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2005年8月

2005/08/30

アザーズ

「アザーズ」★★★★★
2001年アメリカ スペイン フランス
監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ニコール・キッドマン フィオヌラ・フラナガン
   クリストファー・エクルストン エレイン・キャシディ

1945年。イギリス、チャネル諸島のジャージー島。グレースはこの島に建つ広大な屋敷に娘アンと息子ニコラスと3人だけで暮らしていた。夫は戦地に向かったまま未だ戻らなかった。屋敷は光アレルギーの子どもたちを守るため昼間でも分厚いカーテンを閉め切り薄暗かったが…。

鑑賞後、M・ナイト・シャマラン監督の「シックス・センス」(1999)のことが頭をよぎりました。その映画との共通点がいくつかあります。ドラマ展開、テーマ性、作家性などなどです。そして、クライマックスのサプライズ。この結末を知って後味が悪くないところも似ていると思いました。

そのシャマラン監督がホラー色にこだわり「シックス・センス」を越える作品を作れず評価が低迷しているのに対して、アレハンドロ・アメナーバル監督はホラー路線を変更し「海を飛ぶ夢」(2004)のような秀作を撮り、さらに注目を浴びました。なかなか対照的な二人です。

本作品のプロデューサーはトム・クルーズ。この当時、まだ結婚していたニコール・キッドマンとの最後のコラボレーションとなりました。その当時はベスト・カップルだと言われていたのに。本作品が日本で公開されたときには、二人は離婚してしまっていて複雑な思いがよぎりました。

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2005/08/29

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

製作年:2002年
製作国:アメリカ
監 督:スティーブン・スピルバーグ
出演:トム・ハンクス ・ディカプリオ
   クリストファー・ウォーケン マーティン・シーン

1960年代。16歳のフランクは尊敬する父が母と離婚すると聞き、ショックで衝動的に家を飛び出してしまう。そして、生活のため偽造小切手の詐欺を始めるようになる。大手航空会社のパイロットに成りすますと誰もがみごとに騙され、巨額の資金を手に入れるのだが…。

フランク(レオナルド・ディカプリオ)が詐欺行為を続けるのは単にお金のためだけでない。父と母が得意げにダンスするような暖かい家族の再現を夢見て、カール(トム・ハンクス)から逃走を続ける。その夢が破れ、彼の戻る場所がないと悟った時、フランクの逃走劇は終った。

失った家族を取り戻そうと主人公が逃走を続けるのは、近年の「A.I.」(2001)や「マイノリティ・リポート」(2002)、「宇宙戦争」(2005)に共通するモチーフであり、S・スピルバーグ監督の関心の高さが窺われて興味深い。

タイトルバックのアニメーションが洒落ていて素晴らしい。

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2005/08/28

ペイチェック 消された記憶

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:ジョン・ウー

情報化が一段と進んだ近未来社会。フリーのコンピュータ・エンジニア、ジェニングスは、ハイテク企業の開発部門を渡り歩き、機密保持のため、報酬と引き替えに開発期間中の記憶を抹消するという仕事を請け負っていた。今、ジェニングスはオールコム社の極秘プロジェクトを終了させ、3年間の記憶を抹消したが…。

SFの舞台設定でありながら、ミステリー色も強く出ている。そして、ジョン・ウー監督ならではの華麗なアクションシーンも盛り込まれているところが非常に面白かった

記憶をなくした男、自分の過去を追い駆けるというプロットは珍しいものではない。本作品の魅力は小道具の使い方。一見、関連性がないものが、ひとつひとつ繋がっていく展開が小気味良くグイグイと惹きつけられました。

初めてヴァージンシネマズ六本木ヒルズに行き、本作品を観たというのも忘れられない思い出です。

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2005/08/27

ヴァイブレータ

製作年:2003年
製作国:日本
監 督:廣木隆一

ある雪の夜。31歳の女性ルポライター玲は酒を求めてコンビニに入る。そこで彼女は一人の男に目を留めた。玲は店を出た男の後を追う。男は岡部というフリーの長距離トラック運転手だった。玲は岡部のトラックに乗り込み一緒に酒を飲み始め、そのまま一夜を過ごす。岡部は玲を乗せ東京から新潟へ向けて走り出すが…。

誰かに触れ合いたいという気持ち。玲には人一倍その想いが強いにもかかわらず、他者とうまくコミュニケートできない。その苛立ちが頭の中で止むことのない呟きとなって表れる。

このトラックの道行は、彼女が他者と初めて過ごした濃密な時間だったのではないか。この時間はもう一度彼と過ごしてみても、得られないかもしれない。だが、この時間を体験した彼女は力強く日常を生きていけるのではないか。そう予感するラストシーン。

長距離トラックにまつわる細々としたディティールが実に興味深かった。

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2005/08/26

ツイステッド

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:フィリップ・カウフマン

サンフランシスコ市警殺人課で初の女性捜査官となったジェシカ。父親代わりのミルズ本部長に見守られ順調なスタートを切る。しかし、彼女は酒場で会った行きずりの男と一夜限りの関係を持ってしまうことがしばしばあった。ある時、続けざまに2件の殺人事件が発生する。被害者はいずれもジェシカと関係した男だったが…。

非常に丁寧に作られた作品であると思う。効果音や小道具など細かいところに神経を配ったフィリップ・カウフマン監督の演出はなかなかのものである。

だが、ミステリーとしてみるとそこが不満になってしまう。それらを見ていれば真犯人は容易に分ってしまうのだ。伏線の張り方にもう少し技が欲しかった。

こうした役柄を演じるとアシュレイ・ジャドはピカイチの存在感を見せる。

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2005/08/24

グッバイ、レーニン

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製作年:2003年
製作国:ドイツ
監 督:ウォルフガング・ベッカー

1989年、東ベルリン。テレビ修理店に勤めるアレックスの父は、10年前に家族を捨て西側に亡命してしまった。その反動から母のクリスティアーネは愛国心を強めていた。建国40周年を祝う夜、アレックスが反政府デモに参加している姿を見て、クリスティアーネは心臓発作を起こし昏睡状態に陥ってしまうが…。
第53回ベルリン国際映画祭でヨーロピアンフィルム賞を受賞。第29回セザール賞でEU(欧州連合)作品賞を受賞。

吊り下げられたコカコーラの赤い幕。ペリコプターで運ばれていくレーニン像。東ベルリンが崩壊し社会が変革していく街の姿を鮮やかにとらえたショットが素晴らしい。

そして、宇宙飛行士・ロケット・衛星放送らが映画の中で何度も登場してくるが、それらはアレックス(ダニエル・ブリュール)の抱く新しい社会への期待、夢の象徴であると思いました。

病気の母のために始めた嘘のドイツが、やがてアレックスにとって理想のドイツに変遷していくところが非常に興味深かった。反社会主義運動を支持してきた彼が、社会主義から資本主義に変わっていく姿を目の当たりにして、全てが良くなるものでないことに気付かされるのであった。現実の社会はいい面も悪い面も両方兼ね備えているのだろう。

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2005/08/23

アイデンティティー

製作年:2003年
製作国:アメリカ 
監 督:ジェームズ・マンゴールド

激しい豪雨の降り続く夜、寂れた街道で交通事故が起こる。加害者のエドは、近隣のモーテルに救援を求めるが、豪雨で電話は不通。道路も冠水し行く手を阻まれてしまう。やむなくエドはモーテルに引き返し、天候の回復を待つ。モーテルには同じように立ち往生した10名の男女が集っていたが…。

元々ミステリー小説が大好きなので、この種のタイプの映画を見逃さないようにしております。だが、ドンデン返しを無理矢理作ったような感じの作品も多く、失望することも多いです。

しかし、本作品は違います。久々に期待に応えてくれる出来栄えでした。終盤、こんな落ちかとちょっとがっかりしましたが、そこからもう一捻りありました。この展開が良かったです。よく出来たミステリー映画はみなそうですが、結末を知ってなおもう一度最初から観直したくなります。

そして、キャスティングもなかなか渋く10人の組み合わせが絶妙でありました。それぞれが妖しい魅力を発揮してくれています。

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2005/08/22

初恋のきた道

製作年:1999年
製作国:アメリカ/中国 
監督:チャン・イーモウ

中国、華北の小さな村。父の死の知らせを聞き都会から青年が母の元へ戻ってきた。悲しみに暮れる母の願いは病院から遺体を担いで村に戻るという伝統的な葬儀をしたいということだった。そのかたくなな母の姿に、青年は当時、村で話題になった両親の恋物語を思いだすのだったが…。第50回ベルリン国際映画祭で審査員特別賞を受賞。

割れた丼を修繕する。なくしてしまった髪留めが見つかる。初恋の物語は悲劇で終るというのが一般的であるが、本作品では一途な少女(チャン・ツィイー)の想いは困難にあってもいつか叶うのではないかと予感させるエピソードが続く。

その恋心はやがて村中に知れ渡ってしまう。最初はその恋に反対する母親であるが、少女のひたむきな想いにやがて情が移っていく。そして村人からも応援してもらえる。恋であっても、一生懸命な姿は周りの人々も幸福にしてくれる。この想いの象徴として村から町へ続く一本道が的確に描かれている。そのため、プロローグへ感動的に結びついていくのだ。

走るたびに揺れる三つ編みの髪。厚地の上着とモンペのようなズボン。教師のために一生懸命作る手料理。そんな素朴な田舎の少女をチャン・ツィイーが好演しています。

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2005/08/21

ロスト・イン・トランスレーション

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:ソフィア・コッポラ
出演:ビル・マーレイ スカーレット・ヨハンソン
   ジョヴァンニ・リビシ アンナ・ファリス

ウィスキーのコマーシャル撮影のため来日したハリウッド・スターのボブ。写真家のジョンの仕事に同行してきた若妻シャーロット。同じホテルに滞在する二人は異国にいる不安や戸惑いを感じ始めていた。やがて、二人はラウンジで何度か顔を合わせているうちに、言葉を交わすようになるが…。

第76回アカデミー賞でS・コッポラが脚本賞を受賞。第30回セザール賞で外国映画賞を受賞。

異国で味わう孤独感。間違った選択をしてしまったという思い。日に日に増していく疎外感。そのような感情が二人の姿から色濃く伝わってくる。

自分や自分の好きな事を知らないと、無駄な時間を削ることはできない。付き合いや慣習に囚われていると、本当の自分を見つけられない。この日本の地で時間を持て余し、漂うように出会った二人。安らぎを見出した幸福な時。

2作目となるソフィア・コッポラ監督。前作「ヴァージン・スーサイズ」(1999)に続き、透明感のある映像世界、ムードある音楽など独自のセンスが光ります。

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2005/08/20

ごめん

製作年:2002年
製作国:日本
監 督:冨樫森

大阪郊外にある寺の息子、小学校6年生のセイは京都に住む祖父母のもとへ遊びに行った時にたまたま見かけた中学校2年生のナオコに一目惚れしてしまう。ナオコは喫茶店を経営する父親と二人暮しをしていた。セイはナオコに会いたさに頻繁に京都に通うようになり、遂にデートしてもらえることになるが…。

冨樫監督は前作「非・バランス」(2000)でも少女の揺れる心情を巧みに描きましたが、本作品でもナオコ(櫻谷由貴花)が見事に活写されている。

セイ(久野雅弘)抱くナオコへの真っ直ぐな想い。最初は観ている方が恥ずかしく思えるものであったが、後半がいい。面構えも変わっていき、小学校高学年ということを忘れ応援したくなりました。自分の無力さを、そして自分の限界を知ってしまったセイは少年から大人になっていく。

幕切れの自転車シーンが秀逸。しばらく心の中に残りました。

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2005/08/19

ギャング・オブ・ニューヨーク

製作年:2001年
製作国:アメリカ
監 督:マーティン・スコセッシ

1846年。ニューヨークのファイブ・ポインツ。アイルランド移民たちの組織“デッド・ラビッツ”はアメリカ生まれの住人たちの組織“ネイティブズ”と激しく対立していた。そして、抗争の最中、デッド・ラビッツのボスであるアムステルダムの父親が敵のボス、ビリーに殺されてしまうが…。

厚みある映像が素晴らしい。セットや衣装の豪華さに圧倒される。壮大なスケールを持つ大作であることは間違いない。

たが、その映像の深みに物語が負けている。父親の敵を討つ復讐ドラマとしても、ラブストーリーとしても中途半端。それぞれの登場人物に感情移入できないのだ。2時間40分という上映時間を使っても、テーマを絞りきれなかったのではという思いが残る。

アカデミー賞にもノミネートされ評判高いダニエル・デイ=ルイスの演技だが、私には作り物のようであり、いまひとつ馴染めなかった。

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2005/08/18

黒水仙

製作年:2001年
製作国:韓国
監督:ペ・チャンホ
出演:イ・ジョンジェ アン・ソンギ
   イ・ミヨン チョン・ジュノ

50年間独房に収監されていた男ファン・ソクが釈放された。同じ頃、漢江に水死体が上がる。捜査を始めた殺人課のオ刑事は被害者がヤン・ダルスで朝鮮戦争中、捕虜収容所が置かれていた巨済島で脱走捕虜を捕らえる任務についていたことを知る。その捜査の過程でソン・ジヘという女性の古い日記が見つかるが…。

現代のどこにでもあるような殺人事件を追いかけるうちに、数十年前の悲劇が浮びあがってくる。前半は野村芳太郎監督の「砂の器」(1974)を想起させて、大いに引き込まれる。

だが、後半で崩れてしまう。肝心の捕虜脱走事件について人間関係が不明瞭で未整理のままだ。様々な疑問点が解消されないまま残ってしまう。次に、オ刑事(イ・ジョンジェ)が捜査で日本の宮崎に向うところ。疑惑の男がとても日本人とは思えない変なイントネーションの言葉を使うことには文句をつけない。問題は男がオ刑事を高千穂峡に誘ってからのくだり。これではあまりに現実離れしているし、アクションシーンにもひねりがない。そして、クライマックスの展開も大いに不満。あれだけ盛り上げておいて、見事に肩透かしを食らった思い。もう少し違う趣向があったのではないか。

最後でソク(アン・ソンギ)が「その体にさわるな」と一喝する場面が強く心に焼き付く。一人の女性を愛したことでその半生を独房で暮らし、ただ木彫りの人形を彫りつづけた男。その報われない想いの全てがここに収斂されている。

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2005/08/17

悪い男

製作年:2001年
製作国:韓国
監 督:キム・ギドク

昼下がりの繁華街。売春街を取り仕切るヤクザのハンギは一人の女性に眼を奪われる。その女子大生ソナはハンギに侮蔑の視線を向けるとハンギは強引にソナの唇を奪う。周囲は騒然となり、取り押さえられたハンギは軍人たちから袋だたきにあってしまう。ソナにも唾を吐かれ罵られてしまうが…。

あまりにも極端な設定に現実味が不足しているのかもしれないが、そういうありえないシチュエーションを創造することこそフィクションの醍醐味だ。倒錯した愛の世界と言えばリリアーナ・カヴァーニ監督の「愛の嵐」(1973)などすぐ浮んでくるが、本作品も卓越したオリジナリティーを誇っていると思う。

このような特異な物語を成立させるにはキャラクターの造形が何よりも大切である。こんな人間であれば仕方ないと納得させられるか否かで作品に説得力が左右される。本作品でもヤクザのハンギ(チョ・ジェヒョン)の存在感が圧倒的で異彩を放つ。無言のままソナ(ソ・ウォン)を見つめる視線の激しさ。時に激しく時に憂いを帯びていて画面は常に緊張感に包まれる。そして、彼が唯一言葉を発する場面の苛烈さ。忘れがたいシーンだ。

鋭いガラスやナイフで腹を刺される反復。顔がない海辺の写真。死を予感させる描写が続く。エピローグのシークエンスは、現実というよりハンギの死に際に浮んだ哀しい夢の姿でないだろうか。

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2005/08/16

サマリア

製作年:2004年
製作国:韓国
監 督:キム・ギドク

女子高生のヨジンは刑事をしている父ヨンギと二人暮らし。親友のチェヨンはヨジンと二人でヨーロッパ旅行に行くためと援助交際をするようになっていた。屈託ない笑顔を絶やさず男に身体を売るチェヨンに抵抗を感じながらも、彼女が心配なヨジンは見張り役として行動を共にしていたが…。

第54回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。

予告編を見て想像していた話と全く違っていた。後半にあのような展開になっていくとは夢にも思わなかったです。このようなドラマを作るキム・ギドク監督に驚嘆したことがひとつ。

贖罪のつもりで起こした行動が、他の誰かを大いに傷つけ、それが新たな罪を生んでいく。人が生きていくことはなんと罪深いものなのか。心に血を流すような思いに囚われる。

男を殴り殺す石。自動車の進行を邪魔する石。娘の自動車教習にために黄色く塗った石。後半になって石が連動して使われている。父親のさまざまな思いの結晶がこれらの石に表現されているのであろう。このような表現方法はまことに見事なもので大いに唸らされる。

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2005/08/15

スパイ・ゾルゲ

製作年:2003年
製作国:日本
監 督:篠田正浩

1930年代。上海で暮らしていた朝日新聞記者の尾崎秀実はゾルゲと出会う。ゾルゲは不安定なアジア情勢をロシアへ報告するスパイだった。尾崎はゾルゲの語る理想に共鳴する。その後、日本へ戻った尾崎は、日本へ派遣されたゾルゲと共にスパイ組織を着々と作り上げていくのだが…。

ロードショー公開時に観た時は、篠田正浩監督の最後に選んだ作品という期待に対し、感情移入できない人物描写に不満が募り、その年のワースト作品に選んだものでした。これで二回目となるが、初見よりもはるかに興味深く鑑賞できた。やはり、こういうことがある。映画の感想とは相対的なものであり、何を主軸にして観るかで大きく変わってしまう。そのことがひとつ。

ゾルゲ(イアン・グレン)にしても尾崎(本木雅弘)にしても命がけで情報収集に働いていたのに、その人生は決して報われることはなかった。彼らのスパイ活動は周囲の人達も深く傷つけてしまう。そこに意義があったのだろうか? ゾルゲが最後に叫ぶ「国際共産主義、ばんざい」が重々しく響く。確かに彼らの夢描いた世界は実現されなかった。ソ連は崩壊し、共産主義は過去の遺物になってしまった。

しかし、である。彼らの行動が歴史を作ってきたことに間違いはない。行動することで何かが変わっていくのだ。最後の「イマジン」の詩は、夢のために働く者へ監督の思いを託したものであろう。そして、一度でいいから「あなたの人生は無駄でありません」と誰かに言ってもらいたいものだ。

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2005/08/14

バイオハザード 2 アポカリプス

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:アレクサンダー・ウィット

巨大企業アンブレラ社の地下研究所“ハイブ” から生還したアリスは何者かに捕えられてしまう。無人の病院で目を覚ました彼女は本能的に“T-ウィルス”がラクーンシティ中に蔓延していることを知る。やがて、特殊部隊の女性隊員ジルら生き残った者たちと合流し脱出を試みるが…。

地下施設ハイブからハイテク都市ラクーンシティに戦いの舞台を移したのがニ作目の趣向である。だが、空間が広がった分だけ話が拡散し焦点が絞りきれなかった感じがする。

それは登場人物にも言える。原作のゲームで活躍する人気キャラ、ジル・バレンタインを登場させ、元々のゲームファンを喜ばせていることは分る。だが、アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)との関係において中途半端の位置付けでしかない。二人が出会うことによって生じる反発や嫉妬という心理的葛藤がなく、いつの間に一緒になって闘っているだけ。アリスには見せ場が用意されているが、ジルには特になく霞んでしまっている。ダブルヒロインならでは活躍をもっと見たかった。

そして、町に取り残された少女アンジェラを救出するというプロットも、生物兵器ネメシスの扱いも弱いと思う。アクションシーンの迫力やスピード感はなかなかのものであるが、全体的に設定の説得力に欠けていると思う。

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2005/08/13

舞台よりすてきな生活

製作年:2000年
製作国:アメリカ 
監 督:マイケル・カレスニコ

ロサンゼルス。イギリス人劇作家ピーターは子供が嫌いなために上演も間近に迫った新作戯曲の子役の部分が上手く描けずスランプに陥っていた。その上、夜中になると隣の犬の声が気になって眠れずストレスが募っていた。そんなある時、エイミーという足の不自由な少女が向かいに引っ越してくるのだが…。

思わぬところで人生を変えてしまう出会いがある。苦手だ、嫌いだと頑なに拒まず、あるがまま自然に接していく。そうしているうちに、新たな道が開けてくる。出会いの素晴らしさと別れの切なさを丁寧に描かれた作品でした。

ウディ・アレン監督作品の登場人物のようなピーター(ケネス・ブラナー)。言葉多く不満を連ねるが、彼のスランプはひとつの型に縛られて、自由な発想を得られなくなった事に因している。それを破るきっかけは利己的な理由からであったが、そこからの流れが良い。ピーターに感情移入し、一気に画面へ惹き付けられる。

本作品のような軽妙洒脱な大人のコメディは、いろんなことを感じさせてくれる。

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2005/08/12

インテルビスタ

「インテルビスタ」★★★★(BS)
1987年イタリア 監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:フェデリコ・フェリーニ セルジオ・ルビーニ
   マルチェロ・マストロヤンニ アニタ・エクバーグ

夜の人気のないチネチッタ撮影所。ここでフェリーニ監督とスタッフたちは、カフカの「アメリカ」に着想を得た新作の冒頭シーンを撮影しようと準備していた。そこへ日本のテレビ局の取材班が、撮影を見学にやって来てフェリーニにインタビューする。フェリーニは初めてチネチッタにやって来た時のことを語り始めるが…。第40回カンヌ国際映画祭で40周年記念賞を受賞。

映画撮影中のフェリーニ監督を追いかけるドキュメンタリー(日本人のTV局であるのが微妙に変で可笑しい)と、その映画が境界線なく繋がっている。見事な編集であるが、日常と非日常、現実と虚構、芝居と本音の世界が渾然一体となり、魅惑的な映像に引き込まれる。

そして、本作品の主役はずばりチネチッタスタジオ。撮影スタジオの息吹きが感じられる。撮影監督や美術監督の怒声、中間管理職のように気苦労の耐えない助監督、華やかな俳優たち。映画撮影にまつわる悲喜交々はイタリアでも日本でも変わらないなぁーという感慨もある。

中盤で「甘い生活」(1959)をマルチェロ・マストロヤンニとアニタ・エクバーグが二人そろって見る場面がある。ざっと数えて28年の歳月が経過している。そのA・エクバーグの変わりようといったら、言葉もない。これをどう感じるか意見の分かれるとことであるが、私には残酷な思いが残る。

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2005/08/11

甘い生活

「甘い生活」★★★★(BS)
1959年イタリア フランス 監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ アニタ・エクバーグ
   アヌーク・エーメ バーバラ・スティール

作家志望の夢が叶わず、今はしがないゴシップ記者のマルチェロ。彼は豪華なナイトクラブで富豪の娘マッダレーナと出会い、安ホテルで一夜を明かす。ハリウッドのグラマー女優シルビアを取材すれば、野外で狂騒しトレビの泉で戯れる。婚約中のエンマは彼の行動を嘆き、自殺未遂を起こすのだが…。第34回アカデミー賞で衣装デザイン賞を受賞。第13回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。

この名作をきちんと観るのは今回が始めてである。何回か名画座などに観に行ってこともあるのだが必ず寝てしまうのです。私にとってフェリーニ、アンゲロプロス、ゴダールは誘眠効果絶大な三巨匠である。この方々の作品を観るにはDVDが最適である。

ヘリコプターで運ばれるキリスト像。奇蹟をテレビ中継するクルーたち。宗教にまつわる神秘性が薄れて娯楽性が高まってしまった現代。その一方で、目的もなく夜遊びを続ける退廃の都市生活者の描写が続く。少女の声が聞こえないマルチェロのラストシーンが実に象徴的である。我々は何か大切なものを失ってしまったのではないかという感慨にふける。

「トスカーナの休日」(2003)でリンゼイ・ダンカンが真似していたトレビの泉の場面は本作品が元ネタだったのですね。これは発見でした。

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2005/08/10

フレンチなしあわせのみつけ方

「フレンチなしあわせのみつけ方」★★★
(シネ・アミューズ/ウェスト)
2004年フランス 監督:イヴァン・アタル
出演:シャルロット・ゲンズブール イヴァン・アタル
   アラン・シャバ エマニュエル・セニエ

パリの自動車販売会社に勤めるヴァンサンは、不動産会社で働く妻ガブリエルと小学生の一人息子ジョゼフの3人暮らし。誰もが羨ましがる温かい家庭を築いているように見えるが、ヴァンサンはエステティシャンの愛人を作っていたのだ。それにガブリエルは薄々と気がついているのだが…。

壜などから服の上に水をかけるというシーンが何度も挿入されている。これは理性という構えた気持ちを打ち破り、本心をさらけ出そうとする試みではないだろうか。

しかし、ドラマにメリハリがないのかバランスが悪いのか、上映時間以上に長く感じた。それはこれで話が終わるのかなぁと思っていると、そこからまた違う話が始まっていくことが続いたせいであろう。

個々のエピソードは面白いものもあるが、時系列をバラバラにした構成が分りにくいものにしている。

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2005/08/09

ロッキー 4 炎の友情

製作年:1985年
製作国:アメリカ
監 督:シルベスター・スタローン

かつて、ニ度にわたり壮絶なヘビー級タイトルマッチを演じたロッキーとアポロは、今では固い友情で結ばれていた。ある時、ソ連のアマチュアチャンピオン、ドラゴが渡米し、ロッキーとの試合を要望する。そのニュースを聞き、アポロは自分が代わりに闘いたいとロッキーに直訴するのだが…。

本作品をロードショー公開時に観た時には、非常に面白く感激して観たのが、こうして約20年ぶりに観直してみると直線的で分りやすい描写に苦笑してしまう。シルベスター・スタローンが何を訴えたいのか、非常に明確でいいのだが、映画としての深みに欠ける。

とは言え、好きな場面がたくさんあることは間違えない。一作目の頃の貧困生活が嘘のように大邸宅に住み、スポーツカーを乗り回すロッキー(シルベスター・スタローン)。ドラゴ(ドルフ・ラングレン)との試合が決まりロシアの雪山でトレーニングに励む。その際、ドラゴが科学者によって最新鋭の機械的なトレーニングなのに対して、ロッキーはロッジにあるものを使って原始的なトレーニングを行う。この対比の妙。ロッキーに野性味が失っていないことを示す。そして、雪山に上ってガッツポーズをするのは、このシリーズのトレードマークのようなものだが、分っていても胸熱くなる。

ジェームズ・ブラウンの歌う「リビング・イン・アメリカ」が挿入されている。当時のMTVとリンクされた作りに、懐かしさを覚える。

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2005/08/08

真実の瞬間(とき)

製作年:1991年
製作国:アメリカ
監 督:アーウィン・ウィンクラー

1951年、ロサンゼルス。ハリウッドでもトップ・クラスの監督であるデビッドは、20世紀フォックス社の社長ダリル・F・ザナックに呼ばれ、急遽フランスから帰国した。ザナックは彼に米下院非米活動委員会から呼び出しが来るので、協力するよう暗に求められるのだが…。

デビッド(ロバート・デ・ニーロ)はハリウッド随一のヒットメーカーとしての実績から保護してもらえると確信していた。パリからの帰国パーティーの席上で、仲間から歓迎されると共に、ザナックのお気に入りだからという皮肉を受けている。だが、証言を拒むと彼の確信はあっけなく崩れ果てた。すぐに仕事は干され、生活に困窮することになる。自分の価値をはかるという事がどんなに困難なことかと思うことがひとつ。

そして、信念を貫くとはどういうことかを教えてくれる。最初の方で証言を拒否することはたやすい。生活を顧みることなく理想を語ることは誰でもできる。だが、デビッドはどん底の生活を経験し、証言すれば監督に復帰させるという確約まで貰っている。それでも、なお証言しなかったということが重要だ。苦難の道を歩むことを知っていて、それでも拒むということは大変な覚悟がいる筈だ。証言の場面で本作品は終わり、いささか呆気ない感じもするが、ここが最大のポイントだと思う。

大切なのは「赤狩り」がいかにひどかったかという歴史の1ページで終らせてはいけないことだ。確かに、十数年経ってみれば、共産主義者への弾圧は不当なものだと感じるであろう。しかし、その一方で共産主義に恐怖し嫌悪していた時代の空気を考慮しなければならない。そして今でも、これが正義だと確信し弾圧を続けている体制がある事も忘れてはいけない。

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2005/08/07

五線譜のラブレター DE-LOVELY

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:アーウィン・ウィンクラー

1920年代のパリ。コールは美しい年上の女性リンダと出会う。お互いに惹かれ合う2人は交際をスタートさせるが、ほどなくコールは自分がゲイであることを告白する。彼の音楽の才能と優しさを確信していたリンダは、そのことを承知した上で結婚を決意する。2人はヴェネチアへ移り新婚生活をスタートさせるが…。

コール・ポーター(ケビン・クライン)とリンダ(アシュレイ・ジャッド)の互いの想いの象徴として、バラの花とシガレットケースが効果的に使われておりました。

本作品がありきたりな愛妻物語で終っていないのは、コール・ポーターがゲイであったということによる。二人の絆が時に強く時にもろくなり、その危うさがポイント。コール・ポーターの作った「夜も昼も」など現在でもジャズのスタンダード・ナンバーとなっており今も輝きを失わない。その華やかなショービジネスの裏側にある寂寥感も感じられ、ずっしりと心に残る。

ナタリー・コール、エルヴィス・コステロ、シェリル・クロウら大物ミュージシャンが劇中でポーターのナンバーを披露する。彼らが直接的にはドラマに絡まず、黒子に徹していたのがクールであった。

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2005/08/06

トルク

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:ジョセフ・カーン

半年前、麻薬密売の容疑を着せられ恋人シェインを残し一人姿を消したケアリーが故郷の街に戻ってきた。彼はバイカーギャングのリーダー、ヘンリーから数台のバイクを預かっていたのだが、その車体に大量のドラッグが隠されていたのだ。それに気付いたケアリーは身の危険を感じバイクを隠し逃亡したのだが…。

アクション映画は我々が日常生活の中で体現することのない格闘の醍醐味を見せてくれる。我々はカンフーアクションをすることも、チャンバラをすることも、2丁拳銃を構えてガンファイトすることはできない。本作品のようなバイク同士でのバトルもそうだ。その臨場感こそ夢の世界だ。

しかし、ここまでCGを多用されるとあまりにテレビゲームのようであり、夢の世界にひたることはできない。特にクライマックスで登場するヘリコプター用のジェット・エンジンを搭載したという“Y2K”での格闘が、ひねりがなく安易で面白くなかった。その前の女性ライダーたちの戦いの方が、様々な技が用いられ、はるかに楽しかった。

主人公のキャラクターもあまり薄っぺら。半年で逃亡先のタイから戻ってくるが、この時間が中途半端だ。その逃亡の理由、戻ってくる理由、それぞれに共感できるようなものでなく魅力に乏しい。

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2005/08/05

スパイダー パニック

製作年:2002年
製作国:アメリカ
監督:エロリー・エルカイェム

アメリカの片田舎。運転操作を誤ったトラックが産業廃棄物の入ったドラム缶を池に落としてしまう。その池から集めた餌を与えられたクモ飼育農場のクモたちが巨大化し飼育者を襲う。クモ好きの少年マイクは異常に発達したクモの脚先を発見し、保安官の母サムに事の重大さを知らせるが…。

とても丁寧に作られている印象を持つ。場当たり的でなく、ひとつひとつのエピソードや小道具がきちんと伏線となっており、後の展開に絡んでくるところはなかなかのものである。

映画の小ネタが散りばめられているのも嬉しい。「フィールド・オブ・ドリームス」(1998)や「コクーン」(1985)などが使われており、思わず微笑んでしまう。シネマファンが作った作品だ。

CGとはいえ、巨大蜘蛛の動きがリアルで不気味。それでいて所々ブラックユーモアなリアクションを取る。ティム・バートン監督の「マーズ・アタック」(1996)の火星人を想起させる。そういえばこの邦題も同じ韻を踏んでいるなぁ。

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2005/08/04

セルラー

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:デヴィッド・リチャード・エリス
出演:キム・ベイシンガー クリス・エバンス
   ジェイソン・ステイサム
   ウィリアム・H・メイシー

高校の生物教師ジェシカは突然家に侵入してきた男たちに拉致され、見知らぬ家の屋根裏に監禁されてしまう。彼女はほかに頼るものなく、目の前で破壊された電話機を直そうとする。やがて電話はつながったものの、ライアンという男の携帯電話だった。必死で状況を説明するジェシカだったが…。

なかなか秀逸な脚本である。伏線がうまく張られていて、物語が進んでいく内にピタピタとはまっていくところは喝采をあげたくなる。携帯電話にまつわるディディールの集め方も巧い。そのひとつひとつが絶妙のタイミングで使われており、サスペンスを大いに盛り上げる趣向となっている。

ショットのテンポも小気味良くグイグイと乗せられのだが、終ってしばらく経つとあれっと思うところもいくつか出てくる。壊れた電話の復元を図るには、ジェシカ(キム・ベイシンガー)は生物学というよりももっと機械に関係した理数系の教師といった方がより説得力があるだろう。そして、最もふに落ちないのは、そもそも彼女が誘拐される原因となった事件のことだ。そこから誘拐までの時間の経過が不鮮明であり、他に取るべき道もあったのではないかとの疑問が残る。

主演のK・ベイシンガーとクリス・エバンスの他に、ウィリアム・H・メイシーを配置しているのがいい。「ファーゴ」(1996)とか「マグノリア」(1999)のような情けない役柄が多い人であるが、本作品では熟練警察官を演じ胸のすく活躍を見せる。

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2005/08/03

アポロ13

「アポロ13」★★★★★(BS)
1995年アメリカ 監督:ロン・ハワード
原作:ジム・ラヴェル ジェフリー・クルーガー
出演:トム・ハンクス ケヴィン・ベーコン
   ゲイリー・シニーズ エド・ハリス

ベテラン宇宙飛行士のジムはアポロ14号に乗る予定だったが、13号のクルーが病気となりジムのチームが繰り上がることに。しかし、着陸船操縦士ケンは風疹の疑いで降板させられ、ジムは断腸の思いで代替要員のジャックを受入れる。そして1970年4月11日、アポロ13号は月に向って出発するが…。第68回アカデミー賞で編集賞、音響賞を受賞。

本作品を何度観ても胸を打つのは、どんな困難な状況でも諦めることなく、ひとつのチーム全体が励まし合い知恵を絞り出せば解決策が見つかってくるというテーマ性によるものだ。無論、最善策を講じても100%解決する保証はない。人智を尽くし、後は神に祈るということを克明に描いている。

俳優陣もみな熱演であるが、極限状態に追いつめらた船内クルーたちを必死になって救おうとするフライトディレクターのジーン(E・ハリス)、そして病気を理由に船から降ろされたケン(G・シニーズ)の二人が際立って素晴らしい。

皮肉さと言えば、アポロ計画自体が飽きられてしまい中継放送も断られていたのに、事故発生によってメディアの注目が一斉に集まってしまうこと。ある種、仕方がないとは言え、当事者にとってはやりきれない思いが残ることでしょう。

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2005/08/02

フィラデルフィア

製作年:1993年
製作国:アメリカ
監 督:ジョナサン・デミ

フィラデルフィアの一流法律会社に務めるアンドリューは重要な案件を任されたが、同時期にエイズと宣告される。その事を会社には黙っていたが、ある時、ウィラー社長から解雇されてしまう。不当な差別によるものと怒ったアンドリューは損害賠償と地位の保全を求めて訴訟を決意するが…。

第66回アカデミー賞でT・ハンクスが主演男優賞、B・スプリングスティーンの「Streets Of Philadelphia」が主題歌賞を受賞。第44回ベルリン国際映画祭でT・ハンクスが主演男優賞を受賞。

本作品でもっとも有名なのは、アンドリュー(T・ハンクス)がジョー(D・ワシントン)の前でマリア・カラスのアリアを聴く場面である。今回再見したことで発見だったのは、帰宅したジョーの家でもそのアリアが延々と鳴り響いていたことであった。その中で、ジョーは既に寝ている娘や妻を抱きしめる。生命の持つ尊さや美しさを目の当たりにし、ジョーは切ない感情を自分の家族によって癒そうとしたのではないか。

J・デミ監督は、全般的にクローズアップを多用し、登場人物達の微妙な心理の動きを力強く描いている。元々品格ある人物を得意とするD・ワシントンンなので分かりづらいが、ジョーという男はテレビCMに出ていたり事あるごとに名刺を配ったりとかなり俗っぽい人物である。その彼がこの裁判を通していかに変わっていくかが最大のポイントである。「問題はエイズではなく、ゲイ差別だ」と看破する場面も良い。

もっとも印象深いのは、図書館での場面。日常生活の差別とはこういうものだと痛烈に感じさせます。

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2005/08/01

アビエイター

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ ケイト・ブランシェット
   アラン・アルダ アレック・ボールドウィン

1927年。亡き父の石油掘削機の事業を引き継ぎ大富豪となったハワードは、その莫大な財産を全て注ぎ込み航空アクション映画「地獄の天使」の製作を開始する。彼はあらゆる困難に負けず映画を完成させ大ヒットさせる。やがて、人気女優キャサリン・ヘプバーンと出会い、2人は恋に落ちるが…。

第77回アカデミー賞でケイト・ブランシェットが助演女優賞、撮影賞、美術賞、衣裳デザイン賞、編集賞を受賞。

またしてもアカデミー賞を取れなかったM・スコセッシ監督。C・イーストウッド監督の「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)を観た今となってはそれも仕方ないかと思わせますが、本作品も風格のある見応え充分の出来栄えでありました。ハワード・ヒューズの光と影の生涯を深みのある映像で描いております。

確かにハワードは奇癖を持ち誰からも愛される人間ではありません。しかし、あくなき追求心を持ちつづけ、周囲に明確な夢の形を示すことができたために、不可能と思えることを実現することができた。指導者として、あるべき姿がここにあります。

巨大飛行艇ハーキュリーズの飛行を成功させ、本来であれば昂揚感いっぱいで終って良さそうであるが、そうはならない。ハワードのその後を予感させる幕切れになっている。輝かしい成功の裏側で病気が激しく牙を向いてくる。その皮肉さに深い余韻が残る。

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