やさしくキスをして
製作年:2004年
製作国:イギリス/ベルギー/ドイツ/イタリア/スペイン
監 督:ケン・ローチ
生活環境の決定的な違い。その溝を巧く説明できず、カシム(アッタ・ヤクブ)はロシーン(エヴァ・バーシッスル)に「白人には理解できない」と断言してしまう場面が続く。二人が結婚を前提に巧く生活するためには、どちらかがそれまでの文化や宗教を捨てて、相手側のそれに合わせなければならないのだ。しかし、そのことは自分のアイデンティティを失うことでもある。カシムが優柔不断のように見えるが、その葛藤は至極当然である。
この映画のポイントは、妹タハラの存在であろう。伝統社会にいることを良しとする姉。留まりたいが居心地が悪いとも感じる兄。そんな兄弟と対比させ、全ての文化を融合し新たな道を模索する妹の存在が鮮やかに写る。冒頭のスピーチが印象深い。
ラスト・シーンも秀逸。今は良くても、将来二人の生活が幸福であるのか、その不安感は決して消えることはない。確かに困難な道になるだろう。辛い出来事もたくさん起ると思う。だが、何より大切なのは一緒にいたいと思う気持ち。それを強く感じさせる幕切れであった。
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» 『やさしくキスをして』 [かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY]
恋は垣根を取っ払う力を持つのかもしれない。
ケン・ローチのやさしいラブストーリー。
スコットランド、グラスゴー。パキスタン移民二世のDJカシムは妹の通う
カトリックの高校で音楽を教えるアイルランド出身のロシーンに出逢う。原題 「AE FOND KISS」 は劇中で演奏される伝承曲のタイトルで、
その詩はスコットランドが誇る18世紀の詩人ロバート・バーンズによるもの。
冒頭、高校生の妹タハラによる教室でのスピーチに心を動かされる。
人々がイスラムを単純化して見ることを問題視し、異議... [続きを読む]
受信: 2006/04/29 14:12
» 「やさしくキスをして」 [It's a wonderful cinema]
2004年/イギリス・ベルギー・ドイツ・イタリア・スペイン
監督/ケン・ローチ
出演/エヴァ・バーシッスル
アッタ・ヤクブ
ケン・ローチ監督作品。切ない恋愛映画です。
カソリックの高校教師ロシーンは、教え子の兄でパキスタン移民のカシムと恋に落ちる。だが、彼には親の決めた婚約者がいた・・・というお話。
多くの日本人は宗教に対して考え方が緩やかだと思う。クリスマスを祝った一週間後には神社へ初詣に行く、という感じだし。他宗教に関して寛容な考えを持っていると思う... [続きを読む]
受信: 2006/04/29 18:52
» DVD「やさしくキスをして」 [☆ 163の映画の感想 ☆]
ケン・ローチ監督作品。
スコットランド・グラスゴー。カトリックの高校で音楽教師をする女性ロシーンと、パキスタン移民二世のカシムとの恋物語。
人種、宗教、環境、全く違う2人の恋愛には当然、困難が。。。
イスラム教徒のカシムの両親は、当然イスラム教、同じ...... [続きを読む]
受信: 2006/04/29 23:53
» 『Ae Fond Kiss…(やさしくキスをして)』―『My Big Fat Greek Wed... [フィルム・アカデミア]
すごくすごく、また自己紹介から始めないといけないくらい、お久しぶりです。Corinです。ちょっとしばらく東京砂漠で迷子になっておりましてですね…。まあ、それはいいとして、今日は『Ae Fond Kiss(やさしくキスして)』というケン・ローチ監督の作品にめぐり逢う機会があったので、レビューです。ミニ・シアター系での配給作品ということで、あまり有名ではないかもしれませんので、まずは簡単に物語の説明を。
舞台は英国スコットランドの都市、グラスゴー。パキスタン系一家の長男のカシムと白人のアイルランド... [続きを読む]
受信: 2006/05/01 02:31
» 『やさしくキスをして』’04・英・伊・独・西 [虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ]
DVD やさしくキスをして<送料無料>あらすじスコットランドのグラスゴー。アイルランド人のロシーン(エヴァ・バーシッスル)はカトリックの高校で音楽教師をしているがある日、教え子の兄カシム(アッタ・ヤクブ)と出会い恋に落ちる。しかし、カシムの父は厳格なイス...... [続きを読む]
受信: 2006/05/01 22:36
» 『やさしくキスをして』 [*Sweet Days* ~movie,music etc...~]
やさしくキスをして
監督:ケン・ローチ
CAST:エヴァ・バーシッスル、アッタ・ヤクブ
スコットランド、グラスゴー。イスラム教のパキスタン人の家に産まれたカシムは、妹が通うカソリック系の高校で音楽を教えているロシーンと出会い恋に落ちる。強く惹かれ合う2人だが、大きな壁が立ちはだかる・・・・
同じくケン・ローチ監督の『SWEET SIXTEEN』の様な尖った感じでは無く、若い2人が必死でお互いを求め合う切ない恋のお話です。が、その恋のお話の根底には、宗教や人種差別などの根深い問... [続きを読む]
受信: 2006/05/23 09:19
» NO.129「やさしくキスをして」(英・独・伊・スペイン/ケン・ローチ監督) [サーカスな日々]
ケン・ローチはとりたてて、
「恋愛映画」を撮りたかったわけじゃない。
イギリスの社会派監督ケン・ローチが、はじめての「恋愛映画」をつくったという。ベルリン国際映画祭に招待され、上映後、拍手が鳴り止まなかったという。
この映画のどこが、「恋愛映画」というのだろう?僕には、きわめて真面目に、イスラムとカトリック、その宗教的伝統と、一見現代的な価値観を持つ、普通の音楽教師とDJ志望の若者の間の乖離を、戯画風に描いた�... [続きを読む]
受信: 2006/05/23 14:19
コメント
こんばんは。
ラストが優しい終わり方であることに救いを見出せました・・・
ああいう社会も、そうしてこざるを得なかったから出来上がったんだと思います・・・
だから、今では何の解決も何もなってはいないけれど、タハラのように、どこかで前に進まなければ、何もかわらないのかもしれませんね。
投稿: カオリ | 2006/11/20 19:22