真実の瞬間(とき)
製作年:1991年
製作国:アメリカ
監 督:アーウィン・ウィンクラー
1951年、ロサンゼルス。ハリウッドでもトップ・クラスの監督であるデビッドは、20世紀フォックス社の社長ダリル・F・ザナックに呼ばれ、急遽フランスから帰国した。ザナックは彼に米下院非米活動委員会から呼び出しが来るので、協力するよう暗に求められるのだが…。
デビッド(ロバート・デ・ニーロ)はハリウッド随一のヒットメーカーとしての実績から保護してもらえると確信していた。パリからの帰国パーティーの席上で、仲間から歓迎されると共に、ザナックのお気に入りだからという皮肉を受けている。だが、証言を拒むと彼の確信はあっけなく崩れ果てた。すぐに仕事は干され、生活に困窮することになる。自分の価値をはかるという事がどんなに困難なことかと思うことがひとつ。
そして、信念を貫くとはどういうことかを教えてくれる。最初の方で証言を拒否することはたやすい。生活を顧みることなく理想を語ることは誰でもできる。だが、デビッドはどん底の生活を経験し、証言すれば監督に復帰させるという確約まで貰っている。それでも、なお証言しなかったということが重要だ。苦難の道を歩むことを知っていて、それでも拒むということは大変な覚悟がいる筈だ。証言の場面で本作品は終わり、いささか呆気ない感じもするが、ここが最大のポイントだと思う。
大切なのは「赤狩り」がいかにひどかったかという歴史の1ページで終らせてはいけないことだ。確かに、十数年経ってみれば、共産主義者への弾圧は不当なものだと感じるであろう。しかし、その一方で共産主義に恐怖し嫌悪していた時代の空気を考慮しなければならない。そして今でも、これが正義だと確信し弾圧を続けている体制がある事も忘れてはいけない。
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