製作年:2007年

2010/07/19

無防備

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製作年:2007年
製作国:日本
監 督:市井昌秀

“無防備”というタイトルが効いている。無邪気に振舞っている外側でどんな感情がうごめいているのか、分かったものではない。妊婦の千夏(今野早苗)が、いたずら心で律子(森谷文子)にした行為には唖然。心の傷を隠している律子でなくても、あれは激怒ものであるが、このエピソードは一つの誇張である。

どこまで親しくなれば、心の内を見せられることができるのか。そこには普遍的な尺度はなく、人と人の関係性の中から、探っていくしかない。無防備にさらけ出せば、お互い同士が傷付くことになる。

そして、傷付いた関係性は修復できるのか主題も浮かび上がってくる。律子の夫、礼二(西本竜樹)が、また相当に誇張されて存在する。どうしてあれだけ無関心でいられるのか。人と人が一緒に暮らしている意味とは何か。いろんな問い掛けが生まれてくる。

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2010/06/08

ウディ・アレンの夢と犯罪

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製作年:2007年
製作国:イギリス
監 督: ウディ・アレン

イギリス三部作の第一作目「マッチポイント」(2005)と背中合わせのような作品。労働者階級から抜け出そうと成功を夢見るイアン(ユアン・マクレガー)と、「マッチポイント」のクリス(ジョナサン・リス・マイヤーズ)の二人は容易に重なって見える。その夢の顛末が実に対照的。

イアンには夢を共有できない弟テリー(コリン・ファレル)の存在が大きかった。ドラマ自体の展開はきっとこうなっていくだろうという予想通りであったが、語り口が巧妙で大いに惹き込まれてしまう。AがBになるかと予想しているとCになってしまうという驚きの展開が続くのだ。ウディ・アレン監督の演出力に魅了される。

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2010/02/11

カティンの森

製作年:2007年
製作国:ポーランド
監 督:アンジェイ・ワイダ

きっとこの映画を見て、“カティンの森事件”を初めて知る人も多いのだろう。私自身は、そのタイトル自体思い出せないでいるのであるが、何かの映画でこの事件が取り上げられたことがあり、知っておりました。こんな局地的戦争悲劇は、学校の歴史の授業では取り上げられることもなく、一般生活の中では知り得ないことの方が多い。映画を見たり本を読んだりすることは、こうした事実を主体的に学ぶ機会であることでもあり、とても重要であると改めて感じました。

ポーランド映画界の巨匠、アンジェイ・ワイダ監督だからこそ描ける入魂の一作。一つの作品としてはエピソードにまとまりがなく、決して完成度は高くないとは思う。だが、そんなことなど超越し、描いておきたい想いが全編に溢れ出ているように感じる。歴史は繰り返される。だから、忘れてはいけないことがある。映画は作り続けられ、私たちは追い駆け続ける。

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2010/01/26

千年の祈り

製作年:2007年
製作国:アメリカ/日本
監 督:ウェイン・ワン

アメリカで一人暮らしをする娘を心配して、北京からはるばるやって来る父。粗筋だけをたどっていけば、小津安二郎監督の「東京物語」(1953)の亜流かと予想しておりました。シー氏(ヘンリー・オー)とイーラン(フェイ・ユー)の思いは、最初から終盤まで平行線を辿り、重なり合うことがない。二人はアメリカの自由社会と中国の伝統社会の象徴と言ってもよいが、それだけでは終わらない。

問題を抱えていたのはイーランだけでなかった。シー氏にも拭い去れない過去がある。それが為に、コミュニケーション不全が起きていたのだ。こうして物語は別の側面が浮かび上がってくる。やはり映画は見てみないと分からないものだと実感しました。

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2010/01/10

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン

製作年:2007年
製作国:イギリス/フランス
監 督:エドガー・ライト

これは前評判通りの痛快な刑事アクション・コメディ映画であった。まず、その風貌からはエリート刑事と見えないサイモン・ペッグが主人公ニコラス・エンジェルをクールに演じているところからして可笑しい。警察映画マニアの相棒のダニー(ニック・フロスト)と日々行動を共にして、規則一点張りの彼が少しずつ変わっていく展開も良い。

まさか、4代目ジェームズ・ボンドのティモシー・ダルトンが、こんな怪演ぶりを発揮しているところにも唖然とした。あんな最後のショットをよく撮ったものである。ケイト・ブランシェットやピーター・ジャクソン監督のカメオ出演も楽しく、随所に遊び心満載で最後まで飽きさせない作品になっている。

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2009/11/25

僕の彼女はサイボーグ

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製作年:2007年
製作国:日本
監 督:クァク・ジェヨン

タイムトラベルが出来たとして、過去を変えることができるのか。どんな事をしたって歴史の流れを変えることはできないという虚無感を抱かせるか、細かいことなど気にせず過去の禍根を断って、明るい未来を築くことができるのか。それこそ、作者の姿勢が問わる命題だと思う。どれだけのタイムトラベラーがいるのか分からないが、それぞれが過去を干渉してしまえば、大混乱が起きるのは必至なので、歴史の流れは変えられない、変えてはならないという方が正しい道だと思うのであるが、どうであろう。

本作品も未来から来たサイボーグ(綾瀬はるか)が悲惨な事件を止めようと大活躍してしまう物語だ。正確に事件現場や発生時刻が分かっているので、常人を越える能力を発揮し、事件を未然に防いでしまう。それをいいけれど、いささか無邪気過ぎるのではないだろうか。それが映画の夢と言ってしまえばそれまでであるが、あまり感心できなかった。

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2009/10/22

3時10分、決断のとき

製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:ジェームズ・マンゴールド

ベン・ウェイド(ラッセル・クロウ)が最初に登場するシーンが良い。アウトローというイメージにはそぐわない野生の鷹をスケッチしている。そこへ手下のチャーリー(ベン・フォスター)が迎えに現れたため、鷹は飛んで行ってしまう。それだけの場面であるが、この二人の微妙な関係が窺われ、終盤の展開の布石になっていると感じました。ベンにしろ、ダン(クリスチャン・ベイル)にしろ、白黒では割り切れない登場人物たちの性根を巧みに描いているところも良かった。正反対とも言える二人の中である共感を持ち得ていくところがドラマの醍醐味でありました。

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2009/10/20

モンゴル

製作年:2007年
製作国:ドイツ/カザフスタン/ロシア/モンゴル
監 督:セルゲイ・ボドロフ

これでもかというくらいテムジン(浅野忠信)が放浪や捕らわれの身になっているエピソードが続く。どんな苦難が続こうと、最後にはチンギス・ハーンになると分かっているので心配はいらぬのであるが、それでも、目を背けたくなってしまいます。それでいて、なぜあれほどの大帝国を築くことができたのか、その諸事は全く描かれていない。執拗にテムジンの人格形成の経過を追い続けていく。

モンゴルの大自然の風景描写が素晴らしく、冷徹な美しさに目を奪われます。少年時代、アンダ(盟友)の誓いを交わしたジャムカ(スン・ホンレイ)との対決が物語を盛り上げていきます。「蒼き狼 地果て海尽きるまで」(2006)を合わせ見ると興味深い。

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2009/10/12

コレラの時代の愛

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製作年:2007年
製作国:アメリカ
監 督:マイク・ニューウェル

純愛映画というのは数え切れないくらいあるけれど、本作品はその中でも異色中の異色であろう。初恋の女性を待ち続ける男というのは珍しくないかもしれないが、フロレンティーノ(ハビエル・バルデム)は簡単に共感しえない男である。出会いからの日から51年9ヶ月4日と細かく数えているところが薄気味悪いし、いかにフェルミーナ(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)を想い続けていたとしても、亡くなった亭主の葬儀のすぐ後で、求愛に訪れるというのは非常識も甚だしい。それでいて、彼女への純潔を誓いながら、結果的に肉体関係を持った女性のことを事細かくノートに記述しているのだ。

それだけなら陰気でつまらない男のように思えるが、関係を持った女性が622人もいるという。それも娼婦でない一般女性ばかりなのである。それだけの女性を魅了させる男が持ち続けた純愛。イメージのギャップが実にユニークな作品だったと思います。

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2009/09/28

D-WARS ディー・ウォーズ

製作年:2007年
製作国:韓国
監 督:シム・ヒョンレ

90分というタイトな上映時間は好ましいとは思うけれど、これではあまりにも説明不足ではないか。脚本にはあるものの、編集でカットしたのではないかと思えるような唐突感と不自然さが、ずっと付いて回るのだ。その最たるものは、何故、500年に一度の戦いが朝鮮からロセンジェルスに移っていったのか、さっぱり分からないことだ。

勿論、巨大モンスターをアメリカの都市部で暴れさせたいという映像的意図が最優先なのは良く理解できる。それならそれで成り立つような物語を生み出せばいいことだ。古美術店の店主ジャック(ロバート・フォスター)の行動意図もさっぱり不明。サラ(アマンダ・ブルックス)を守るのであれば、イーサン(ジェイソン・ベア)に託すのではなく、自分で戦う方が早いだろうにと、思えてしまう。

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