深呼吸の必要
製作年:2004年
製作国:日本
監 督:篠原哲雄
ファースト・シーンが印象深い。小学校の競泳大会。スタート前に大きく深呼吸する少女。遅れるスタート。必死に泳ぐ姿。最後にたどり着くゴール。溢れんばかりの笑顔。この場面が本作品のテーマを凝縮していると感じる。
我々は競争社会の中におり、勝利を目指すことが必然となっている。その競争の中にとは、世間一般の常識、倫理観から逸脱してはならないというもサバイバルゲームも含まれている。
問題は、その競争を義務感のため嫌々ながら行っているのか、自分のために楽しみながら行っているのかということである。キビ刈り隊に参加した5+2名は、それぞれの心の中に暗い影が差し込んでいる。それが何なのか、本作品の中では全て明らかにはされていない。
競争社会に敗れたか、あるいはその競争に疲れ果てているのではないかと窺える。そこから逃れるように渡ってきた沖縄の離島であるが、このキビ刈りの仕事にも納期という目標が設定されており、やはり競争社会からは逃れることはできない。
ここで、特徴的なのは、雇い主のおじぃとおばぁの存在。何かあるごとに「なんくるないさ」という言葉が繰り返される。そうした言葉に触れて、彼らは競争社会を楽しみながら生きていく術を取り戻していく。
そういう彼らの姿を篠原哲雄監督は優しくとらえ、清々しい気分で映画は終わっていく。
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