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2005年9月

2005/09/30

8 Mile

製作年:2002年
製作国:アメリカ
監 督:カーティス・ハンソン

1995年。デトロイト。貧困層が多数を占める都市中心部。ジミーは無職の母と幼い妹の3人でトレイラー・ハウスに暮らしていた。昼間プレス工場で働き、夜はヒップホップ・クラブ“シェルター”で毎週行われるラップ・バトルでの優勝を目指し、プロで成功することを夢見ていたが…。

第75回アカデミー賞でエミネムの「Lose Yourself」が歌曲賞を受賞。

現代アメリカのカリスマと呼ばれている白人ラップ・アーティスト、エミネム。このところ洋楽関係にはすっかり疎くなってしまったので、彼の音楽を聴いてみるのはこの映画が初めてでありました。

ということで、変な先入観を持たずエミネム自身の半生と重なる役柄という事もあって、かなり自然体で観られました。映画は困難な道を自ら乗り越えていくオーソドックスな青年の成長物語。さすがにカーティス・ハンソン監督だけあって、エミネムのキャラクターだけに頼るような作品にはなっておりません。

それは良いのだが、ラップのバトル・ステージがどうも乗れない。相手への中傷・攻撃内容であり、勝負の行方に、すっきりしないものが残りました。

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2005/09/29

69 sixty nine

製作年:2004年
製作国:日本 
監 督:李相日
原作:村上龍
出演:妻夫木聡 安藤政信 太田莉菜 金井勇太

1969年、佐世保北高校3年のケンは仲間のアダマやイワセと屋上で掃除をサボっているとき、フェスティバルの開催を思いつく。さっそく映画を撮影するのに必要なカメラの調達のため、北高全共闘のアジトに出向く。ひょんな成り行きからケンは“バリケード封鎖”を決行することになるが…。

1969年とは政治や芸術を通してユートピアを夢見ることができた最後の時間だったのではないか。本作品にはその時間の余韻が色濃く描かれている。

我々は既に夢見るようなユートピアなどどこにも存在しないことを知ってしまっている。自分の生きるこの土地を自分の精神力と行動でユートピアに変えていくのだ。クライマックスのフェスティバルの場面が眩しい。

演技者としての妻夫木聡が相変わらず良い。おどけた様子も力ある視線も画面に良く映える。父親役の柴田恭兵もいい存在感を出している。

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2005/09/26

ノッティングヒルの恋人

製作年:1999年
製作国:アメリカ
監 督:ロジャー・ミッチェル
出演:ジュリア・ロバーツ ヒュー・グラント
   リス・エヴァンス ジーナ・マッキー

ウエストロンドンのノッティングヒル。ここでウィリアムは小さな旅行書の専門店を営んでいた。ある時、ハリウッドスターのアナがふらりと店にやってきて本を一冊購入する。その後、オレンジジュースを買いに出かけたウィリアムは、街角でアナとぶつかってしまい、彼女にジュースをかけてしまうが…。

ドアを家の中から開ける場面が多用されている。このドアによって隔てられているのはアナ(ジュリア・ロバーツ)とウィリアム(ヒュー・グラント)がおのおの別々に住む世界である。その異次元とも言える世界を結びつけ接点をドアが象徴しているように感じられる。どうしてウィリアムに惹かれたのかアナの気持ちが分りにくいところもあるのだが、ドアの向こう側の世界は我々には見えないものなのだ。ドアを開ければ彼女がいたというように彼女の行動そのものが全てであると思う。

主演二人が愛らしい存在感を見せているのだが、リス・エヴァンスをはじめとして、傍役たちがみな素晴らしい。それぞれが独特のユーモアを漂わせていて楽しい。

サントラ盤を昔から所有していてよく聴いている。タイトルバックに流れるエルヴィス・コステロの「She」は名曲だ。映画の雰囲気と絶妙にマッチしている。

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2005/09/25

マグダレンの祈り

製作年:2002年
製作国:イギリス/アイルランド
監 督:ピーター・ミュラン
出演:ノーラ=ジェーン・ヌーン アンヌ=マリー・ダフ
   ドロシー・ダフィ ジェラルディン・マクイーワン

1964年。アイルランド、ダブリンにあるマグダレン修道院。ここは堕落した女性を更生させる施設であった。ある時、3人の少女バーナデット、マーガレット、ローズが収容される。彼女たちは修道女たちに性悪女と決めつけられ、祈りと労働によって神に奉仕し罪を悔い改めるよう言われるのだが…。
第59回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞。

一つの価値観に縛られた世界は、息苦しいものだ。それがどんなに立派で高尚なものであっても、そこで暮らす者に強制するとき、どこかで恐怖政治に変わっていく。この世の中で何より大切なものは、自分で自分の価値観を決められる自由であると思う。

自分がイメージする修道院とは「サウンド・オブ・ミュージック」(1964)に出てくるようなものだが、それとはあまりかけ離れたマグダレン修道院。ここは女性刑務所の以外の何物でもない。普通の女性刑務所であれば司法制度の判断で自分の刑期がどれくらいか認識できる。しかし、この修道院にはいつまで収容されているのか、その基準がはっきりして分っていない。それどころか、一生出られない者も存在しているのだ。先に希望の見えない生活はあまりに過酷である。その重さに心が潰れるようだ。

しかも、この話は中世ではなく1960年代を舞台としており、1996年に閉鎖されるまで実際に行われていたことなのだ。その事実にも峻然となる。

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2005/09/24

ベルリン・フィルと子どもたち

製作年:2004年
製作国:ドイツ
監督:トマス・グルベ エンリケ・サンチェス・ランチ
出演:サー・サイモン・ラトル 
   ロイストン・マルドゥーム
   スザンナ・ブロウトン 

2003年1月。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者兼芸術監督に就任したサー・サイモン・ラトルの呼び掛けで新たな教育プロジェクトがスタートした。それは、地元のごく普通の子どもたちがバレエの名曲“春の祭典”を踊るものであった。そして出身国や文化の異なる子ども達250名が集められたが…。

何故、おちこぼれと言われる子供たちが、大人たちのいうことを聞かず騒いだり反抗したりするのか。その理由が本作品を観ていてよく分かった。大人たちに不信感を抱き将来への夢を持ちえない子供たちは真剣に自分に向き合うこともなく無規則な行動で自信のなさをごまかしてしまうのだ。この子供たちは日本にもたくさんいると思う。そのことがひとつ。

一つのことを真剣になって取り込むことの素晴らしさ。それが子供たちを大きく成長させる。それは子供だけでなく大人にも通じる真理です。形を変えた周防正行監督の「Shall We ダンス?」(1996)だと思います。

集中力を欠いていた子どもたちへ時に厳しく時に粘り強く指導を続ける振付師のロイストン。音楽の素晴らしさを子どもたちに訴える指揮者ラトル。彼らの箴言に満ちた言葉が続く。一度観ただけでは覚えきれないくらい。何度も繰り返し観たい作品だ。

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2005/09/23

さゞなみ

製作年:2002年
製作国:日本
監 督:長尾直樹
出演:唯野未歩子 豊川悦司 松坂慶子 きたろう

山形県米沢市。稲子は市の職員として温泉の水質調査をしていた。ある時、彼女はその調査中に便利屋の玉水に出会う。何度か顔を会わせているうちに稲子は玉水に心惹かれていく。稲子の母・澄江は和歌山県太地町でカメラ店を営んでいた。夫はブラジルに渡航しているとき、事故死したと娘には言っていたが…。

まずどっしりとカメラを据えた映像が素晴らしい。ひとつひとつの場面が絵画のように計算された構図で捉えられている。その映像に合わせた静謐なドラマ展開がいい。稲子(唯野未歩子)の思いが台詞でなく映像から強く伝わってくる。

後半の母娘の凌雲峡への旅行が印象深い。小津安二郎監督の「晩春」(1949)を思い出す(こちらは父と娘だったが)。夫、または父の不在でどこか欠落感のある二人であったが、この旅はそれを乗り越え新しい生活へ進んでいく機会になったのであろう。

豊川悦司が好演。どこか崩れている男の哀しさと優しさが見事に表現されている。

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2005/09/22

四日間の奇蹟

製作年:2005年
製作国:日本
監 督:佐々部清

敬輔は千織を連れてピアノの慰問コンサートを続けていた。5年前。ピアノ留学中の敬輔は暴漢に襲われた千織親子を助けるが、左手の薬指を負傷してしまいピアニストの夢を断念する。そして孤児になった千織を引き取る。脳に障害のある千織だが、ある時、天才的なピアノの演奏能力を有していることに敬輔は気付くが…。

最後の夜の「月光」を弾く場面に感嘆した。ろうそく、灯台、懐中電灯と光が次々に連鎖していく。その光が神秘的現象を病院中に広めていくようであった。こうした言葉で説明するのではなく、映像で物語を表現する佐々部清監督の演出に酔う。

小道具の使い方も巧い。白い手袋が敬輔(吉岡秀隆)の、うさぎのぬいぐるみが千織(尾高杏奈)の、それまでの人生の未練を象徴しているものであった。それらを捨てたとき、彼らの新しい生涯が始まる。

千織役の尾高杏奈の演技も見事であった。奇蹟が起こる前と後では全く別人に見えるところが凄い。そして、石田ゆり子と重なって見えることも感心しました。

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2005/09/21

キング・アーサー

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:アントワン・フークワ

ローマ帝国の支配下にあったブリテン。帝国の栄華に陰りが見え始め、独立を求めるゲリラ軍ウォードや新たな侵略者サクソンが台頭してきた。ブリテンの血をひくアーサーはローマ軍の司令官として無敵を誇る円卓の騎士を率いてハドリアヌスの城壁を死守していたが…。

権力者の理不尽な振る舞い。あまりに過酷な要求。やるせない思い。ローマ教皇からの最後の任務を受けざるを得ないアーサー(クライヴ・オーエン)の心情が切々と胸に迫ってくる。まず、この場面から一気に引き込まれてしまう。

そして、何のために戦うのかというテーマが鮮明に浮んでいく展開。円卓の騎士たちはその兵役を終え、迷いなく故郷に帰ろうしていた。しかし、ローマ人とブリテン人を両親に持つアーサーはどちらに帰属すべきか大いに苦悩する。それは自分のアイデンティティーをどこに求めるかということに繋がっていき、大いに感心する。

そのアーサーの苦悩を生むきっかけとなったグウィネヴィア役のキーラ・ナイトレイが良かった。野性味を残したまなざしが深く心に残る。

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2005/09/20

愛の落日

製作年:2002年
製作国:アメリカ
監 督:フィリップ・ノイス
原作:グレアム・グリーン「おとなしいアメリカ人」
出演:マイケル・ケイン ・フレイザー
   ドー・ハイ・イエン レイド・セルベッジア

1952年。フランス占領下のサイゴン。ロンドン・タイムズの特派員ファウラーはイギリスに妻子を残したまま美しいベトナム人女性フォングと同棲している。ある日、アメリカの援助団体の一員としてベトナムにやってきたパイルと出会う。アメリカ人にしては物静かな彼にファウラーは好感を抱くが…。

ありふれた三角関係の恋愛ドラマで終わっていない。ファウラー(マイケル・ケイン)が旧ヨーロッパ帝国主義、フォング(ドー・ハイ・イエン)がアジアの植民地、パイル(ブレンダン・フレイザー)がアメリカをそれぞれ象徴されている。その微妙な関係が政治的背景と重なり実に興味深い。

「ハムナプトラ」シリーズなどコメディータッチの作品が多いB・フレイザーであるが、本作品では影ある人物を好演している。テロが発生した直後に負傷者よりも自分のスラックスについた血を気にするところなど、この男の本質をずばりついていてゾォーとさせる。

本作品の撮影監督はクリストファー・ドイル。フィリップ・ノイス監督とは「裸足の1500マイル」(2002)に続き二度目のコンビとなる。優美で情感あふれる映像が素晴らしい。赤を基調にしてフォングを美しく撮っているところなど、ウォン・カーウァイ作品を連想させます。

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2005/09/19

ノロイ

製作年:2005年
製作国:日本 
監 督:白石晃士

2004年4月。怪奇実話作家の小林雅文の自宅が全焼し、焼け跡から小林の妻が焼死体で発見される。しかし、小林自身は行方不明のままだった。小林はこの直前に最新ドキュメンタリー「ノロイ」を完成させたばかりだった。その中には女優の松本まりかの周辺で起こる不思議な現象が収録されていたが…。

ジャパニーズホラーというブランドで世界からも一定の評価を受けているが、その恐怖の演出もパターン化してしまうと面白みに欠けてしまう。その危機感から本作品は生まれたのだろう。ホラーならではのショッキングな驚かし方でなく、ビデオテープに写る怪しいものをスローで、または一時停止で見せる方法が新鮮に感じた。ただ、このパターンを使えるのは一回きりだ。続編などできると色褪せてしまう。その怖さの演出がじわじわと伝わり、後半から背筋に冷たいものが走るようだった。そして、しばらくの間、夜道を歩くときにゾォーとするような思いが残る。そういう意味で正しいホラー映画であった。

本作品は例えるなら「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999)に「リング」(1998)のような呪いの謎を追いかけるミステリーの要素を組み合わせたものである。その展開がなかなか鮮やかで、バラバラの事件が結びついていくところには魅了された。

ただ、後になって考えてみるともうひとつ整合性に欠けるような気もするが。

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2005/09/18

理由(大林宣彦監督)

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:大林宣彦

1996年6月5日。東京都荒川区。暴風雨に見舞われていた深夜未明。超高層マンション“ヴァンダール千住北ニューシティ”で一家4人が殺される事件が発生。住民台帳からこの部屋に住んでいた小糸信治一家が殺害されたと思われていたが、調べを進めるうちに4人はまったくの別人であると判明するが…。

宮部みゆきのあの傑作小説を一体どのように映画化するか。観る前から興味が尽きなかったです。大林監督の選んだ方法は原作同様にルポタージュ形式で進み、登場人物の証言によって構成されていくものでした。圧巻なのは、それに出演した107人にものぼる俳優たち。女性も男性も関係なくノーメイクで出演し、生身の人間像が描写されている。かつての大林映画に出演してきた者も多く、さながらOB会のようで感慨深かった。

最後は言葉だけでなく字幕にするまで徹底的に分りやすくテーマを訴えかける一方で、犯人の犯行動機が最後まではっきりと明らかにされていない。ここが原作と決定的に違うところだ。

本作品にはそうした相反する描写がいくつもみられる。リアルさを追求する一方で解明されない謎も残し、虚実入り混じった混沌の世界を創造している。そうすることで、はっきりと映像ではとらえられない現代の不気味さを我々に伝えてくれます。

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2005/09/17

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

製作年:2002年
製作国:ニュージーランド/アメリカ
監 督:ピーター・ジャクソン

中つ国では、アイゼンガルドのオルサンクの塔を拠点とするサルマンと、モルドールのバラド=ドゥアの塔にいる冥王サウロンが手を結んだことで闇の勢力がますます力を増大させていた。そんな中、離ればなれとなってしまった旅の仲間たちは三方に分かれたまま旅を続けているのだが…。
第75回アカデミー賞で特殊効果賞、音響効果賞を受賞。

三部作の中篇としてとてもよく出来ている。本作品は旅の仲間たちの内面が丁寧に描写されております。1作目では添え物で終ったサム、メリー、ピピンの3人のホビットたちも力を発揮し、アルゴルン、レゴラス、ギムリの3人が友情を深めていく過程もよく分かります。

その分、フロドは指輪を持つ苦しみばかりであまり活躍しませんが、これも3作目への布石である。本作品で印象深いのはゴラムの存在である。サムが徹底して嫌悪しているのに対してフロドはゴラムをかばい続ける。ゴラムの中に指輪の魔力に屈してしまう自分の姿を見ているからであろう。強烈な二重人格ぶりもスリリングで目が離せなくなる。

そして、エント族の長老“木の髭”も忘れ難い。ローハンでの壮絶な戦いの鍵を握っていたのはエント族だった。彼らを甘く見ていたサルマンに油断があった。こういう傍役が優れているから、この3部作は見飽きることがない。

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2005/09/16

ロスト・メモリーズ

製作年:2001年
製作国:韓国/日本
監 督:イ・シミョン

1909年。中国ハルピン駅での伊藤博文暗殺は失敗に終わった。日本は米国との同盟を結び第二次大戦を連合軍側につき戦勝国となる。朝鮮半島の日本併合はそのまま続いた。2009年、ソウル。朝鮮独立を目指すテロ集団が井上財閥主催の美術展を襲撃する。直ちにJBI(日本特殊捜査局)が出動するが…。


動画無料配信の「GyaO」で初めて映画を観てみました。インターネットで映画を観られる時代になったのだと感慨深かったです。

坂本(チャン・ドンゴン)がスパイとして同僚に射殺された捜査官の父を懸命に否定しようとするが、決して忘れることはできない。日韓併合という形で祖国をなくしても、国ヘの想いが断ち切れない“不令鮮人”の姿と重なるし、その後の行動を暗示している。

問題なのは坂本の捜査方法である。いくら疑惑のある企業であっても、正面から狂騒的に向かっていってはまともに相手にされないのは当たり前である。それで停職処分を食らって局長にどなり込むところもどうかと思う。おかしな日本語の発音については目をつぶっても、こういうところにはリアリティーを求めたい。

そして、坂本とオ・ヘリエ(ソ・ジノ)の因縁ももう少し説明が欲しかった。ここが物語の肝であると思えるのだ。坂本が記憶をなくしているのはいい。だが、ヘリエの存在はどういうものだったのか、もう一つ納得できなかった。

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2005/09/15

ホテル ビーナス

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:タカハタ秀太

ある最果ての街。片足が不自由な謎の女装オーナー“ビーナス”がオーナーを務める“ホテル ビーナス”。ここで暮らす住人はカフェのウェイター兼ホテルの世話係チョナンを始め、誰もが辛い過去を背負っていた。ある時、無愛想な父ガイと口を利かない娘サイがホテルにやって来るが…。

チョナン(草なぎ剛)の足は絶えずタップダンスのステップを踏んでいる。「生きていてもいい、死んでいてもいい」と言って虚無的に構えていても、決して拭い去ることのできない共に暮らす人への熱い想いを表現していると思いました。

ブルーを基調とした映像が、ビーナスの元に集まる人々の悲しみを強く表している。やや凝り過ぎともいえるカットもありますが、感情の揺れ動きが強く伝わってきます。こうした挫折を味わった者が再生していくドラマは基本的に好みであります。

いい台詞がひとつ。「人っていうのは自分の傷には敏感で、他人の傷には鈍感でいる」

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2005/09/14

いぬのえいが

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:犬童一心/黒田昌郎/祢津哲久/黒田秀樹/佐藤信介/永井聡/真田敦

広告代理店に務める山田はドッグフードのCMを手がけていて、子どもの頃かわいがっていたポチを思い出す。久しぶりに当時住んでいた街を訪ねた山田は同級生の香織と再会する。彼女からポチが東京へ移った自分を追いかけて、そのまま帰ってこなかったと聞くが…。いぬたちの様々な魅力がたくさんつまった11のエピソード。

「CMよ、どこへ行く」から登場するポチを中心にしたいくつかのエピソードが連作になっている。それが思ったほどには成功していない。他は違う犬でも成立してしまう話なら、中村獅童のエピソードだけにしても良かったと思う。

犬に直接関係する話ではないが、伊東美咲が出演するCMの変貌ぶりが可笑しかった。あまりに作り過ぎのような気もするが、本作品はCMクリエイターたちに募った企画から生まれたものだというので、現場とはこういうものかもしれない。

なんと言っても、最後に宮崎あおいが出ていた「ねぇマリモ」のエピソードが秀逸。それまでのエピソードの出来栄えがもう一つだったので、余計に印象深い。きちんとした映像詩になっているし、大いに感情が揺さぶられ号泣しました。

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2005/09/13

機関車先生

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:廣木隆一

昭和30年代。瀬戸内海に浮かぶ小島、葉名島。吉岡誠吾は島唯一の小学校、水見色小学校に臨時教師として赴任する。誠吾は剣道の試合の事故で話すことができなかった。7人の生徒たちはすぐに“口きかんから機関車先生や”といってあだ名をつける。機関車先生と子どもたちは信頼と絆を強めていくが…。

エピソードがただ並んでいるだけで、ひとつひとつに繋がりがない。例えば、疎遠となっている祖父との関係、子供たちの交流、剣道への復帰などいいドラマになる素材は揃っている筈なのに、掘り下げ方が浅く平板に流れてしまった。

そんな中で、校長先生(堺正章)が子供達に話してきかせる「なぜ戦争が起きるのか」が強く心に残る。それは、国と国の問題ではなく、人間の心の中にある憎しみが原因なのだということに深く感銘を受ける。あまり映画では見ない堺正章だが、なかなか好演している。

あまり前情報を知らなかったので、エンドクレジットで監督が廣木隆一と知って驚いた。こういうタイプの作品も撮るんだ。

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2005/09/12

羊たちの沈黙

製作年:1991年
製作国:アメリカ 
監 督:ジョナサン・デミ
原作:トマス・ハリス
出演:ジョディー・フォスター アンソニー・ホプキンス
   スコット・グレン テッド・レヴィン

FBIアカデミーのクラリスは訓練中にFBI行動科学課のクロフォードから呼び出される。若い女性の皮を剥いで死体を川に流す連続殺人鬼バッファロー・ビルの捜査のため、ウェストヴァージニア州立の精神病院に隔離されている食人嗜好の天才精神科医レクター博士に犯人の心理を分析させるよう密命を受けるが…。

第64回アカデミー賞でアンソニー・ホプキンスが主演男優賞、ジョディー・フォスター・フォスターが主演女優賞、作品賞、監督賞、脚色賞の5部門を受賞。第41回ベルリン国際映画祭で監督賞を受賞。

サイコ・スリラーの代表作として揺ぎ無い地位を獲得している本作品。私も気に入って何回も観ていますので、サプライズの趣向も伏線も完璧に頭に入っております。確かに面白い作品でありますが、気になるところもいくつかあります。

まず、何故、FBIアカデミーの訓練生であるクラリス(ジョディー・フォスター)がクロフォード(スコット・グレン)の命令でレクター(アンソニー・ホプキンス)の元へ面談に行かされたのか? 何故、レクターはクラリスを気に入り事件解決の糸口を与えたのか? トマス・ハリスの原作には綿密に書かれているのかもしれませんが、本作品では描写不足の感は拭えません。

とはいえ、クロフォードとレクターの間に映画の表面だけではうかがい知ることができない特殊な絆があることを感じさせます。いわば、クラリスを触媒にして二人が対峙しているのであります。そして、この二人が急逝した父親代わりになってクラリスの成長を導いていくところが興味深い。

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2005/09/11

ピエロの赤い鼻

製作年:2003年
製作国:フランス
監 督:ジャン・ベッケル
原作:ミシェル・カン
出演:ジャック・ヴィユレ アンドレ・デュソリエ
   ティエリー・レルミット ブノワ・マジメル

14才のリュシアンは父親のジャックが毎週日曜にピエロの真似事をする事に嫌悪感を抱いていた。教師の父がみんなの笑いものになる事が我慢できないのだ。ある時、お祭り会場で不機嫌そうにピエロ姿の父親を見つめるリュシアンに、ジャックの古い親友・アンドレが声をかけるが…。

何よりも尊い精神とは、我欲を捨てて自分の大切なものを守るために生きること。その為に本作品の中で二人の男が命を落としてしまう。彼らに守られた者、そして本作品を観る者にも高貴な思いが残り続ける。

尊い犠牲を払った人に対し守られた者ができることは、その人を悼みいつまでも憶え続けることしかない。その遺志を受け継いでいけば、その死は無駄でなくなる。

本作品で、どうしても気になってしまうのは、50歳を過ぎたジャック・ヴィユレやアンドレ・デュソリエが、戦争中の青年時代まで演じていること。舞台劇ならいざ知らず、無意識のうちにリアリティーを求めてしまう映画ではどうしても厳しいものがある。この二人では若気の至りという感じが薄れてしまう。

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2005/09/10

クローサー

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:マイク・ニコルズ

ロンドンにて。小説家志望の新聞記者、ダンは車と接触事故を起こした女性を助ける。彼女はニューヨークからやって来たばかりでアリスと名乗る。やがて、二人は恋に落ちて同棲を始める。一年半後、デビュー作の出版が決まったダンは、訪れた撮影スタジオで写真家のアンナに一目惚れしてしまうが…。

まず、物語の展開が予想外の動きを見せ、先が読めないところが面白かった。ここまでなんでもしゃべってしまう恋人達って、現実的にはあまりいないと思うが、もし、本当にいたらどうなるかという特殊な設定が興味深い。

愛とは目に見えるものでないから、その存在を証明しようとして相手に真実を語りたいと思い、真実を聞きたいと懇願する。だが、どんなに言葉を重ねて事実が分かったとしても愛の真実は決して見ることができない。

ストレンジャーとかバスターとか、人を表す言葉が効果的に繰り返し使われている。見知らぬ者の時は楽しい感情に満ちているのが、心の距離が近付いてくると苦々しい感情に変わっていく。その対比を感じさせる言葉だ。

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2005/09/07

ステップフォード・ワイフ

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:フランク・オズ

ジョアンナはニューヨークのEBSテレビの敏腕プロデューサーとして輝かしいキャリアを築いてきた。しかし、番組が原因となった事件の責任をとらされ彼女はTV局を辞職する。夫のウォルターは新たな土地で再起を図ろうと提案し、一家はコネティカット州のステップフォードという美しい町へやって来るが…。

どんなきれいで清潔であったとして均一化した世界は、無機質で温かみを欠くものである。一人の人間が抱く価値観を押し付ける世界は息苦しいものでしかない。

そうしたテーマ性は良いのだが、ドラマの展開が読めてしまい、あまり盛り上がりなく平板に終ってしまったのが残念でした。サプライズも用意されていたがいまひとつの出来。

ベッド・ミドラーやマシュー・ブロデリックを久々に見た。私がシネごごろを抱き始めた頃に大活躍していた俳優達だ。こうして会えるだけで嬉しくなる。

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2005/09/06

雨鱒の川

製作年:2003年
製作国:日本 
監 督:磯村一路

病弱な母と2人で暮らす心平は、絵を描くことと魚捕りが大好きな8歳の少年。幼なじみの小百合は聴覚が不自由だが、心平だけに不思議と意思が通じ合った。ある日、心平の描いた雨鱒の絵がパリの児童絵画展で特賞に選ばれた。その祝賀会の夜、帰りの雪道で母は倒れ亡くなってしまうが…。

祝福されない若き恋人たち。小百合の祖母、そして父親は生活のため、地域社会のため、それぞれの恋を諦めてきた過去を持つ。それらと対比させることで、心平と小百合の旅立ちがより鮮やかなものになっている。

雨鱒との交流。耳を当て互いの気持ちを確かめ合う大木の幹。川に映える花火。自然の中の神秘性も大切に描かれている。

葉加瀬太郎の情緒的なヴァイオリンの響きも良かった。

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2005/09/05

ウェルカム ヘヴン

製作年:2001年
製作国:スペイン/フランス/イタリア
監 督:アグスティン・ディアス・ヤネス

地上で暴力や犯罪が多発している現在、天国では昇ってくる魂が激減し、破産の危機に直面していた。一方、地獄は堕ちてくる魂が急増し、過密状態が続いている。双方が、この危機的状況を打破するカギを見つけた。マドリードに暮らすボクサーのマニの魂を迎え入れることだ。天国と地獄は、それぞれ使者を送り込むが…。

物語のディディールが分り難く、単純に楽しむことができなかった。何故、うらぶれたボクサーが天国と地獄の間で争奪戦となるような重要人物なのか? 「ライ麦畑でつかまえて」の意味は? そこに重要な暗喩があるのかもしれないが、読解できなかった。

天国と地獄の工作員同士が共同生活を過ごす内にひそかに共感し合っていく。そこで天国と地獄の境目が曖昧になっていく。

そもそも天国と地獄の境目とは何だろうか。消化不良のまま、疑問ばかり残っていく作品だった。

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2005/09/04

モーターサイクル・ダイアリーズ

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製作年:2003年
製作国:イギリス/アメリカ 
監 督:ウォルター・サレス

1952年、ブエノスアイレス。23歳の医学生エルネストは7歳年上の友人アルベルトと二人で、おんぼろバイク“ポデローサ号”に乗って南米大陸探検の旅に出た。彼らの行く手には様々な困難が待ち受けていたが…。
第77回アカデミー賞でホルヘ・ドレクスレールの「河を渡って木立の中へ」が歌曲賞を受賞。

旅とは、自分の知らない何かを見つけること。無邪気な笑顔が辛辣な現実の前に消えていく。社会の理不尽さをいつか変えてやるという強い思いの現れが、アマゾン川の横断遊泳なのであろう。

最後に、この旅行でエルネスト(ガエル・ガルシア・ベルナル)が出会った人々が白黒画面で再登場するカットがずっしりと心に残り続ける。

そして、南米大陸の風景も素晴らしかったです。

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2005/09/03

愛は霧のかなたに

製作年:1988年
製作国:アメリカ
監 督:マイケル・アプテッド

マウンテン・ゴリラが絶滅の危機に晒されている事に興味を持ったダイアンは著名な動物学者ルイスに直訴して助手になる。そして中央アフリカの生息地に向かうが、同行してくれると思っていたルイス博士は他の地域へ行ってしまい、彼女はゴリラについては何も知らない現地人ガイドと二人で調査を開始するが…。

奇人変人が世界を変えていく。常人には持ち得ない激しい情熱があって初めて、強固な状況を打破することができるだろう。彼女の取った行動は必ずしも正しい選択ではなかったかもしれない。だが、その行動の結果、マウンテン・ゴリラの絶滅を救ったことには間違いない。その強い信念に圧倒されたことがひとつ。マーティン・スコセッシ監督の「アビエイター」(2004)を思い浮かべる。

てっきり、全部実写であったと思ったが、ボス・ゴリラは特殊メークの第一人者リック・ベイカーが製作したゴリラ・スーツであったという。本物のゴリラと全く区別がつかなかった。その出来栄えに驚嘆する。

シガニー・ウィーヴァーといえば「エイリアン」シリーズのリプリー役であるが、こうした強い女性を演じると卓越した存在感を見せる。そして、赤ちゃんゴリラと遊ぶときの優しい表情も忘れ難い。

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2005/09/02

エニグマ

製作年:2001年
製作国:イギリス
監 督:マイケル・アプテッド

1943年、イギリス軍の暗号解読センター。ナチスドイツの暗号化装置“エニグマ”の暗号コードが突然変更されたため、解読チームが窮地に立たされていた。かつてこの暗号を解読したトムが呼び戻される。彼は同じセンターで働く恋人クレアと喧嘩別れしたことで神経衰弱に陥り、強制的に休暇を取らされていたのだが…。

ロンドン北97km、ブレッチリー・パークにあった暗号解読チーム。「カチンの森」事件。今まであまり伝えられなかった歴史の一部が本作品で綿密に描かれている。第二次世界大戦をテーマに描いた映画はたくさんあるが、まだまだ知らないことがたくさんある。そのことを興味深く考えさせられたことがひとつ。

事件と共にトム・ジェリコ(ダグレイ・スコット)のクレア(サフロン・バロウズ)の恋の記憶が断片的に挿入されてくる。この編集が絶妙でミステリー的興趣が増してくる。

事件を追いかける諜報部員をジェレミー・ノ-ザムが好演。嫌らしい笑顔を見せながら、トムを追い詰める様がなかなかよい。

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2005/09/01

エターナル・サンシャイン

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:ミシェル・ゴンドリー

バレンタインデーを目前にしたある日。ジョエルはラクーナ医院から不思議な手紙を受け取る。そこには最近ケンカ別れしてしまった恋人クレメンタインについて“彼女はジョエルの記憶を全て消し去りました。今後、彼女の過去について絶対触れないようにお願いします。”と書いてあったが…。

第77回アカデミー賞で脚本賞を受賞。

出会った頃はお互いに良い面しか見えないのに、付き合いが進んでいくと嫌な面ばかり目に付いてしまう。二人が記憶を消す前に残したテープの内容がそのことを強く訴えかける。プラス面がいつの間にか当たり前になり、マイナス面ばかり気になってしかたない。失ってからでないとプラス面が見つけられなくなる。そんな日常生活の哀しさがここにある。

たとえ記憶をなくしたとしても、人を好きになる感情はなくならない。パトリック(イライジャ・ウッド)がクレメンタイン(ケイト・ウィンスレッド)に接近するのに、ジョエル(ジム・キャリー)と同じようなディティールを用意しても成功しなかった点が興味深い。

マーク・ラファロが最後のクレジットを見るまで気が付かなかった。「死ぬまでにしたい10のこと」(2003)でもそうだったが、この方は「イン・ザ・カット」(2003)の時の印象があまりに強く残り過ぎているようだ。

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