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2005年10月

2005/10/28

天国の本屋 恋火

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:篠原哲雄

オーケストラをリストラされたピアニストの健太はヤケ酒を飲んで酔いつぶれてしまう。目覚めると、たくさんの本が並んだ見知らぬ部屋にいた。そこは“天国の本屋”であった。健太は死んだわけでもないのに、ここで短期アルバイトをさせられることになったとアロハシャツの怪しげな店長ヤマキから説明を受けるが…。

健太が何故、天国の本屋のバイトに選ばれたのか。その基準がいまひとつよく分らなかった。彼は生前の翔子(竹内結子)のピアノを聴いてピアニストを目指したという関係性は確かにある。そして、自分勝手な演奏でオーケストラを首にされ、自暴自棄にもなっていた。だが、この程度の関係性、この程度の悩みを抱えている人間なら珍しいことではないだろう。わざわざ天国へ行かなくても実社会で解決できる筈だ。いや、彼のためでなく、翔子のために人材管理官のヤマキが選んだというのなら、どうして翔子だけが特別なのだろうか。その疑問が最後まで残る。こうしたファンタジーはもっと設定を強固にしないと駄目だ。物語の入り口で疑問点を抱えてしまうと、もう映画に乗れなくなってしまう。

そして、このピアノが良く似合う穏やかな話の中で、瀧本を演じる香川照之のオーバーな演技はあまりに異質である。過去の傷を抱える男には勿論見えるのだが、非常に作為的である。花火の製作を依頼にきた香夏子(竹内結子が二役)ともっと自然に応対した方が良かったと思う。

その竹内結子と香川照之が行うあまりに激しい平手の応酬が凄かった。竹内を力いっぱい殴った香川も凄いが、それに負けずに2発返した竹内も見事である。この場面も映画の中で自然な流れと言い難いが、その迫力に感服した。ここが一番印象深い。

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2005/10/25

僕の彼女を紹介します

製作年:2004年
製作国:韓国 
監 督:クァク・ジェヨン

非番中の婦警のヨ・ギョンジンは街角でひったくり事件に遭遇する。彼女は走り去る男を猛然と追いかけ、鮮やかに取り押さえる。しかし、この男は犯人を追いかけていた善意の市民で、女子高で教師をしているコ・ミョンウであった。後日、生徒の非行防止のため警察に訪れたミョンウは再びギョンジンと遭遇してしまうが…。

この辺は好みの分かれるところだと思うが、最初にギョンジン(チョン・ジヒョン)がミョンウ(チャン・ヒョク)を誤認逮捕するくだりから、ギョンジンのデリカシーのないわがままな振る舞いに付いていけず駄目だった。そこが笑いのつぼになるのかしれないが、まずここからして私は乗れなかった。

そして、二人が恋人同士になってからミョンウが心配の余り、ギョンジンの追跡現場に駆けつけるところも疑問。ギョンジンにプロ意識があるとするなら、彼のことをもっと怒らなければいけないであろう。彼自身の安全を考えてもだ。結果的にそれが悲劇を生みことになるが、自業自得だろうという冷めた印象しか持てない。

納得できない点は多々あるものの、ギョンジンの死を求めるような捜査ぶりはメル・ギブソンが演じた「リーサル・ウェポン」(1987)のリッグス刑事を連想させて印象深い。

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2005/10/24

マルチュク青春通り

製作年:2004年
製作国:韓国 
監 督:ユ・ハ

1978年。軍事政権下の韓国。ブルース・リーに憧れる高校2年生のヒョンスは、ソウル郊外のマルチュク通りにある男子高校に転校する。番長格のウシクと仲良くなったヒョンスはディスコやタバコ、ケンカといった刺激的な学園生活を送る。ある時、二人はバスで不良に絡まれていたウンジュを助けるが…。

ブルース・リー世代へのノスタルジックな思いなら、もっとコメディータッチでも良かった。初恋のドラマであればもっと切なさが残っても良かった。本作品がそれらに留まっていないのは、軍事政権下のこの時代の反発心が根強く残っているからではないか。実際にヒョンスのような行動を取れるかどうかは別として、フィクションの中で大いに訴えたいという思いには共感できる。同じ韓国映画という事で、観る前は「火山高」(2001)のような作品かと思っていたが、実際には「アタック・ザ・ガス・ステーション」(1999)の方にテイストは近い。

本作品を観て一番驚いたのは、高校に軍人が在職して生活指導をしていたということだ。まだまだ韓国社会について知らないことが多いと実感した。

一番の見せ場は、屋上にてヒョンスがたった一人で風紀委員達と乱闘するところ。劇中に出てきたブルース・リーのような華麗さではなく、生々しい荒削りの迫力があった。

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2005/10/22

ブラッドシンプル ザ・スリラー

製作年:1999年
製作国:アメリカ
監督:ジョエル・コーエン

テキサスの片田舎で酒場を経営するマーティは短気でケチで従業員に嫌われていた。若い妻アビーは従業員のレイを誘惑する。ある時、マーティは怪しげな私立探偵の訪問を受けアビーとレイの事を聞かされる。二人がベッドにいる写真を見せつけられ、マーティは激怒するが…。デビュー作「ブラッド・シンプル」(1984)をコーエン兄弟自身で行った再編集版。

アビーもレイも私立探偵も、最後まで思い違いしたまま行動を起こしていく。そこにダークなおかしさがあるが、コミュニケーションの不全も感じて、もの哀しくなる。

映像表現の巧みさは特筆もの。カメラの動きで次のストーリーを予感させる。映像で物語を語るスタイルが卓越している。この辺はA・ヒッチコック監督を連想させる。

ただ不満もいくつかある。私立探偵のライターの使い方は優れたものだが、クライマックスにかけてもう一捻り欲しかった。また、アビーは拳銃を盗まれたことにずっと気が付かないでいるのはあまりに不自然だ。常に夫の影におびえているというのに。そして、死体を隠すのに、畑の真ん中に埋めるというのも如何と思う。最初に出てきた焼却炉が全く生かされていない。

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2005/10/19

シンデレラマン

製作年:2005年
製作国:アメリカ 
監 督:ロン・ハワード

ライトヘビー級のボクサーだったジム。一度は将来を嘱望されていたが右手を骨折したため精彩を欠き、ついにライセンスを剥奪されてしまう。折からの大恐慌のために職もなく生活費も滞るようなどん底の暮らしを続ける。そんなある時、怪我をしたボクサーの代わりに急遽リングへカムバックすることになるが…。

人間、何が幸いするか分からない。骨折した右手をかばい続けて荷役をしているうちに、左手が強化されていた。これが奇跡の復活の一因になっている。人生において苦しい時期があったとしても懸命に生きていれば、次の道が自然と開けてくるかもしれない。

オスカー俳優二人の演技もいいが、マネージャー役のP・ジアマッティが素晴らしかった。コミショナーにジムの復帰を談判している時の微妙な表情が秀逸。そして、彼のアパートにメイ(R・ゼルウィガー)が訪れる場面も印象深い。

そして、ボクシングシーンの編集も見事。彼が怪我をしたときに白色となるところが衝撃を持って観る者に伝わってくる。

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2005/10/18

エブリバディ・フェイマス

製作年:2000年
製作国:ベルギー/フランス/オランダ 
監 督:ドミニク・デリュデレ

ジャンは妻のシャンタルと17歳の娘マルヴァとの三人暮らし。マルヴァを歌手にさせたいと熱望するジャンは熱心に応援するが、マルヴァはコンテストで何度も惨敗してしまう。反抗期のマルヴァは次第にジャンを迷惑がる。そんなある時、ジャンの勤めているビンの製造工場が倒産してしまうが…。

あれよあれよといううちに意外な展開へ進んでいくところが楽しい。誘拐方法にしろ、交渉過程にしろ、若い同僚のウィリーに助けを求めるところなど、犯罪ドラマとしては甘いところがたくさんある。現実味は大いに欠けるがあまり気にならない。それは物語の語り口が巧いからであろう。

マルヴァが子供たちに人形芝居で歌っている場面を挿入しているのが本作品のポイント。彼女には歌の才能があるのだが、それを表現する方法を知らなかったということが後々の伏線となっている。また、誘拐されるスター歌手のデビーがクルマの整備好きであるというところも誘拐事件へ見事に繋がっていく。

そして“ラッキー・マヌエロ”の歌がすべてさらっていく。最後は気持ちの良い着地点。まるでおとぎ話のようだ。めでたし、めでたし。

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2005/10/17

暗殺

「暗殺」★★★★(BS)
1964年日本 監督:篠田正浩
原作:司馬遼太郎
出演:丹波哲郎 木村功 岡田英次 佐田啓二

文久三年。浪士取扱松平主税介は老中板倉周防守に手を回し、目明し嘉吉を斬った罪で手配中の出羽浪人清河八郎に大赦を受けさせる。清河は勤王の志士への対策として、守護職に名をかりた浪士隊の結成を松平に献案したためである。しかしその一方で、松平は佐々木唯三郎に清河暗殺の密命を下していたが…。

初期の篠田正浩監督はカミソリのような切れ味鋭い演出で、今の時代観ても鮮烈な印象を与える。巧みな語り口。陰影の際立ったモノクロの映像美。武満徹の力強い音楽。まず独自の様式美に魅了される。

清河八郎という策士の生涯が様々な登場人物の回想シーンから多角的に浮かび上がってくる。その突き放した視点は容易に感情移入を許さない。この辺は「スパイ・ゾルゲ」(2003)にも通じているだろうか。

舞台演出家の蜷川幸雄が俳優として仕事をしているのを初めて見た。

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2005/10/16

チャーリーとチョコレート工場

製作年:2005年
製作国:アメリカ 
監 督:ティム・バートン

貧しいながらも幸せに暮らしている少年チャーリー。彼の家のそばには世界一のチョコレートをつくり続ける不思議なチョコレート工場があった。ある時、工場長のウィリー・ウォンカは、全商品のうち五枚だけに入っている“ゴールデン・チケット”を引き当てた者にだけ工場見学に招待すると発表したが…。

ウンパ・ルンパ族のミュージカル場面が圧倒的に楽しい。ディープ・ロイ独りでいろんな役を演じているが、同じ顔で無表情なところが絶妙に可笑しい。音楽もいろいろなパロディになっていて、非常に凝っている。

タイトルバックのチョコレート製造ラインのアニメーションも素晴らしい。ダニー・エルフマンの音楽に合わせて、流麗で優雅な流れとなっている。実際にはチョコレート工場なんて殺風景で面白みのないものですが、本作品の中ではポップな空間の摩訶不思議さが際立つ。

前作の「ビッグ・フィッシュ」(2003)に続き、T・バートン監督が父との和解をテーマにしているのも興味深い。

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2005/10/13

北の零年

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:行定勲

明治4年。淡路内で対立の続いていた稲田藩は明治政府に北海道・静内への移住を命じられる。北海道へ辿り着いた総勢546名の移民団は、自分たちの新しい国を建設するとの希望を胸に凍てつく原野に立ち向かう。移民団の中心的存在である小松原は酷寒の地でも育つ稲を求め、一人札幌へと旅立つが…。

本作品を観ていて不満に感じるのは、娘と二人残されていた志乃(吉永小百合)がいかにして牧場経営を成功させたのか、そのディティールが全く省かれてしまっていることだ。戻ってこない小松原(渡辺謙)のため移民団の仲間からも白眼視されている状態で、いかにして牧場を作り上げていたのか。ドラマとして最も重要なディティールが飛ばされているので、絵空事めいて見える。

行定勲監督の照明の使い方はいつもながら秀逸。陽光を絶妙にとらえたり、藩主に裏切られたと知ったときの渡辺謙の顔に照明をあてたり、場面、場面によって自在に光を駆使している。

大島ミチルの壮大な音楽には魅了された。

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2005/10/12

タッチ

製作年:2005年
製作国:日本 
監 督:犬童一心

上杉達也と和也は双子の兄弟。浅倉南とは家も隣同士で小さな頃からいつも一緒に遊んでいた。3人は同じ明青学園に通っている。弟の和也はスポーツ万能で成績優秀、子供の頃に南と約束した甲子園出場を叶えるため、野球部のエースとして活躍していた。一方、兄の達也は勉強、スポーツとも真面目な態度を取れずにいたが…。

登場人物たちが見上げる空。何回も繰り返し挿入されている。その空はつねに雲に覆われて快晴ではない。逡巡、挫折、不安など彼らの心象風景となっているのだろう。

原作との比較において、かなり厳しい意見が多いようである。一見すると失望を感じさせるが、後になってよくよく考えてみるとかなり丁寧な作りになっていることに気付く。確かに完成度は高くない。例えば、達也(斉藤祥太)とボクシング部のマネージャー小百合(安藤希)の関係など中途半端なまま後半消えてしまった。こういうところが惜しまれる。また、幕切れの言葉は無粋であると最初感じさせたが、これを言わせたいがためのドラマ展開であったのだ。洗練されていないが、一応納得できる。

最後の上杉達也と新田との三球勝負が最大の見せ場になっている。一球ずつ撮影方法を変えて趣向を凝らしている。ここでスライダーが三球目でなく、二球目だったのがこの作品のポイントだった。達也の真の成長がここで成し遂げられた。

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2005/10/11

ナショナル・トレジャー

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:ジョン・タートルトーブ
出演:ニコラス・ケイジ ダイアン・クルーガー
   ・ビーン ジョン・ボイト

アメリカのどこかに莫大な財宝が隠されていると少年時代に祖父からこの話を聞かされたベン。彼は大人になってもこの夢を追い続けた。そして、イアンという男をスポンサーにつけ“秘密はシャーロットと眠る”という重要な暗号の解読に成功する。財宝のありかを示す地図は独立宣言文書の裏面に記されているというのだが…。

歴史ミステリーというのは、その時代の背景をかなり知っていないと、本当の興趣は味わえないのだろう。独立宣言書にまつわる謎の解明が軽快なタッチで進んでいく。それがどういう意味を持つのか、私にははっきり掴めなかったが、暗号の謎を解いたらまた次の謎が生まれるという展開にすっかり乗せられてしまった。

ニコラス・ケイジのリアションを起こすまでの間がいい。イアン(ショーン・ビーン)から独立宣言書を守るため自ら盗むと決意するくだりの演技が全く絶妙だ。ユーモラスで力強い。

印象深い台詞がひとつ。「間違いを正せる力を持つ者は、その力を使う責任がある」。これがアメリカ合衆国の基本姿勢か。

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2005/10/10

運命を分けたザイル

製作年:2003年
製作国:イギリス
監 督:ケヴィン・マクドナルド

1985年6月。若き英国人登山家、ジョーとサイモンはアンデス山脈の難関、標高6600mのシウラ・グランデ峰に挑んだ。ほぼ垂直にそびえる西壁はいまだ誰も成功したことのない未踏のルートだった。二人は数々の困難を乗り越え、ついに西壁を制覇し登頂に成功するが…。

なんと言ってもザイルを切られ、ジョーが一人になったところからの生還劇が圧巻だった。そのディティールが凄まじく、ただただ驚くばかり。「20分の試練」は我々の日常に応用できる問題解決法だ。

そして、極限状態に置かれたときのエピソードも興味深かった。あまり好きでないというボニーMの音楽が頭の中で鳴り止まなかったという逸話が印象深い。

このジョーが怪我を克服し再び登山を開始していること。しかも、本作品では遠景ショットの時、スタントしているというから驚嘆してしまう。こういう精神力があるから生死を分けるようなアクシデントにも乗り越えることができたのであろう。

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2005/10/09

サマータイムマシン・ブルース

製作年:2005年
製作国:日本 
監 督:本広克行

夏休みなのに毎日大学に来ては部室で遊んでいるSFの研究など一切しない “SF研究会”の5人の男子学生。ある時、みんなで大騒ぎしていると、大切なクーラーのリモコンを壊してしまう。翌日、いつものようにメンバーが部室に集まると、見慣れぬ金属製の物体が置かれていたが…。

冒頭の10分間の不可解な進行が面白い。あれっと思わせておいて次の場面にどんどん進んでいく。タイムトラベルものと最初から分っているので、これがどう繋がっていくのか考えながら見ているのが楽しい。

かなり緻密な構成の脚本になっているが、ある1点だけ不明瞭な箇所が残り、そこが大いに惜しまれる。それはそもそものタイムマシンの出現の由来がもう一つはっきりしないこと。一体誰が送り込んだのか、ここをうまく押さえてくれるとパーフェクトだった。

五人の男子学生の個性豊かな人物造形と軽妙な会話が大いに笑わせる。とぼけた味わいが全編貫く。大いに笑わせておいて、最後に寂しさを感じさせる締め方も良い。切ない余韻が残る。

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2005/10/08

NANA ナナ

製作年:2005年
製作国:日本 
監 督:大谷健太郎

恋人の元へ向かう小松奈々。パンクバンドのヴォーカルとして成功を目指す大崎ナナ。東京に向かう新幹線の中で偶然出会った二人は、20歳同士、そして同じ名前だったことで意気投合する。その後、居住する部屋さがしで偶然に再会し、結局二人は一緒に暮らすことになったが…。

奈々(宮崎あおい)もナナ(中島美嘉)も、コンサート会場で他の観客の盛り上がりとは一線を引き、茫然と立ち尽くすという場面が何度か挿入されている。音楽によって、自分の価値観が一変するような衝撃を受ける。ロックミュージックを聴くのは、そんな体験を常に求めているからであろう。

基本的に奈々(宮崎あおい)のモノローグで話が進んでいくのが良い。どの時点から振り返っているのか定かではないが、劇中の浮かれたようなキャラクターとは雰囲気の違う語り口であり巧みな対称になっている。そのために全編にノスタルジックな雰囲気を漂わせる。「いぬのえいが」(2004)に続き、宮崎あおいの語りはなかなか秀逸だ。

本作品全体では意外性に欠けるドラマ展開であった。こうなるだろうなと思っているとその通りになっていく。そこに予定調和の心地良さもあるのだが、どこか物足りない感じも残る。ただ、そんな感じで引っ張っていく、最後になってサプライズが用意されている。ここが気に入った。

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2005/10/07

マッハ

製作年:2003年
製作国:タイ
監 督:プラッチャヤー・ピンゲーオ

タイの田舎の村ノンプラドゥ。ある時、村の信仰の象徴である仏像“オンバク”の首が切り落とされ盗まれてしまう。犯人はこの村出身のドンと判明する。そこで村の長老たちは孤児のティンに奪還を要請した。彼は僧侶プラ・クルに師事し古式ムエタイを極めた最強の戦士であったが…。

ブルース・リー、ジャッキー・チェンを正しく継承するアジア発アクション映画である。トニー・ジャーがこれからもアクション俳優として活躍を続けていれば、この作品は伝説になるであろう。仮に単発で終わったとしてもタイ映画からこうした作品を生み出したということでエポックになる。

本作品のポイントはとくにかトニー・ジャーのアクションにある。前記に挙げた二大スターの影響も多々見られるが、ムエタイを基本にした肘や膝の攻撃が新鮮に映る。三輪タクシーのトゥクトゥクを使ったカーアクションにもオリジナリティーがあり迫力だった。

アクション映画としては満点であるが、ひとつのドラマとしては留保点がいくつか残る。その最たるものは、師匠がムエタイの戦いを戒めている冒頭のくだりが、最後まで生かされていないところ。これが最初からなければ気にならないが、出てきたからには戦いを逡巡する場面が出てこないと物語の一貫性を欠くように思われる。

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2005/10/06

テイキング・ライブス

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:D・J・カルーソー

モントリオールのある工事現場で白骨化した死体が発見される。地元警察はFBIに捜査協力を要請し、女性特別捜査官イリアナが単身でやって来る。彼女はあらゆる情報を読み取り、犯人像を割り出すプロファイルの専門家であった。彼女の分析で捜査は進展を見せ始めた矢先、新たな殺人事件が発生するが…。

ひとつひとつのエピソードがドラマにうまく絡んでこないもどかしさを覚える。イリアナ(アンジェリーナ・ジョリー)は死体発見現場で横たわったり、ホテルの部屋中に遺体の写真を貼るなどの特異な捜査スタイルが際立つ。しかし、それが犯罪解決にうまく生かされていないのが物足りない。

そして、どうしてモントリオール警察のパーケット刑事(オリビエ・マルティネス)がイリアナに対して露骨に反発するのか、その答えもなく中途半端な感じが残る。A・ジョリーとイーサン・ホークの主演二人の演技力は遺憾なく発揮されているが、空回りしているとの感が拭えない。キーファー・サザーランドの使い方が無造作すぎるというか勿体ない。もう少し後半まで大切に使って欲しかった。かなり豪華な出演俳優なのに思ったほど効果があがっていない。

真犯人がすぐにわかってしまうという批判も多く目にするが、割と早い段階で明らかになるので、それは気にならない。問題はタイトルにもなっている犠牲者の人生を乗っ取りながら殺人を繰り返すという話のディティールがほとんど省略されてしまっているところ。真犯人が明らかになってから、この辺りをじっくり描くべきであろう。それとて、他人に人生を盗むというとルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」(1960)という傑作もあるので、容易なことではないであろうが。

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2005/10/05

皇帝ペンギン

「皇帝ペンギン」★★★★
(盛岡フォーラム1)2005年フランス 
監督:リュック・ジャケ
吹替版声の出演:大沢たかお 石田ひかり
           神木隆之介

南極大陸に冬がやってくる3月。皇帝ペンギンは100キロも離れた彼らの営巣地であるオアモック(氷丘のオアシス)に向けて行進する。ここにたどり着くとお互いのパートナーを見つけるための求愛行動を始める。5月末。産卵を終えたメスたちは卵を自分のパートナーに託し、餌を求めて海へ向かうが…。

水族館などで馴染み深いペンギンだが、彼らがどのように生まれ、どのように生きていくのか、本作品を観てその生涯を初めて知りました。マイナス40度の寒さ。激しいブリザード。120日間にも及ぶ絶食。厳しい自然を生き抜くペンギンの生態にまず感服しました。

そして、それ以上に感じ入ったのは、一体どうやってこれだけの映像を撮ったのかという撮影スタッフのこと。海中でアザラシにペンギンが襲われるところなどどれだけの機会を待っていたのか想像するだけでその労苦がしのばれる。

劇中に流れる音楽も南極という極限の世界に合ったもので、なかなか良かった。

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2005/10/04

dot the I ドット・ジ・アイ

製作年:2003年
製作国:イギリス/スペイン 
監 督:マシュー・パークヒル

ロンドン郊外。美しいスペイン人のカルメンは優雅な生活を送る優しい恋人バーナビーにプロポーズされ、これを受け入れる。ある夜、カルメンは、女友達だけで独身最後のパーティを開いた。そして、パーティの決まりに従い、その場にいる一番セクシーな男性とキスすることになったが…。

本作品は予告編を観る機会もなかったので、久々にどんなジャンルの作品か分らずに観始めました。冒頭に散りばめられた謎のショットが次々と明らかになっていくドラマの展開を大いに堪能する。

虚実入り混じった話でどこまで登場人物の本当の心情か計れないところが本作品のポイント。しかし、発端のキスは宿命的であったと観るものに信じさせるところにこの映画の興趣がある。

ヒロインのカルメンを演じたアルゼンチン出身のナタリア・ヴェルベケ。彼女を初めて観るが、ジェニファー・ロペスに似た雰囲気があり、今後の活躍が大いに楽しみです。

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2005/10/03

微笑みに出逢う街角

製作年:2002年
製作国:カナダ/イタリア
監 督:エドアルド・ポンティ

家事やパートの仕事を黙々とこなすオリビアの唯一の楽しみは絵を描くこと。写真家のナタリアは戦場でのスクープ写真で『TIME』誌の表紙を飾る。チェロ奏者のキャサリンは夫や娘と離れ服役を終えて父親が出所するのを待ちわびていた。それぞれに悩みを抱えた3人の女性だったが…。

彼女たちを幸せへと導く天使の微笑み。ひょっとすると我々人間すべてに天使は微笑んでいるのかもしれないが、気付いていないだけかもしれない。3人の女性たちはそれに見つけた。そして、自分の無垢なる気持ちを取り戻し、新たな境地へ旅立っていく。

豪華極まるキャスティングがすごい。ヒロイン三人もいいが、彼女たちと相対するピート・ポスルスウェイト、クラウス・マリア・ブランダウアー、マルコム・マクダウェルが味わい深い存在感を見せる。ジェラール・ドパルデューも温かみのある人物造形となっていたが、もう少しドラマと絡んでほしかった。

そして、ひとつひとつの音が余韻深く響くズビグニエフ・プレイスネルの音楽が忘れ難い。クシシュトフ・キエシロフスキー監督の「トリコロール」シリーズを想起させます。

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2005/10/02

エレニの旅

Eleni1

製作年:2004年
製作国:ギリシャ/フランス/イタリア/ドイツ
監督:テオ・アンゲロプロス

1919年頃。ロシア革命によってオデッサから追われ、難民となったギリシャ人の一群がテサロニキ湾岸に降り立った。少女エレニはオデッサで両親を失い、リーダー格の男スピロス一家に拾われる。その10年後。スピロスたちは住み着いた土地に“ニューオデッサ”という村を築いていたが…。

アンゲロプロス監督でしか作り得ない深みのある映像美にまず圧倒される。冒頭のオデッサから逃れてくる集団の描写から素晴らしい。ここだけで神話的雰囲気を漂わせる。単に絵画のように美しいということだけでなく、観る者に重々しい衝撃を与える何かを秘めている。巨匠の風格を感じさせます。

常に映像で語る様式が続くので、少ない台詞が異彩を放っている。例えばこの場面。エレニが獄中から釈放され息子の戦死を知って気を失ってしまう。そのうわ言で「水がありません。石鹸がありません。息子に手紙を書く紙がありません」と何度も繰り返す。これはまさに詩そのものだ。

“忌まわしい内戦”という呟きもあった。内戦の悲劇は劇中のように兄弟同士が戦うような事例を生むことにある。韓国映画の「ブラザーフッド」(2004)の兄弟を思い出す。そして、幕切れでのエレニの慟哭。この哀しい響き。胸の抉られるような思いが今も続く。

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2005/10/01

ムッソリーニとお茶を

「ムッソリーニとお茶を」★★★★(BS)
1998年アメリカ イタリア 監督:フランコ・ゼフィレッリ
出演:ジョーン・プロウライト シェール
   ジュディ・デンチ マギー・スミス

1935年。イタリア、フィレンツェ。在伊英国人で服地商パオロの秘書メアリーは、パオロから彼の私生児ルカを英国紳士に育てて欲しいと頼まれる。メアリーは困惑しながらも友人の芸術家アラベラ、そして元大使の未亡人レディ・レスターを筆頭とする英国貴婦人グループの協力を得て、彼の教育を始めるが…。

頑な思いは、時に苦難の道を選んでしまう。自分がいくら正しい行為だと思ってみても、時代がそれを許さないときがある。どこかで客観的に自分とその世界を見つめることが必要なのであろう。

直接的な戦争の場面があって驚いた。F・ゼフィレッリ監督とこの題名のイメージから、もっと優美で穏やかな世界を予想していたが、いい意味で裏切られた。監督の自伝的要素に満ちた作品だった。

興味深かったのは、イギリス人に友好的だったイタリアが、第二次世界大戦を契機に反英へ傾いてしまうところ。成人したルカがかつてイギリス人の住んでいたシラー荘を訪ねたときに女主人の表情、言葉使いに、ゾォーとする思いが残る。国同士の友好関係はなんと危ういものか。

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