« 村の写真集 | トップページ | クレールの刺繍 »

2006/05/07

帰郷

製作年:2004年
製作国:日本 
監 督:萩生田宏治

「どうしていなくなってしまうんだ」。神社で姿の見えなくなったチハル(守山玲愛)に晴男(西島秀俊)は激しく怒る。この場面が本作品の白眉だ。

突然の母親の再婚。昔、別れの言葉もなく消えてしまった恋人・深雪(片岡礼子)との再会。そして、またも行方不明。晴男は自分にとって大切なものが喪失していくことを自分のせいだと考えてしまう男である。その内にこもった忸怩たる思いの強さは、締めつかれるばかりで解放されることがない。人と人の間で起ることはどちらかが全て悪いということはないのに。この場面の晴男の怒りは、それまで積もり積もったが一気に噴出したのだと思う。

その怒りを浴びてしまう災難のチハルがまたいい。シングルマザーに育てられた強さと寂しさが、場面場面によって発露されてくる。「心は胸にある。キュンと痛くなるから分るんだよ」という台詞も出てくる。この小さな胸が何度痛んだのだろうかと思うと切ない気持ちにさせられる。

タイトルバックで故郷に帰る電車の中、進行方向に首を曲げていた晴男だが、ラスト・シーンでは、逆に振り返って見せる。ここにも大きな意味がありそうだ。晴男はこの帰郷の時間で何かが変わったのだ。そう強く確信させられる。

|

« 村の写真集 | トップページ | クレールの刺繍 »

製作年:2004年」カテゴリの記事

コメント

TBありがとうございました。
晴男の少女への父性愛は、徐々に形成されてきたのかと思いましたが、神社での怒り爆発から一気に加速したのかもしれないですね。ラストシーンの晴男、明らかに成長の跡が見えますが、振り返る行為は親子に対する未練も写しているかな、と思いました。

投稿: sabu | 2006/05/07 11:52

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/59722/9936917

この記事へのトラックバック一覧です: 帰郷:

» 「故郷」西島秀俊のリアル [soramove]
「故郷」★★★ 西島秀俊、片岡礼子 主演 不思議な映画だ。 何の解決というか 最初から問題なんか無かったかもしれないのに、 エンドロールではなんだか 爽やかな気分。 これは西島秀俊という 役者に負うところが 大きい気がする。 母の結婚式に 帰郷す...... [続きを読む]

受信: 2006/05/07 10:04

» 『帰郷』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY ]
思い出との再会が初めての感情を生み出す。 突然再婚することになった母の結婚式出席のために晴男は故郷に帰る。 偶然にかつての恋人深雪に再会し、翌日彼女の娘と過ごすことになる。出演作目白押しの中でも、主演作では格段に持ち味発揮の西島秀俊。 純朴な晴男役がとてもハマっていて、心寄り添ってしまいました。 どちらかというと淡泊なキャラなんだけど、ここぞという時の誠実さが頼もしい。 子どもの相手なんてしたことないはずの晴男が7歳のチハルちゃんと 戸惑いつつも共に行動し、心を通じ合わせていく過... [続きを読む]

受信: 2006/05/07 11:03

» 帰郷(DVD) [ひるめし。]
君に出会えて、僕はほんの少し大人になった。 CAST:西島秀俊/片岡礼子/高橋長英/守山玲愛  他 ■日本産 82分 近年やたらと映画に出ている西島秀俊さんの主演作。「DOLLS」以来らしい。「DOLLS」って菅野ちゃんが主演じゃなかったの?W主演? 西島さんってぶっきらぼうでマイペースな演技だな〜っていつも思ってた。 小山さんにふりまわされっぱなしのハルオくん。ちょっとかわいそうな気がした。 チハルちゃん... [続きを読む]

受信: 2006/05/07 13:54

» 帰郷 [まつさんの映画伝道師]
第184回 ★★★★(劇場)  この時期、お盆でふるさとへ帰省という人も多いだろう。  久しぶりに友人と集まると思わぬ変化に戸惑うことがある。結婚だとか子供が生まれたなどの「お祝い事」ならまだしも、会社を辞めていたり離婚していたりと、その場の空気が....... [続きを読む]

受信: 2006/05/07 18:24

» 帰郷 [秋日和のカロリー軒]
グッときちゃってもいいですか  どこにでもいる男、30代の独身男が母親が再婚するというので久々に故郷に帰る。そこで、たまたま“初めての女”と再会する。彼女には一人の娘がいる。その子の名はチハル。「ハル」は男の名晴男から取ったという。「それってオレの子って...... [続きを読む]

受信: 2006/05/07 21:20

« 村の写真集 | トップページ | クレールの刺繍 »