ダニエル・ブリュール)の活動というものが、活動資金を得るためとはいえ銀行強盗を楽しげに行っているぐらいしか映されていないからだろう。確かに冤罪の可能性はあるにしても、警官に発砲しているもの事実。自業自得とまでは言わないにしても、不条理な判決とは感じられないのだ。

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2008/07/05

図鑑に載ってない虫

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製作年:2007年
製作国:日本
監 督:三木聡

三木聡監督と言えば、今や脱力系小ネタの笑いを生むことで独自のポジションを築きつつある。本作品も死後の世界を体験できるという謎の<死にモドキ>を探すというプロットがあるものの、その道中は奇々怪々なエピソードで埋め尽くされている。本当に見る人を選ぶような映画であると思うが、自分は大いに楽しめた。高橋恵子の思わぬ存在感が深く心に残る。

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2008/07/04

アフタースクール

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製作年:2008年
製作国:日本
監 督:内田けんじ

神野(大泉洋)が北沢(佐々木蔵之介)に語る台詞に感銘を受ける。「自分独りだけ何もかも分かった風にして、学校なんかつまらいという。でも、つまないのはお前自身なんだ」。優れた探偵能力を有しているけれど、見事なくらい次々と裏切りに遭う北沢。事の発端は彼のギャンブル癖にあるにしても、どこか世の中を拗ねたように見ていることも遠因にあるのではないか。

北沢と対極にあるのが、神野や木村(堺雅人)たちの友情である。学校で得ることのできる最大の恵みは友人だと思う。勉学など極端な話、過ぎてしまえば何も残らないが、友人関係は大切に築いていけば、延々と残っていく。「アフタースクール」というタイトルがなかなか巧いと思う。

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2008/07/03

アイム・ノット・ゼア

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:トッド・ヘインズ

ボブ・ディランの生涯を考えたとき、大きくクローズアップされるのは、<変節>であろう。ボブ・ディランを6人の俳優たちが演じ分けるという実験的な作品になっているが、それぞれ変節した後の心の揺らぎが大きく描かれている。特に印象深いのは、フォーク・ソングと決別し、ロックバンドをバックに歌うジュード(ケイト・ブランシェット)である。観客から裏切り者と激しい罵声を浴びるのであるが、今の時代では考えられない光景だ。その当時のカリスマぶりがうかがえる。変化することを恐れない勇気。すべてを失う危険もあるのに、留まることのできないアーティストの生き様が重く心に残る。

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2008/07/02

私たちの幸せな時間

製作年:2006年
製作国:韓国
監 督:ソン・ヘソン

一刻も早く死にたいと願う死刑囚。裕福な家庭に育ちながら、三度も自殺未遂を繰り返す元歌手。この二人が、週一回の面会を重ねる中で次第に心を通わせていくドラマは定番的とは言え、心を揺さぶるものだ。だが、どうしても気になる点があり、素直に感動できなかった。そもそもユンス(カン・ドンウォン)が犯行を起こす動機となった重病の恋人は、その後、どうなってしまったのか。ユンスは彼女に対してどう思っているのかも、全く触れられていない。それでいて、ユジョン(イ・ナヨン)と過ごす時間が、もっとも幸せだったと言われても、どうも釈然としない。

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2008/07/01

黒い雨

製作年:1989年
製作国:日本
監 督:今村昌平

本作品と同様に被爆後遺症に苦しむ人々の姿を描いた映画といえば、「ヒロシマナガサキ」、「夕凪の街 桜の国」と2007年に製作された作品を思い出す。1989年から2007年へ時間は過ぎていっても、被爆後遺症の問題が解決されていないことを実感させる。“黒い雨”を浴びたことから“ピカに遭った女”という噂が消えず、破談を繰り返す矢須子(田中好子)。そのことが前半、大いに不条理と感じられるが、後半になって、その感情は一転する。噂は噂でなくなるのだ。冒頭の、被爆直後の地獄絵図のような描写も震撼させるが、原爆というものの本当の恐ろしさは、この後半にこそ表されていると思う。矢須子を呆然と見送るしかできない重松(北村和夫)。その無念さが心を激しく打つ。

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