リチャード・ニクソン暗殺を企てた男
製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:ニルス・ミュラー
本作品が興味深いのは失敗していく思考法を見せてくれるからだろう。サム(ショーン・ペン)という男の生涯を見て、ダメ男と言って切り捨てるのは容易い。
だが、うまくいかないのは何故か。そこにはうまくいく筈のない要因ばかり揃っているのだ。出発点も方法も間違いで、この結果は意外でもなんでもなく、ある種必然と言ってもいい。
もう一度、家族と一緒に暮らす。事業を成功させる。その夢は正しいが、それをどうしたら実現させるか、その手段が適切でない。すべては結果しか見ていないのだ。だが、この男にはそれが分っていない。
狭い価値観。嘘を嫌う潔癖性。激しい思い込み。極めて狭い視野で物事を見ている。そして、うまく行かない原因を自分ではなく他者に求めてしまうことの愚かさ。これでは何をやってもうまくいくはずはない。
そんな彼と対比させる形で、別居している妻マリー(ナオミ・ワッツ)、黒人の友人ボニー(ドン・チードル)、事務機具店の上司ジャック(ジャック・トンプソン)らが配置されている。彼らに共通しているのは理想よりもまず生活するために稼ぐことを当然としていることだ。
彼らは常識ある社会人として、サムに色々と話をするが、彼は全く耳を貸さない。素直に話を聞くことができれば、違う道も開けてきただろうに。
この種のドラマで思い浮かべるのは「タクシードライバー」(1976)である。同じ狂気を抱きながらトラヴィスに共鳴できたのは、戦争による心の傷ということがあるからだろう。
そして、結果的に彼の行為が一人の少女を救ったのに対し、サムはただ自滅に終ってしまった。その違いがある。
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コメント
TBありがとうございます。
こういう、どうしようもない人間の役がぴったりはまるショーン・ペンが、ひらりんは好きです。
投稿: ひらりん | 2006/07/16 03:48