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2007年1月

2007/01/31

ココシリ

製作年:2004年
製作国:中国/香港
監 督:ルー・チューアン

どうしてここまで闘うことができるのか。鑑賞後に、そんな呟きが残る。密猟団から希少なチベットカモシカを守るため組織された民間パトロールの隊員たち。全くの無給であるボランティア活動に、文字通り命を賭けてのぞんでいく。

それは密猟団との直接的な闘いだけでなく、過酷な大自然の脅威にもさらされる。僅かなミスによって失われていく命。流砂に飲み込まれていく場面には震撼した。そうしたところへ、彼らは乗り込んでいくのだ。

名誉や報酬を得るためでない。使命感の命ずるままに。彼らの犠牲によって状況は改善されたという。我々の常識を超えるその壮大な使命感の前に、ただただひれふすしかない。

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2007/01/24

シュレック2

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:アンドリュー・アダムソン
    ケリー・アズベリー
    コンラッド・ヴァーノン

「私は結婚して大きく変わったのに、あなたは何も変わろうとしない」。フィオナ姫の台詞が胸に突き刺さる。少なくとも現在の日本において、ほとんどの女性は結婚することによって、苗字が変わったりするなど、多大な負担を強いられるのは間違いない。

その痛みを男性側はどこまで理解しているのか、ということである。知識としては分かっていても、感情面では理解していないのが本当のところであろう。唖然としたシュレックの顔が自分と重なる。

そこからのシュレックの行動が本作品の主題だ。本来の自分であることは心地良いことであるが、愛するもののためにはその心地良さを捨てる覚悟が必要なのではないか。全てを変えるのではなく、出来るところから少しずつ歩み寄っていけばいいと思う。

前作はおとぎ話の痛烈なパロディになっており、意外な結末に唸らされた。だが、本作品はどこか予定調和のような感じがして、新味に乏しかった。楽しみにしていたアントニオ・バンデラスの「長ぐつをはいたネコ」も、冷酷非道な暗殺者という設定のわりには、簡単にシュレックになびいてしまって、アレレと思ってしまう。その後もたいした見せ場もなく失望が残る。

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2007/01/19

大いなる休暇

「大いなる休暇」★★★
(DVD)2003年カナダ
監督:ジャン=フランソワ・プリオ
脚本:ケン・スコット
出演:レイモン・ブシャール デヴィッド・ブータン
   ブノワ・ブリエール ピエール・コラン

詳しくはこちらで・・・
大いなる休暇@映画生活

本当にそれで良かったのか。そういう思いが残り続ける。仕事のない島で生活を続けるために、ジェルマン(レイモン・ブシャール)たちは工場を誘致しようと悪戦苦闘する。医師を確保するために、常軌を逸した嘘を突き通す。

そのドタバタぶりが笑いを産むのであるが、そもそも工場誘致が正しい解決策であったのか。無論、直近では職を得て、安定した生活を送ることができよう。

だが、10年、20年先はどうなるであろう。企業というものは業績次第で地元の意向など考えなく、簡単に工場の閉鎖や移転を行ってしまうものだ。非情と言われるかもしないが、企業とはそういうものである。誘致を行う際には、そのことを充分に考えなければならないが、彼らにそうした視点は感じられない。

それをおとぎ話のようにめでたし、めでたしとして終わっていいのだろうか。彼らの行った苦労が、すぐに無駄になりそうで、心が落ち着かない。

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2007/01/15

夜のピクニック

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:長澤雅彦

長澤雅彦監督の前作「青空のゆくえ」(2005)と印象が重なる。多部未華子や西原亜希など出演者が共通していることもあるが、期限間近までに(「青空のゆくえ」ではアメリカ出発まで、本作品では歩行祭終了まで)、自分の秘めた想いをいかにして相手へ伝えようとするか葛藤するところが共通している。

伝えたいのだけど、その手段が見つからず、せっかく話すチャンスが訪れても何も話せない焦燥感。見る者に切なく伝わってくるところが共に良かったです。

アメリカの行ってしまった杏奈(加藤ローサ)のおまじないなど、効果的な仕掛けも用意されているが、貴子(多部未華子)の空想をアニメーションなどで表すことはあまりに作為的で好みではない。彼女の過去をフラッシュバックで見せることにより、その苦悩が充分に伝わってくるからだ。

もっとも印象深いのはゴールシーン。ゴールの瞬間、彼らの表情からカメラが動き、ゲートの上部に書かれていた「START」の文字が映る。彼らの歩行祭はこれで終わったのかもしれないが、同時に別の何かが始まったことを示すショットであったと感じる。

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2007/01/14

フラガール

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:李相日

ドラマ展開は特に目新しいものでない。「がんばれ!ベアーズ」(1976)などのスポーツ映画の黄金パターンを踏襲し、一つの目標に向かっていく内に教える者も教えられる者も、人生の挫折から再生していく話だ。

「ブラス」(1996)、「遠い空の向こうに」(1999)、「スウィングガールズ」(2004)など思い浮かべる作品も多々ある。だが、そうした既視感を越えて、切々と胸に打つのは、細部の構成が秀逸だからだ。

特徴的なのは、様々な対立軸が巧妙に張り巡らされていること。紀美子(蒼井優)とまどか(松雪泰子)。まどかと洋二朗(豊川悦司)。紀美子と千代(富司純子)。などなど、挙げていけばきりがないほど、登場人物たちはそれぞれの局面で激しく対峙することになる。

その生々しい感情のやりとりをユーモアで優しく包んでいるところもいい。様々な葛藤を抱え、それぞれが少しずつ前に進んでいく。その対立を乗り越えていくポイントでダンスが絶妙に使用されているところが素晴らしい。

その集大成がクライマックスでの紀美子のソロダンスであったと思う。「でれすけ」など方言の響きも良かった。

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2007/01/13

ゲド戦記

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:宮崎吾朗

あまりにも父・宮崎駿監督がこれまで作ってきた作品と重なるディティールの数々。しかも、父親殺しの場面から映画は始まっていく。本作品の製作に大反対しているという宮崎駿監督の報道もあり、最初から父と息子の対立軸が鮮明になって浮かび上がってくる。

宮崎吾朗監督のインタビューを読めば、これらのことは明らかに確信犯である。かなり否定的な見方をされることも承知していたと察する。それでも製作しようとしたのは何故か。

自分の影に怯える少年アレンという主人公にあるのではないかと推測する。彼が苦痛に顔を歪めるシーンが多用されているが、これまでのジブリ作品にはなかったものだ。宮崎吾朗監督はこの少年に現代と重なる普遍性を見出したのではないか。

そのモチーフはいいにしても、ドラマ展開があまりうまくない。終盤のクモの館での攻防も、これまでの鬱屈を一層させるような戦いになっていない。そもそも、膨大な小説の一部を映像化しているため、それまでの世界観や歴史が全く分からないのだ。

それを、推測しながら映画を追っていくことにも、だんだん疲れていってしまう。ハイタカ等の人物造形も、深みに欠ける。一篇の劇映画として完成度が低いことを否定できない。

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2007/01/05

メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬

製作年:2005年
製作国:アメリカ/フランス
監 督:トミー・リー・ジョーンズ

こんなはずではなかった。マイク(バリー・ペッパー)とルーアン(ジャニュアリー・ジョーンズ)の若き夫婦が、口にこそ出さないが、お互いの胸で響いている言葉はそうではないか。

都市部からメキシコ国境の寂しい街に移り済んだ二人は、少しずつ気持ちに翳りが生じてくる。そこで起こった悲劇。マイクにとってはピート(トミー・リー・ジョーンズ)に拉致される前から彼は不幸への道を突き進んでいたように感じる。

どこで間違ってしまったのだろうか。結婚したこと、国境警備隊の仕事を選んだこと、家庭生活を大切にしてこなかったこと。

それは、殺害されたメルキアデスにも感じる。埋葬への旅の果てにピートが知る事実によって、彼の虚しい生涯が鮮明に浮かび上がってくる。それがなんとも哀しい。

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2007/01/03

2006年度ベストテン

    外国映画
 1位 硫黄島からの手紙
 2位 父親たちの星条旗
 3位 ユナイテッド93
 4位 シリアナ
 5位 ナイロビの蜂
 6位 ホテル・ルワンダ
 7位 戦場のアリア
 8位 ミュンヘン
 9位 SPIRIT
10位 クラッシュ

日本映画
 1位 武士の一分
 2位 花よりもなほ
 3位 ゆれる
 4位 フラガール
 5位 手紙
 6位 かもめ食堂
 7位 間宮兄弟
 8位 シムソンズ
 9位 博士の愛した数式
10位 嫌われ松子の一生

    裏ベストテン(娯楽性を重視した作品)
 1位 007/カジノ・ロワイヤル
 2位 トゥモロー・ワールド
 3位 16ブロック
 4位 トランスポーター2
 5位 Vフォー・ヴェンデッタ
 6位 デスノート the Last name
 7位 ダ・ヴィンチ・コード
 8位 GOAL
 9位 カサノバ
10位 RENT/レント

「お前は敵を知っているのか」

「硫黄島からの手紙」の中で西中佐が部下に問い掛ける。奇しくも「出口のない海」でも戦争に向かう息子へ父親がそう語りかける場面があった。

戦争とは何か、何故、戦わなくてはいけないのか。2006年はその事を考えさせてくれる秀作が多く、それらを中心にベストテンを選びました。

ひとつの価値観に縛られて盲目的に敵を憎むことの愚かしさ。戦う前に「自分は敵を知っているのか」のかと自問することで、どれだけの悲劇を防げたのであろうか。

クリント・イーストウッド監督の硫黄島2部作は、日米双方の視点から硫黄島の戦いを描くという画期的な試みによって、どちらか一方が善であり、どちらか一方が悪であるというような単純な線引きをすることなどできないことを鮮明にしました。そうしたことを知らずに、双方が多大な犠牲を払ってしまったことを忘れないでいたい。

なぜ、敵の姿を憎しみで隠そうとするのか。その方が体制側には都合の良いことなのだ。戦争とは善悪の戦いではなく経済的側面の方が強い。戦えば得をするから。戦わなければ損をするから。それだけのことである。それは国家権力の損得勘定であり、戦場に駆り出される一般庶民には何の関係もないことだ。それをごまかすために、様々な誤魔化しが行われる。

「ホテル・ルワンダ」では、敵を人と思わず害虫であると見なしたとき、恐ろしい虐殺が起きてしまうことを教えてくれた。

「戦場のアリア」では、徹底的に敵を憎むように子供たちを洗脳していく冒頭シーンが恐ろしい。憎むべき敵であろうとも、クリスマス休日を一緒に過ごしてみれば、同じ人間でしかないことに気付いてしまう。それからは、敵とは見なさず仲間になってしまうのだ。

しかし、時に人は戦わなければならない状況に置かれる。人としての尊厳を守るため、相手の横暴に屈しないため、大切なものを残そうとするために、戦いを選ばなければならない。

「ユナイテッド93」では、自らの運命を知ってもなお、ハイジャック犯に屈せず戦い続ける乗客たちの姿が感銘深い。

「シリアナ」では、何故自爆テロが起こってしまうのか、その克明なディティールに圧倒された。自国の利益確保のために実施される陰謀が、巡り巡って我が身に跳ね返ってしまう。

だが、その戦いが復讐の目的であれば、不毛なことでしかない。殺戮は殺戮しか生まないのだ。それらを「ミュンヘン」、「SPIRIT」、「花よりもなほ」等から学ぶ。

「知らない方が良かっただろうか。いや、そうではない」

この台詞に深い感銘を受けた「武士の一分」。事実を知れば悩み苦しむことになるかもしれない。だが、知らないでいる事は、より大きな悲劇を生む要因ともなるし、克服すべき手腕を鍛錬する機会を奪うことにもなるのだ。心して、物事に当たろう。

2006年は12月に「マルチプレックスシアター盛岡フォーラム」が開館されたことで記念的な一年となった。旧盛岡フォーラムで最後に観た「武士の一分」を邦画の1位に、新盛岡フォーラムで最初に観た「硫黄島からの手紙」を外国映画の1位に選出したのも、その感傷的想いによるものである。

2006年は劇場で160本、DVD、GyaO等で89本の鑑賞となりました。映画館で観る本数が増えた分、DVDが落ちてしまいました。来年も盛岡フォーラムでの公開本数が増える見込みのですので、頑張って追い掛けていきたいと思います。

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