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2006年9月

2006/09/30

蝋人形の館

製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:ジャウム・コレット=セラ

キッチュな魅力に満ち溢れていた「TATARI タタリ」(1999)が大好きだったので、同じ「ダーク・キャッスル社」が手掛けているといえば本作品を見ないわけにはいきません。

その期待には充分に応えてくれる出来栄え。独特の味わいは健在でありました。クライマックスでの蝋人形館の崩壊シーンでは、独自の美学が感じられる。

だが、どうしても気になってしまうのは、襲撃者から逃げるのに、退路が限定されてしまう二階や地下室へ向かってしまうことだ。それに突っ込みを入れながら見るということがこの種のドラマの定石と言ってしまえばそれまでである。パニックに陥ったものが正常な判断ができないという事もあるかもしれない。

しかし、そうしたことが続くとある種のフラストレーションがたまり、映画の世界と自分の心に距離ができてしまう。そうした違和感をつぶし現実味を増やしていけば、恐怖感はさらに高まっていくだろう。

そして、兄妹や学生たちの微妙な人間関係がドラマに反映されていないのも惜しまれる。

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2006/09/28

ビハインド・ザ・サン

製作年:2001年
製作国:ブラジル
監 督:ウォルター・サレス

1910年という年譜の記述が重要な意味を持つ。いつまでも終わりの見えない不毛な復讐劇。ブラジルの荒地を舞台にしているから、時間を超越した神話的雰囲気を醸し出している。

それでも、時代は変わっていく。新しいテクノロジーの発展により、同じ作業をしても減ってしまう収入。奴隷制度の崩壊。未知の世界へ誘う本。父親の頑なな価値観で子供たちを縛っておくことはできなくなってしまうのだ。

そうした新しい世界への希望を表しているのがブランコではないか。次男トーニョ(ロドリゴ・サントロ)が乗っているときに縄が切れてしまうのが、複雑な意味を込めた暗喩になっている。

新しい世界への脱出とも、夢からの脱落ともとれる。三男(ラヴィ・ラモス・ラセルダ)のように素直に夢へ進んでいけない逡巡がそこから感じられた。

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2006/09/24

ナイロビの蜂

「ナイロビの蜂」★★★★★
(ルミエール2)2005年イギリス
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョン・ル・カレ
脚本:ジェフリー・ケイン
出演:レイフ・ファインズ レイチェル・ワイズ
   ユベール・クンデ ダニー・ヒューストン

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ナイロビの蜂@映画生活

ジャスティン(レイフ・ファインズ)とテッサ(レイチェル・ワイズ)の出会いの場面が効いている。二人の人物像はこの場だけでよく伝わってくる。外交官という職種には、テッサの行動はマイナス評価になるのは分っていても、彼女と結婚したジャスティン。

常識に縛られない奔放な彼女を愛したはずなのに、一緒に行動していたアフリカ人医師アーノルド(ユベール・クンデ)との関係を疑ってしまった嫉妬心。冒頭で飛行機に乗る二人を見送るジャスティンの姿が示唆的であった。

ジャスティンの飽くなき真相追及は彼女の非業な死に対する義憤というよりも、彼女の不実を疑ってしまった贖罪であったのではないだろうか。

フェルナンド・メイレレス監督の演出にも唸った。謀略ミステリーとしても、ラブ・ストーリーとしてもなかなかの味わいを保っているが、もう一つ「アフリカ人の命は安い」という重厚な主題が全編を貫いている。イギリス人居住区とアフリカ人居住区を絶妙なタッチで切り替え、観る者をハッとさせる。両者の深い隔たりを感じさせるのだ。

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2006/09/21

寝ずの番

「寝ずの番」★★★★
(名劇2)2006年日本
監督:マキノ雅彦
原作:中島らも
脚本:大森寿美男
出演:中井貴一 木村佳乃 長門裕之 富司純子

詳しくはこちらで・・。
寝ずの番@映画生活

誰もが簡単に見られる表芸だけでなく、限られた者たちが密かに楽しむ裏芸が存在する世界は奥深いと思う。そこには賭けが行われるボクシングや格闘技などの非合法なものから、料理人のまかない食などの非公開なものまで様々な形が混在している。

そんな世界を一度覗いてみたいという直接的な欲求と共に、それを意識することで表芸にも複雑な色合が生じてくるようになる。

本作品は落語の世界の裏芸をよくぞここまで映像化したという感慨をまずおぼえる。こうした芸の数々はどこまで継承されていくのだろうか。現在のようなテレビ中心の演芸界において、こうした徒弟制度が維持されるのだろうか。

私自身はこうした艶歌に興趣を感じるわけではないが、こうして映画として後生に残すことの意義は強く感じる。

通夜噺三題で、大きな盛り上がりの際中に故人がそれぞれ戻ってくるところがポイント。普通に見れば不謹慎極まりない形かもしれないが、それらが故人を送り出す最高のシチュエーションであろうと感じさせる。

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2006/09/20

樹の海

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:瀧本智行

こんなに優れた作品だとは思わなかった。ファースト・シーンから魅了され画面に釘付けとなる。まず、こちらの読みを心地良く裏切っていく展開。オムニバス形式で4つのエピソードが進行していくが、それぞれ語り口が違っている。次はこうなっていくのかという予断をことごとく打ち破り、思いもかけない方向へ物語が進んでいく。

そして、こちらの感情に同調させて、胸を熱くする衝動が待っている。樹海の死という暗黒に対峙して、生を取り戻していく鮮やかさ。

その中でも、心に残るのは津田寛治と塩見三省との会話劇だ。接点のない二人が心を通じていくエピソードの数々が哀感とともに心を打つ。

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2006/09/19

キャッチ ア ウェーブ

製作年:2006年
製作国:日本
監 督:高橋伸之

ファースト・シーンの美しい海岸の風景。これを見れば、本作品の主役は紛れもなく海であることが分る。ドラマ的には大げさでくどい役者たちの演技に同調することができなかったが、DAPAPEPEやDef Techの音楽を聴きながら、波の映像を眺めているだけでゆったりとした気分にさせてくれる。

非常に惜しいと感じさせるのは、冒頭で賭けをしていても難しいと簡単に諦めてしまう主人公大洋(三浦春馬)が、クライマックスでのサーフィン対決にのぞむまでの成長過程が的確に描かれていないことだ。この本筋がしっかりしていれば、かなり見応えのある青春映画に仕上がったことであろう。

しかし、「ウォーターボーイズ」といい、「スウィングガールズ」といい、若者を導くコーチ役として竹中直人がよくキャスティングされている。あまり適役とは思わないが、映画製作者の評価が高いのであろう。

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2006/09/17

美しき運命の傷痕

「美しき運命の傷痕」★★★★
(京都シネマ3)2005年
フランス/イタリア/ベルギー/日本
監督:ダニス・タノヴィッチ
脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
脚色:ダニス・タノヴィッチ
出演:エマニュエル・ベアール カリン・ヴィアール
   マリー・ジラン キャロル・ブーケ

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美しき運命の傷痕@映画生活

タイトル・バックに流れる鳥の巣のシークエンスが強烈なインパクトを持って観る者に迫る。一人を助けようとする行為が、他者には災いになることを辛辣に伝える。この過酷な自然の摂理をなぞるように、痛手を追った人物が多数登場してくる。

前半のミステリアスな展開には、固唾を飲みように魅了され、その謎が少しずつ明らかになってくると趣が増してくる。22年前の事件が3人の娘へ影響を与えて、無意識の内にも過去をなぞるような行動に出るのだ。

長女ソフィ(エマニュエル・ベアール)は母親と同じように夫をアパートから締め出す。次女セリーヌ(カリン・ヴィアール)は父親に迫った男子学生セバスチャンと同様に全裸になって報われない愛を求める。大学教授フレデリック(ジャック・ペラン)との不倫に固守する三女アンヌ(マリー・ジラン)の姿はセバスチャンと重なる。彼女たちの苦悩の日々はこの事件から始まっていたのだ。

そして、最後に唖然とする仕掛けが用意されている。さすがヨーロッパ映画だ。簡単に救いを与えず、女性の情念を厳しく残す。

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2006/09/13

かもめ食堂

「かもめ食堂」★★★★★
(京都シネマ1)2005年日本
監督:荻上直子
原作:群ようこ
脚本:荻上直子
出演:小林聡美 片桐はいり もたいまさこ ヤルッコ・ニエミ

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かもめ食堂@映画生活

本作品の中でもっとも特徴的なエピソードは、マサコ(もたいまさこ)のトランクをめぐるもの。飛行機の乗り継ぎで紛失したまま、いつまでも出てこない旅行用トランク。やっと見つかり部屋で開けてみると、意外なものが一杯で光輝いていた。

映画全体が現実的なようで現実的でない、不思議な世界となっているが、それを象徴させる挿話となっている。これは彼女の探し求めていた<生命の輝き>を表現したものであろうか。

小林聡美の存在感が際立っている。優しさの中にもドライな感じを滲ませ、凛とした佇まいを見せる。「人はみな変わっていくものですから」という台詞には、重々しい説得力があった。久々の映画主演であるが、さすがと感じさせる。「転校生」(1982)で発揮された演技力は健在である。

彼女の温かな笑顔によって、かもめ食堂は満席になっていくのであった。

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2006/09/12

僕のニューヨークライフ

「僕のニューヨークライフ」★★★★
(盛岡フォーラム1)2003年
アメリカ/フランス/オランダ/イギリス
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
出演:ジェイソン・ビッグス クリスティーナ・リッチ
   ウディ・アレン ダニー・デヴィート

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僕のニューヨークライフ@映画生活

優柔不断で悩みつづける主人公と言えば、これまでのウディ・アレン映画ではそんなに珍しい存在ではない。特徴的なのは、ドーベル(ウディ・アレン)がジェリー(ジェイソン・ビッグス)を導くように対話を続けて、物語が進められていることだ。

この設定が興味深いのは、見た目どおり2人の意表を付く会話劇となっているだけでなく、ジェリーの自問自答であるとも感じさせることだ。

エージェントと契約更新をしない。恋人と別れる。ニューヨ-クから離れる。ドーベルに引っ張れるようにして人生の岐路に直面していくが、それらはジェリーの隠れた願望であった。決断できない弱さを乗り越えるべく、ジェリーの理想とする人格を体現しドーベルは存在している。

わがままなクリスティーナ・リッチに振り回されるジェイソン・ビッグスといえば、エーリク・ショルビャルグ監督の『私は「うつ依存症」の女』(2001)を思い出す。タイプの違う作品で、同じような人間関係を演じるのは珍しいことではないだろうか。

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2006/09/08

イントゥ・ザ・ブルー

製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:ジョン・ストックウェル

映画にどこまでリアリティーを求めるか。明らかにこんなことは現実世界では起らないだろうと感じてしまったとき、映画の世界から分離されてしまう。それを自分の心の中で調整し、うまく折り合えがつけばいいのだろうが、本作品ではそれが叶わなかった。

一番気になったのは、普通の若者たちがそんな簡単に人を殺すことができるのかということだ。いかに相手が悪人とは言っても、迷いなく殺害を行ってしまうことに違和感を覚える。

そして、偶然に発見した麻薬密売に手を出すかどうかの決断は、主人公ジャレッド(ポール・ウォーカー)が行うべきなのに、トラブルメイカーの二人組に引き摺り込まれる形となり、主題がぼやけてしまった感もある。これでは慎ましい生活でいいとするサム(ジェシカ・アルバ)の価値観が活かさせてこないではないか。

そもそも、借金に追われた弁護士ブライス(スコット・カーン)は麻薬を見つけたとき、もっと早く行動するのが本当ではないか。そこまでのもたつきも減点だ。同じ話でも構成を変えればより面白くなったと感じさせ、大いに惜しまれる。

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