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2005/11/10

トニー滝谷

製作年:2004年
製作国:日本 
監 督:市川準

幼い頃から一人でいることが当たり前だと思って生きてきたイラストレーターのトニー滝谷が、15歳年下の小沼英子に恋をして、結婚する。最愛の女性と過ごす毎日は、これまで味わったことのない幸福をトニーにもたらした。唯一、きれいな服を目にすると買わずにはいられない英子の行為を心配するのであったが…。

100着以上保管されている英子(宮沢りえ)の衣裳部屋。それがトニー滝谷(イッセ-尾形)の心のありようを象徴している。服が無くなると今度は亡き父のトロンボーンや古いレコードが置かれ、そして最後は空っぽになっていく。その部屋に入り妻の服を試着していた久子(宮沢りえの二役)が突然泣き出してしまったのは、滝谷の哀しみの心が伝染してしまったからではないか。

“小説を見る”という実験性の強い形式の作品である。原作を未読なのではっきりと分らないが、小説の原文を西島秀俊が抑揚なく語り、その一部を俳優が呟く。そして、水平に横に動いていくキャメラ。その異質感が全編貫く。

坂本龍一の音楽はいつもながら素晴らしい。ピアノの音色がポツリポツリに心に響き深い余韻を残す。

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コメント

こんにちは♪
そうそう、思い出しましたよ。
西島秀俊の語りに、登場人物のつぶやきが重なるんですよね。
カメラもゆっくりと横スクロールで。

個人的に洋服が大好きなので、あの洋服だらけの部屋は憧れでした。
りえちゃんは洋服を「着る」というよりも「まとう」という雰囲気がステキでした。

投稿: ミチ | 2005/11/10 22:09

TBありがとうございました。
この映画は、原作の雰囲気を実によく再現している映画だと思います。
jamsession123goは原作を読んでから映画館へ行きましたが、映画が始まる前は、「どうやって遺影我にしたのだろう」と半信半疑でしたが、見終わって、納得しました。

投稿: jamsession123go | 2005/11/10 23:45

レビュー拝見しました。なんか不思議な映画でした。。「トニー滝谷は、本当にトニー滝谷と言った」この台詞めちゃ頭に残ってます。しばらく口癖になりました(笑)なんていうか、ぼくにとっても眠い作品になってしまいました。

投稿: exp#21 | 2005/12/29 10:41

こんばんは
まさに「小説を観る」映画でしたね。
原作の雰囲気が上手く伝わってきました。
坂本龍一のピアノ演奏が作品にこれ以上はないと思わせるほどマッチしていて印象に残ります。

投稿: 朱雀門 | 2005/12/29 22:23

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