製作年:2006年

2008/07/02

私たちの幸せな時間

製作年:2006年
製作国:韓国
監 督:ソン・ヘソン

一刻も早く死にたいと願う死刑囚。裕福な家庭に育ちながら、3度も自殺未遂を繰り返す元歌手。この二人が、週一回の面会を重ねる中で次第に心を通わせていくドラマは定番的とは言え、心を揺さぶるものだ。だが、どうしても気になる点があり、素直に感動できなかった。そもそもユンス(カン・ドンウォン)が犯行を起こす動機となった重病の恋人は、その後、どうなってしまったのか。ユンスは彼女に対してどう思っているのかも、全く触れられていない。それでいて、ユジョン(イ・ナヨン)と過ごす時間が、もっとも幸せだったと言われても、どうも釈然としない。

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2008/06/30

ヴィーナス

製作年:2006年
製作国:イギリス
監 督:ロジャー・ミッシェル

2002年にアカデミー賞で名誉賞を受けたピーター・オトゥール。それでも本作品で同賞の主演男優賞にノミネートとされ、まだまだ現役であることをアピールしてくれました。それが嬉しかったです。女性に執着をみせる老人の悲哀というテーマであるが、ピーター・オトゥールによって、とてもユーモラスで軽やかな映画になっている。名優の余裕を感じる。

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2008/06/18

酒井家のしあわせ

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:呉美保

普通ならそんな決断しないであろう。酒井正和(ユースケ・サンタマリア)の家を出た理由が明らかになると、唖然としてしまう。無論、こんな非常識な男はいないだろうと、断然してしまうのは簡単だ。しかし、人の考え方というのは、それぞれの価値観と経験から生まれるものである。ここで、思い出されるのは妻、照美(友近)の実家に行ったときの逸話である。親子喧嘩が激しくなった時、正和は突然、笑い転げてしまうのである。そこには、早く両親を亡くした彼の屈折した哀しさがうかがえるけれど、こんな反応をする男は珍しい。そういう人が、真剣に悩み、家族のためだと自分で下した判断だ。批判するのは容易いが、心動かされるものがある。

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2008/05/29

アドレナリン

製作年:2006年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:ネヴェルダイン&テイラー

よくぞここまで考えつくものである。ジェイソン・ステイサムの前作「トランスポーター2」(2005)も奇抜なアイディアが満載であったが、本作品も相当なものだ。それをシリアスな表情なまま、テンポ良くこなしていくので、余計にそのギャップが可笑しい。アクション映画というより、コメディ映画として秀作であった。

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2008/05/18

蒼き狼 地果て海尽きるまで

製作年:2006年
製作国:日本/モンゴル
監 督:澤井信一郎

何故、テムジン(反町隆史)は父のように、息子ジュチ(松山ケンイチ)と接することができないのか。実子ではないかもしれないという誹謗中傷を幼年期から受け続けた彼なら、その気持ちは痛いくらいに分かるのではないか。そのように他人からは思えることでも、当人にとっては簡単でないこともあるのだ。ラストに息子への思いを述懐するシーンも設けてあるが、それも本音ではないと感じる。自分と同じ境遇になってしまった子に、優しい言葉をかける術を見出さなかったのではないか。意思疎通が図れなかったことから、悲劇は生まれる。

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2008/05/09

愛の流刑地

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:鶴橋康夫

外の風景が登場人物の上に映し出し、その心情を表現しようとす趣向の凝った映像は見応えがありました。それでも、ドラマの部分は物足りなさが残ります。「僕は選ばれた殺人者だったのです」という村尾(豊川悦司)の述懐も、最初から映像で見せていて分かっていること。もう少しミステリー的興趣を施しても良かったのではないか。これが結論かと思うと、興醒めでした。もしかすると編集でカットされたのかもしれませんが、検事の織部(長谷川京子)や、冬香(寺島しのぶ)の夫(仲村トオル)、友人である祥子(浅田美代子)のエピソードも中途半端で、歯切れが悪いものであった。

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2008/04/17

王妃の紋章

製作年:2006年
製作国:中国/香港
監 督:チャン・イーモウ

いまどき、これほどの絢爛豪華な美術セットとモブシーンを撮れるのは、世界広しと言えどもチャン・イーモウ監督ぐらいしかいないであろう。この迫力はやはり映画館で見てこそ。大いに胸揺さぶられる。その一方で、王家の愛憎関係が、今ひとつ理解できず、陰謀と裏切りの物語に入り込むことができなかった。どうしてこれほどまでに、王妃(コン・リー)は国王(チョウ・ユンファ)を憎むのか。二人の確執が激しいだけに、その出発点が分からず、戸惑ってしまう。

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2008/04/12

僕のピアノコンチェルト

製作年:2006年
製作国:スイス
監 督:フレディ・M・ムーラー

「迷ったら、大事なものを手放してみる」。こんな風に人生の道を示唆する祖父(ブルーノ・ガンツ)が素晴らしい。天賦の才能に目を奪わせてしまった母。その過剰な期待に息が詰まりそうになる天才少年ヴィトス。その孤独を受け止める祖父がいてくれることが、どれだけ少年の救いになったことだろう。そして、少年が選んだ一つの決断。そこからの展開が出来すぎという感じもしないではないが、飛行機とヴィトスの成長を結びつけたところはなかなか秀逸だった。

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2008/04/09

君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956

製作年:2006年
製作国:ハンガリー
監 督:クリスティナ・ゴダ

独立を求め蜂起する者たちと、武力を用いて鎮圧しようとする者たち。2008年3月のチベット騒乱のように、今なお独立運動の流血は終わらない。弾圧すれば全世界から批判を受けることが分かっていても、当局が銃を向けるのは何故か。経済的支配を失うわけにいかないからである。利権が絡むからこそ、争いは続く。こうしたことを、ヴィキ(カタ・ドボー)たち大学生たちはどれだけ分かっていたのであろうか。ただデモをすれば、ただ自由を叫べば、手に入るほど独立は甘いものではない。ハンガリーが共産党独裁から抜け出せるのは、この動乱から30年以上もかかるのだ。若者たちはナイーヴであったと感じてやまない。

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2008/04/02

ONCE ダブリンの街角で

製作年:2006年
製作国:アイルランド
監 督:ジョン・カーニー

極寒の冬には、さすがに少ないが、盛岡の街角でも、ギターを持って熱唱している若者たちがいる。彼らにも、様々なドラマが秘められていのだろうなぁと、本作品を見ていて思う。優れた映画というものは、ファースト・シーンとラスト・シーンに力強い描写を残すものであるが、この映画もそうだ。小銭泥棒を追いかける男の(グレン・ハンサード)の躍動感。ピアノを弾きながら窓の外を見つめる女(マルケタ・イルグロヴァ)の余韻残る瞳。劇中の歌曲も素晴らしく、サントラ盤が欲しくなります。

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2008/03/28

22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:大林宣彦

優しさと自信のなさは、全く違うものである。彼女の幸福のために身を引くという言い訳は、望まぬ結果を見たくないという恐怖以外の何物でもない。一歩前に踏み出せない男の前に現れた女性。そのシーンが、まるでホラー映画のようなタッチで描かれているのが興味深い。「22才の別れ」を歌う女は、男にとってまさに幽霊であった。過去の逡巡を乗り越えられることができるのか。彼の過去と重なる若きカップルの姿から、再生の道が浮かび上がる。

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2008/03/24

4分間のピアニスト

製作年:2006年
製作国:ドイツ
監 督:クリス・クラウス

最後のコンテスト・シーンが圧巻である。果たして、ジェニー(ハンナー・ヘルツシュプルング)は、どんな演奏を行うのか。固唾を飲んで見守るが、果たして予想を裏切るものであった。それまでの生涯の鬱積をすべて吐き出すような激しさ。そして、胸に焼き付く幕切れ。このために、様々な布石が打たれていたのだ。ありきたりな再生物語に収まらない、強烈な印象を残す。

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2008/03/22

キャンディ

製作年:2006年
製作国:オーストラリア
監 督:ニール・アームフィールド

ありきたりなサスペンス映画よりも、手に汗握るハラハラ感を味わった。キャンディ(アビー・コーニッシュ)の妊娠を機に、本気になってドラッグを止めようとするダン(ヒース・レジャー)。その禁断症状に苦しみながら、何とか耐えようとする。その場面が堪らなかった。やめられるときには、やめようとしない。やめたいときには、やめることができない。キャスパー(ジェフリー・ラッシュ)の、この台詞も重々しく胸に残る。

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2008/03/12

その名にちなんで

製作年:2006年
製作国:アメリカ/インド
監 督:ミーラー・ナーイル

一度、なくした命。不人情な息子ゴーゴリ(カル・ペン)の振る舞いに対して、母親アシマ(タブー)ほど、アショケ(イルファン・カーン)が怒りを見せないのは、その後の人生を、すべて贈り物と感じているからだろう。他者に対して、過剰な期待はしない。それはそれで、潔い生き方であると感じる。

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2008/02/22

アフター・ウエディング

製作年:2006年
製作国:デンマーク-スウェーデン
監 督:スザンネ・ビア

かなり目のアップ・ショットが多用されている。そのことによりミステリアスな雰囲気が高まる。果たして、偶然の再会を演出した資産家の意図は何なのか。過去の自分、そして、現在の自分を探ろうとする登場人物たちの心情が伝わり、スリリングな臨場感を味わう。

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2008/02/20

ウェイトレス おいしい人生のつくりかた

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:エイドリアン・シェリー

どこか現実離れしているようなドラマ展開であるけれど、ジェンナ(ケリー・ラッセル)と嫉妬深い夫アール(ジェレミー・シスト)の関係が興味深い。反発したい、逃げ出したいと思いながら、最後のところで服従してしまう。そんな関係、ぶち壊してしまえと見る者は感じるが、なかなかそうできない人がたくさんいるのでしょうね。変える勇気をどこから得るのか。それが本作品のテーマであると感じる。

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2008/02/18

ブラック・スネーク・モーン

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:クレイグ・ブリュワー

鎖に繋いで監禁されてしまう若い白人女性。そうしたエピソードが強調されているが、心の琴線に触れる人生再生ドラマであった。レイ(クリスティナ・リッチ)を更正させようとするラザラス(サミュエル・L・ジャクソン)の人物造形がいい。単に敬虔な男というだけでなく、妻に逃げられ、彼自身も自暴自棄になっているからだ。彼女に語りかける言葉は、鏡に反射するように自分自身へ響く。

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2007/12/25

グッド・シェパード

「グッド・シェパード」
製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ロバート・デ・ニーロ
出 演:マット・デイモン アンジェリーナ・ジョリー
   アレック・ボールドウィン タミー・ブランチャード

やはり3時間近い上映時間に対して、長過ぎるとの批判を様々なレビューで見受けられる。だが、私は全くそう感じなかった。息の詰まるような緊迫感。秀逸な人物造形。抑制の効いた感情表現。久々に風格ある大作を満喫した思いである。

製作総指揮にフランシス・フォード・コッポラの名前があるのが関係あるかないか分からないが、「ゴッドファーザー」を想起させるドラマであった。純真な青年が謀略の裏社会に飲み込まれ、幾度の危機を乗り越えながら、その世界の頂点に上り詰める。家族とも疎遠となっていき、身近な人間から裏切りを受ける。その苦しさや痛みを心に裏側に隠し、冷徹に仕事を片付けていく。

望んだ人生ではけっしてないのだが、元に戻せるすべもなく、哀しみと共に前に進んでいくしかない。そうした主人公のエドワードをマット・デイモンが期待以上の好演。マイケル・ガンボン、ウィリアム・ハート、ジョン・タートゥーロら豪華な脇役陣も見応えがあった。

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2007/10/11

プロヴァンスの贈りもの

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:リドリー・スコット

どうして疎遠になってしまったのか。毎年夏になると訪れていたヘンリーおじさん(アルバート・フィニー)のいるプロヴァンス地方なのに、いつの間にか行かないようになっていた。特に争いがあったということでもなさそうである。

成長とはそういうものなのであろうか。日々の生活が忙しくなり、昔のことを思い出す余裕もなくなっていく。振り返るのは訃報の時だけに。こうしたことは、ある種、仕方がないことかもしれない。

ロンドン金融界で豪腕トレーダーとして生きるマックス(ラッセル・クロウ)が、思い出のぶどう園を訪れたことから人生を見つめ直すという定番的なドラマである。

意外に感じたのは、ヘンリーの遺児かもしれないクリスティ(アビー・コーニッシュ)の存在。遺産相続に絡んだコメディ展開の起点でもあるが、それだけではない。マックスが無垢なる心を取り戻す起点にもなっている。

のちに恋人となるファニー(マリオン・コティヤール)との衝突からだけにしていないところに、作品の厚みを感じさせます。

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2007/10/06

それでも生きる子供たちへ

製作年:2006年
製作国:イタリア/フランス
監 督:
メディ・カレフ「タンザ」
エミール・クストリッツァ「ブルー・ジプシー」
スパイク・リー「アメリカのイエスの子ら」
カティア・ルンド「ビルーとジョアン」
ジョーダン&リドリー・スコット「ジョナサン」
ステファノ・ヴィネルッソ「チロ」
ジョン・ウー「ソンソンとシャオマオ」

ユニセフと国連世界食糧計画による、世界各国の子供たちの過酷な現実を個性派監督たちの視点で描き出したオムニバス・ドラマ。

偶然かもしれないが、第1話の「タンザ」と第7話の「ソンソンとシャオマオ」のラストシーンが学校であったことに深いメッセージを感じる。子供たちが学校へ行けるということは、当たり前のようで当たり前でない。

様々な事情によって学校に行けない子供たちが世界にはたくさんいるということ。無論、そうした事実を知らない訳ではなかったが、こうして映画の中で見せられると、改めて衝撃を受ける。

では、学校に行ける先進国の子供たちが、みな幸せなのか。そうでもないということをスパイク・リー監督は「アメリカのイエスの子ら」で描く。日本でもそうであるが、陰湿ないじめもあって、学校は子供たちの安住の地では決してないのだ。

戦争、貧困、差別。様々な国の事情によって、子供たちは苦しんでいる。それでも、彼らは生き続けようとする。その真摯な姿が胸を打ちました。

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2007/09/21

レディ・イン・ザ・ウォーター

「レディ・イン・ザ・ウォーター」★★★★
2006年アメリカ
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:ポール・ジアマッティ
   ブライス・ダラス・ハワード
   フレディ・ロドリゲス ジェフリー・ライト

こうして見てくるとシャマラン監督は一貫して同じ主題を作り続けていると感じさせる。この世の中は見た目どおりではなく、真実が隠されているということ。常にどんでん返しを注目されるが、主人公の真実の気付きを強調するものであろう。

大切なのは、その事によって、辛い事件の痛手から立ち直れなかった主人公が救済されていくことになるのだ。清々しい気分が残るのはそのためである。

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2007/09/17

ミス・ポター

製作年:2006年
製作国:イギリス/アメリカ
監 督:クリス・ヌーナン

本作品は、どういう視点で見るかによって評価が分かれるだろうと思う。無論、ピーターラビットを生んだ女流作家ビアトリクス・ポター(レニー・ゼルウィガー)の半生を描いた伝記映画であることは変わりない。

だが、そうしたドラマを期待していると、あまりに平坦な出来栄えである。また、20世紀初頭の時代、女性の自立ドラマの側面もあるのであるが、結婚を迫る母との対立もあるとはいえ、さほど大きな障害となっていない。

どうも、淡々と物語が進んでいき、ある種の不満を感じる。見方を変えれば、本作品の主題がそうしたところにないからではないか。

ビアトリクスの生涯を見て感じ取るのは、自分の生きる場所を自分で選ぶということの大切さである。彼女にとって、それはロンドンではなく湖水地方であった。その景観を守るために、自分の財産を惜しみなく使っていく。

環境保全という大儀もあるだろうが、それよりも自分のためということが大きいだろう。彼女が清々しく見えるのはそのためだと思う。

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2007/09/12

紙屋悦子の青春

「紙屋悦子の青春」★★★★★
2006年日本
監督:黒木和雄
原作:松田正隆
出演:原田知世 永瀬正敏 松岡俊介
   本上まなみ 小林薫

同じ戯曲が原作であった黒木監督の前作「父と暮せば」(2004)よりもさらに、舞台と登場人物を限定し、濃密な世界となっている。

それでいて、息苦しく感じられないのは、台詞のやりとりが柔らかくて微笑ましく、それでいてテンポ良く進められているからだろう。

対照的にオープングから何度も挿入されている病院の屋上の場面は、粗雑物を省き、この世のものでない空間を感じさせる。まるで彼岸へ渡るまでの休憩所であるようだった。

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2007/09/11

魔笛

製作年:2006年
製作国:イギリス
監 督:ケネス・ブラナー

恋がうまく行かず、その絶望のあまりにロープで縊死しようとする場面が、パミーナ(エイミー・カーソン)とパパゲーノ(ベンジャミン・ジェイ・デイヴィス)の二人によって反復されている。それが、本作品の隠された主題に繋がっているのではないだろうか。

夜の魔女(リューボフ・ペトロヴァ)とザラストロ(ルネ・パーペ)の戦いに巻き込まれた主人公タミーノ(ジョセフ・カイザー)であるが、それは希望と絶望との戦いであるようにも取れる。彼に課せられた試練は、誰の心の内にある絶望をいかにして乗り越えていくためのものである。

希望と絶望は表裏一体のもので、それぞれの心の中での攻防は、微妙なバランスの上で戦っている。希望が勝利するより、些細なことで絶望が勝ってしまうことが多い。その例をパパミーナたちが示しているように感じる。

だが、いかに絶望が優位に立とうとも、完全に希望を打ち砕くことはできない。問題は、絶望に覆われた心の中から、わずかな希望をいかにして見付け出すことができるかである。誰にでもできるようで、なかなか難しい。しかし、心の鍛錬によって身に付けることも容易なのである。そのための試練であったと思う。

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2007/09/09

墨攻

「墨攻」★★★★
2006年中国/日本/香港/韓国
監督:ジェィコブ・チャン
出演:アンディ・ラウ アン・ソンギ
   ワン・チーウェン ファン・ビンビン

10万の敵に囲まれた落城寸前の小国の城を一人の頭脳明敏な男によって救われたという戦争ドラマだと思って見れば、大いに失望するであろう。なにしろ、徹底した守備戦術で敵の大軍勢に対抗していく攻防戦は前半で終了してしまうのだ。

本作品は、アンディ・ラウ扮する主人公革離(かくり)が、悲惨な戦争悲劇を目の当たりにして、戦術家から宗教者へ変貌していく過程を克明に描いた映画ではないだろうか。そうした宗教ドラマであると思えば、収まりよく感じる。

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2007/08/29

ボルベール 帰郷

製作年:2006年
製作国」スペイン
監 督:ペドロ・アルモドバル

気付いてもらえない。その痛み、その哀しさ、その辛さ。自分一人だけが苦しんでいるように感じてしまう。だが、人は生きている中で、大なり小なり苦悩をみな抱えているものなのだ。

時に自分の苦悩が大き過ぎて、周りのことなど、目に入らないこともある。もっとも気付いて欲しい人に分かってもらえず、相手を攻める気持ちを生じてしまう。

本作品の中の母娘は、互いが一番辛いときを気付くことができなかった。そのための不和である。相手の心情に思いを巡らせるようになれば、気持ちは通じ合える。

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2007/07/31

選挙

2006年日本 アメリカ
監督:想田和弘
出演:山内和彦

先日、参議院選挙立候補者の個人演説会に行く機会がありました。仕事の上でのお付き合いというやつで、どうしても顔を出してくれと頼まれたのです。そういうものに出席をしたのは始めてのことでありますが、その直前に本作品を観ていたので、候補者や応援者に発言や行動の意図が本当によく分かりました。

本作品の山内和彦候補者自身がこれまで政治に携ったことがなく、初めての立候補ということで、候補者自身の感じる驚きや疑念、戸惑いが、見る者のそれを重なるところに、まず惹きつけられてしまいます。そして、このような選挙の取組み方は、我々の理想とするイメージとは遥かにかけ離れていると思い、苦笑を浮かべてしまうかもしれない。

だが、果たしてこれが間違いなのであろうか。各立候補者の演説会へ積極的に出かけるまでして、誰に投票するか真剣に考える有権者がどれほどいるのであろうか。確固たる誰かを見出せない以上、投票を左右するのは馴染みのある名前であるかどうかにかかっている。誰が聞いてか分からない状況であっても、ひたすら自分の名前を連呼する姿は、やはり正しい選挙手法であるのであろう。

今まで知っているようで知らなかった選挙の実態が鮮明に浮かび上がり、実に興味深いドキュメンタリーでした。

ちなみに個人演説会の候補者は無事に当選いたしました。

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2007/06/26

ゾディアック

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:デヴィッド・フィンチャー

犯人を特定することに混迷を極める難事件。その担当となった警察官が、寝食を忘れて取りつかれたように事件にのめり込んでいく様子。「プレッジ」(2001)のジャック・ニコルソンや「ブラック・ダリア」(2006)のアーロン・エッカートの姿が思い出されてくる。

謎に飲み込まれてしまう警察官なら珍しいことではないが、本作品では、直接事件には関係していない新聞社の風刺漫画家グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)がそうなってしまうのだ。そこが実に興味深い。仕事として行う事件調査は、調査のために要する時間を必ず制限され、どこかで一線を画することができる。

だが、グレイスミスのようにその制限から外れて、事件に没頭してしまうとどうなるのか。それが解決されるのならいい。どんなに時間がかかっても、その時間に比例して喜びや満足感が味わえる。第三者からも称賛を受けるであろう。だが、一生解決されないとすれば、どうであろうか。物語のような鮮やかなエンディングにはならないのだ。

そもそも、彼が事件解決することを誰が望んでいただろうか。その為に家族も仕事も無くしてしまうことに、何の意味があるのだろうか。妄執に囚われてはいけない。

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2007/06/18

アポカリプト

製作国:2006年
製作国:アメリカ
監 督:メル・ギブソン

奪うものが奪われる。本作品は、徹底したその反復から成り立っている。ファースト・シーンで野豚の狩りを行うジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)であるが、マヤ帝国の生贄にために捕獲されてしまう。その実行にあたった傭兵部隊も、隊長の息子を始めとして、その仲間たちも次々にジャガー・パウに逆襲される。

そして、彼らの悲劇を生み出したマヤ帝国も、ラスト・シーンで海に現れたスペイン船に滅ぼされてしまうのだ。因果応報とも言えるこの繰り返し。今日の栄光は明日の挫折を生み出すかもしれない。

ここで印象深いのは、ジャガー・パウの父親の存在である。冒頭の狩りのシーンで、何物かに襲撃されて新しい居住地を探す部族に遭遇するのであるが、その後の彼の態度に驚く。彼らの凶事が自分達にも起こるのではないかと恐怖するのが普通であろう。実際、ジャガー・パウも心に恐怖が住み着く。

だが、この父親は恐怖心を消し去れという。単なる言葉だけでない。自分が殺されようとするその瞬間まで、変わることがないのだ。危険を察知し、適切な行動を取ることがリーダーたる資質なのかもしれない。だが、一方で、起こることはどんなに足掻いても防ぎようがない。自然のままに身を任せるというのも、一つの生き方であると考えさせられた。

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2007/05/28

主人公は僕だった

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:マーク・フォースター

何故、この女流作家カレン(エマ・トンプソン)はスランプに陥ってしまったのか。これまでの著作で登場人物をことごとく殺してきたのは、彼女自身が死に取り付かれてしまったからではないか。彼女の過去が本作品では全く触れられていないが、未だに心の中で整理されない悲劇があったのではないかと推測される。

その逃避行為から、自分の死を想像し、小説の場面に取り入れているのだろう。その死を繰り返し続けているが、書き進めなくなってしまった。それは、小説の主人公が限りなく彼女に同化してしまったのではないだろうか。主人公の死は自分の死である。

普通に考えれば、自分の想像で書く小説なのだから、いかようにも登場人物たちを動かせると思えるのに、そうできないのだから興味深い。

ハロルド(ウィル・フェレル)にカレンの声が聞こえてしまうという異常な事態は、ハロルドを殺したくないという心情から起こるものだろう。それは、自分を殺したくないという思いの表れでもある。自分の宿命を受け入れ、決然と生きたハロルドの姿を見て、カレン自身が救われるのである。

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2007/05/21

トリスタンとイゾルデ

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ケヴィン・レイノルズ

1500年以上前のケルトの伝説を元にした悲恋ドラマであるが、その当初の設定に驚愕する。イングランドがアイルランドの圧政に苦しめられていたというのである。

近年でもケン・ローチ監督が「麦の穂を揺らす風」(2006)でも取り上げられているなど、イングランドの圧政に苦しむアイルランド人の苦悩ばかり強烈に頭の中に焼き付いている。

これが史実であるのか未確認ではあるけれど、これが事実であれば、その認識とは全く逆の設定である。民族対立の歴史とはなんと奥深いものなのかと衝撃を受けざるを得ない。

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2007/05/14

バベル

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

本作品が終わったとき、強い違和感を覚える。予告編などの事前情報で、この映画のテーマは言語間の違いなどによるコミュニケーション不全であり、聾唖者のチエコ(菊地凛子)はその象徴であると思い込んでいたからだ。だが、どうも違うような気がしてならない。

自分の思いを相手に伝えられないという悲しみも確かに描写されていて決して誤りではないのであろうが、それよりもイニャリトゥ監督は別の事を訴えかけていたのではないか。

因果応報という言葉がある。過去の善悪の行為が因となり、その報いとして現在に善悪の結果がもたらされること。だが、人の行動は簡単に善悪で分けることができるのか。

アメリア(アドリアナ・バラーザ)が子供たちに語る「私は悪人ではない。愚かなことをしてしまっただけ」という言葉こそ、本作品の主題ではないか。

そして、悪意のない一人の行為が、別の悲劇の始点となるかもしれないし、別の悲劇の終点となるかもしれない。ヤスジロー(役所広司)が猟を趣味としてライフルを所有していたこと。そこから、様々な悲劇が生まれ、めぐり巡って彼に救済をもたらす。

一つの悲劇に囚われるな。悲劇はすべて自分の行為が原因で生まれるわけではない。起こってしまったことは、一つの宿命だと思い、受け入れるしかないのである。そして、そこから何をすべきか考えることが大切であると思う。

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ロッキー・ザ・ファイナル

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:シルヴェスター・スタローン

4月16日、バージニア工科大学銃乱射事件。4月17日、長崎伊藤市長殺害事件。4月18日、NASA職員殺害事件。4月20日、東京都町田市立てこもり事件。2007年の春、何の因果か、日米で銃犯罪が相次いでに発生している。

ひとつひとつの事件の動機が全て解明されているわけではないのですが、報道によると恨みを果たしたいという動機が共通しているように感じられます。自分の人生がうまくいかないことをすべて他者のせいだと考えてしまうこと。そのために凶行を引き起こすことで溜飲は本当に下がったのでしょうか。

本作品ではロッキー(シルヴェスター・スタローン)が息子ロバート(マイロ・ヴィンティミリア)に、「他人のせいにするな。人生は自分で切り開け」と懸命に訴えかけるシーンが屈指の名場面になっております。この言葉が犯行前の犯人たちに届いていればと思わずにはいられません。

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2007/04/19

ホリデイ

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ナンシー・マイヤーズ

幸せになる方法は、ひとつの考え方にとらわれないことである。そんなことを本作品の主人公2人を見ていて感じる。彼女たちは決して愚かではない。自分が幸せになれない原因は、どこにあるのか、うすうす感じてはいる。

だが、自分はこうあれねばならないという強迫観念にも近い感情に支配されていて、身動きもとれないでいる。そこで、半ば強制的に生活を変える。とにかく、バカンスではなく、自分のアイデンティティを見直すことを決断するのだ。

私はここで行動したことに感銘を受ける。こんな事態に陥る自分はどこか間違っていると分かっていても、改善策を実行できる者は少ない。新しい土地で、新たな生活を続ける中で、自分を否定するのではなく、自分を肯定できる思考法を見つけることができたのだ。

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2007/04/16

ブラッド・ダイヤモンド

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:エドワード・ズウィック

生きてきた境遇が全く違う、普通であれば出会うことのない筈の男二人。ある事件をきっかけにして、行動を共にしなければならなくなる。その旅を続けるうちに、少しずつ少しずつ心を通わせていく。

それに平走して、男女間の結ばれない恋愛ドラマも用意されているのは、エドワード・ズウィック監督の前作「ラスト サムライ」(2003)と全く同じ人間関係である。

レオナルド・ディカプリオとジャイモン・フンスーとジェニファー・コネリー、トム・クルーズと渡辺謙と小雪という人物設定が見事に重なっている。ここにこの監督の核となる資質を感じる。

暴かれるダイヤモンド業界の暗部。アフリカ、シエラレオネの内戦の実情。幼少の子供たちを強制的にゲリラに仕立てていく異常性。アクション映画の裏側に秘められた事実の重さにも唖然とするが、それをベースに自分の秘めたテーマを重ねていくズウィック監督の手腕も興味深かった。

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2007/03/20

プラダを着た悪魔

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:デヴィッド・フランケル

「仕事だから仕方がない」という言葉を吐くとき。自分の仕事を肯定的にとらえているか、否定的にとらえているかで、意味合いは違ってくる。

仕事ができればできるようになるほど、プライベート時間が侵食されていく。その時に、家族や恋人に対してどういう心持ちで話せるのかが問われる。積極的に説得できるのか、単なる言い訳に終わるのか。

アンドレア(アン・ハサウェイ)は恋人に対して「仕方がない」と繰り返すが、言い訳にしかならない。彼が別れを切り出したのは、自分と過ごす時間が減ってしまったことと共に、彼女の否定的な態度が嫌になってしまったのではないだろうか。

アンドレアはミランダ(メリル・ストリープ)の私生活のマイナス面を知って、自分の将来を感じてしまった。それは、自分の本当に望む生活なのかと自問する。そして、彼女はひとつの決断を下す。そうして、自分の人生を肯定できるようになったのだ。

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2007/03/16

トゥモロー・ワールド

製作年:2006年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:アルフォンソ・キュアロン

セオ(クライヴ・オーウェン)が犬や猫などの動物達に好かれている場面が反復されている。子供を亡くした痛手から、生気をなくしてしまったように生活を送っているセオであるが、彼の心の中には弱者から慕われるような義侠心が秘められているのであろう。

別れた妻ジュリアン(ジュリアン・ムーア)から秘密裏に渡航証明書を入手して欲しいとの依頼することも、キーが妊娠していることを率先して打ち明けることも、同様な理由からではないか。セオは弱者を守る守護神を宿命づけられていたのだろう。

セオはそんなことを自覚していない。ジュリアンの依頼を受けるにしても、お金のためという表向きの理由が用意されていたので、迷惑である振りをしても容易に実行することができたのだ。そこには、崩壊してしまったジュリアンとの生活を取り戻したいという想いが込められていた。

だが、そんな甘い夢想は無残にも打ち砕かれてしまう。果たして、「ヒューマン・プロジェクト」という団体が希望を託するものに値するかどうか、本作品の中でははっきりと描かれていない。

そこに希望がある限り、暗澹する世界にも未来があると信じてセオはキーの守護神として逃避行を続ける。

テロ。不法移民。貧富の格差。今の時代の進行形がここにある。

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2007/03/14

ビッグ・リバー

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:舩橋淳

国籍の違う男女3人が、ふとした偶然から一緒に旅を続ける。その中で、哲平(オダギリジョー)だけが、何の束縛もなく彷徨い続けている。サラ(クロエ・スナイダー)から求愛を拒んでしまうのは、束縛感を嫌ったからであろう。

逆に、家を出てしまった妻を追いかけてパキスタンからアメリカにやってきたアリ(カヴィ・ラズ)は、束縛感を求めているのである。

彼らを助けるサラは、新しい何かを始める勇気がもてないまま、行き場のない感情に苛まれている。

彼らの対比が実に興味深い。三人の価値観のぶつかりあいが、我々に何が大切かを問いかける。旅は人生の暗喩である。

アメリカの風景描写も心地良く、ロード・ムービーの詩情豊かな佳作であった。

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2007/03/06

手紙

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:生野慈朗

本作品で最も感銘を受けた場面は、武島直貴(山田孝之)の勤務する会社の会長、平野(杉浦直樹)が彼に語りかけるところである。

「犯罪者の家族への差別は当然なんだ」という言葉は、ありふれた差別反対の話よりも、ずっと含蓄のあるものであった。差別の起こる要因は恐怖心からなのである。だから、差別のない場所を探すんじゃなく、君は今ここから始めるんだという話にも重い説得力がある。

しかし、直貴がその意味を真に理解するまでには至っていない。物事の真理は傍観者には簡単に分かったような気がするが、現状に苦しむ者の心に染み込むには時間がかかるものなのであろう。

様々な試練を乗り越えて、桜並木を直貴が家族で歩いていくラストシーンが力強く残る。

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2007/03/01

デスノート the Last name

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:金子修介

いかにして月(ライト/藤原竜也)はL(エル/松山ケンイチ)を抹殺しようとするか、いかにしてLは月がキラであることを断定できるのか。はっきりとこの攻防が主題となっている。デスノートにまつわる設定の興趣は前編で尽きていて、本作品では、その攻防の鍵を握る道具として使われている。

全体的に俳優陣は重量感ある演技に終始していてリアルさに欠ける部分もあるが、ミステリーとしての趣向が面白く、私はさほど気にならない。随所に意表を付く展開が盛り込まれていて、飽きることはなかった。

常に菓子を食べているLであるが、場面ごとに食べている菓子は違っているのだ。それが軽いユーモアを漂わせ、いいアクセントになっている。

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2007/02/28

父親たちの星条旗

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:クリント・イーストウッド

過去と現在が行き来する複雑な構成。そのために時間の経過に関係なく、兵士たちの苦悩が永続していることを見事に表現していると思う。真の兵士は何も語らない。その言葉が重く響く。

それにしても戦時中のアメリカで、あのような秘話があったとは驚きだ。戦時国債を売るために、ひとつの嘘を突き通そうとする。そうした思考法、発想法は現在のアメリカにも通じているものだ。

その欺瞞に対し、キャンペーンに回る3人の兵士たちの反応も、それぞれ分かれていて絶妙な配置となっている。英雄を演じることを積極的に取り組む男、ごまかしに耐え切れず自滅していく男、良心の呵責に耐えながら静かに過ごす男。3人のあり様自体が深い問い掛けになっている。

クリント・イーストウッド監督は、またも力作を生んだ。そのことに感服する。色調を抑えた映像は巨匠の風格を思わざるを得ない。監督自身による音楽が切ない余韻を残しつづける。

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2007/02/16

ブラック・ダリア

製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ブライアン・デ・パルマ

原作を読んだときにも感じていたことであるが、何故、リー(アーロン・エッカート)は「ブラック・ダリア」事件に常軌を逸するほど没頭していくのか。ここがこの作品のポイントである。

人生を巧妙に