製作年:2007年

2008/07/05

図鑑に載ってない虫

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:三木聡

三木聡監督と言えば、今や脱力系小ネタの笑いを生むことで独自のポジションを築きつつある。本作品も死後の世界を体験できるという謎の<死にモドキ>を探すというプロットがあるものの、その道中は奇々怪々なエピソードで埋め尽くされている。本当に見る人を選ぶような映画であると思うが、自分は大いに楽しめた。高橋恵子の思わぬ存在感が深く心に残る。

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2008/07/03

アイム・ノット・ゼア

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:トッド・ヘインズ

ボブ・ディランの生涯を考えたとき、大きくクローズアップされるのは、<変節>であろう。ボブ・ディランを6人の俳優たちが演じ分けるという実験的な作品になっているが、それぞれ変節した後の心の揺らぎが大きく描かれている。特に印象深いのは、フォーク・ソングと決別し、ロックバンドをバックに歌うジュード(ケイト・ブランシェット)である。観客から裏切り者と激しい罵声を浴びるのであるが、今の時代では考えられない光景だ。その当時のカリスマぶりがうかがえる。変化することを恐れない勇気。すべてを失う危険もあるのに、留まることのできないアーティストの生き様が重く心に残る。

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2008/06/29

シルク

製作年:2007年
製作国:カナダ/フランス/イタリア/イギリス/日本
監 督:フランソワ・ジラール

こんなドラマだったのか。予告編を見て抱いていた物語と全く違っていた。その意外さが一つ。恋は盲目という。ただ会いたい。そのためにはどんな危険があろうとも眼中に入らない。そんな愚かな男を静かに見守るエレーヌ(キーラ・ナイトレイ)。静謐で幻想的なヴィジュアル。やはり聞き惚れてしまう坂本龍一の音楽。

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2008/06/26

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:北村拓司

チェーンソー男とは一体、何者なのであろうか。何故、絵理(関めぐみ)は彼と毎晩、戦わなければならないのか。どうして、陽介(市原隼人)は、彼女たちの戦いに巻き込まれてしまったのか。その答えは全く明らかにされていない。その意味を解釈することがシネマファンの悦楽なのであろう。「今のガキは頭がいい、反抗したって変わらないことを知っている」。抜群だった板尾創路の存在感。

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2008/06/25

奇跡のシンフォニー

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:カーステン・シェリダン

類い希な音楽の才能を持つのはエヴァン(フレディ・ハイモア)だけではないだろう。ウィザード(ロビン・ウィリアムズ)も、彼と同じ才能を持ち合わせていた筈だ。ライラ(ケリー・ラッセル)とルイス(ジョナサン・リス=マイヤーズ)を結びつけたきっかけ、彼の奏でるハーモニカであることからも、それがうかがえる。だが、その才能が社会的に開花することはなかった。そのことが彼を歪めてしまう。「オリバー・ツイスト」のフェイギンのような浮浪児の元締めに身をやつし、エヴァンの音楽を我が物にしようと画策する。才能があるだけでは、成功すると限らないのだ。それでも、エヴァンは願いを適えることができた。何故か。彼の宿願は金銭的成功にない純粋なものだからなのか。

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2008/06/22

ラスト、コーション

製作年:2007年
製作国:中国/アメリカ
監 督:アン・リー

人生は自分自身で選ぶものというが、果たしてこんなことがあるのであろうか。本作品のヒロイン、チアチー(タン・ウェイ)が女スパイになっていくまでの展開に唖然とする。まさか、こんな生涯を送るとは、本人も予想していなかったであろう。そして、出会ってしまった最愛の人。彼女がイー(トニー・レオン)に告げる一言が最高の名場面。深く心に焼き付く。

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2008/06/20

JUNO ジュノ

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ジェイソン・ライトマン

ジュノ(エレン・ペイジ)に語った父マック(J・K・シモンズ)の言葉がしみじみと残り続ける。「永遠の愛が欲しいなら、あるがままの自分を愛してくれる相手を見つけることだ」。いい時も悪い時も、自分のことを理解して愛してくれるのなら、どんな試練も乗り越えられる。16歳の予期せぬ妊娠という事態は、大変な試練である。彼女は自分の意志で問題を解決していこうとするが、大きな壁にぶつかる。そんな時に受ける父の言葉の重み。ジュノはスタイリッシュな側面ばかり人生に求めていたことに気付くのだ。ポーリー(マイケル・セラ)、義理の母ブレン(アリソン・ジャネイ)、里親のヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)とは新たな関係を構築していくのは、彼女の大きな成長だと思う。

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2008/06/14

母べえ

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:山田洋次

本音と建前。反戦を唱え投獄されてしまった父べえ(坂東三津五郎)。苦境の中、幼い二人の娘を抱えて、必死に生きていく母べえ(吉永小百合)。夫の生き方を支持しながら、生活のために本音を隠さなくてはならなくなる。ある時、彼女の元に訪れた型破りな叔父・仙吉(笑福亭鶴瓶)。本音丸出しの言動に、長女の初べえ(志田未来)は忌み嫌う。そんな彼女へ、叔父への気持ちを語りかける母べえの台詞が良かった。この仙吉は寅さんと容易にイメージが重なり、本音と建前の中で生きていかねばならない我々の清涼剤と言える存在である。

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2008/06/12

アメリカン・ギャングスター

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:リドリー・スコット

本作品の中で最も好きな場面は、リッチー(ラッセル・クロウ)が元妻と養育権で争う裁判所のところ。妻から痛烈な批判を浴びてしまうが、この台詞によって汚職を拒み潔癖な仕事を貫く彼の人生の矛盾点がクローズアップされる。フランク(デンゼル・ワシントン)にしても、清濁併せ持つ複雑な人物造形となっている。それが本作品の美点であると感じる。

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2008/06/11

つぐない

製作年:2007年
製作国:イギリス
監 督:ジョー・ライト

不幸な事実の積み重ね。ブライオニー(シアーシャ・ローナン)は、悪意を持って嘘の告発をしたのではない。なるほど、悲劇とはこうして起こるのだろうと思わせるほど、複数の要因が一本の道を作り、逃れる術もなくなってしまう。もし、一つでも違っていれば、こんな事態にはならなかったであろう。その思いが、余計に胸を締め付ける。リズミカルなタイプライターの効果音と、時制を巻き戻す複雑な構成が、何を意味するのか。最後になって明らかになる。自分が起した悲劇を元に戻すことはできない。それでも、何か償おうとするのであれば、自分のできることで行うしかない。その思いに深い感銘を受けるのだ。

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2008/06/10

ノーカントリー

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン

一体、この国はどうなってしまったのか。そうした嘆き、絶望感が、老保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)を通してひしひしと伝わってくる。「NO COUNTRY FOR OLD MEN」という原題が、重く響きながら。通り魔殺人のような理解を超えた犯罪の多発からベル保安官の苦悩は増し、態度をシニカルにさせる。それでも、アントン・シガー(ハビエル・バルデム)に追われたルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)を救おうとするのだ。大金を奪い逃走するモスの運命は、言わば自業自得のようなものである。何故、助けようとするのか。彼の保安官という職種に対する誇りであろう。しかし、保安官はモスを救うことができない。深い無力感と厭世観に覆われて映画は幕を引く。

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2008/06/09

赤い文化住宅の初子

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:タナダユキ

「誰かに助けられことを期待するな」。とても教師には見えないルーズな田尻(坂井真紀)が異彩を放つのは、この台詞を初子にぶつける場面である。父親は蒸発、母親は死去、高校を退学し就職した兄と二人暮しの初子の生活は困窮を極めている。その状況を生き抜くためには、様々な夢を断念しなければならないのであるが、初子にはその覚悟ができていない。それを求めるのは酷なことではあるが、その逡巡が彼女の表情を暗くしている。それは兄も同様である。労り合わなければならない二人なのに、刺々しい関係が続く。それを乗り越える機会はさらなる災いによってであった。他者を期待する心は、こうして消散していく。

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2008/06/07

歓喜の歌

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:松岡錠司

安田成美の清楚な好演の光る映画ではあるが、小林薫の造形が最後まで馴染めない。冒頭のいいかげんな生き方から、いかに再生していくかが本作品の眼目である。だが、変わってからの行動や言動も、心を捉えることができない。例えば、クレーム対応のために合唱に出られない藤田弓子のところまで駆けつけるのはいいにしても、その後が全くいけない。あれでは、二次クレームを引き起こしてしまうだろう。どうもそうしたところが気になって、素直に感動できなかった。

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2008/06/06

ペルセポリス

製作年:2007年
製作国:フランス
監 督:マルジャン・サトラピ

イラン革命の内側で若者たちがいかに生きていたのか。その内容がとても興味深い。こうしたドラマをイランで撮影するのは、とても困難であるだろう。アニメーションだからこそ構築できる世界は、ファンタジーだけではないことを実感する。マルジへ切々と伝えるおばあちゃんの言葉が切々と胸に響く。

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2008/06/04

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ポール・トーマス・アンダーソン

「欲望と言う名の黒い血が彼を怪物に変えていく」という宣伝コピーもあることだし、主人公ダニエル・プレインビュー(ダニエル・デイ=ルイス)について、欲に目のない冷徹で計算高い人物像を予想して見始めたが、どうも違うようだ。確かに、そうした面も持ち合わせているが、そればかりではないと思う。かえって損してしまうような矛盾した行動を取り続けるのだ。どうして、イーライ・サンデー(ポール・ダノ)に対して、意地悪とも言える仕打ちを繰り返すのか。大手石油会社の交渉相手がH.W.(ディロン・フレイジャー)の処遇を話題にしたからと言って、何故、常軌を逸するほどの怒りを見せるのか(二回もその場面が挿入され強調されている)。そもそも、土地買収交渉が有利になるからといって、乳児を一人で育てることができるだろうか。ただお金儲けを目的とするのであれば、マイナスと思えるものばかりだ。その不可解な行為の数々が、ダニエルという男に深い陰影を与えている。そうしなければならないことが、彼の過去に何かあったということを想像させる。ダニエルには、反発よりも哀感を覚えずにはいられない。

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2008/06/03

迷子の警察音楽隊

製作年:2007年
製作国:イスラエル/フランス
監 督:エラン・コリリン

イスラエルに招かれたエジプトの警察音楽隊の団長トゥフィーク(サッソン・ガーベイ)は、トラブルに対して、ますます深みに入るような間違った判断を繰り返す。それでも頑な姿勢を崩せず、すべての事柄に対して、否定的態度を続ける。それは過去の不幸な出来事に誘因されていることが後々明らかになるが、誤りを誤りとして認めなければ、不幸を止めることはできない。食堂の美しい女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)の計らいで生じた一夜は、トゥフィークに否定ではなく肯定することの大切さを教えてくれた。思えば、戦争というものも、敵国を否定することから始まる。肯定すれば、おのずと相互理解の道が開けてくるのだ。そうした思いを込めて奏でられたクライマックスの演奏は、より深みを増して聴こえてくる。

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2008/06/02

エリザベス ゴールデン・エイジ

製作年:2007年
製作国:イギリス/フランス
監 督:シェカール・カプール

アカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得のケイト・ブランシェットの貫禄。重厚な演技によって、女王の揺れ動く感情を見事に表現していると思う。惜しまれるのはスペイン艦隊と雌雄を決するアルマダの海戦に深みがないところ。事実として、イギリスに優位となる気象状況があったとしても、神頼みのような精神性ばかりが強調され、興に乗れない。偶然ではなく必然の勝利の演出が足りない。そのために、前作と比べウォルシンガム(ジェフリー・ラッシュ)の存在感も薄いのであろう。

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2008/05/31

ジェシー・ジェームズの暗殺

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:アンドリュー・ドミニク

ブラッド・ピットによるジェシー・ジェームズの造形が圧巻だ。どこか狂気を秘めた彼の眼差しは、一緒にいるものを、絶えず不安にさせている。積み重なった犯罪。従わぬ者を平伏させる圧倒的な暴力。ゆがんだユーモア。身体の異常と共に、彼の精神もいつ崩壊しても分からない危うさとなっている。危険を承知で背を向けた彼の心情は、意外というより開放であったのではないか。その魔力に操られてしまったようなロバート・フォード(ケイシー・アフレック)。

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2008/05/30

いつか眠りにつく前に

製作年:2007年
製作国:アメリカ/ドイツ
監 督:ラホス・コルタイ

どうして、こんな結果になってしまったのか。バディ(ヒュー・ダンシー)とアン(クレア・ディーンズ)の二人は、第3者から見れば、恋人同士しか見えない。だが、アンはバディの求愛を断ってしまう。それはなぜか。一つのエピソードがすべてを明らかにしている。彼はその事実を認めることができなかったのだ。その悲劇の前に切り裂かれてしまう恋人たち。最高に幸福な一日は、最悪な不幸の一日でもあったのだ。これぞ、ドラマであると思う。

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2008/05/27

ライラの冒険 黄金の羅針盤

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:クリス・ワイツ

同じ製作会社(ニューライン・シネマ)ということもあるのだろうが、「ロード・オブ・ザ・リング」にイメージが重なるファンタジー大作である。その世界を決する使命を帯びた弱者の主人公が、仲間たちの助けを借りて旅を続ける物語。美形スターを並べた「ロード・オブ・ザ・リング」に比べれば、華やかさに欠けるが、その独自の世界観は興味深い。3部作の始まりであるので、明らかにされていない謎も多数残るが、次作への楽しみとしたい。

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2008/05/26

明日への遺言

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:小泉堯史

何故、岡田中将(藤田まこと)は報復ではなく、処罰と返答したのか。ここが本作品のポイントであると思う。無差別爆撃も捕虜処刑も、同じ人を殺害する行為である。戦争行為と言ってもよいし、犯罪行為と言ってもよい。そもそも、それを決める境界線は危ういものだ。どちらかに決めようとすれば、どこかで矛盾を引き起こすことになる。本作品を見ていて、終始、釈然としない思いに駆られるのは、そのためであろう。捕虜処刑を処罰でなく、報復とした方が、感情的にもずっと納得できるものであるはずだ。それでも、処罰と言った思いを理解するには、もうしばらく時間がかかりそうである。

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2008/05/22

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:マイク・ニコルズ

看板に偽りあり。予告編や作品紹介などからイメージしていた映画とは、印象の異なる内容だった。主人公、チャーリー・ウィルソン(チャーリー・ウィルソン)の造形からして違う。美女とお酒をこよなく愛する人物ではあるが、ただのお気楽議員ではない。アフガニスタン極秘作戦にしても、ジョアン(ジュリア・ロバーツ)の関心をひきたくて、仕方なく引き受けたのではない。それ以前から関心を持ち、ジョアンやガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)らの助力を得たにしても、自発的に取り組んだことであった。何より、議会工作にも絶妙の手腕を発揮できる奥深い政治家であったのだ。ソ連のアフガン退却を成し遂げた喜びは一瞬のこと。その刃がまわり回ってアメリカに向かってくるとは、なんといういう皮肉であろう。禅師匠の例え話が重々しく残る。

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2008/05/20

最高の人生の見つけ方

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ロブ・ライナー

自分の死期を知ることができるのは、幸せなことだろうか、不幸せなことだろうか。突然の事故や災害で、いつ命をなくすか分からないこの世の中である。本作品のエドワード(ジャック・ニコルソン)やカーター(モーガン・フリーマン)たちのように余命6ヶ月と知って、やり残したことを一つ一つ片付けていける方がいいような気もする。だが、死と対峙する心理的プレッシャーは相当なものであろう。それはそれで辛く苦しいと思う。では、どうするか。日々の生活を大切にして、悔いを残さないようにするのが一番だろうなぁ。

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2008/05/14

人のセックスを笑うな

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:井口奈己

恋愛を始めるのは簡単であるが、終わらせることのなんと難しいことか。恋愛にも経験値で計れる熟度があるとすれば、ユリ(永作博美)が裏の裏まで知った大ベテランであり、みるめ(松山ケンイチ)は何も分からないルーキーのようなものである。ユリに太刀打ちできないのも当たり前だろう。諦めようと思っても、諦める術を知らない。だから、終始、もがき続けるのだ。本作品のユニークなのは、そのもがきが三重構造になっているところ。みるめはユリを、えんちゃん(蒼井優)はみるめを、堂本(忍成修吾)はえんちゃんを、それぞれ諦められなくて、悩みぬいている。そうした迷いの連鎖に関係なく、ユリはいとも簡単に旅立っていく。この辺りもベテランの極意であろう。地方都市を魅力的に映した映像も素晴らしかった。

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2008/05/12

魔法にかけられて

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ケヴィン・リマ

「あなたは、ノーとばかり言っている」。本作品でハッとするのは、ジゼル(エイミー・アダムス)がロバート(パトリック・デンプシー)にこう反発するところである。おとぎの世界から現実のニューヨークにやってきて、様々なところでカルチャー・ギャップを感じる旨が笑いのポイントになっている。細かいところで、あれをしてはいけない、これをしてはいけないと、注意を受け続ける。それに対して不満をぶつける訳だが、それだけではなく、人生全般を否定的に見ている男の姿を、ずばり看破している。傷つけたくない、傷つきたくないという思いは、あらゆる可能性まで捨ててしまっている。ティモシー・スポールの迷変装ぶりも楽しい。

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2008/05/07

俺たちフィギュアスケーター

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ウィル・スペック ジョシュ・ゴードン

アメリカ映画のコメディはなかなか日本では公開されにくい状況にあるのが、本作品のような作品を見れば、まだまだ捨てたものではないと思う。たしかに下品でまぬけなエピソードが続き、大いに笑わせてくれる。だが、ラスト・シーンとエンド・クレジットに出てくるサービス映像を繋げてみると、別の解釈が生まれてくる。そこに表現として奥深さを感じる。サーシャ・コーエン、ナンシー・ケリガンらフィギュア界の有名選手も本人役で多数出演しているところも楽しい。

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2008/05/06

遠くの空に消えた

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:行定勲

現実感のあるような、ないような、架空の村を舞台にしたファンタジー。どこかで既視感を覚える世界ではあるが、のんびりした雰囲気が良く、それはそれでよい。だが、一つのエピソードで台無しになってしまった。それは、トバ(田中哲司)が引き起こした凶悪事件。それまで、暴力的である一方、間の抜けた様子がユーモアたっぷりのトバであったのに、この犯行はあまり唐突過ぎる。他にも同様に感じるエピソードが多々あり、気持ちよく映画の世界に浸れなかった。陽光を取り入れた映像や、神木隆之介と大後寿々花といった子役の演技など、秀逸点も多いので、余計に残念だ。

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2008/05/04

ヒトラーの贋札

製作年:2007年
製作国:ドイツ/オーストリア
監 督:ステファン・ルツォヴィツキー

芸は身を助けると言われるが、本作品を見ると確かにそういうこともあるなと感じさせます。ユダヤ人強制収容所で虐殺されるのを待つしかないのに、米英経済を混乱に陥れるため贋札製造が計画されたため、特殊技術を持つ者が破格の待遇を受ける。作戦の成功は自分の延命を保証するものであるが、同胞を苦しめるナチスに荷担することでもある。ここに熾烈な葛藤が生じる。成功しても駄目、失敗しても駄目という、微妙なバランスで日々を生き抜く苦悩。これに比べれば、ポーカー・ギャンブルなど児戯に等しいのであろう。勝負を降りてしまったサリー(カール・マルコヴィクス)の心は、不毛の荒野で満たされることはない。

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2008/04/30

大いなる陰謀

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ロバート・レッドフォード

今だ対テロ戦争が終結していない2008年に見ると、評価が難しい作品であると感じる。様々な問題提起がされているものの、答えが明確にされていないからだ。その答えは、今後の国際情勢によって明らかにされていくのであろう。それなら、この時点で映画が製作されたのは、何故か。ロバート・レッドフォード監督のメッセージは、明確だ。戦争に倦みつかれて、無関心になってはいけないということ。確かに、一個人としてできることは限られている。だが、イラクやアフガニスタンで兵士たちは、何のために命を落としていくのか、知ることは重要である。様々な思惑で行われている情報操作。

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2008/04/29

シュレック3

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:クリス・ミラー

物語には表と裏がある。おとぎ話も一皮むけば、決して、めでたし、めでたし、では終われない。そうしたシニカルな視点が面白かったシュレック・シリーズ。それでも三作目となれば、そのパロディ精神も予定調和になってしまうのが、逆の意味で皮肉的だ。皮肉と言えば、王位を望み反乱を起こすチャーミング王子(ルパート・エヴェレット)と、王位を譲りたくて王位継承者を探す旅に出るシュレック(マイク・マイヤーズ)の関係である。両者の欲しいものと、欲しくないものが一致しているのに、かみ合わないもどかしさ。うまく調整できれば争わないで収まるのに、対立を続ける。何か社会を象徴していると感じる。

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2008/04/28

燃えよ ピンポン

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ロバート・ベン・ガラント

脚本を書いているロバート・ベン・ガラントとトーマス・レノンは、調べてみると共に1970年生まれのようである。彼らが、多感な頃に聴いていたのが、デフ・レパードなのであろうか。本作品には、このバンドをネタにしたギャクが満載であるが、どこかリスペクトが感じられ、悪い気分にはならない。私自身はこのバンドをしっかり聴いたことがないのでもう一つピンとこないが、ファンの人にはきっと堪らないものであろう。クリストファー・ウォーケンが楽しげに悪役を演じていて良かった。

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2008/04/26

Sweet Rain 死神の精度

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:筧昌也

特別なものではないけれど、とても大切なもの。ほとんどの人が歩んでいく生涯とは、ドラマチックに幸運が巡ってきたり、押しつぶされてしまうほどの悲劇に見舞われるものではないだろう。どこかで聞いたことのあるような逸話の積み重ねで日々を過ごしていく。それをつまらないものと感じるか、充実した日常として過ごすことができるか。いかにして大切なものを日々の暮らしの中から見つけることにかかっていく。そうすれば、青空、ひとつとってみても、見方が変わってくるだろう。

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2008/04/23

マイ・ブルーベリー・ナイツ

製作年:2007年
製作国:香港/中国/フランス
監 督:ウォン・カーウァイ

ブルーベリーパイが売れ残るのは、ただブルーベリーパイだからというだけのことで、理由がないとジェレミー(ジュード・ロウ)は言う。だから、愛の失った理由を探しても意味がないとエリザベス(ノラ・ジョーンズ)を励ます。だが、やっぱり理由があると思う。それは愛する想いばかりが肥大化し、相手を縛ろうとする執着心にある。メンフィス、ラスベガスと旅の途中で出会う人々も、その反復である。言ってみれば、自分の願う幸福だけしか見ておらず、相手の願う幸福に気付けないでいる。そうした関係は、どこかで破綻するしかないのであろう。

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2008/04/22

人が人を愛することのどうしようもなさ

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:石井隆

虚実わたり。その行き来をする手段として、化粧が用いられているのが興味深い。娼婦メイクを過剰に施せば施すほどに、現実の自分とは遠くなっていく。夫・土屋(永島敏行)の浮気に悩む名美(喜多嶋舞)が娼婦として街に立つことで、見失った心の行き場を見つけていくというプロットはいささか図式的かもしれない。だが、圧倒的な存在感で迫ってくる喜多嶋舞の前には声も出ない。演じる役と私生活が混同していくというとデヴィッド・リンチ監督の「インランド・エンパイア」(2006)を思い出すが、あれほど難解ではなく、最後は収まりよく終わる。

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2008/04/21

チャプター27

製作年:2007年
製作国:カナダ/アメリカ
監 督:J・P・シェファー

自分の存在理由を要人暗殺という形で示そうとする男。「タクシードライバー」(1976)を想起させる内容でありますが、継続性のない思考の流れに見ていて辛いものを感じる。「ライ麦畑でつかまえて」、「オズの魔法使い」、「ジョン・レノン」という三題噺がいかに繋がっていくのか、私の文化的素養では理解に及ばず、結果として、何故ジョン・レノンが殺害されなければいけなかったか、さっぱり分からなかった。

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2008/04/20

ラッシュアワー3

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ブレット・ラトナー

いかにコメディとはいえ、犯罪捜査ものとしては、場当たり的で都合の良過ぎる展開が続き、集中力が途切れがちになってしまう。そんな中、おっと思い目を引き付けられてしまうのは、意外にも出演俳優が豪華であるからだ。マックス・フォン・シドー、イヴァン・アタル。そして、どうしてここにいるのか、ロマン・ポランスキー監督。突然、フランス警察レビ警視役で現れ、びっくりしてしまう。一方、工藤夕貴は、トホホと思わせる殺し屋役で可哀想なくらいであった。やはり本作品の最大の見所は、ジャッキー・チェンと真田広之の夢の対決であろう。この二人の戦いをハリウッド映画で見られるということ。実に感慨深い。

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2008/04/19

フィクサー

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:トニー・ギルロイ

冒頭のシーン。マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)が、もみ消し屋=フィクサーとして腕を振るうだろうと思わせるシークエンスだ。だが、何か微妙に違う。顧客を怒らせてしまうなど、どうも様子が変だ。そして、乗用車爆破に繋がり、一体、この男に何が起きたのか、最初から惹きつけられてしまう。シドニー・ルメット監督の「評決」(1982)を想起させる内容。失意の日々を送る弁護士が、ある訴訟をきっかけに再び真実と正義を取り戻していく再生ドラマである。彼の命を救ったのは、ありのままの自然を美しいと思う心だった。トム・ウィルキンソン、ティルダ・スウィントン、シドニー・ポラックと俳優陣も見ごたえある演技を発揮し、風格ある作品になっている。

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2008/04/18

やわらかい手

製作年:2007年
製作国:ベルギー/ルクセンブルグ/イギリス/ドイツ/フランス
監 督:サム・ガルバルスキ

本作品が胸打つのは、初老の女性マギー(マリアンヌ・フェイスフル)が孫の手術代を稼ぐため、飛び込んだ性風俗店で思わぬ成功を収めたからではない。それはあくまで入り口だ。一つの成功から、それまでの人生を振り捨てて、新たな道を歩み出すところにある。その意味で、孫の手術に同行しなかったのは、実に象徴的だった。

「フル・モンティ」(1997)、「キンキー・ブーツ」(2005)など、一つの因習を打ち破り、新たな飛躍を遂げていく映画が、イギリスを舞台に次々に生み出されている。ドラマに似合う風土というものがあるのだろうか。

お店のオーナー、ミキはどこかで見た顔だと思っていたら、エミール・クストリッツァ監督の「アンダーグラウンド」(1995)で主人公マルコを演じていたミキ・マノイロヴィッチ。とぼけた中に哀感を漂わせる存在感は健在だった。

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2008/04/14

潜水服は蝶の夢を見る

製作年:2007年
製作国:フランス/アメリカ
監 督:ジュリアン・シュナーベル

「自分を憐れむのは、もうやめた」。ジャン=ドミニク・ボビー(マチュー・アマルリック)が、そう心に決めた時、左目の瞬きだけで自伝を書くという奇跡が始まった。名編集長として謳歌していた人生。突然の脳梗塞。身体の自由が奪われたロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)。どれほどの絶望を感じたのか。だが、それでも人生は続いていく。自己憐憫を止めるということは、自分の現実を受け入れるということ。ボビーの左目から映したショットも、臨場感溢れ、大いに惹きつけられました。

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2008/04/10

ファンタスティック・フォー 銀河の危機

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ティム・ストーリー

人は自分の持ち得ないものを果てしなく望む。特殊な能力を身につけてスーパーヒーローとなったスーザン(ジェシカ・アルバ)だが、<普通の生活>を求め、リード(ヨアン・グリフィズ)との結婚に不安を感じる。だが、彼女たちが特殊な能力を有している限り、<普通の生活>を送れるはずもない。どこでそれを認めるか。本作品では、その辺りの心境変化がうまく描かれておらず物足りなかったが、人の不平不満は絶えることのないことを改めて知る。

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2008/04/05

転々

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:三木聡

相変わらず小ネタ満載の三木聡監督作品であるが、前作の「図鑑に載ってない虫」(2007)から短い期間で見たので、それが絶妙の味わいとして感じられる。何より、この二人のように東京の街を歩いてみたくなる。そんな気分にさせてくれただけでも、この映画は秀作であると思う。もう一つ、印象深いのは麻紀子(小泉今日子)である。偽の夫婦写真を飾っているところに、彼女の寂しさが浮かび上がってくる。

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2008/03/31

消えた天使

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:アンドリュー・ラウ

闇を覗けば、闇に飲み込まれる。無私な心は、いつしかズタズタに切り裂かれてしまう。単にリチャード・ギアは悪徳調査官であるわけでない。絶え間ない裏切りの行為を目の当たりにして、人を信じる心を失ってしまっている。まさに執りつかれてしまったように、犯罪行為から目が離せなくなってしまう。彼の非道をなじるのは容易い。それでは、犯罪を未然に防ぐには、どうしたらいいのか。あまりに無力な世界に滲む暗鬼。「インファナル・アフェア」シリーズのアンドリュー・ラウ監督が、ハリウッド進出した作品として記憶しておきたい。

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2008/03/20

エンジェル

製作年:2007年
製作国:イギリス/ベルギー/フランス
監 督:フランソワ・オゾン

「作家としては認めないけれど、一人の女性としては認める」。ハーマイオニー・ギルブライト(シャーロット・ランプリング)にそう言わせるのは、自身が編集者の妻という肩書きしかないことへの無意識的な不満を、エンジェルによって気付かされたからではないか。二人の接点は、さほど設けられていないが、対照的な人物として、異彩を放っている。フランソワ・オゾン監督の系譜であれば、「8人の女」(2002)につながるハリウッド・クラシックを彷彿させる作品であった。ファースト・シーンからラスト・シーンまで、そうしたイメージに重なるショットの連続。美術も素晴らしく、重厚な雰囲気が伝わってくる。

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2008/03/18

アンフェア the movie

製作年:2007年
製作国:日本
監 督:小林義則

テレビドラマを見ていないので、登場人物たちの背景や性格趣向が分からないハンディもある。それでも雪平夏見(篠原涼子) のクールな佇まいこそ最大の魅力だろうと思って見始めるが、あっさり裏切られる。自家用車が爆弾テロに合い、娘の美央(向井地美音)が負傷してから、絶叫型の感情再優先の人物になってしまう。病院テロの攻防戦の顛末も、あまりにお粗末であるが、この主人公の変貌ぶりこそ最大のマイナス・ポイントである。

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2008/03/16

AVP2 エイリアンズVS.プレデター

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:コリン・ストラウス グレッグ・ストラウス

ともに進化したエイリアンとプレデターがアメリカの片田舎で壮絶な戦いを繰り広げる展開するいい。だが、エイリアンの人間への襲撃が同じパターンで何度も繰り返されるので、後半に入ると飽きてしまった。人間側のドラマも厚みがなく、人物造形に深みが生まれない。

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