風の前奏曲
製作年:2004年
製作国:タイ
監 督:イッティスーントーン・ウィチャイラック
ファースト・シーンとラスト・シーンに登場する蝶。ソーンに音楽の才能を届ける神の使いであったのだろうか。とても象徴的に使われている。こうしたところに詩的イメージが広がる。
伝統音楽を規制し、近代化を進めようとするウィラ大佐(ポンパット・ワチラバンジョン)。クライマックスでソーン師(アドゥン・ドゥンヤラット)がラナートを弾くのは、反発心からではなく、この大佐のためであろう。
ここで効いてくるのは、息子がピアノを購入したとき、ソーン師は排他的態度をとることなく、見事にラナートとピアノで合奏した場面である。
二者択一的に価値観を決めることの愚かさ。伝統を葬り去ろうとすることは決して近代化には繋がらない。そのことを訴えたかったのである。
その真摯な想いは大佐だけでなく、観る者すべてに伝わっていく。
初めて聴くラナートの雅的な音色に魅了される。こうして未知の世界に触れるとき、映画というメディアの素晴らしさを改めて感じる。
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