« マダムと奇人と殺人と | トップページ | 変身(佐野直樹監督) »

2005/12/27

運命じゃない人

製作年:2004年
製作国:日本 
監 督:内田けんじ

婚約者の浮気を知り部屋を飛び出した真紀。行く宛てもなく一人レストランに座っていると、見知らぬ男から声を掛けられる。彼は私立探偵の神田で、中学時代の同級生・宮田と二人で食事していた。宮田は突然姿を消してしまったあゆみのことが忘れられず、覇気をなくている。神田は宮田を励ますため真紀に声をかけたが…。

第9回みちのく国際ミステリー映画祭で鑑賞。

内田けんじ監督も来場し、「気軽に観てもらえるために、死ぬ気で一年間脚本を作りました」と語っておられました。そうなのですよね。たかが娯楽作品だからといって、いい加減な気持ちで作られた作品は、やっぱりそれなりのものしかできない。熱心さがあれば必ずいい映画に仕上がるかというと才能の問題もあって一概にはそう言い切れない。だが、まず必死さが前提としてなければ、観る者の胸を打つようなものは何も生まれてこないと思う。

「30歳を過ぎたら、運命の人なんて出てこない。もう文化祭もクラス替えもないんだよ。友達から始まって少しずつなんてことは絶対に起こらない」。正確な引用ではないがだいたいこんな趣旨で神田は、失恋から立ち直れない宮田へ次の恋を積極的に探せと励まします。この台詞が印象深い。

本作品が際立っているのは、この場面はレストランであったが、コーヒーを注ぎにきたウェーターがこの台詞を聞いてショックを受けているところも、さりげなく描写されているところ。直接、本筋とは絡まないが、こうした細部の充実が映画を豊かにしている。

真紀が鍵を閉め部屋を出るところから映画は始まり、彼女が宮田の部屋を訪ねるところで映画は終っていく。この計算された構成も見事。上映後にこの事を内田監督にお話したら「よく気がついてくれましたね」と笑顔で答えてくれたことも、貴重な思い出として残り続けるでしょう。

|

« マダムと奇人と殺人と | トップページ | 変身(佐野直樹監督) »

製作年:2004年」カテゴリの記事

コメント

みちのく国際ミステリー映画祭って面白そうですね~
この映画は忘れた頃にもう一度見たくなります。wowowで放映されるの待とうっと・・・

投稿: kossy | 2005/12/27 21:39

こんにちは♪
細部まで行き届いた脚本に最後まで一瞬たりとも目が離せませんでした。
こういう作品大好きです。
今年のベスト5に入るかも?

投稿: ミチ | 2005/12/27 22:19

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 運命じゃない人:

» 運命じゃない人 [ネタバレ映画館]
 宮田・・・高価なマンション買ったんだから、防犯にも気をつかえよ。  レストランと宮田の部屋はタイムスパイラル・ムービーの核となった。時空は超えないが、視点を変えることによって徐々に明らかになる事実。「あんたもそこにいるんか!」「おまえもか!」と、かくれんぼをすると必ず人気が出て争奪戦となる隠れ場所のようだ。  『パルプフィクション』のように時系列をバラバラにしてパズルを解くような構成ですが、個人的に真っ先に思い出した... [続きを読む]

受信: 2005/12/27 21:36

» 映画「運命じゃない人」 [ミチの雑記帳]
映画館にて「運命じゃない人」 ★★★★☆ ストーリー:素朴なサラリーマン宮田(中村靖日)、私立探偵をしている友人・神田(山中聡)、婚約破棄で傷心の真紀(霧島れいか)、宮田の元カノ・あゆみ(板谷由夏)、ヤクザの組長(山下規介)がそれぞれの思惑と事情で過ごす一晩。 上手いなぁと脚本に感心することしきり。 登場人物が少しずつリンクしながら、時系列をいじられながら進行する映画や本はよくある。 映画「メメント」もそうだ�... [続きを読む]

受信: 2005/12/27 22:17

» 「運命じゃない人」 [こだわりの館blog版]
8/7 ユーロスペース にて これはおもしろい! 良く練られた脚本に、小気味よいテンポの演出。 ちょっと自主製作映画っぽい雰囲気もありますが、存分に楽しめます。 監督・脚本:内田けんじ 出演:中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏、他 気弱... [続きを読む]

受信: 2005/12/27 22:20

» [ 運命じゃない人 ]知らない人が、一番幸せ [アロハ坊主の日がな一日]
映画[ 運命じゃない人 ]@渋谷で鑑賞。 日本では珍しいスタイルの映画。でかつ面白い。 時間の交差と、人の交差。[ パルプフィクション ]に展開は似ている。あの映画の場合は、メインの主人公の設定はされておらず、次々に人物が登場し、それぞれが何かしら関連しているという設定だが、この[ 運命じゃない人 ]は、主人公の気弱な人のいい宮田武(中村靖日)くんをメインにおいて、彼の知らないところで次々と事件が行っている。 やくざからお金を盗み取った高飛びしようとしている結婚詐欺師で宮田くん... [続きを読む]

受信: 2005/12/27 22:26

» 運命じゃない人 [日っ歩~美味しいもの、映画、子育て...の日々~]
面白かった!! 文句なく、面白かったです。クスクス、ゲラゲラ、笑える場面満載、そして、ほんのりと暖かい気持ちになれる作品でした。 主人公の宮田、そして、その周辺の人たちに起る様々な出来事を追っているのですが、映画の中で、時間が過去から現在へ一方向に流れるの... [続きを読む]

受信: 2005/12/27 23:55

» 「運命じゃない人」 [the borderland]
このチラシの絵どっかで見たことあるなぁと思っていたら、窪之内英策じゃないですか! 彼の最初の作品が『ツルモク独身寮』。私がちょうど高校~大学の頃、登場人物は普通の人たちなんだけど、就職したらあんな風に恋愛できたらいいなぁと思いながら何度も読み返してました。この絵も映画を観終わってから、あらためて見ると実に味わい深い(^^) 脚本がしっかりしていて、無駄がない。 テンポは違うけど、「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」を思い出したなぁ。主人公除いて、みんな自分が一番抜け目無... [続きを読む]

受信: 2005/12/28 00:58

» 運命じゃない人 [アマチュアが嫉妬する面白さ] [自主映画制作工房Stud!o Yunfat 映評のページ]
ぴあのスカラシップ権を得て作ったこの映画。ぴあが認めるだけあって、さすがにアイデアにあふれていて、低予算を知り尽くしていて。そんでもって、とにかく軽い。テクニックだけの薄っぺらさが、しかしながら心地いい。 3人の男と2人の女が絡む一つのストーリーを、3人の男それぞれの視点に切り替えて、繰り返す。ガイ・リッチーとか似たような映画作る人はいるって、わかっていても、やっぱり真似の出来ないセンス。自... [続きを読む]

受信: 2005/12/28 01:42

» 映画「運命じゃない人」 [茸茶の想い ∞ ~祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり~]
ユーロスペースのように狭くて小さい映画館は席によって、アタック25のパネル状態だ。今年のカンヌで脚本賞を受賞し、評判も悪くはなかったこの映画。ある夜の出来事に関わる5人の人々、その同じ夜の同じ舞台なのだが、時間を戻して、また別の人の視点で、まるで別... [続きを読む]

受信: 2005/12/28 01:55

» 低予算映画の見本 「運命じゃない人」 [平気の平左]
評価:85点{/fuki_love/} 運命じゃない人 いいです、この映画。 観にいった映画館・ユーロスペースのトイレはちょっと臭いし、スクリーンは小さいしで、どうなることかと思いましたが、予想をいい意味で裏切る出来でした。 私が、今年観た邦画の中では一番、全体の中でも5本の指に入るくらい作品です。 私がこういう系統の映画が好きなのを差し引いても、なかなかいい映画ではないかと思いま�... [続きを読む]

受信: 2005/12/28 07:36

» 『 運命じゃない人 』 [やっぱり邦画好き…]
映画 『 運命じゃない人  』 [ 試写会鑑賞2005.07.05 ] 監 督:内田けんじ 脚 本:  〃 [ キャスト ] 中村靖日 霧島れいか 山中 聡 山下規介 板谷由夏 他 バラバラになった時間がすべて揃った時、 幸せがやってくる こんなの初めてなタ... [続きを読む]

受信: 2005/12/28 09:31

» 傑作。とにかく観て欲しい◆『運命じゃない人』 [桂木ユミの「日々の記録とコラムみたいなもの」]
8月24日(水) ゴールド劇場にて 日本映画で、しかもそれほど有名な俳優が出ているわけでもないのに、映画ファンの間ではとっても評判の良い作品。しかも、宣伝用のチラシの裏面には、あの黒沢清監督までが「これはもう巨匠の映画だ」と絶賛している。オダギリジョーも「す...... [続きを読む]

受信: 2005/12/28 22:34

» 「運命じゃない人」最高 [エモーショナル★ライフ]
かねてより期待していた作品「運命じゃない人」見てきました。 これは非常に面白かった! 今年見た邦画の中でベスト1と言っても過言ではない出来栄え。 こういう映画こそブログのパワーで口コミ大ヒットとなりそうな気配です。 この映画を全く知らなかった人は 今すぐ..... [続きを読む]

受信: 2005/12/30 02:06

» 運命じゃない人 [★☆★ Cinema Diary ★☆★]
本日3本目は「運命じゃない人」です。   きました、きましたよ!期待以上、メチャメチャ面白かった!!もう最高でした。文句なし!これはもう傑作でしょう。練りに練られた見事な脚本には拍手を送りたいです。僕はほとんど予備知識ゼロで観ました。面白いという噂は耳...... [続きを読む]

受信: 2006/01/02 16:06

» 運命じゃない人 [まつさんの映画伝道師]
第310回 ★★★★(劇場) (ラストについて言及しているので、ご注意あそばせ)  世界は見たままではない。見た目に騙されてはいけない。  世界は巧妙に嘘をついている。時に雄弁な「嘘」は現実になり、「嘘」で塗りたくられた「嘘」は「嘘」の向こう側を....... [続きを読む]

受信: 2006/01/03 05:04

» 映画のご紹介(85) 運命じゃない人 [ヒューマン=ブラック・ボックス]
ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(85) 運命じゃない人 お金と心と どっちが大事? jamsession123goが去年「恋は五・七・五!」を観てブログに記事を書いたら、出演していた....... [続きを読む]

受信: 2006/01/24 16:32

» 『運命じゃない人』’04・日 [虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映画 ブログ]
あらすじ婚約破棄となり、二人で住む家を出てきた桑田真紀(霧島れいか)。サラリーマンの宮田武(中村靖日)は、すぐに人を信じてしまう典型的ないい人。そんな宮田の親友で私立探偵の神田(山中聡)は前の彼女を引きずる宮田のために、真紀をナンパしてくる。そこに行方...... [続きを読む]

受信: 2006/03/26 22:50

» 運命じゃない人 06年155本目 [猫姫じゃ]
運命じゃない人 2004年  内田けんじ 監督中村靖日 、霧島れいか 、山中聡 、山下規介 、板谷由夏 かなり練り込まれた脚本。 1夜の出来事を、登場人物ごとの視点で、何度も見せるんだケド、、、ま、しつこいと言えばしつこいですが、そのたびに、新しい発見がある....... [続きを読む]

受信: 2006/07/29 10:33

« マダムと奇人と殺人と | トップページ | 変身(佐野直樹監督) »