製作年:2005年

2009/11/20

パラダイス・ナウ

製作年:2005年
製作国:フランス/ドイツ/オランダ/パレスチナ
監 督:ハニ・アブ・アサド

いまなお世界各地で起きている自爆テロ。その実行犯を描いた作品では「シリアナ」(2005)に衝撃を受けたが、本作品も相当に力のある映画である。イスラエルへの自爆攻撃を行うパレスチナの青年。サイード(カイス・ナシフ)とハーレド(アリ・スリマン)。この二人を主人公とすれば、自爆攻撃の犠牲者遺族から激しい抗議が出ることは止める術はないであろう。だが、本作品は彼らを英雄視して描いている訳ではない。そこに至るまでの様々な逡巡を見せることで、現実の一端を焼きつけようとしているのだ。こうした男たちが今日も命を散らしていく。

サイードの母を演じるヒアム・アッバスは、「シリアの花嫁」(2004)、「扉をたたく人」(2007)、「リミッツ・オブ・コントロール」(2009)など注目作品に出演を続け、注目しておきたい女優さんの一人です。

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2009/10/06

鋼の錬金術師 シャンバラを征く者

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:水島精二

なかなかの秀作であるとの評判を覚えており、期待感を持って見ました。テレビ・シリーズを受けて始まる本作品は初心者的には疑問符ばかりが続き、なかなかその世界観を掴むのに苦労しました。鑑賞後、テレビ・シリーズの粗筋を調べていって、納得する設定でありました。こうしたアニメ・シリーズは大概そうしたものであるので仕方ないけれど、逆に分からない分、その意味を探りながら見ていくのも、想像力を刺激されて面白いものです。欠落感を埋めようと旅を続けるエドワード(声・朴路美)とアルフォンス(釘宮理恵)の兄弟。理想郷“シャンバラ”をめぐる陰謀劇。現実世界と錬金術世界をつなぐ道。

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2009/10/04

ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム

製作年:2005年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:マーティン・スコセッシ

トッド・ヘインズ監督の「アイム・ノット・ゼア」(2007)では、ボブ・ディランのさまざまな側面をイメージさせてくれたが、それを受けて本作品を見ると、さらに興趣が高まると思う。なんと言っても210分という膨大な上映時間でありながら、全く飽きることなく見ることができたのは、ボブ・ディランというアーティストがいかに生まれ、いかに成功していったか、詳細に描かれているからだ。

現在のディランのインタビュー姿からして風格があるのに参ってしまうし、彼の口にするアーティストたちの映像や音楽が次々と挿入されているのが凄い。これだけの資料を集め編集した労を思うと、ただただ感服してしまう。様々な批判にも負けることなく、「でっかくいこう」の声と共にロック・バンドで歌った姿が忘れられません。

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2009/06/14

シリアナ(2回目)

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製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:スティーブン・ギャガン

最初見た時にはよく理解できなかった人物の背景、例えば、ボブ(ジョージ・クルーニー)が誰のために、何の工作をしているのか、2回目となっても良く分からなかった。それで、鑑賞後、様々な背景資料を読んで、なんとか大筋をつかむことができました。説明的でない分、張り詰めた緊迫感を保った映像が素晴らしい。

石油利権をめぐるアメリカと産油国との熾烈な駆け引き。邪魔するものは暗殺も辞さない強硬な意志。悲劇が悲劇を生む恐るべき連鎖。アメリカが中東諸国に対して何をしてきたか赤裸々に綴られている本作品。よくこんな内容で作られるものだと感心するが、作られるには作られるだけの理由があるのだろうか。単に正義派という言葉だけでは収まらない、もう一つの強い意志があるのではないかと思わずにはいられません。

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2009/06/09

奥さまは魔女

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製作年:2005年
製作国:アメリカ
監 督:ノーラ・エフロン

不自由であれば自由を望み、自由であれば不自由を求める。自分に無いものを欲することがこの世の摂理であろうか。魔女イザベル(ニコール・キッドマン)は魔法を使わず普通の生活をしたいと人間界へ舞い降りる。しかし、最初から魔法なしで生活を過ごすことなど出来ない。ポイント、ポイントで魔法を使い続けるのであるが、この辺りの無制限ぶりがいま一つ物足りなく感じる。なんでも思い通りになるのであれば、ジャック(ウィル・フェレル)のことさえもうまく操ることができる筈なのだ。

イザベルにとって何も失うものがないから、何も得るものもないと言える。魔法なしで普通の生活を過ごすという葛藤をドラマに盛り込むべきであった。

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2009/04/15

エンパイア・オブ・ザ・ウルフ

製作年:2005年
製作国:フランス
監 督:クリス・ナオン

夫の記憶だけなくしてしまうという奇病にかかった内務省高級官僚の妻アンナ(アーリー・ジョヴァ-)。パリ10区のトルコ人街で起きた連続猟奇殺人事件。実在しているというトルコの国粋主義組織“灰色の狼”。無関係と思えるそれらが一つに収斂されていく展開は、意外性に富んでおり、もっと面白く感じてもいい筈だ。だが、結果はそうならない。ひとつひとつのエピソードに現実味が乏しく、物語が進むごとに気持は離れていく感じがしました。

若手刑事ポール(ジョスラン・キヴラン)と悪徳警官シフェール(ジャン・レノ)のコンビもバランスが悪い。一番気になるのは、ポールが単身“灰色の狼”のアジトへ乗り込んでいくところ。いくらなんでも無防備すぎるであろう。いくら肉親を犯罪で失ったからとはいえ、ここまで暴走するとは思えない。ここからはご都合主義のオンパレード。なんとも残念な作品でした。

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2008/08/18

雪に願うこと

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:根岸吉太郎

学(伊勢谷友介)は何を獲得しようとしていたのか。都市生活への憧れ。自分だけは違うというエリート意識。ジリジリと焼けるような焦燥感。兄、威夫(佐藤浩市)には決して理解できないその思いは、例え東京での事業に失敗しても、兄の元には戻りたくなかった筈だ。それでも帰ってきたのは、母から無心できるかもしれないという甘い期待からであるが、それも外れてしまう。そして、兄に元で働くという屈辱的な道を選ぶしかなくなる。だが、その生活というのは、学が敵対視するようなものだったのだろうか。学の誤りは、自分以外の価値観を認めず、否定することにあった。ウンリュウの世話を通して、他の価値観に気付いていくのである。彼が東京で再起できるかどうか分からないが、これまでとは違う事業の進め方をするであろう。

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2008/08/08

トンマッコルへようこそ

製作年:2005年
製作国:韓国
監 督:パク・クァンヒョン

知り合ってみれば、同じ人間ではないか。何のために敵同士となり、銃を向け合う必要があるのか。トンマッコル村にたどりついた3カ国の兵士たちは当初いがみ合うが、様々な村での活動を通して、兄弟のような関係を築いていく。こうした展開は「戦場のアリア」(2005)に通じるものを感じる。そして、戦いとは、他者を攻撃するものではなく、大切な者を守るために必要であることを強く印象付けるラスト・シーンであった。雪のように舞い落ちるポップコーンのシーンなど幻想的な美しさを持つ映像も素晴らしかった。

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2008/08/01

隠された記憶

製作年:2005年
製作国:フランス/オーストリア/ドイツ/イタリア
監 督:ミヒャエル・ハネケ

衝撃のラスト・シーンという評判を聞いていたので、どんなものだろうかと待ち構えていたが、あっけに取られる。何が凄いのか、さっぱり分からず、映画は終わってしまう。DVDなので、何回も繰り返して見るが、やっぱり分からない。ということで、鑑賞後に色々なレビューを読んでみて、何が衝撃なのかは分かりました。しかし、それが何を意味しているかは、観る者の判断に委ね様々な解釈をさせるようであります。一体、ビデオテープを送った者は誰だったのか。それは何のためであったのか。これも明確な答えが用意されていないのだが、それもこのラスト・シーンに結び付いていると考えるのが、順当であろう。罪を犯した世代から罪を贖う世代への時代の推移ということではないだろうか。

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2008/07/31

三池 終わらない炭鉱(やま)の物語

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:熊谷博子

冒頭、炭鉱跡の施設をカメラはとらえている。もうニ度、使用されることのない建物や機械を見ていると、なんともノスタルジックな気分に陥っていく。しかし、映画が進んでいくと、そうした感情は一変する。三池炭鉱で起こった歴史の数々を知ると、それらが冷徹な表情を浮かべているように思えてくるのだ。そこに関わった人々の悲喜交々を全て見てきた峻厳を感じる。

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