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2006/03/05

SAYURI サユリ

製作年:2005年
製作国:アメリカ 
監 督:ロブ・マーシャル

貧しい漁村に生まれた千代は9歳で花街の置屋に売られる。そこには売れっ子芸者、初桃がいた。下働きの辛さと初桃の執拗ないじめに千代は希望を見失いかけていた。そんなある時、“会長”と呼ばれる立派な紳士が優しく声を掛ける。いつか芸者になって会長さんに再会したいと千代は願うのだが…。

水のような生命力を持つ瞳。例え障害が遭っても別の道を見つけ出し、力強く前進することを止めることができない。千代(チャン・ツィイー)の生涯はまさに水のようである。

興味深いのは、彼女が能動的に行動すると、悉く失敗してしまうのだ。置屋を抜け出し姉のところに向かおうとしたり、延(役所広司)の求愛を断るために一芝居を打ったりしようとすると、手痛い失敗に見舞われてしまう。といって、ずっと不遇の境遇が続くというわけでなく、どこからか救いの手が差し伸べられるのだ。必死に行動すれば必ず上手くいくわけでない。

だが、諦めないで生きていけば別の道が待っているかもしれない。望んだ形とは違うかもしれないが、彼女は幸福を手にしていくのだ。そのためには、喪失や挫折を認めることが必要であろう。会長への想い、それぞれをはっきり断ち切って彼女は前進していく。そのけじめの儀式として終盤での岬の場面が切なく残り続ける。

「ラスト サムライ」(2003)では侍を美化した日本の描写が我慢できなかったが、本作品の芸者を美化させた日本は不思議と許容できた。あれは本来の侍ではないという思いの残る「ラスト サムライ」に対して、こんな芸者が居てもおかしくはないという「SAYURI」。私の認識するリアリティーの違いがここに現れている。確かに日本語と英語が混ざった台詞が飛び交い、日本であって日本でない不思議な異界ではあるが、そこで生活する人物たちの情念は普遍性を帯びていると思う。

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コメント

フェミニズムの立場から観ると、共感できる点が全くなかったので、非常に辛い時間を過ごしました。
「シンデレラマン」もそうでしたが、国内外を問わずバックラッシュの刷り込みが行われているような気がします。

投稿: マダムクニコ | 2006/03/05 23:48

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