« プロデューサーズ | トップページ | 息子のまなざし »

2006/06/28

風の前奏曲

製作年:2004年
製作国:タイ
監 督:イッティスーントーン・ウィチャイラック

ファースト・シーンとラスト・シーンに登場する蝶。ソーンに音楽の才能を届ける神の使いであったのだろうか。とても象徴的に使われている。こうしたところに詩的イメージが広がる。

伝統音楽を規制し、近代化を進めようとするウィラ大佐(ポンパット・ワチラバンジョン)。クライマックスでソーン師(アドゥン・ドゥンヤラット)がラナートを弾くのは、反発心からではなく、この大佐のためであろう。

ここで効いてくるのは、息子がピアノを購入したとき、ソーン師は排他的態度をとることなく、見事にラナートとピアノで合奏した場面である。

二者択一的に価値観を決めることの愚かさ。伝統を葬り去ろうとすることは決して近代化には繋がらない。そのことを訴えたかったのである。

その真摯な想いは大佐だけでなく、観る者すべてに伝わっていく。

初めて聴くラナートの雅的な音色に魅了される。こうして未知の世界に触れるとき、映画というメディアの素晴らしさを改めて感じる。

|

« プロデューサーズ | トップページ | 息子のまなざし »

製作年:2004年」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 風の前奏曲:

» 風の前奏曲 [日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~]
タイの伝統的な楽器ラナート(船の形をした共鳴箱に21~22枚の音板を並べ、バチで叩いてメロディーを奏でる木琴)の天才で、タイの国民的尊敬を集めるソーン師の生涯にヒントを得て作られた映画。 息を引き取ろうとしているソーン師。彼の脳裏には、若き日の思い出が去来します... [続きを読む]

受信: 2006/06/28 07:03

» 『風の前奏曲』 [ラムの大通り]
----この人、だれ?メジャーリーグで活躍している井口選手に似ているけど? 「(笑)それはないだろう。 彼は、行定勳監督の『春の雪』にも出演しているアヌチット・サパンポン。 タイでは“レスリー・チャンの再来”と言われるほどの人気スターらしいよ」 ----ふうん、タイの映画なんだ?あれっ、楽器みたいなのを弾いてるよ。 「これは“ラナート”と呼ばれるタイ風木琴。 映画は実在したタイ式伝統音楽の巨匠ソーン師の実話に基づき、 彼が音... [続きを読む]

受信: 2006/06/28 10:05

» 『風の前奏曲』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY]
美しい音楽が心地よい。白熱の演奏バトルが見ごたえあり。 タイの伝統楽器ラナート奏者ソーン・シラパバンレーンの物語 19世紀末の青年期と1930年代の晩年の2つの時代を描く。大好きな音楽映画。伝統楽器とあっては必見。 木琴の音色って、小学生の頃から大好きだったのだけど、 ラナートの音色も格別。その美しい調べを充分に堪能。 ゆったりとした雰囲気が続く映画と思いきや、 『ドラムライン』を思い出すような競演会が見どころ。 競争相手と対面式で演奏するというのはドキドキもの。 どっちの演... [続きを読む]

受信: 2006/06/29 02:21

» FUN×4 1/2 [FUN×5 ~五つの楽(fun)を探して~]
「OPEN」 [続きを読む]

受信: 2006/06/29 22:41

» [ 風の前奏曲 ]タイトルから想像できぬほどのパッション [アロハ坊主の日がな一日]
[ 風の前奏曲 ]@銀座で鑑賞。 “ラナート”と呼ばれるタイ式木琴奏者ソーンの生涯を描 いた作品。 映画の前半のほうは、正直、人間描写のうまさを感じられ なかった。しかし、後半、一人の木琴奏者ソーンの人生の 過去と現在を行きつ戻りつしながら、演奏のバトルを通じ て、彼の音楽に賭けた情熱を浮き彫りにする演出は、説得 力あり。 ... [続きを読む]

受信: 2006/07/10 18:59

« プロデューサーズ | トップページ | 息子のまなざし »