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2006年10月

2006/10/31

8月のクリスマス

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:長崎俊一

元作であるホ・ジノ監督の「八月のクリスマス」(1998)とほとんど同じドラマ展開で、エピソードもそのまま踏襲されている。それだけに、違ったエピソードが際立つ。

その最大なものは、手紙の扱いであろう。元作では投函されなかった手紙を、本作では妹によって投函されてしまっている。製作者のリメイクした思いがここに反映されているのだろう。

寿俊(山崎まさよし)の想いとその死を由紀子(関めぐみ)、そして我々観客にもしっかりと受け止めて欲しかったということか。この違いは、再訪した写真館で自分の写真を見つめるヒロインの感慨も全く別なものにしている。

だから、手紙を出す、出さないの是非は問わない。だが、その手紙を「君は神様がくれた最高のプレゼントでした」なんて、寿俊に音読させてしまったことは問題。

それは映像からだけでも十二分に伝わってくるのに、言葉にしてしまうことで、それまで保ってきた詩情を失わせてしまう。由紀子からの手紙の内容が伏せられていたことと呼応する方がずっと素晴らしくなったはずだ。

山崎まさよしと関めぐみの存在感と空気感が抜群に素晴らしい。二人が一緒にいるところをずっと見ていたかった。

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2006/10/29

ダンサーの純情

製作年:2005年
製作国:韓国
監 督:パク・ヨンフン

本作品の見どころは、主演の若手女優ムン・グニョンが見事にダンスを踊っているところだ。プロの視点から見て、どこまでのレベルであるか分らないが、一般人の自分が見て違和感を覚えることはない。

ドラマ的にはあまりに作為的で現実味に欠けるものであるが、それはそれでよい。あれって思うのは、序盤、空港でのホタルの検閲シーン。この検査をいかにして乗り換え韓国に持ち込むことができたかである。

「この虫は悪いことはしません」というチェリン(ムン・グニョン)の言葉まで映し、その後が全く切られている。このホタルが二人の気持ちを繋いでいく重要なアイテムとなっていくので余計に気になるのだ。

別にドラマの本筋には関連しない些事かもしれないが、物語の整合性を保つには、切ってはいけない場面であると感じさせる。

また、あまり葛藤なく偽装結婚を引き受けるヨンセ(パク・コニョン)の行動にも疑問。大きなドラマの嘘を成り立たせるのは、リアリティーのある小さなディティールの積み重ねだ。

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2006/10/27

トンケの蒼い空

製作年:2003年
製作国:韓国
監 督:クァク・キョンテク

「友へ チング」(2001)のクァク・キョンテク監督と「MUSA 武士」(2001)のチョン・ウソンの組み合わせ。そこから呼び起される期待を大きく裏切る作品になっている。

ありきたりな父と息子の確執と和解のドラマになっていないのは、ひとえにトンケ(チョン・ウソン)のキャラクター造形にある。トンケ=野良犬という言葉のイメージかから浮かんでくる野性味よりも、いつも何かに怯えているような様子は捨て犬の方がぴったりくるのだ。

問題なのは、彼が軽い自閉症でないかと思われるのに、父親や周囲がそれに気付いていないことではないか。特徴的だったのは、父親がスリの常習犯で身寄りのない女性ジョンエ(オム・ジウォン)を家に引き取ってきたというのに、異性として意識するよりも、テレビが見られなくなることの方を気にしてしまうところだ。

単に自分の夢を持てず父親に反発して生きているのとは違うと感じる。

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2006/10/21

ニライカナイからの手紙

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:熊澤尚人

映画においてファースト・シーンはとても重要なものだと思う。優れた映画であればあるほど、その作品のメッセージやテーマが僅かな場面の間に凝縮されている場合が多いからだ。

ここをしっかりと見ていれば、その後のドラマ展開がある程度予想することができる。本作品もこれに相当する。

浜辺で遊ぶ母娘のシークエンスが続いていくが、この浜辺が注目だ。海と海の間にあるように撮影されており、母娘以外に誰も登場されていないことから、一種の異界であると感じさせるのだ。

東京に行ったまま戻ってこない母。誕生日ごとに届く手紙。頑固に20歳まで島を離れるなとしか言わない祖父。それが何を意味するかは、このファースト・シーンからおおよそ伝わってくる。

風希(蒼井優)が画面に登場すると、太陽やライトが逆光になって映されることが多い。彼女が常に見守られているということを示唆しているのではないか。

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2006/10/20

トランスポーター 2

製作年:2005年
製作国:フランス-アメリカ
監 督:ルイ・レテリエ

荒唐無稽の極み。こんなことは現実には在り得ないアクションシーンの数々。だが、その在り得ないような場面は考えに考えぬいて作られている。そのアイディアに心底感嘆する。なかなか巧い。

主人公フランク(ジェイソン・ステイサム)のクールな佇まいも魅力的だ。どんな苦境に陥っても慌てることなく、瞬時にベストの選択をしようとする。その一方で、子供に親の喧嘩を見せないようにする細やかな気配りを見せる。彼の存在感が抜群にいい。

ただ、終盤の展開で、ドラマに致命的欠陥があるのが惜しまれる。そんなことなら、フランクが必死に敵役を追いかける必然性がなくなってしまのだ。ここはもっと作り様があったと思う。

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2006/10/19

花よりもなほ

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:是枝裕和

仇討ちというテーマの複合性。主人公宗左衛門(岡田准一)以外にも、赤穂浪士やおさえ(宮沢りえ)などが関連して登場し、主題をさらに印象深くする。

不本意に倒れた者の恨みばかりを後生に残されていいのか、他にもっと大切なものがあるのではないかという問い掛け。盲目的に復讐へ突き進む価値観への揺さぶり。

復讐の不毛性を訴える作品として、2006年は「ミュンヘン」や「SPIRIT」など続々と公開されているが、日本映画からもこうして製作されたことが興味深い。時代の空気はどこかで繋がっているものであろうか。

丹念に練り上げられたシナリオである。些細なシーンも無駄にすることなく、後の場面の伏線となっており、非常に深みのある作品となっている。

配役、美術、衣装、それぞれが絶妙の一語である。安定感のある作りの中、音楽を古典イギリス調にするなど、ユニークな仕掛けも用意され、是枝裕和監督の才気を感じさせる。

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2006/10/18

輝ける青春

製作年:2003年
製作国:イタリア
監 督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ

何故、あの時出て行くのを止めることができなかったのか。何故、あの時電話を取らなかったのか。失ってしまった人の後で、何度も自問を繰り返す後悔。彼らの思いが切実に響いてくる。

マッテオ(アレッシオ・ボーニ)にとって人生を変えてしまったひとつの出会い。誰かを救おうとして救うことができなかった自分の非力。

頼りない自分を律するように軍隊や警察で勤務するが、自分の居場所を見つけることはできない。自己嫌悪の中、誰とも距離を置こうとして、そのことでさらに傷ついてしまう悪循環。

唐突に終止符を打ってしまった彼の人生であるが、決して無駄ではなかったのだ。彼の存在は新たな出会いや出発を呼び起す起点となっている。それに気付けなかった彼の不幸をじっと噛み締める。

6時間6分という上映時間、DVDも2枚に渡り、鑑賞前は覚悟がいる。だが、見始めれば、イタリアの奔放な歴史と魅力的な登場人物たちに呼び込まれ、あっという間であった。なんと芳醇な時間であっただろう。映画は時間で計れない。

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2006/10/16

アメリカ,家族のいる風景

製作年:2005年
製作国::ドイツ-アメリカ
監 督:ヴィム・ヴェンダース

ここで気になるには、スカイ(サラ・ポーリー)の母親について、パソコンの中の画像で登場するくらいで、全く触れられていないことである。

自堕落な俳優生活に嫌気をさしたハワードが家族を求める話だけなら、ドリーン(ジェシカ・ラング)とアール(ガブリエル・マン)の親子だけで良かった筈だ。

スカイの母親の死去とハワードの逃亡が同時期であったこと。ハワードとスカイがこの街へ同時にやってくること。スカイがハワードとアールを結びつける働きをすること。これには、亡きスカイの母の見えざる意志が働いているのではないかと感じさせる。

個々のキャラクター造形も秀逸だった。独りで毅然と生きているハワードの母(エヴァ・マリー・セイント)、ハワードを探し求める保険会社の調査員サター(ティム・ロス)、蓮っ葉なようでどこかしっかりしているアールの恋人と、それぞれが魅惑的な存在感を発揮している。

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2006/10/14

明日の記憶

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:堤幸彦

お腹が目立つくらい妊娠した娘の結婚式で行った主人公佐伯(渡辺謙)の挨拶が素晴らしかった。「恥ずかしい気持ちよりも、(49歳の若さで)孫ができることを感謝したい」。

若年性アルツハイマー病が進行し、大切なものを次々となくしていく佐伯であるが、見方を変えれば、別の大切なものを得ていくことにもなるのではないか。そうした意識の持ち方が大切だと思う。

仕事をやめるまでの前半には大いに惹き付けられたが、後半の展開が気になった。それは、介護する枝実子(樋口可南子)があまりに美化されて描かれていることだ。

様々な葛藤も描写されているが、それでは足りないと思う。家庭を守るということが生きがいであったにしろ、介護生活の中で暴力という行為まで発生したとき、それでも我慢できるのかという事。

無論、こんなにまで献身的な女性はいないことはないが、一般的ではないであろう。観る者に感動を与える見どころではあるが、ここまでいくと現実味が薄れてしまうのではないか。

吉田医師(及川光博)や得意先の河村課長(香川照之)、かつての部下達が主人公を励ます言葉が、静かに胸を打つもので心に残る。

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2006/10/09

アンダーワールド

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:レン・ワイズマン

「これは一体、誰の戦争なんだ」という一つの問い掛け。これが重く胸に響く。

吸血鬼一族と狼男一族の果てしない殲滅戦。彼らは、自らの一族の存亡を賭けて戦っていると答えるかもしれないし、大切な者を奪った誰かへの復讐のためにと答えるかもしれない。あるいは、その両方である場合もあるだろう。

だが、当事者には分らないであろうが、一歩引いて見てみれば、為政者の私怨や野望の道具であるだけかもしれないのだ。であるとするならば、なんと虚しいことであろう。

そのために、たくさんの悲劇が生まれ、掛け替えのない大切なものが失われてしまうのだ。戦争の実態がここにある。

セリーン(ケイト・ベッキンセイル)は上司クレイヴン(シェーン・ブローリー)の不信から独自の捜査を続けるが、その果てに待っていたのは驚愕の事実。自らのアイデンティティーを崩壊させてしまう。

帰るところをなくした彼女はどこへたどり着くのか。その答えを続編「アンダーワールド エボリューション」(2006)でどのように描かれているのかが、次の焦点です。

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2006/10/06

三年身籠る

「三年身籠る」★★★★
(盛岡フォーラム3)2005年日本
監督:唯野未歩子
原作:唯野未歩子
脚本:唯野未歩子
出演:中島知子 西島秀俊 奥田恵梨華 塩見三省

詳しくはこちらで・・・
三年身籠る@映画生活

冬子(中島知子)も緑子(奥田恵梨華)も、父の不在がその生涯に多大な影響を及ぼしている。届く事のない手紙を書き続ける。父親と同年代と思われる年齢差のある男性と付き合う。

そんな彼女たちとは対照的に、祖母(丹阿弥谷津子)も母親(木内みどり)も男性のいない生活に特別不自由も感じていない。困るのは缶の蓋が開けられないことぐらいだ。

このマイペースな生活ぶりを姉妹二人は何故送ることができないのか。おそらく、姉妹二人は父の不在の欠落感を埋めようとして行動するが、決して埋めることができず不安定な感情のままなのであろう。

欠落は欠落のままで置いておき、橋をかけて渡るくらいの気の持ちようで構わないのではないか。ここで思い出すのはファースト・シーン、道路のゴミ拾いを延々と続ける冬子の行動。いくら集めても、集めても終わりは見えてこない。待っているのは不毛な砂漠だ。

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2006/10/05

GOAL ゴール

製作年:2005年
製作国:アメリカ-イギリス
監 督:ダニー・キャノン

どんなに優れた才能を有していたとしても、それだけで成功に結びつくとは限らない。夢を実現させるべく絶え間ない努力を続けること。だが、それは最低条件。まだまだ足りない。

大切なのはその夢に対して周囲からいかに応援してもらえるか。これである。自分の夢が周囲の夢となったとき、大きな飛躍がのぞめるのだ。その事を本作品では丁寧に描いている。

主人公サンティアゴ(クノ・ベッカー)はプロサッカー選手になる夢に向かって懸命に頑張るが、挫折の危機が何度も訪れる。自分独りだけであったら乗り越えならない壁。

だが、祖母、自分をスカウトしてくれたゲレン(スティーヴン・ディレイン)、スター選手ガバン(アレッサンドロ・ニヴォラ)らが親身になって行動してくれることにより、ギリギリのところで次のステップへ進むことができたのだ。

物語はスポーツ映画の王道をゆくものであるが、本作品に惹かれたポイントはここにある。

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2006/10/04

嫌われ松子の一生

「嫌われ松子の一生」★★★★★
(盛岡東宝)2006年日本
監督:中島哲也
原作:山田宗樹
脚本:中島哲也
出演:中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 柄本明

詳しくはこちらで・・・
嫌われ松子の一生@映画生活

愛し方、愛され方というのもあると思う。ただ好きだから、愛しているからの気持ちだけで、良好な関係を継続的に築いていこうとすることはできないのだ。自分の思いを100%伝えようとせず、相手がどんな風に感じていることを知る必要がある。

本作品のヒロイン松子(中谷美紀)は、常に一生懸命、相手を愛そうとして愛されようとするが、ことごとくうまくいかない。彼女にはそのノウハウを認知していなかった。その遠因は彼女の家族関係にある。

病弱な妹久美(市川実日子)のために父親(柄本明)から愛されていないと誤認する松子。それが為、妹との関係も愛憎混じる歪なものとなってしまう。ここで気になるのは、母親との関係が映画の中でほとんど描かれていないことだ。

父親の笑顔がみたいため考察した変な顔。松子の登っていく階段で待っている妹。家出した松子を嫌な顔をしながらも郷里で迎える弟(香川照之)。彼らとの関係を表すエピソードが反復して何度も登場されるのに、母親との関係は全く描かれていないのだ。ここにこのドラマの異質性がある。

それが母親の役目と限定すべきではないが、直情的に行動する松子へサポートすべき存在が誰もいなかったことの大きさ。母親との関係が希薄であったこと。それが彼女の生涯を決定づける一因であったと感じさせる。

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2006/10/02

ダ・ヴィンチ・コード

「ダ・ヴィンチ・コード」★★★★
(盛岡フォーラム1)2006年アメリカ
監督:ロン・ハワード
原作:ダン・ブラウン
脚本:アキヴァ・ゴールズマン
出演:トム・ハンクス オドレイ・トトゥ
   イアン・マッケラン ジャン・レノ

詳しくはこちらで・・・
ダ・ヴィンチ・コード@映画生活

冒頭、ラングドン教授(トム・ハンクス)の宗教象徴学の講演会が興味深い。見た目の印象と事実がかけ離れている事例がいかに多いことか。その誤認を生み出しているのが歴史ということになる。

我々が学校の授業で学び、常識としている事例が、常に正しいとは限らないということ。歴史ミステリーの興趣は、我々の常識を打ち破る真実を提示させるかにかかっていると思う。

そうした意味で本作品はかなり満足できる内容である。キリスト教の教義をあまり把握していない自分にも、ラングドンとリー(イアン・マッケラン)の質疑応答から明らかにされていく真実の開示には惹き付けられた。

原作は未読ながら盛んに一般ニュースでこのネタが取り上げられていたので、これがクライマックスにくるかと予想していた。それが割と早く中盤に構成されていたことから、もう一つ違うサプライズがあるだろうと思っていたが、果たしてその通りだった。

長編小説の映画化ということで、予想どおり賛否両論分かれている。原作を離れ一つの作品として見た場合、様々な弱点を抱えていることは間違いない。

だが、細かいショットに伏線を張り巡らせたロン・ハワード監督の演出は、2度、3度見直すことで評価が変わってくるような気がします。

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