ベルリン、僕らの革命
製作年:2004年
製作国:ドイツ/オーストリア
監 督:ハンス・ワインガルトナー
ドイツ、ベルリン。ユールは借金をかかえアパートの家賃が払えなくなり、恋人ピーターの部屋に転がり込む。彼はピーターの15年来の親友ヤンと暮らしていた。ユールは最初ヤンを気味悪がるが、ピーターの旅行中、引き払うアパートの片付けをヤンに手伝ってもらってから親しくなっていくのだが…。
2005年11月にフランスで若者たちによって起こされた大暴動。その根底に流れるものは、本作品と綿密に繋がっていると思う。若者の反体制思想は、どこで爆発するか分からないものだ。現代の日本ではどうなのか。こういう暴動という形では発露しないかもしれないが、様々なストレスが溜まっているのは間違いない筈だ。理想の世界を築くことは容易でないが、現在の社会を否定するのは容易い。
金持ちは金持ちであるがゆえにますます金持ちになっていく。本作品ではその仕組みの一端が窺えた。交通事故が起きる。富める被害者はその対応を弁護士に任せしっかりと補償を勝ち取る。一方、貧しい加害者は保険にも加入しておらず、事故の賠償金を支払うために家賃も払えなくなってしまう。単純計算で5年間分の賃金に相当するその金額も、金持ちにとってはわずかなものでしかない。それでも、被害者は払い続けなければならないし、金持ちはそんな事情すら知らないでいるのだ。
本作品のポイントは、誘拐された金持ちが昔は反体制闘士であったということである。彼がなぜ反体制思想をなくしていったのか。それが興味深い。彼らの監禁生活は、誘拐される、誘拐したとの関係を曖昧にしていき、一つの共感を抱くまでに至る。若者たちは自分の未来の姿を感じ取るし、金持ちは過去の自分を垣間見るのだ。だが、その共感は特殊な状況が招いた一時のことであった。苦さとかすかな希望を感じさせるラスト・シーン。
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この記事へのトラックバック一覧です: ベルリン、僕らの革命:
» ベルリン、僕らの革命 [ネタバレ映画館]
男2人と女1人という設定は、どうしてこうも数多くドラマになるのだろう。 [続きを読む]
受信: 2006/02/20 21:07
» 「ベルリン、僕らの革命」 [the borderland]
この映画を見て思ったのが、私には革命はできない!ということ(^^;
ドイツの現状って判らないのだけど、主人公たちに共感できないってことは、私も資本主義にどっぷり浸かってるからか、オヤジの気持ちの方が良く判るのは、もう年ってこと?!
そう考えるとリトマス試験紙のような映画ですね(^^; 社会派みたいなこと書いてますが、基本は青春映画なので、お間違いなく。
正義感の強いヤンと親友のピーターは、今の社会に不満を持っている。そして金持ちの留守宅へ押し入り、物は取らず家具を動かして、「ぜいたくは終わ... [続きを読む]
受信: 2006/02/20 21:38
» 『ベルリン、僕らの革命』 [ラムの大通り]
------『ベルリン、僕らの革命』?
これって現代(いま)のことだよね。
「そう。でもその中で語られるのは資本主義の弊害。
かつて世界的に火がついた学生運動の時代を
思い起こさせる映画となっていた」
------ふうん、いまの時代には合わないわけだにゃ。
「主人公はヤンとピーター、若者二人の義賊(?)。
その名も『エデュケーターズ(教育者)』というんだ。
彼らは大金持ちの邸宅に忍び込んでは
高級な調度品を積み上げたり配置�... [続きを読む]
受信: 2006/02/20 22:48
» 「ベルリン、僕らの革命」 [試写会帰りに]
飯田橋ギンレイホールにて「ベルリン、僕らの革命」を観る。 ストーリーのベースには、今現在のドイツ、ベルリンに生きる若者の思う理想、主義の為の“革命”がある。 “革命”という言葉と一番かけ離れたところに生きているように思える現代日本人である自分は、映画を観..... [続きを読む]
受信: 2006/02/20 23:26
» 「ベルリン、僕らの革命」 [NUMB]
ベルリン、僕らの革命
「ベルリン、僕らの革命」 ★★★
DIE FETTEN JAHRE SIND VORBEI、THE EDUKATORS(2004年ドイツ/オーストリア)
監督:ハンス・ワインガルトナー
キャスト:ダニエル・ [続きを読む]
受信: 2006/02/21 00:03
» 心理戦に最後まで引き込まれる◆『ベルリン、僕らの革命』 [桂木ユミの「日々の記録とコラムみたいなもの」]
5月25日(水)名演小劇場にて
「何か、難しい話だったね。革命とか、よく分からないし」
映画が終わった瞬間、私の近くに座っていた大学生風の女の子が、連れの男の子に言っていた。そんなに難しい話だったかな?
実のところ、私にも「革命」なんてものはよく分からない...... [続きを読む]
受信: 2006/02/21 00:07
» ベルリン、僕らの革命 /やっぱりメルヘン? [マダム・クニコの映画解体新書]
(ネタバレ注意!)世界中の若者へのメッセージを込めた、辛口のラブ・サスペンス。手持ちカメラの揺れが、若者の不安感を的確に表現、破滅を予感させる映像だが、暗い感じはしない。
「富裕層に恐怖を味わわせること」が資本主義社会へのレジスタンスである、と信じて、夜ごと豪邸に不法侵入。部屋をめちゃくちゃに模様替えして、「贅沢は終わりだ。教育者より」と書いた張り紙を残すヤンとピーターの2人組。そこにピーターの恋人・�... [続きを読む]
受信: 2006/02/21 05:37
» ベルリン,僕らの革命 2004年/ドイツ・オーストリア [一日一生〜僕のサンクチュアリ〜]
監督・脚本:ハンス・ワインガルトナー
CAST:ダニエル・ブリュール、ジュリア・ジェンチ、スタイブ・エルツェッグ、ブルクハルト・クラウスナー
東西ベルリンの統合以来、貧富の差が広がりを見せるドイツ。
日本もあながち例外ではないが…{/kaeru_shock2/}
本作は、そんなドイツを舞台にした青春映画である{/hikari_blue/}
理想主義者のヤン、その親友のピーター、ピーターの恋人であるユール。
�... [続きを読む]
受信: 2006/02/22 01:09
» 『ベルリン、僕らの革命』の本音と建前 [Dead Movie Society★映画三昧★]
実は先週末まで約1週間、有楽町マリオンで
ひっそり「ドイツ映画祭」が開催されていた。
すでに日本でも昨年公開された『飛ぶ教室』や
『グッバイ、レーニン!』といったヒット作、
日本未公開作が何本も上映されていたのだが、
やはり最近見たドイツ映画で最も印象に残っ... [続きを読む]
受信: 2006/02/22 05:34
» 「ベルリン、僕らの革命」 [るるる的雑記帳]
「ベルリン、僕らの革命」を観ました。 [続きを読む]
受信: 2006/02/28 10:06
» ベルリン、僕らの革命(DVD) [ひるめし。]
CAST:ダニエル・ブリュール/ユリア・イェンチ/スタイプ・エルツェッグ/ブルクハルト・クラウスナー 他
■ドイツ/オーストリア産 126分
主演のダニエル・ブリュールって濃い・・・。かっこいいとも思わないし・・・。ドイツ人にはかっこいい顔なのかしら?
もっと模様替えのシーンがあったらおもしろくなったかも。でも娯楽作品じゃないしね〜。
ユール役のユリア・イェ�... [続きを読む]
受信: 2006/03/05 09:24
» 「ベルリン、僕らの革命」を観た [神々の黄昏 ―Gotterdammerung―]
いきなりですが、主演のダニエル・ブリュールってあの有
名俳優に似ていませんか?
ずばり、有名俳優とは「24」のキーファー・サザーランド。
ブリュールの顔の輪郭、瞳の力強さを見ていて、俺には
ブリュールがまるでサザーランドの息子であるように錯覚
してしまった(うーん、でも息子と言うには年の差を感じな
いな。年が離れた弟と例えたほうが適当だろうか)。
ドイツ版サザーランドのブリュールが、「グッバイ... [続きを読む]
受信: 2006/03/11 09:21
コメント
>共感は特殊な状況が招いた一時のことであった
単純なラストにしていないところが、本作のすばらしさですね。
ドイツ版では、その後編もあるようで、共感した状況が持続するそうです。
投稿: マダムクニコ | 2006/02/21 05:35
TBありがとうございました!
後編があるんですか?
それって、続編?
見てみたいですね。
投稿: 映画三昧 | 2006/02/22 05:39