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2006/06/15

ある朝スウプは

製作年:2003年
製作国:日本
監 督:高橋泉

「だから、具体的に説明してよ」。新興宗教に惹かれていく理由、拒否する理由を互いに問い質す場面が印象深い。明確に言葉で説明しようとも、すぐに答えが詰まってしまうのだ。

つまり、“好き嫌い”の感情なのだ。それを言葉にして相手に伝えようとしても、相手が同じ感情を抱いていなければ、困難なのである。新興宗教という特殊な問題提起で際立つが、これは普遍性のある問題だと感じる。

そういう意味で幕切れの台詞、「他人なんだね」の言葉が深く心に響く。

ヘッドフォーン式携帯音楽プレーヤーをつけて、空や風景を眺める志津(並木愛枝)の姿が何度も挿入されている。パニック障害の北川(廣末哲万)と違い、巧く社会に適応しているようであるが、彼女も心の中でどこか欠落しているところがあるのであろう。

似たところのある二人であるが、それでも決定的に乗り越えられない溝ができてしまった。その無念さがある。どんなに愛するものであっても真から分かり合おうとすることは、所詮不毛なことなのであろうか。

それを、追い求めるから互いに傷つくことになる。自分の孤独をしっかり抱え、他者への共感を求め過ぎないこと。寂しいが、その諦観も必要なのではないか。

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受信: 2006/06/17 15:15

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