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2005年7月

2005/07/31

華氏911

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:マイケル・ムーア 

2000年の大統領選挙。激戦と混乱の末にゴア候補を破りブッシュ候補が第43代アメリカ合衆国大統領に就任する。4年の月日が流れるが、マイケル・ムーア監督は一連のブッシュ政権の行動に疑問を抱く。監督は豊富な事実を基に様々な角度からその疑問を追及していくのだが…。
第57回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。

確かにブッシュ批判に満ちた作品であるが、その裏側にはメディアへの強烈な批判もある。一般のメディアでは問われることのない疑問の追及。4年前の大統領選の疑惑は、フロリダ州の当確の逆転報道から始まったとする冒頭から、その追求に揺ぎ無い。

それにしても、製作プロダクションによる出資契約の反故、ウォルト・ディズニー社による配給禁止など障害があったにせよ、現役の大統領に対してここまで激しい批判をする映画が製作され一般公開までされるということに瞠目する。まだまだアメリカ社会に自由があることを感じさせる。

また、こうした反骨心を持った映画人も近年珍しく、私は大いに支持したい。後半のイラクの映像も歴史に残り得るものだ。

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2005/07/29

カイロの紫のバラ

「カイロの紫のバラ」★★★★★
1985年アメリカ 
監督:ウディ・アレン
出演:ミア・ファロー ジェフ・ダニエルズ
   ダニー・アイエロ ダイアン・ウィースト

30年代半ば、不況のニュージャージー。セシリアは夫のモンクが失業中であるのでウェイトレスをして生活を支えていた。そんな彼女の楽しみは大好きな映画を見るために映画館に行くこと。ある時、いつものように映画を観ていると、スクリーンの中から主人公のトムが銀幕を飛び出してきたのだが…。

第38回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞。第11回セザール賞で外国映画賞を受賞。

傑作、秀作ぞろいのW・アレンの作品で、一番好きな作品だ。シネマファンにとって映画の登場人物と現実の世界で恋におちるという話はまさに夢であろう。そういう物語を見せてもらった喜びがひとつ。

とにかく楽しくて笑えるが、その裏側に人生の悲哀がきちんと描かれている。中盤からのファンタジックな展開もいいが、ラストシーンがしみじみと残る。夢に裏切れても人生は続いていく。哀しみの中から芽生えていく希望。

当時のパートナーであったW・アレンとM・ファロー。その後、二人は痛ましい別れ方をするので、余計にこの映画の中のM・ファローの輝きを感慨深く見つめる。

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2005/07/28

エレファント

製作年:2003年
製作国:アメリカ 
監 督:ガス・ヴァン・サント

オレゴン州ポートランド郊外のワット高校、ある初秋の朝。ジョンは酒に酔った父と車の運転を交代して学校に到着。写真好きのイーライはポートレート制作の真っ最中。アメフト部員ネイサンはガールフレンドと待ち合わせ。そんな中、アレックスとエリックはネットで入手した銃器を手にしていたが…。
第56回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞を受賞。

いつもと変わらない日常だった。小さな悩みや不満を抱えつつ校舎を歩いている生徒たち。それが突如、暴力によって一変する。

最近の日本でも、学校で同級生を殺害したり爆発物を仕掛けるという痛ましい事件が続いている。本作品は決して遠い世界の出来事ではない。

痛ましい銃撃事件とクラシック音楽の美しい調べ。詩的なコントラストに浮かんでくる人生の不条理。やりきれない思いが残り続ける。

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2005/07/26

エリン・ブロコビッチ

製作年:2000年
製作国:アメリカ
監 督:スティーヴン・ソダーバーグ

カリフォルニア州モハベ砂漠の小さな町。エリンは三人の子持ちのシングルマザー。職探しの帰り、追突事故に巻き込まれてしまう。引退を控えた弁護士エドに裁判の弁護を依頼するも和解金を取り損ねる。貯金も尽きた彼女はエドの法律事務所へ押しかけ、強引に彼のアシスタントとして働き始めるが…。
第73回アカデミー賞でジュリア・ロバーツが主演女優賞を受賞。

2回目の鑑賞となる。こうして観直してみると、紛れもなくスティーヴン・ソダーバーグ監督の作品であることがわかります。軽快なリズムを奏でるショットの繋ぎ。無駄のないストーリー展開。さりげないが計算されている構図。そういう演出ぶりにまず唸る。

絵に描いたようなサクセスストーリーであるが、実話としての重みがある。映画の中では描かれておりませんが、実際のエリン・ブロコビッチは、長期間汚染調査を続けたために、六価クロムに侵され倒れて入院した事もあったという。映画では子供達や隣人(アーロン・エッカート)との私生活を犠牲にしてきた。棚から牡丹餅のような話ではない。

いつの間にかエリン(ジュリア・ロバーツ)のペースに巻き込まれてしまうエド(アルバート・フィニー)のユーモラスな存在感も忘れ難い。

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2005/07/25

地獄の黙示録 特別完全版

製作年:2001年
製作国:アメリカ
監 督:フランシス・フォード・コッポラ

ベトナム戦争が真っただ中のサイゴン。アメリカ陸軍情報部のウィラード大尉にある密命が下される。カンボジアに特殊任務で赴いたまま消息を絶ち、ジャングル奥地に自らの王国を築いた危険人物カーツ大佐を暗殺せよ、というものだった。ウィラード大尉は4人の部下とともに哨戒艇に乗り込み川をさかのぼる。

山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」(2002)を観たとき、映画評を読んでいると、本作品との類似点を指摘したものが複数ありました。それを確かめたくて再見しました。なるほど、ウィラード大尉(マーティン・シーン)とカーツ大佐(マーロン・ブランド)と対峙するところは、清兵衛(真田広之)と余五(田中泯)の決闘シーンとダブリます。山田監督も影響を受けているのでしょうか。

何度観てもこの映像は圧巻です。一つ一つの場面に目が奪われます。現在のハリウッドシステムでは、もうこんな映画は創り出すことはできないでしょう。まさに映画史に残る一本です。

本作品にハリソン・フォードが端役で出演しているのは有名ですが、ローレンス・フィッシュボーン(「マトリックス」シリーズのモーフィアス役など)が出ているのが今回の発見でした。

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2005/07/24

イン・アメリカ 三つの小さな願いごと

製作年:2002年
製作国:アイルランド/イギリス 
監 督:ジム・シェリダン

クリスティとアリエル姉妹は、俳優志望の父ジョニーと母のサラに連れられ故郷アイルランドからニューヨークへやってくる。両親は弟のフランキーを亡くした悲しみを未だに引きずっていた。一家はボロボロのアパートを見つけ新生活をスタートさせる。やがて姉妹は同じアパートに住む画家マテオと仲良くなるが…。

移民家族を描くドラマとして観ると描写の甘さが気になる。ニューヨークに着いていかにしてアパートを見つけたのか、生活費をいかに手当てしているのか、なぜ苦しい生活でもクリスティはビデオカメラを持っているのかなど、細かいディティールが省かれている。

しかし、私は全く気になりません。何故なら、本作品は家族の再生をテーマとした映画であり、10歳の姉の視点という設定が絶妙に効いているからです。寓話に近い雰囲気があります。

その彼女が歌う「デスペラード(絶望する者へ)」が最高の名場面。切々と胸に響きます。この歌が象徴するように映画全体が亡くなった息子への鎮魂歌となっているのです。

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2005/07/23

アダプテーション

製作年:2002年
製作国:アメリカ
監 督:スパイク・ジョーンズ 

「マルコヴィッチの穴」の脚本で大成功を収めたチャーリー。次にスーザン・オーリアンの著書「蘭に魅せられた男」の脚色を依頼される。斬新なストーリーを求めるチャーリーだが、アイデアが浮かばず執筆に行き詰まる。一方、彼とは対照的に陽気な双子の弟ドナルドも脚本家めざして養成セミナーに通い始めるが…。

第75回アカデミー賞でクリス・クーパーが助演男優賞を受賞。第53回ベルリン国際映画祭でスパイク・ジョーンズが審査員特別賞・銀熊賞を受賞。

どうしてこういう発想が浮んでくるのかという驚きがまずひとつ。単に原作を脚色した映画ではなく、脚色している脚本家自身を主人公になっていて、脚本の物語と同時に進行する趣向。虚像と実像の境界線が曖昧になったまま映画は進んでいく。巧妙に仕掛けられた脚本が圧巻だ。脚本家チャリー・カウフマンは本当に凄いと思う。

そして、いかにもいかにも「ハリウッド映画」調に変じていくところも可笑しい。ロバート・アルトマン監督の「ザ・プレイヤー」(1992)を思い出しました。

幾重にもいたずら心が埋め込まれていて見飽きることがない。

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2005/07/22

ミスティック・リバー

製作年:2003年
製作国:アメリカ 
監 督:クリント・イーストウッド

ボストンの貧困地区。ジミー、デイブ、ショーンの三人組が路上でボール遊びをしていると不審な車が少年たちの傍に停まる。警官を名乗る2人連れはデイブを車に乗せ走り去った。数日後、デイブは暴行を受け無残な姿で発見される。それから25年後、ジミーの19歳の娘が死体で発見されるが…。
第76回アカデミー賞でショーン・ペンが主演男優賞、ティム・ロビンスが助演男優賞を受賞。

宿命と運命は違う。宿命とは自分の意志ではどうにもならないこと。本作では、幼少の頃デイブが誘拐されることや、ジミーの娘が殺害されることがそれに値するものだと思う。一方、運命とは自分の意志、選択で変えることができること。事件後にとったジミーの行動。セレステやアナベル、そしてショーンの妻。彼女たちが選んだ道。それらが運命である。

宿命は避けることは出来ないが、運命は変えることができる。宿命によって背負わした傷は、運命で軽くすることも深くすることもできる。

「クリント・イーストウッド監督の最高傑作だ!」と本作品を観たときには思いましたが、それを上回っていたのが「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)でありました。

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2005/07/21

アレックス

製作年:2002年
製作国:フランス
監 督:ギャスパー・ノエ

ゲイクラブに押し入った二人の男がある男の顔を消化器で殴って殺すという事件が発生する。マルキュスは恋人アレックスが暴行され、友人でアレックスの元恋人でもあるピエールと共に犯人を捜し出し、復讐しようと考えていた。やがて、女装ゲイ、ヌネスからテニアという男の名を聞き出すのだが…。

縦横無尽に動き回る不安定なカメラは、アレックス(モニカ・ベルッチ)に宿った胎児の魂ではないかと思いました。本作品は事件の結末からスタートし、時間が逆行しながら美しく幸せな場面へ遡っていく構成になっている。その最期から誕生まで胎児の魂が回想しているのではないかと私は読みました。

評判の「カルネ」(1994)も「カノン」(1998)も未だ観る機会がなく、本作品が初見となったギャスパー・ノエ監督。その演出は評判どおり壮絶なものでした。

モニカ・ベルッチの女優魂には感服した。

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2005/07/20

LOVERS

製作年:2004年
製作国:中国
監 督:チャン・イーモウ 

全盛を極めた唐王朝が衰退を始めた9世紀中頃の中国。凡庸な皇帝と政治の腐敗から各地で叛乱が起こる。その最大勢力である“飛刀門” 討伐の命を捕吏のリウとジンは受ける。リウは遊郭で評判を呼んでいる盲目の踊り子、シャオメイが飛刀門の前頭目の娘であるとにらみ、ジンは遊郭の客になりすまして近づくが…。

チャン・イーモウ監督がいかに武侠映画を撮るのかという興味を、絵画のような色彩で見せてくれた「HERO」(2002)。そのあまりに素晴らしさに、武侠映画第二弾となる本作品にも期待が高まりました。しかし、・・・。

まず、クライマックスのくどさと言ったらない。古びたドラマ展開にウンザリしてしまう。前半の見せ場、遊郭での“鼓打ちの舞”が見事なだけに、その失望感は加速された。華美な美術や衣装には堪能したが、この三人の愛憎劇には付いていけなかった。

前半と後半のアンバランスさは、急逝したアニタ・ムイの影響によるものであろう。彼女が参加していたら、もっと違った展開になっていたのだろうに。それが惜しまれる。

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2005/07/19

Blue

製作年:2001年
製作国:日本
監 督:安藤尋

海の近い田舎町。高校3年になった桐島カヤ子はいつも一人でいる大人っぽくて物静かな遠藤雅美をお昼に誘った。遠藤はひとつ年上であるが、去年、何かの理由で停学し同級生になっていた。遠藤は桐島の知らない音楽や本をよく知っていて、親しくなるにつれ桐島は遠藤にひかれていくのだが…。
第24回モスクワ国際映画祭で市川実日子が最優秀女優賞を受賞。

「卒業したらどうする」という問いに、答えのない二人。「青い春」(2001)を連想させる未来を描けない高校生たち。その漂うような日常を安藤尋監督は巧みに映像化している。青い空。青い海。青い夜。タイトルに沿って青い世界が映画全体を包んでいます。

相手に自分の気持ちが通じたという喜び。だが、自分の想いほど、相手は自分のことを大事にしてくれなかったという苦しみ。そういう感情が痛いくらい伝わってきます。

もっとも印象深いのは、クライマックスの夜の徘徊シーン。桐島(市川実日子)も遠藤(小西真奈美)も様々の思いを清算させ、新たな旅立ちを感じさせます。

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2005/07/18

ラスト サムライ

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:エドワード・ズウィック 

19世紀末。南北戦争の英雄、オールグレン大尉は、原住民討伐戦に失望し、酒に溺れる日々を送っていた。そんな時、近代化を目指す日本政府に軍隊の教官として招かれる。日本では政府に不満を抱く勝元率いる侍たちが不穏な動きを見せていた。オールグレンはさっそく西洋式の武器の使い方を教え始めるが…。

渡辺謙がゴールデングローブ賞、アカデミー賞のノミネート、真田広之、小雪の好演など日本人俳優がハリウッド映画で大活躍をした記念碑的作品である。しかし、私は駄目だった。確かに西南戦争などがあり、明治政府は反乱する侍たちを制圧した歴史がある。大筋で日本の歴史の流れと合っているのだが、その分、違っている部分が気になってしまう。

まず、侍と対決することになる大村(原田眞人)の描き方が納得できない。明治政府が富国強兵策をとったのは、当時の列強国に対抗するという側面があった筈。本作品には、このままでは列強の植民地になってしまうという危機感が全く欠落しており、私利私欲にためだけに(無論、そういった面もあったであろうが)西洋化を急いだわけでない。大儀と大儀がぶつかりあって、相容れなくなったというところをもっとしっかり描いて欲しかった。これでは何を守るために、何の筋道を正すために侍たちが命を懸けているのか分からない。

それにしても2時間34分の上映時間は長い。省ける場面を多々感じた。最期はいかにもという終り方で私には余分だった。

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2005/07/17

25時

製作年:2002年
製作国:アメリカ
監 督:スパイク・リー

麻薬ディーラー、モンティは何者かの密告で麻薬捜査局に逮捕され、保釈中の身。25時間後には7年の服役のために収監される。最後の夜を明かそうと2人の親友、ジェイコブとフランクに声を掛ける。アパートでは恋人ナチュレルが待っているが、内心、密告者は彼女ではと疑っていた。そして、モンティの最後の夜が始まるが…。

表層的なドラマの裏側に秘められた製作者のメッセージ。それを読み取ることができるかどうかで作品の評価は変わってしまう。

本作品では、収監される男の物語を通して同時多発テロで傷付いたニューヨークの喪失感が静かに浮かび上がってくる。

センセーショナルな映画を撮って時代の寵児となったスパイク・リー。それに溺れることなく映画作家としての成熟をここに見る。

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2005/07/16

笑う蛙

「笑う蛙」★★★★
2002年日本 監督:平山秀幸
原作:藤田宜永
出演:長塚京三 大塚寧々 ミッキー・カーチス 國村隼

かつては銀行の支店長を務めていた倉沢は不倫相手のために顧客の金を使い込み現在は指名手配を受けている。妻の涼子は失踪した夫を待つでもなく、家の別荘で暮らしていた。ある時、そうとは知らない逸平は身を隠すためにこの別荘へやってくる。涼子は離婚することを条件に逸平を匿うことにするが…。

平山秀幸監督の作品を全部観ているわけではないが、「愛を乞うひと」(1998)、「ターン」(2000)、「OUT」(2002)など近年の作品を通して観てみると、人と人とを結ぶ微妙で複雑な関係性、絆をテーマに描いていると感じます。本作品の倉沢逸平(長塚京三)と妻・涼子(大塚寧々)の関係も一言では語れない感情の襞が濃密に描かれている。

この二人に惹きつけられて止まなくなりましたが、これは大塚寧々の存在があってこそ。何を考えているのか、その表情からは読めないので、意外な台詞に仰天するのです。

挿入される蛙の鳴き声が、いいアクセントになっておりました。

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2005/07/15

N.Y.式ハッピー・セラピー

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:ピーター・シーガル

幼い頃からいじめられ気弱のまま成長してしたデイヴは、どんなに理不尽な目にあってもじっと我慢してしまうのであった。ある時、飛行機で隣の男の迷惑な行動から、乗務員にあらぬ疑いをかけられ逮捕されてしまう。後日、裁判へ出廷させられたデイヴは判事から怒り抑制セラピーの受診を命じられるが…。

怒りとはどこから沸き起こってくるものだろうか。自分にとっての当たり前、常識的行為を他者から施してもらえないときに怒りの感情は芽生えるのではないでしょうか。どうしてこんな事ができないのか。どうしてこれを優先して処理できないのか。どうして時間を守ることができないのか。などなど・・・。しかし、自分にとっての当たり前、常識は必ずしも他者と同じでないことの方が多い。その事をいかに理解できるかで、怒りの感情をコントロールすることができるのであろう。

本作品は多彩なゲスト出演の顔触れが楽しい。ヘザー・グレアム、ジョン・C・ライリー、ハリー・ディーン・スタント、ジュリアーノ元ニューヨーク市長やテニスのジョン・マッケンロー選手など圧巻だ。そういえば、J・マッケンローは「Mr.ディーズ」(2002)にも出演していた。アダム・サンドラーとかなり親しいのであろうか。このマッケンロー選手が怒り抑制セラピーを受けているところがとても可笑しかった。

そして、ジャック・ニコルソンの怪演。この方の笑顔は不気味さとユーモアが混在し凄みがあります。その存在感は他を寄せ付けない。

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2005/07/14

ウェディング・シンガー

製作年:1998年
製作国:アメリカ
監 督:フランク・コラチ
出演:アダム・サンドラー ドリュー・バリモア
   クリスティーン・テイラー アレン・コヴァート

後に「ウェディング・プランナー」(2001)や「最後の恋のはじめ方」(2005)など同系譜の作品が作られ続けている。他人の結婚や恋愛を導くサービス業に従事しながら、いざ自分の場合には対処できず途方に暮れるという皮肉さが、普遍的面白さを保っているのだろう。

本作品にかかっている80年代の音楽が懐かしい。自分はほとんどのナンバーを知っており、聴いているだけで血が騒ぐ。おそらく自分と同時代に生きた者たちが製作しているのだろう。ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティー」(1973)を連想させる。

本作品のポイントは、なんと言ってもドリュー・バリモアだ。彼女の全キャリアの中でも最高にチャーミングな笑顔を見せてくる。ただ可愛いということではない。あの「E.T.」(1982)にも出演していた子役スター時代から、酒や薬物中毒、自殺未遂など私生活が荒れ果て、一時は映画界から消えてしまうのではないかと思われていた。それでも「ガンクレイジー」(1992)のような汚れ役や、「バットマン・フォーエヴァー」(1995)のような添え物的役柄にも甘んじて仕事を続けてきた。それが本作品では結婚に憧れる娘を天真爛漫に演じて、見事にキャリアを復活させたのだ。あの笑顔の裏にそういう事が感じられ、感慨深く感じる。

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2005/07/13

コーヒー&シガレッツ

製作年:2003年
製作国:アメリカ 
監 督:ジム・ジャームッシュ

大して話もできず居心地悪そうなロベルトとスティーブン。双子は変な顔の店員に付きまとわれる。イギーとトムはおかしな自説で禁煙を破る。J・ジャームッシュ監督によるコーヒーとタバコをめぐる11の短編映画集。コーヒーを飲みながら、あるいはタバコを吸いながら、とりとめのない会話が続いてゆくのだが…。

インドでは自国のテレビ番組や映画に喫煙シーンを入れることを法律で禁止されている。海外の作品には、ぼかしが入れられるという。ということは、本作品など最初から上映禁止になるか、日本での大島渚監督の「愛のコリーダ」(1976)のように全編ぼかしだらけになってしまうのでしょうね。

そのように禁煙が世界での常識になっている現在、本作品のような映画を撮るJ・ジャームッシュ監督の反骨心が嬉しくなります。過去の作品を想起させる独特の会話劇をくつろいで楽しむことができます。コーヒー(あるいはティー)と煙草が出てくること、テーブルを上から映すショットを入れることなど、複数の約束事の中で、登場人物の個性が遺憾なく発揮されております。休憩であったり、久々の再会であったり、仕事の交渉であったり、コーヒーと煙草を彩る光景はたくさんあります。

本作品の中で一番気に入ったのは、トム・ウェイツとイギー・ポップの出ている短編。トムの鋭い突っ込みに、イギーが言葉に詰まってしまう表情が抱腹絶倒ものでした。

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2005/07/12

ザ・ミッション/非情の掟

「ザ・ミッション/非情の掟」★★★★(BS)
2000年香港 監督:ジョニー・トー
出演:アンソニー・ウォン フランシス・ン
   ラム・シュー コウ・ホン

何者かに命を狙われた黒社会のボス、ブン。そのため護衛として組織の精鋭5人が招集される。元殺し屋グァイ。銃のエキスパート、フェイ。以前はスゴ腕狙撃手だったマイク、そして現役の殺し屋ロイと彼の弟分、シン。最初は衝突を重ねながらも、ブンを守り犯人を割り出す任務を遂行するが…。

まず、スタイリッシュな映像美に痺れる。一番の見所はショッピングモール(なんとジャスコの看板が!)の銃撃シーン。5人がそれぞれ役割を分担しながら、無言で銃を構える立ち振る舞いに魅了される。

そして、無表情の中で煙草に花火を仕込ませる悪戯や、紙くずでサッカーに興じたりと、稚気を失っていない点もユニークで特徴的。映画の中でいいアクセントになっている。

不満な点は、ボディーガードに召集される前の彼らの日常がプロローグに映されているが、彼らがその生活に倦んでいるのかどうかはっきり分らない。「黒社会に属した者はその絆を断つことはできない」と説明されてはいるが、ボディーガードに召集されることへの葛藤にしろ、喜びにしろ、その心情をもう少し掘り下げて描いて欲しかった。彼らの人物像に深みが感じられないのだ。それが最後まで続き、クライマックスのグァイ(アンソニー・ウォン)の選択もうまく受け止めることができず浮いた感じで終ってしまった。

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2005/07/11

インファナル・アフェア 2 無間序曲

製作年:2003年
製作国:香港 
監督:アンドリュー・ラウ/アラン・マック

1991年香港。尖沙咀に君臨するマフィアのボス、クワンが暗殺された。離反を目論む手下たちは、跡を継いだ次男のハウによって抑えられる。時期を待つサムは手下のラウを警察へ潜入させる。一方、警察学校ではウォン警部がクワンの私生児と判明し退学になったヤンを、潜入捜査官としてハウの組織へ潜入させるが…。

何故、ラウ(アンディ・ラウ)が無間道に落ちていくのか。その原因がこの二作目の中にあった。警察とマフィアとの抗争外に仕組まれた手ひどい裏切り。この越えては行けない一線を渡ってしまった男。どこにも見つけることができない安住の地。

腕時計が何度も映し出させる。また「世に出たものは、いつか消え去る」という台詞も繰り返される。ひとりの人間が待つ限りある時間を意識させ、一方、無間道というシリーズのテーマと対比になっている。

殺害シーンなどショッキングな場面が続くが、スローモーションを多用し荘厳な音楽が重なって、抒情詩としての興趣が尽きない。

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2005/07/10

インファナル・アフェア 3 終極無間

製作年:2003年
製作国:香港 
監 督:アンドリュー・ラウ/アラン・マック

潜入捜査官ヤンの殉職から10ヵ月後。警官として生きる決意をしたラウは、ヤン殺害の疑いも晴れ、一時的に庶務課へ異動する。その間ラウは警察内に残る潜入マフィアを自らの手で始末してきた。その後、内務調査課へ復帰する。そして保安部のヨン警視が潜入マフィアであると疑い、その身辺を調べ始めるが…。

「運命は人を変えるが、人は運命を変えられない。だが、彼らは何かを変えた」。本作品に出てくる言葉であるが、そのまま、このシリーズを作ってきた製作者に当てはまるのではないだろうか。かつての隆盛が嘘のように斜陽化が進む香港映画界。中国へ本土返還。レスリー・チャンの死。韓国映画の台頭。このまま香港映画は駄目になっていくのではないかと思われるなかで、乾坤一擲の力作となったこのシリーズ。その意味で非常に意義深い言葉である。

一瞬も途切れない緊張感を体現する俳優たちがみな素晴らしい。特にレオン・ライの冷徹な雰囲気に驚嘆する。これが「ラブソング」(1996)で気弱な微笑みを浮かべていた男と同じ人物なのだろうか。この驚きがひとつ。

そして、このシリーズの中で命を落とした者の裏切りや無念、罪の意識を、すべてひとりで受け止めることになったラウ(アンディ・ラウ)。無間道の中で彷徨い続けるラウの瞳があまりにも哀切だ。

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2005/07/08

西洋鏡 映画の夜明け

製作年:2000年
製作国:中国/アメリカ
監 督:アン・フー

1902年、北京。写真館で働くリウは好奇心旺盛な青年であった。ある時、写真館にやってきたイギリス人・レイモンドと出会う。彼はレイモンドの語る“西洋鏡”と呼ばれる動く写真に強い興味を示す。その後、レイモンドは活動写真小屋を開く。だが、外国人に対する反感は根強く、客の入りは芳しくなかったが…。

父親の言うとおり金持ちの寡婦と結婚すべきなのか、自分の好きなリン(シウ・ユフェイ)を選ぶべきなのか。リウ(シア・ユイ)の葛藤が西洋近代化の波に飲み込まれた20世紀初頭の中国社会の姿と重なる。

その葛藤はいい。観ていてもう一つすっきりしないのは、リンに対して「自分は活動写真しかない」と言い放った後も、リウは写真館店主に対して嘘をつき続けることだ。ましてや嘘が発覚した後に、弁明だけでなく店主に対して無神経に発言をするところも共感できない。夢を語るには適切なタイミングと場所を選ばないと、反感を呼ぶだけだ。

物事は新しい技術を生んで便利になるかもしれないが、そのことで損害を被るものも出てくる。本作品では“活動写真”の出現で“京劇”の観客が減っていく事例がでてくる。だが、その変化を恐れてはいけない。その変化の波をいかにして捉えていくか、その思考が大切だ。1905年、京劇の役者タンを主演に中国で初めて劇映画が撮影された。その意味は大きい。

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2005/07/07

たまゆらの女

製作年:2002年
製作国:中国
監 督:スン・チョウ
出演:コン・リー レオン・カーファイ スン・ホンレイ

中国・雲南省の古都・建水。白磁の染付け絵師チョウユウは、ある夜、ダンスパーティで出会った詩人の男チェンチンから一編の詩を贈られ、一瞬にして心奪われる。そして彼女は、週2回、彼の住む四川省の水辺の都市・重慶まで汽車に揺られ片道10時間かけて通うようになるが…。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「21グラム」(2003)ほどではないにしろ、時系列がバラバラとなった構成となっている。最初は混乱するが、鑑賞意欲を大いにそそられる。一体どういう話であるのか推理しながら観るのが楽しい。

私の解釈は次の通りである。短髪のコン・リーが詩人のチェンチン(レオン・カーファイ)からその著書にサインを貰う。その著書の世界を短髪のコン・リーが空想したのが、この作品ではないだろうか。

砕け散った磁器。水辺に舞い落ちる詩片。見つからない秘湖。詩的に挿入されるショットが悲劇を予感させる。繰り返し登場する列車は、チョウユウ(コン・リー)の熱い想いを象徴するものだろう。

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2005/07/06

火火(ひび)

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:高橋伴明

焼物の里、滋賀県信楽町。女性陶芸家・神山清子は夫が若い愛人と出奔した後も2人の子を育てながら、江戸時代に失われてしまった穴窯による自然釉の復活に執念を燃やしていた。極貧生活の中で失敗を繰り返しながらも、清子は信念を貫き通す。そして長い歳月を経てついに信楽自然釉の完成に成功するのだが…。

本作品の中の神山清子は偏屈で相当な変わり者である。陶芸家という芸術世界でしか生きられない性格だ。だが、すこぶる魅力的に映る。何故なら彼女には確固たる信念があり、少しも迷いがないからだ。見る側に清々しい気持ちを抱かせる。そんな彼女を田中裕子が好演。厳しさと可笑しさが表裏一体となっている。

どんな偉業を成し遂げた人でも、自分独りの力で達成したものはいない。一生懸命な姿を見て、助けてくれる人が出てくることによってできることなのだ。清子は信楽自然釉の復活という偉業を成し遂げた。それは先生(岸部一徳)が清子を励まし援助を続けてくれたお陰である。骨髄バンク運動もそうである。前半と後半が違う話になっていくように見えるが、実は同じ構造を持っている。必死になって生きていれば、必ず助けてくれる人が出てきてくれる。

高橋伴明監督の演出も素晴らしい。百日草がポイント。息子を迎え入れる道々に咲いている百日草。その花が迎え入れる状況の違いを際立たせ、感情が大いに揺さぶられます。ちなみの百日草の花言葉は「不在の友を思う」というものだそうです。

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2005/07/05

ドリームキャッチャー

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:ローレンス・カスダン

精神分析医ヘンリー、大学助教授ジョーンジー、大工のビーヴァー、車のセールスをするピートの四人は、年に一度山小屋で共に過ごす恒例の休暇を楽しみにしている。彼らは少年時代の特別な出来事をきっかけに不思議な力で結ばれていた。そんなある時、ジョーンジーが交通事故で重症を負い、奇跡的に一命を取り留めるが…。

スティーブン・キングのテイストに満ちた作品だ。線路の脇を通って失踪した少女を探すエピソードは「スタンド・バイ・ミー」だし、幼馴染たちの過去と現在が重なるところは「IT」を連想させる。「ブルー・バイ・ユー」の歌の使い方(原作には出てこないのだけれど)など、いかにもS・キングという感じだ。

しかし、全体を通して見るとキャラクターがうまく活かさせておらず、消化不良の感は拭えない。四人の不思議な能力が事件解決へ中途半端に使用されていることが惜しまれる。また、タイトルとなったドリームキャッチャー(ネイティブアメリカンのお守り)も主筋に絡んでこらず、物足りない感じが残る。

モーガン・フリーマンが珍しい憎まれ役。だが、その狂気も変質的な感じで凄みが伝わってこない。ここは秘密部隊の挿話を減らし、ダディッツと四人の少年たちのエピソードをもっと見たかった。

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2005/07/04

オーシャン・オブ・ファイヤー

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:ジョー・ジョンストン

フランクはムスタング(野生馬)のヒダルゴと組んで全米各地の耐久レースで負け知らずでいた。しかし、ウーンデッドニーの大虐殺に関わってしまい、酒におぼれる失意の日々を過ごしていた。そんなある時、アラブの族長から千年もの歴史を持つ競馬耐久レース“オーシャン・オブ・ファイヤー”の招待を受けるが…。

オーソドックスでありがちな展開の冒険活劇となっているが、複数のテーマが次々と浮かび上がってくるので、飽きることなく観ることができた。先住民の虐殺に図らずも手を貸してしまったという罪の苦しみ。異端者として受ける迫害の痛み。自分の出生を隠して生きることの不明瞭さ。それらを克服し自分のあるべき姿を取り戻していくレースであった。

そして、ムスタングのヒルダゴの存在も良い。振り向いたときの表情がなんともユーモラス。その名が原題となっているのも納得です。撮影後にヴィゴ・モーテンセンがこの馬を買い取ったという逸話が残るくらい、絶妙のコンビとなっている。

また、アラブの族長を演じたオマー・シャリフも絶妙であった。西部劇に憧れる少年性。年齢を感じさせない剣戟。魅惑的な瞳の輝き。その存在に魅了されました。

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2005/07/03

イブラヒムおじさんとコーランの花たち

製作年:2003年
製作国:フランス
監 督:フランソワ・デュペイロン

1960年代初頭のパリ。13歳の少年モモはユダヤ人街のブルー通りで父と二人で暮らしている。母はモモが生まれてすぐに家を出ていってしまった。いつも不機嫌そうな父はモモに小言ばかり言う。孤独なトルコ人で年老いたイブラヒムが営む近所の食料品店でモモは万引きを繰り返していたが…。
第29回セザーヌ賞でオマー・シェリフが主演男優賞を受賞。

本作品において本がポイントとなっている。モモの父親は部屋から溢れ出すほどに本を所有していたが、人生の叡智を掴むことができなかった。一方、イブラヒムおじさん(オマー・シャリフ)はコーランの一冊を大切にし、生きる知恵や愛情に満ち溢れていた。この対比がまず見事。

年長者が若年者を導くため的確な時に的確な言葉をかける。そして、若年者が成人となったとき、今度は次の世代へ言葉をかける。教育の理想の姿が本作品の中にある。

深刻になりがちな話であるが、イザベル・アジャーニが登場する映画スターのシーンや、一気に自動車を購入してしまうシーンなど、クスクス笑えるようなエピソードが挿入されており、味わい豊かな作風となっている。

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2005/07/01

猟奇的な彼女

67

製作年:2001年
製作国:韓国
監 督:クァク・ジェヨン

性格の優しい大学生のキョヌは夜の地下鉄ホームで泥酔状態の“彼女”と出会う。車中で倒れている“彼女”を放っておけず仕方なく介抱してホテルへ運ぶ。ところがそこに警官がやってきてキョヌは留置場で一晩を過ごすことになる。翌朝、昨夜の記憶のない“彼女”は怒ってキョヌを電話で呼び出したのが…。

構成が抜群にうまい。安易な作りだと“猟奇的な彼女”という特異なキャラクターに溺れ物語が粗雑になりがちだ。しかし、本作品はそれに甘えることなく「めぐり逢い」的プロットを見事に咀嚼し効果的に使用されている。そして、あのエピローグの鮮やかさ。実に爽快である。

ただ余分なエピソードが多々あり。もう少し刈り込んだ方がすっきりした出来栄えになったと思います。

いい台詞が一つ。「運命は努力した人に偶然を与えてくれる」

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