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2007年3月

2007/03/23

9 Songs ナイン・ソングス

製作年:2004年
製作国:イギリス
監 督:マイケル・ウィンターボトム

性愛とロック・コンサートを交互に描きながら、ひとつのカップルの遍歴を綴っていくアイディアなら、特に驚かない。本作品の特徴は、そこに南極大陸のシーンも加えて、三角形の構図となっていることだ。

ここで気になるのは、何故、南極であるということだ。雪氷に包まれた極限の世界は、愛の追想を感じる場として絶妙な設定であると思う。彼女の匂いや肌のぬくもり。彼女と一緒に過ごした9つの歌。彼女を失った喪失感。それらが荒涼とした風景の中で鮮明に浮かび上がってくる。

スキャンダラスな描写で話題となった作品であるが、こうしたところにマイケル・ウィンターボトム監督の詩情を感じる。辛くて甘い余韻が残る。

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2007/03/20

プラダを着た悪魔

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:デヴィッド・フランケル

「仕事だから仕方がない」という言葉を吐くとき。自分の仕事を肯定的にとらえているか、否定的にとらえているかで、意味合いは違ってくる。

仕事ができればできるようになるほど、プライベート時間が侵食されていく。その時に、家族や恋人に対してどういう心持ちで話せるのかが問われる。積極的に説得できるのか、単なる言い訳に終わるのか。

アンドレア(アン・ハサウェイ)は恋人に対して「仕方がない」と繰り返すが、言い訳にしかならない。彼が別れを切り出したのは、自分と過ごす時間が減ってしまったことと共に、彼女の否定的な態度が嫌になってしまったのではないだろうか。

アンドレアはミランダ(メリル・ストリープ)の私生活のマイナス面を知って、自分の将来を感じてしまった。それは、自分の本当に望む生活なのかと自問する。そして、彼女はひとつの決断を下す。そうして、自分の人生を肯定できるようになったのだ。

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2007/03/16

トゥモロー・ワールド

製作年:2006年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:アルフォンソ・キュアロン

セオ(クライヴ・オーウェン)が犬や猫などの動物達に好かれている場面が反復されている。子供を亡くした痛手から、生気をなくしてしまったように生活を送っているセオであるが、彼の心の中には弱者から慕われるような義侠心が秘められているのであろう。

別れた妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)から秘密裏に渡航証明書を入手して欲しいとの依頼することも、キーが妊娠していることを率先して打ち明けることも、同様な理由からではないか。セオは弱者を守る守護神を宿命づけられていたのだろう。

セオはそんなことを自覚していない。ジュリアンの依頼を受けるにしても、お金のためという表向きの理由が用意されていたので、迷惑である振りをしても容易に実行することができたのだ。そこには、崩壊してしまったジュリアンとの生活を取り戻したいという想いが込められていた。

だが、そんな甘い夢想は無残にも打ち砕かれてしまう。果たして、「ヒューマン・プロジェクト」という団体が希望を託するものに値するかどうか、本作品の中でははっきりと描かれていない。

そこに希望がある限り、暗澹する世界にも未来があると信じてセオはキーの守護神として逃避行を続ける。

テロ。不法移民。貧富の格差。今の時代の進行形がここにある。

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2007/03/14

ビッグ・リバー

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:舩橋淳

国籍の違う男女3人が、ふとした偶然から一緒に旅を続ける。その中で、哲平(オダギリジョー)だけが、何の束縛もなく彷徨い続けている。サラ(クロエ・スナイダー)から求愛を拒んでしまうのは、束縛感を嫌ったからであろう。

逆に、家を出てしまった妻を追いかけてパキスタンからアメリカにやってきたアリ(カヴィ・ラズ)は、束縛感を求めているのである。

彼らを助けるサラは、新しい何かを始める勇気がもてないまま、行き場のない感情に苛まれている。

彼らの対比が実に興味深い。三人の価値観のぶつかりあいが、我々に何が大切かを問いかける。旅は人生の暗喩である。

アメリカの風景描写も心地良く、ロード・ムービーの詩情豊かな佳作であった。

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2007/03/11

家の鍵

製作年:2004年
製作国:イタリア/フランス/ドイツ
監 督:ジャンニ・アメリオ

ラストシーンが重く残る。傷害を持つ子供と一緒に暮らしていくということは、一時の情愛や同情からでは続いていかない困難が待ち受けているだろう。15年の時間を経て、主人公ジャンニ(キム・ロッシ・スチュアート)の涙は、その苦難の道を歩んでいこうとする覚悟であった。

それを際立たせるのは、病院で一緒になった同じ障害児を持つ女性ニコール(シャーロット・ランプリング)の存在だ。彼女の述懐は、彼の今後を予兆するものである。

しかし、気になるのは、生まれたばかりの乳児を抱えた妻の存在である。彼は血のつながった息子であるから、ある種の苦悩は仕方なく受け入れなければならないであろう。だが、一度も会ったこともなく、子育てに忙殺される時期に、彼を引き取るということに同意するのであろうか。

そのことも大いに心配のまま、映画は終わっていく。

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2007/03/06

手紙

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:生野慈朗

本作品で最も感銘を受けた場面は、武島直貴(山田孝之)の勤務する会社の会長、平野(杉浦直樹)が彼に語りかけるところである。

「犯罪者の家族への差別は当然なんだ」という言葉は、ありふれた差別反対の話よりも、ずっと含蓄のあるものであった。差別の起こる要因は恐怖心からなのである。だから、差別のない場所を探すんじゃなく、君は今ここから始めるんだという話にも重い説得力がある。

しかし、直貴がその意味を真に理解するまでには至っていない。物事の真理は傍観者には簡単に分かったような気がするが、現状に苦しむ者の心に染み込むには時間がかかるものなのであろう。

様々な試練を乗り越えて、桜並木を直貴が家族で歩いていくラストシーンが力強く残る。

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2007/03/01

デスノート the Last name

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:金子修介

いかにして月(ライト/藤原竜也)はL(エル/松山ケンイチ)を抹殺しようとするか、いかにしてLは月がキラであることを断定できるのか。はっきりとこの攻防が主題となっている。デスノートにまつわる設定の興趣は前編で尽きていて、本作品では、その攻防の鍵を握る道具として使われている。

全体的に俳優陣は重量感ある演技に終始していてリアルさに欠ける部分もあるが、ミステリーとしての趣向が面白く、私はさほど気にならない。随所に意表を付く展開が盛り込まれていて、飽きることはなかった。

常に菓子を食べているLであるが、場面ごとに食べている菓子は違っているのだ。それが軽いユーモアを漂わせ、いいアクセントになっている。

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