エレニの旅

製作年:2004年
製作国:ギリシャ/フランス/イタリア/ドイツ
監督:テオ・アンゲロプロス
1919年頃。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群がテサロニキ湾岸に降り立った。少女エレニはオデッサで両親を失い、リーダー格の男スピロス一家に拾われる。その10年後。スピロスたちは住み着いた土地に“ニューオデッサ”という村を築いていたが…。
アンゲロプロス監督でしか作り得ない深みのある映像美にまず圧倒される。冒頭のオデッサから逃れてくる集団の描写から素晴らしい。ここだけで神話的雰囲気を漂わせる。単に絵画のように美しいということだけでなく、観る者に重々しい衝撃を与える何かを秘めている。巨匠の風格を感じさせます。
常に映像で語る様式が続くので、少ない台詞が異彩を放っている。例えばこの場面。エレニが獄中から釈放され息子の戦死を知って気を失ってしまう。そのうわ言で「水がありません。石鹸がありません。息子に手紙を書く紙がありません」と何度も繰り返す。これはまさに詩そのものだ。
“忌まわしい内戦”という呟きもあった。内戦の悲劇は劇中のように兄弟同士が戦うような事例を生むことにある。韓国映画の「ブラザーフッド」(2004)の兄弟を思い出す。そして、幕切れでのエレニの慟哭。この哀しい響き。胸の抉られるような思いが今も続く。
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砲弾1発はいくらですか?命ひとつはいくらですか?
冒頭から難民の集団映像、劇場を住居とする難民、カタリーナクラスの大雨で水没してしまう村。そして海岸で大量のシーツを干し、銃弾に倒れる男・・・衝撃的なほど悲しくも美しい映像によって3時間弱の映画が短くさえ感じられた。
この映画のために、『シテール島のへの船出』、『ユリシーズの瞳』、『永遠と一日』の3本でテオ・アンゲロプロス監督を予習しまし... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 20:42
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『エレニの旅』
『エレニの旅』公式サイト サウンドトラック
監督:テオ・アンゲロプロス出演:アレクサンドラ・アイディニ ニコス・プルサディニス
【シーン2】スピロスの一行が10年かけて築き挙げた「ニューオデッサ村」には家々が立ち並....... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 21:18
» 映画「エレニの旅」 [ミチの雑記帳]
映画館にて「エレニの旅」 ★★★★☆
ストーリー: 1919年頃。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群の中に少女エレニはいた。エレニはオデッサで両親を失った孤児で、リーダー格の男スピロスに拾われ、家族の一員として育てられる。およそ10年後、スピロスたちは新たな土地に<ニューオデッサ>という村を築いていた。エレニはスピロスの息子アレクシスと恋に落ち、妊娠する。スピロスが知れば... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 21:38
» 『エレニの旅』 [ラムの大通り]
-------今夜は充実の顔だにゃあ。
苦手のテオ・アンゲロプロスの上に2時間50分もあるから
てっきり苦虫つぶしたような顔で帰ってくると思ってた。
「そうだよね。ぼくも心配だったけど、
途中から体乗りだし、目を見開いて観てたね。
物語は話し出すと長くなるからはしょるけど、
1919年。オデッサで両親を失った孤児のエレニが
別の家族とともに避難民として
ギリシャに帰国するところから始まる。
スピロスの養女として育った彼女は
彼... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 22:14
» エレニの旅 [秋日和のカロリー軒]
倒錯の舞踏 ひとつの、ただひとつのことを何十年も変わらずやり続けている人がいます。同じことを何度も何度も反復する。何度も何度も同じ線をなぞり、同じ曲を変奏しつづける。それが正しいことなのかどうなのかはわかりません。ただそれは誰にでも許されることではな...... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 22:21
» エレニの旅 [impression]
ギリシャの鬼才、テオ・アンゲロプロス監督が6年ぶりに描く、人生の旅路。
革命の勃発により [続きを読む]
受信: 2005/10/02 22:56
» 「エレニの旅」 [こだわりの館blog版]
6/18 ユーロスペース にて
「永遠と一日」(1998)以来実に7年ぶり、久々のテオ・アンゲロプロスの映像世界を体験。
監督:テオ・アンゲロプロス
出演:アレクサンドラ・アイディニ、ニコス・プルサディニス、ヴァシリス・コロヴォス、ヨルゴス・アルメニス、
... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 23:20
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"Trilogy:The Weeping Meadow"
待ちに待った、6年ぶりのテオ・アンゲロプロス監督の新作。鑑賞する前から今年の私のベスト3入りが確定している(笑)。予備知識なしで劇場に足を運び、相変わらずの長編映画(170分)にお尻が痛くなった。しかし鑑賞後はその余韻が時間が経過... [続きを読む]
受信: 2005/10/02 23:39
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『エレニの旅』公式サイト
監督・脚本:テオ・アンゲロプロス
脚本協力:トニーノ・グエッラ、ペトロス・マルカリス
ジョルジオ・ジルヴァーニ
撮影:アンドレアス・シナノス
出演:アレクサンドラ・アイディニ、ニコス・プルサンディス
ヨ....... [続きを読む]
受信: 2005/10/03 02:07
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受信: 2005/10/03 16:07
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エレニの旅 [DVD]/アレクサンドラ・アイディニ,ニコス・プルサニディス,ヨルゴス・アルメニス
¥6,300
Amazon.co.jp
2004年の作品ですが、渋谷のユーロスペースでテオ・アンゲロプロスの作品を特集していて、それで、観てきました。
ロシア革命によりオデッサ... [続きを読む]
受信: 2010/04/03 23:16
コメント
こんにちは〜。
重厚で見応えのある映画でしたね〜。
エレニのうわごとは本当に一編の詩でした。
何度も観る元気はないけれど、記憶に残る映画です。
投稿: ミチ | 2005/10/02 21:40