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2008年5月

2008/05/31

ジェシー・ジェームズの暗殺

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:アンドリュー・ドミニク

ブラッド・ピットによるジェシー・ジェームズの造形が圧巻だ。どこか狂気を秘めた彼の眼差しは、一緒にいるものを、絶えず不安にさせている。積み重なった犯罪。従わぬ者を平伏させる圧倒的な暴力。ゆがんだユーモア。身体の異常と共に、彼の精神もいつ崩壊しても分からない危うさとなっている。危険を承知で背を向けた彼の心情は、意外というより開放であったのではないか。その魔力に操られてしまったようなロバート・フォード(ケイシー・アフレック)。

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2008/05/30

いつか眠りにつく前に

製作年:2007年
製作国:アメリカ/ドイツ
監 督:ラホス・コルタイ

どうして、こんな結果になってしまったのか。バディ(ヒュー・ダンシー)とアン(クレア・ディーンズ)の二人は、第3者から見れば、恋人同士しか見えない。だが、アンはバディの求愛を断ってしまう。それはなぜか。一つのエピソードがすべてを明らかにしている。彼はその事実を認めることができなかったのだ。その悲劇の前に切り裂かれてしまう恋人たち。最高に幸福な一日は、最悪な不幸の一日でもあったのだ。これぞ、ドラマであると思う。

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2008/05/29

アドレナリン

製作年:2006年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:ネヴェルダイン&テイラー

よくぞここまで考えつくものである。ジェイソン・ステイサムの前作「トランスポーター2」(2005)も奇抜なアイディアが満載であったが、本作品も相当なものだ。それをシリアスな表情なまま、テンポ良くこなしていくので、余計にそのギャップが可笑しい。アクション映画というより、コメディ映画として秀作であった。

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2008/05/28

この道は母へとつづく

製作年:2005年
製作国:ロシア
監 督:アンドレイ・クラフチューク

実母を求めて旅を続ける物語は、さほど珍しいものではない。出色の作品となっているのは、少年ワーニャを演じたコーリャ・スピリドノフによるものだ。単に、可愛く感じるとか哀れみを誘うだけでなく、判断力の高さと行動力の素早さが、群を抜いているのだ。孤児院を抜け出してから、数々の危機に見舞われる。その判断が正しいかどうかは別にして、その瞬時の決断が結果として功を奏している。時には命までも投げ打って。この迷いの無さに瞠目する。

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2008/05/27

ライラの冒険 黄金の羅針盤

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:クリス・ワイツ

同じ製作会社(ニューライン・シネマ)ということもあるのだろうが、「ロード・オブ・ザ・リング」にイメージが重なるファンタジー大作である。その世界を決する使命を帯びた弱者の主人公が、仲間たちの助けを借りて旅を続ける物語。美形スターを並べた「ロード・オブ・ザ・リング」に比べれば、華やかさに欠けるが、その独自の世界観は興味深い。3部作の始まりであるので、明らかにされていない謎も多数残るが、次作への楽しみとしたい。

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2008/05/26

明日への遺言

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:小泉堯史

何故、岡田中将(藤田まこと)は報復ではなく、処罰と返答したのか。ここが本作品のポイントであると思う。無差別爆撃も捕虜処刑も、同じ人を殺害する行為である。戦争行為と言ってもよいし、犯罪行為と言ってもよい。そもそも、それを決める境界線は危ういものだ。どちらかに決めようとすれば、どこかで矛盾を引き起こすことになる。本作品を見ていて、終始、釈然としない思いに駆られるのは、そのためであろう。捕虜処刑を処罰でなく、報復とした方が、感情的にもずっと納得できるものであるはずだ。それでも、処罰と言った思いを理解するには、もうしばらく時間がかかりそうである。

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2008/05/22

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:マイク・ニコルズ

看板に偽りあり。予告編や作品紹介などからイメージしていた映画とは、印象の異なる内容だった。主人公、チャーリー・ウィルソン(チャーリー・ウィルソン)の造形からして違う。美女とお酒をこよなく愛する人物ではあるが、ただのお気楽議員ではない。アフガニスタン極秘作戦にしても、ジョアン(ジュリア・ロバーツ)の関心をひきたくて、仕方なく引き受けたのではない。それ以前から関心を持ち、ジョアンやガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)らの助力を得たにしても、自発的に取り組んだことであった。何より、議会工作にも絶妙の手腕を発揮できる奥深い政治家であったのだ。ソ連のアフガン退却を成し遂げた喜びは一瞬のこと。その刃がまわり回ってアメリカに向かってくるとは、なんといういう皮肉であろう。禅師匠の例え話が重々しく残る。

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2008/05/20

最高の人生の見つけ方

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ロブ・ライナー

自分の死期を知ることができるのは、幸せなことだろうか、不幸せなことだろうか。突然の事故や災害で、いつ命をなくすか分からないこの世の中である。本作品のエドワード(ジャック・ニコルソン)やカーター(モーガン・フリーマン)たちのように余命6ヶ月と知って、やり残したことを一つ一つ片付けていける方がいいような気もする。だが、死と対峙する心理的プレッシャーは相当なものであろう。それはそれで辛く苦しいと思う。では、どうするか。日々の生活を大切にして、悔いを残さないようにするのが一番だろうなぁ。

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2008/05/19

ヴァン・ヘルシング

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:スティーヴン・ソマーズ

ドラキュラ伯爵の宿敵として知られたヴァン・ヘルシング教授。フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ」(1992)などにも登場してくるキャラクターであるが、バチカンの密命を受けたモンスター・ハンターとして新たに造形された一編。ドラキュラだけでなく、フランケンシュタインやウルフマンという伝説のモンスターたちと壮絶な闘いを繰り広げられる面白い試みである。だが、人物の背景描写に深みがなく、どうも見ていて物足りない。例えば、何故、ヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン)が記憶を無くし、モンスター・ハンターとして生きているのか。それは戦いのドラマの中で、興味を引く設定なのであるが、うまく活かされていない。それが惜しまれる。

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2008/05/18

蒼き狼 地果て海尽きるまで

製作年:2006年
製作国:日本/モンゴル
監 督:澤井信一郎

何故、テムジン(反町隆史)は父のように、息子ジュチ(松山ケンイチ)と接することができないのか。実子ではないかもしれないという誹謗中傷を幼年期から受け続けた彼なら、その気持ちは痛いくらいに分かるのではないか。そのように他人からは思えることでも、当人にとっては簡単でないこともあるのだ。ラストに息子への思いを述懐するシーンも設けてあるが、それも本音ではないと感じる。自分と同じ境遇になってしまった子に、優しい言葉をかける術を見出さなかったのではないか。意思疎通が図れなかったことから、悲劇は生まれる。

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2008/05/17

砂時計

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:佐藤信介

いかにして心の傷から立ち直ることができるのか。時間が解決するというのは嘘だ。本作品のヒロイン、杏(松下奈緒)は、12年経っても傷を塞げなかった。彼女を見守る家族や恋人には辛く切ないことではあるが、いかに救いの手を差し伸べようとも、本当に再生するには、自分自身で決着させなければならない。結婚を控えた杏は、大悟(井坂俊哉)との再会から心傷が露になり、どん底まで落ちる。そこで何を見つけたのか。それが正しいのか、間違っているか、誰に分からない。だが、その答えを得たことが再生の一歩となる。

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2008/05/14

人のセックスを笑うな

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:井口奈己

恋愛を始めるのは簡単であるが、終わらせることのなんと難しいことか。恋愛にも経験値で計れる熟度があるとすれば、ユリ(永作博美)が裏の裏まで知った大ベテランであり、みるめ(松山ケンイチ)は何も分からないルーキーのようなものである。ユリに太刀打ちできないのも当たり前だろう。諦めようと思っても、諦める術を知らない。だから、終始、もがき続けるのだ。本作品のユニークなのは、そのもがきが三重構造になっているところ。みるめはユリを、えんちゃん(蒼井優)はみるめを、堂本(忍成修吾)はえんちゃんを、それぞれ諦められなくて、悩みぬいている。そうした迷いの連鎖に関係なく、ユリはいとも簡単に旅立っていく。この辺りもベテランの極意であろう。地方都市を魅力的に映した映像も素晴らしかった。

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2008/05/13

隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:樋口真嗣

雪姫(長澤まさみ)が受け止める様々な視線。射抜こうとする敵兵の怯えた眼。身を呈して助けた筈なのに町民から受ける身も凍るような眼。苦難の末に再会する旧領民の暖かな眼。それらの眼を鏡のように使って、彼女は自分の姿を知る。それがひとつの成長だと思う。黒澤明監督のリメイク元作は、ジョージ・ルーカス監督の「スター・ウォーズ」に影響を与え、本作品では、ダース・ベイダーの意趣を鷹山刑部(椎名桔平)の人物造形に取り入れられている。武蔵(松本潤)と雪姫のロマンスも、ハン・ソロとレイア姫を想起させるものだ。文化の継承はこうしてなされていくのだと感慨深かった。

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2008/05/12

魔法にかけられて

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ケヴィン・リマ

「あなたは、ノーとばかり言っている」。本作品でハッとするのは、ジゼル(エイミー・アダムス)がロバート(パトリック・デンプシー)にこう反発するところである。おとぎの世界から現実のニューヨークにやってきて、様々なところでカルチャー・ギャップを感じる旨が笑いのポイントになっている。細かいところで、あれをしてはいけない、これをしてはいけないと、注意を受け続ける。それに対して不満をぶつける訳だが、それだけではなく、人生全般を否定的に見ている男の姿を、ずばり看破している。傷つけたくない、傷つきたくないという思いは、あらゆる可能性まで捨ててしまっている。ティモシー・スポールの迷変装ぶりも楽しい。

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2008/05/10

バンテージ・ポイント

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:ピート・トラヴィス

確かに、あれって思うところも残る。説明不足の人物関係もあるだろう。完成度は高くないけれど、小気味良い複眼サスペンス映画であった。1人の視点で感じる違和感が、別の人物の視点で解明されていく感嘆。そして、クライマックスに収斂していく見事な展開。形は違うけれど、内田けんじ監督の「運命じゃない人」(2004)を思い出しました。

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2008/05/09

愛の流刑地

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:鶴橋康夫

外の風景が登場人物の上に映し出し、その心情を表現しようとす趣向の凝った映像は見応えがありました。それでも、ドラマの部分は物足りなさが残ります。「僕は選ばれた殺人者だったのです」という村尾(豊川悦司)の述懐も、最初から映像で見せていて分かっていること。もう少しミステリー的興趣を施しても良かったのではないか。これが結論かと思うと、興醒めでした。もしかすると編集でカットされたのかもしれませんが、検事の織部(長谷川京子)や、冬香(寺島しのぶ)の夫(仲村トオル)、友人である祥子(浅田美代子)のエピソードも中途半端で、歯切れが悪いものであった。

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2008/05/08

チーム・バチスタの栄光

20080229

製作年:2008年
製作国:日本
監 督:中村義洋

「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007)で名を挙げた中村義洋監督。同じくミステリー小説を映画化した本作品でも、見事な手腕を発揮している。主人公の田口を男性から女性に変えたという表面的なことだけでなく、原作にはない何気ないシーンに重大な意味を持たせていて、なかなかやるなぁと感心する。原作を先に読んでいるので、事件の真相も分かっている。それでも面白く見られたのは、細部の描写が充実しているだろう。愚痴外来の由来など原作を読んでいないと説明不足のところもあるが、肝心のバチスタ手術など映画を見て理解が深まった。

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2008/05/07

俺たちフィギュアスケーター

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ウィル・スペック ジョシュ・ゴードン

アメリカ映画のコメディはなかなか日本では公開されにくい状況にあるのが、本作品のような作品を見れば、まだまだ捨てたものではないと思う。たしかに下品でまぬけなエピソードが続き、大いに笑わせてくれる。だが、ラスト・シーンとエンド・クレジットに出てくるサービス映像を繋げてみると、別の解釈が生まれてくる。そこに表現として奥深さを感じる。サーシャ・コーエン、ナンシー・ケリガンらフィギュア界の有名選手も本人役で多数出演しているところも楽しい。

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2008/05/06

遠くの空に消えた

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:行定勲

現実感のあるような、ないような、架空の村を舞台にしたファンタジー。どこかで既視感を覚える世界ではあるが、のんびりした雰囲気が良く、それはそれでよい。だが、一つのエピソードで台無しになってしまった。それは、トバ(田中哲司)が引き起こした凶悪事件。それまで、暴力的である一方、間の抜けた様子がユーモアたっぷりのトバであったのに、この犯行はあまり唐突過ぎる。他にも同様に感じるエピソードが多々あり、気持ちよく映画の世界に浸れなかった。陽光を取り入れた映像や、神木隆之介と大後寿々花といった子役の演技など、秀逸点も多いので、余計に残念だ。

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2008/05/05

ジャスミンの花開く

製作年:2004年
製作国:中国
監 督:ホウ・ヨン

間違った選択を重ねる家族。チャン・ツィイーが上海に生きる母子三世代の女性を一人で演じた力作ではあるけれど、不幸を自ら呼び込んでいるような生き方の繰り返しに悄然としてしまう。彼女たちは、それぞれ幸せになろうとして、母の反対を押し切って一歩前に踏み出す。それが、望んだ結果にならなかったとしても、卑下することはないではないか。歪んだ自己嫌悪と失ったものを追い続ける諦観の無さが、更なる悲劇を生み出すのだ。

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2008/05/04

ヒトラーの贋札

製作年:2007年
製作国:ドイツ/オーストリア
監 督:ステファン・ルツォヴィツキー

芸は身を助けると言われるが、本作品を見ると確かにそういうこともあるなと感じさせます。ユダヤ人強制収容所で虐殺されるのを待つしかないのに、米英経済を混乱に陥れるため贋札製造が計画されたため、特殊技術を持つ者が破格の待遇を受ける。作戦の成功は自分の延命を保証するものであるが、同胞を苦しめるナチスに荷担することでもある。ここに熾烈な葛藤が生じる。成功しても駄目、失敗しても駄目という、微妙なバランスで日々を生き抜く苦悩。これに比べれば、ポーカー・ギャンブルなど児戯に等しいのであろう。勝負を降りてしまったサリー(カール・マルコヴィクス)の心は、不毛の荒野で満たされることはない。

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2008/05/03

ハイジ

製作年:2005年
製作国:イギリス
監 督:ポール・マーカス

人は可能性の追求を自ら閉じている。そんなことはできない。そんなものは必要ない。そんな行動は失礼にあたる。そう無意識に思い込んでしまい、いつの間にか閉塞感に苦しむ。本作品の登場人物たちは、そうした思いにさいなまれている。ハイジ(エマ・ボルジャー)はアルプスの暮らしを懐かしみ、都会の生活に適応できない。おじいさん(マックス・フォン・シドー)は人殺しの汚名に傷つき、山奥で孤高の道を選ぶ。ペーター(サム・フレンド)は羊飼いに勉強の時間は要らないと思う。クララ(ジェシカ・クラリッジ)は自分が歩けないと信じ込む。それぞれの頑な思いが、人と人との繋がりでほぐれていく瞬間。それが見る者の感動を呼ぶ。

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2008/05/02

クローバーフィールド HAKAISHA

製作年:2008年
製作国:アメリカ
監 督:マット・リーヴス

本作品のポイントは、ロブ(マイケル・スタール=デヴィッド)とベス(オデット・ユーストマン)の幸せだった頃のビデオ映像が何度もフラッシュバックされているところであろう。未曾有の大惨事をひたすら追いかける選択もあったはずだ。映像で記録するということの意味が、二重、三重になって伝わってくる。車酔いするような映像という前評判を聞いていたからか、それほどには感じられなかった。

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2008/05/01

ディセント

製作年:2005年
製作国:イギリス
監 督:ニール・マーシャル

本作品で一番怖かったのは、冒頭の交通事故シーン。幸せに過ごしていたサラ(シャウナ・マクドナルド)たち親子3人の生活が、一瞬のことで崩壊してしまう。本編の洞窟で未知なる生物から受ける襲撃は、確かに恐怖映画のパターンを踏襲し、それなりにショッキングではある。だが、彼女たちは冒険心で地下洞窟探検に出掛けていったのだ。全員が前人未踏の洞窟であることを知らなかったにしても、危険と背中合わせであることは承知しておかねばならなかったのだ。彼女たちの受けた被害を我々が実際に体験すること。その可能性がきわめて低い。だが、交通事故は別だ。一瞬の注意ミスで、すべてを無くしかねない。それが本当に怖い。

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