バベル
製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
本作品が終わったとき、強い違和感を覚える。予告編などの事前情報で、この映画のテーマは言語間の違いなどによるコミュニケーション不全であり、聾唖者のチエコ(菊地凛子)はその象徴であると思い込んでいたからだ。だが、どうも違うような気がしてならない。
自分の思いを相手に伝えられないという悲しみも確かに描写されていて決して誤りではないのであろうが、それよりもイニャリトゥ監督は別の事を訴えかけていたのではないか。
因果応報という言葉がある。過去の善悪の行為が因となり、その報いとして現在に善悪の結果がもたらされること。だが、人の行動は簡単に善悪で分けることができるのか。
アメリア(アドリアナ・バラーザ)が子供たちに語る「私は悪人ではない。愚かなことをしてしまっただけ」という言葉こそ、本作品の主題ではないか。
そして、悪意のない一人の行為が、別の悲劇の始点となるかもしれないし、別の悲劇の終点となるかもしれない。ヤスジロー(役所広司)が猟を趣味としてライフルを所有していたこと。そこから、様々な悲劇が生まれ、めぐり巡って彼に救済をもたらす。
一つの悲劇に囚われるな。悲劇はすべて自分の行為が原因で生まれるわけではない。起こってしまったことは、一つの宿命だと思い、受け入れるしかないのである。そして、そこから何をすべきか考えることが大切であると思う。
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