製作年:2006年

2010/03/09

ピリペンコさんの手づくり潜水艦

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製作年:2006年
製作国:ドイツ
監 督:ヤン・ヒンリック・ドレーフス/レネー・ハルダー

一応、ドキュメンタリー映画なので本当にあったことなのであろうが、どこかに創作があるのではないかと疑ってしまいたくなるくらいよく出来た話である。30年もの月日をかけて、特別に技術者でもないピリペンコさんが、古びた器械の部品を自力で組み合わせ、潜水艦を組み立てていくのだ。草原地帯が広がるウクライナの農村で、何故、潜水艦なのか。ピリペンコさんは、何の得にもならない潜水艦つくりに膨大な時間とお金を費やしていく。

奥さんがぶつぶつ文句も言いたくなるのも、村の人々もからかいたくなるのも、道理であろう。感心するのは、そんな外野の声に左右されないことだ。淡々と作業を繰り返し、遂に完成する潜水艦。ほのぼのとした気分にさせてくれます。トボけた魅力にあふれる作品でした。

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2010/01/11

気球クラブ、その後

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:園子温

鬼才と呼ばれる園子温。気になる監督ではあるけれど、「自殺サークル」(2002)、「紀子の食卓」(2005)、「愛のむきだし」(2008)など見てきて、どうも自分には合わないなぁと思っておりました。本作品もさほど期待せず見始めたのですが、なかなか出来栄え。思わず画面に引き込まれました。やはり、映画というものは見てみないと分からないものです。

5年前に所属していた“気球クラブ・うわの空”。そのリーダー、村上(長谷川朝晴)が突然の事故死。久しぶりに再会するサークル仲間。そこで浮かび上がってくるのは、村上と美津子(永作博美)の微妙な関係だ。夢を追い続ける男と、彼を見つめることしかできない女。村上の想いの綴られたメモを付けた風船が宙に浮いたまま美津子に届かないエピソードが実に象徴的である。かつての楽しい飲み会はすでに思い出となっており、切なさを呼び起こすものでしかない。そして、一つの時代の終わりを噛みしめていたのである。

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2009/10/03

マルタのやさしい刺繍

製作年:2006年
製作国:スイス
監 督:ベティナ・オベルリ

取り合わせの妙ということがある。「ヤング@ハート」(2007)では、老人とパンク・ミュージックという意外な組み合わせに目を引いたが、本作品では80歳のおばあちゃんたちがランジェリーショップを開くという驚きの物語だ。夫の死により打ちひしがれたマルタ(シュテファニー・グラーザー)が、昔の夢を実現しようとして、俄然、生命力を取り戻す。だが、厳格なプロテスタントの村では、そう簡単に理解を得られず周囲から冷たい視線を浴びてしまう。

しかも、マルタの息子ヴァルター(ハンスペーター・ミュラー=ドロサート)は牧師でもあるのだ。彼女の夢が潰えてしまうのかどうかは、見てのお楽しみ。本作品の主題は、抑圧されたまま生きるというのはつまらないということだ。ほんのちょっとでいいから、自分の気持ちを正直に踏み出してみれば、世界は簡単に変わっていく。

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2009/06/15

ハイスクール・ミュージカル

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製作年:2006年
製作国:アメリカ
監 督:ケニー・オルテガ

劇場公開された「ハイスクール・ミュージカル ザ・ムービー」(2008)はシリーズ3作目ということらしいので、1作目から順を追って見ていくことにしました。

バスケット部のキャプテン、トロイ(ザック・エフロン)と天才数学少女のガブリエラ(ヴァネッサ・アン・ハジェンズ)は、旅行先のパーティで偶然選ばれてデュエットすることに。そこで、二人は思いもかけない自分を見つけてしまう。新学期となり、トロイの通う高校へ転校してきたガブリエラ。同じクラスとなって再会する二人。

序盤の展開だけで何度も偶然が重なり、あまりにも作り過ぎではないかと感じさせますが、中盤から主題が浮かび上がり気にならなくなる。いま居る環境から突出することを恐れ、本当にやりたいができないでいる自分。それをいかに克服していくかという話になっていくのだ。そこからの展開にも甘さがあるものの、単なる恋愛学園ものには終わっておらず、見応えある作品になっておりました。

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2009/05/12

宮廷画家ゴヤは見た

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製作年:2006年
製作国:アメリカ/スペイン
監 督:ミロス・フォアマン

本作品では、18世紀末のスペインにおける政治権力の推移をロレンソ神父(ハビエル・バルデム)に重ね合わせて描いている。カソリック教会の権威を高める異端審問の強化。フランスのナポレオン軍による軍事占領。イギリス軍を加えた反ナポレオン派の巻き返し。変節を何度も繰り返す風見鶏のような男かと思って見ていたが、最後は意地を貫き通して、命を散らせていくので驚いた。

ロレンソの変節は、一時的なものでなく、真から宗教支配を拒絶した男に変わっていたということだ。無論、イネス(ナタリー・ポートマン)に対する処遇など見れば、誠実に生きているとは言い切れない。非難を浴びても仕方ない男だけれど、彼なりに悟りを開いたものがあったということだ。最後は殉教者のように見える。形は違いますが、「わが命つきるとも」(1966)のトーマス・モアを思い浮かべました。

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2009/04/20

初雪の恋 ヴァージン・スノー

製作年:2006年
製作国:日本/韓国
監 督:ハン・サンヒ

ラブ・ストーリーの胆は、恋する男女の前にいかなる障壁を設けるかにかかっている。その壁が高ければ高いほどいいというものでもない。あまりに非現実的すぎると、興ざめになってしまうからだ。越えられそうで越えられない微妙な高さこそいい。主人公たちの頑張りを心から応援できる。さて、本作品のミン(イ・ジュンギ)と七重(宮崎あおい)の間にも壁は用意されている。言葉が違う、文化や歴史が違うという日韓という壁だけでも十分にドラマが作れる筈なのに、七重の家族環境というシリアスな背景はいささか余分ではなかったか。当初の神社で働く巫女姿の七重というイメージが、中盤から活かされていないのも惜しまれる。100日記念、初雪デート、トルダムギルのジンクスなど、初めて知る韓国の風習も興味深かったが、効果的にドラマへ反映されていないのも残念だった。

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2009/04/16

善き人のためのソナタ

製作年:2006年
製作国:ドイツ
監 督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

人の気持ちが変わっていくは、ほんの一瞬かもしれないが、そうなるにはそれなりの潜在的な理由が積み重なってのことである。ある切っ掛けを持って、それらが一気に発露し、心が動いていくものだと思う。秘密警察“シュタージ”のヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)が変わっていったのは、何も監視対象のドライマン(セバスチャン・コッホ)がピアノで弾いた“善き人のためのソナタ”に感銘を受けたからではない。国家に忠誠を誓った優秀な男が何を得て、何を失ってきたのか、日々の活動の中で懐疑的になってしまったからだろう。善き人とは、一体どんな者なのかという問いかけ。そうした思索を続けることができる世界こそ、自由というものではないか。キャリア的には破滅したが、彼の選んだ道に間違いはないと感じる。

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2009/04/05

接吻

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:万田邦敏

これは形を変えた「UNloved」(2002)だ。万田邦敏と万田珠実夫妻の共同脚本から生み出された本作品は、前作同様に異形のヒロインを生み出している。「UNloved」の光子(森口瑤子)と「接吻」の京子(小池栄子)は、表面的には勿論差異があるけれど本質的な心象風景は全く同じと言ってよい。ありのままの自分でいられる男性を追い求めて、ついに見つかった時の絶頂感。しかし、至福はわずかな時間しかなく、徐々に開いていく隔絶感。どうしようもなく破滅への道を歩み続ける緊張感。

そんなヒロインの恋愛対象から外れ、見守る立場にしかなれない人物に仲村トオルがキャスティングされているのも、関連性を感じる。彼女たちに共感を覚えるのは難しいが、世間一般の規範だけがすべてでないのだ。万田夫妻が次作でどんなヒロインを創造するのか、非常に興味深い。

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2009/03/23

ポチの告白

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製作年:2006年
製作国:日本
監 督:高橋玄

カーティス・ハンソン監督の「L.A.コンフィデンシャル」(1997)や、クリント・イースドウッド監督の「チェンジリング」(2008)など、腐敗した警察組織を描いたアメリカ映画をたくさん見てきたが、日本もこれほどひどいものなのかという暗澹たる気持ちにさせられる作品でした。空出張による裏金作りなんて可愛いもので、暴力団の麻薬取引の用心棒を務めたり、闇の組織の商売を黙認することで、膨大なヤミ金を手にするシステムが構築されているのだ。日本一の暴力団という指摘に唖然とさせられます。

何より不気味なのは、上司の命令を盲目的に従う集団体制。そして、マスコミとの癒着の酷さ。どこまでフィクションなのか分かりませんが、こんなことが行われていても不思議でないと感じさせます。よくぞここまで、警察批判、マスコミ批判に徹した作品を作り上げたものです。その不屈な映画魂に感服いたしました。

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2009/03/03

アウェイ・フロム・ハー 君を想う

製作年:2006年
製作国:カナダ
監 督:サラ・ポーリー

「アイリス」(2001)、「きみに読む物語」(2004)、「私の頭の中の消しゴム」(2004)、「明日の記憶」(2005)と、近年、アルツハイマー症に見舞われた夫婦の葛藤を主題とする映画の製作が続いている。多少の波風があったにしてもお互いを慈しみ合い暮らしてきた夫婦が、記憶をなくしていくという病気の前でそれまでの関係を変えていかざるを得ない。どんなに相手のことを想い、尽くそうとしても応えてもらえない無力感。その苦悩をいかに乗り越えていくのか。見る者に様々なことを思考させて、普遍性のあるテーマであると感じます。

本作品もその一つ。「好きなものばかり求めちゃいけないわ。それじゃ何も見つからない」など、台詞の一つ一つに深みがあり、ハッとさせられることが多かった。際立った存在感を見せるジュリー・クリスティも素晴らしい。

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