« 青空のゆくえ | トップページ | 私の頭の中の消しゴム »

2006/01/19

春の雪

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:行定勲

大正初期。侯爵家の嫡子・松枝清顕は幼少の頃、行儀作法を学ぶため名門華族の綾倉家に預けられ、その令嬢・聡子とともに育った。時が経ち、清顕は久しぶりに聡子に再会するが、聡子への恋心を素直に表せずにいた。やがて聡子に宮家の洞院宮治典王との縁談話が持ち上がるのだが…。

身勝手。へそ曲がり。自業自得。本作品の主人公・松枝清顕(妻夫木聡)へ素直に感情移入できる観客は少ないのではないか。純愛メロドラマの主人公としてはかなり偏った性格を持っている。逆説的に言えばそういうドラマとして観てはいけないということではないか。本作品を面白く観るためには、主人公たちの価値観を尊重し彼らが何故そんな行動を取ったのか注意深く思考することが必要である。

松枝は単に自分の気持ちを素直に伝えられないという朴訥とした男ではない。大正という時代が自由な恋愛を許さないということがあるにしろ、ほんの少しでも努力していれば自然に聡子(竹内結子)との幸福を手にした筈である。彼は障壁を設けないと愛することができない男だったのだと思う。空想の遊郭通いや友人の本多(高岡蒼佑)を聡子と結びつけようと画策するところから始まり、宮家の婚約、聡子の出家、自分の病気など壁の高さがどんどん増していくに比例して、彼の恋心も高まっていく。彼は決して悲恋に生きたのではない。彼にとっての理想的な恋愛を堪能したということだ。

一方、聡子もそれに応えてしまう異端の人であった。注目なのは最初のシークエンスの庭園で犬の死体を発見するところ。そこで、その死体に手を触れるという常識的な若き女性がしないような行為をさらりとして、あれっと思わせる。“瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞおもふ”という百人一首が幼少の頃から好きだという設定も活きている。現世では一緒になれなくとも、来世で添い遂げたいという美意識に彼女は突き動かされているのだ。そういう特殊な価値観を持つ二人が起こす運命のドラマであったのだと思う。

|

« 青空のゆくえ | トップページ | 私の頭の中の消しゴム »

製作年:2005年」カテゴリの記事

コメント

こんにちは♪
今の時代の男女の恋愛や考え方とは全く違うので、特に清顕に感情移入する人は皆無でしょうね。
>そういう特殊な価値観を持つ二人が起こす運命のドラマ
あの時代においても特殊な価値観を持っていたと思われます。
それが文学として読むとすんなり来たのですが・・・。

投稿: ミチ | 2006/01/19 23:53

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/59722/8235998

この記事へのトラックバック一覧です: 春の雪:

» 映画館「春の雪」 [☆ 163の映画の感想 ☆]
好きな子には意地悪しちゃう!その子が自分以外の人と結婚するなんて~!!あいつは俺のモノだぁ!! 予告編で観たときは、とっても切ない恋愛話だと思っていのたのですが、、、前半は妻夫木聡扮する公爵家の子息清顕のワガママやりたい放題!↑にも書きましたが、好き...... [続きを読む]

受信: 2006/01/19 21:24

» 春の雪 [ネタバレ映画館]
 久しぶりに死なない竹内結子を見ることができて安心した。と思っていたら清顕の夢の中で死んでるではありませんか!!  今回はできちゃった結婚というおめでたいニュースが飛び交っての公開となった映画。死んでしまったらさすがに縁起が悪いけど、堕胎というシビアな内容のためか、顔色も良くなかったように思われる竹内結子。四季の変化とともに顔色も変化していったように感じたのですが、気のせいでしょう... [続きを読む]

受信: 2006/01/19 22:26

» 『春の雪』 [京の昼寝〜♪]
ケータイのない恋愛を、あなたは想像できますか。 ■監督 行定 勲■脚本 伊藤ちひろ■原作 三島由紀夫「春の雪」(豊穣の海第一巻)■キャスト 妻夫木 聡、竹内結子、高岡蒼佑、榎木孝明、岸田今日子、大楠道代、若尾文子、及川光博、田口トモロウ、石丸謙二郎、宮崎美子、山本 圭、高畑淳子□オフィシャルHP  http://harunoyuki.jp/ 大正時代の貴族社会。 公爵家の子息・松枝清顕と伯爵家・綾倉聡�... [続きを読む]

受信: 2006/01/19 22:40

» 『春の雪』 [ラムの大通り]
----これって三島由紀夫「豊穣の海」の第一部を映画化したんだよね。 「輪廻転生」がテーマだと思ったけど、 このチラシでは「究極の純愛物語」となっている。 「ま、何をもって<純愛>と言うかだね。 この物語は、 侯爵家の子息・清顕と伯爵家の令嬢・聡子の愛を描いたものには間違いないけど、 最初に原作を読んだ時は、ふたりの<駆け引き>が印象に残った記憶がある。 清顕は自分に好意を寄せる聡子を親友の本多に近づけようと、 わざと自分... [続きを読む]

受信: 2006/01/19 23:26

» 19歳と21歳の恋愛には見えない◆『春の雪』 [桂木ユミの「日々の記録とコラムみたいなもの」]
11月13日(日)TOHOシネマズ木曽川にて 侯爵家の子息・松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の令嬢・鎌倉聡子(竹内結子)は幼なじみ。そして時が経ち、聡子は清顕への恋心を伝えるが、清顕は聡子への気持ちを素直に表せずにいた。その頃、鎌倉家では、聡子に宮家の王子との縁談....... [続きを読む]

受信: 2006/01/19 23:36

» 映画「春の雪」 [ミチの雑記帳]
映画館にて「春の雪」★★★★ ストーリー:侯爵家の子息、松枝清顕(妻夫木聡)と伯爵家の令嬢である綾倉聡子(竹内結子)は幼なじみの仲だったが、聡子はいつしか清顕に想いを寄せるようになっていた。しかし、不器用な清顕はその愛情表現に対してうまく応えることが出来なかった。 日本文学の最高峰、三島由紀夫原作の「春の雪」をどうやって映像化するのかとても不安だったが、予想以上に美しい作品に仕上がっていて満足した。 大正時代の「�... [続きを読む]

受信: 2006/01/19 23:49

» 春の雪 [映画でお喋り♪猫とひなたぼっこ]
行定 勲監督を知ったのは 『 GO 』だった。 この映画は 私の 2001年の邦画 ベスト1 {/kirakira/} リピートし  夫や 子供たち(当時 高校1年と 3年)を 連れて行き WOWOWで放映されたのを 録画し(てもらい) 「超オススメ」として 友人たちに そのビデオを 貸しまくっているくらい 好きな作品である。 原作も 買った。 行定 勲 という名前は 心に刻み込みこまれ 『 贅沢な骨 』 �... [続きを読む]

受信: 2006/01/20 09:20

» 春の雪 [Akira's VOICE]
静ひつな空気感と,話す言葉が心地良い文芸映画。 [続きを読む]

受信: 2006/01/20 10:55

» 『 春の雪 』 [やっぱり邦画好き…]
映画 『 春の雪  』?? [ 試写会鑑賞 ] 2005年:日 本 【10月29日ロードショー】 監 督:行定 勲 脚 本:伊藤ちひろ 佐藤信介 製 作:富山省吾 原 作:三島由紀夫 「春の雪」  三島 由紀夫 春の雪  春の雪~清顕と聡... [続きを読む]

受信: 2006/01/20 11:46

» 「春の雪」 [こだわりの館blog版]
三島先生も雲の上で喜んでおられると思います (美輪明宏氏談) 【劇場公開作品より】 11/26 日劇PLEX にて 監督:行定勲 原作:三島由紀夫 撮影:リー・ピンビン 出演:妻夫木聡、竹内結子、高岡蒼佑、岸田今日子、山本圭、榎木孝明、大楠道代、若尾文子、他... [続きを読む]

受信: 2006/01/22 14:10

» 「春の雪」行定勲監督 舞台挨拶レポート [xina-shinのぷちシネマレビュー?]
10月18日月曜日、ファボーレ東宝にて『春の雪』の試写会が行われました。「行定勲」監督の舞台挨拶もあわせて行われました。 [続きを読む]

受信: 2006/02/04 20:58

« 青空のゆくえ | トップページ | 私の頭の中の消しゴム »