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2005年2月

2005/02/28

父、帰る

製作年:2003年
製作国:ロシア
監 督:アンドレイ・ズビャギンツェフ

ロシアの片田舎。2人の兄弟、アンドレイとイワンは母とつつましくも幸せに暮らしていた。ある日突然、音信不通だった父親が12年ぶりに帰ってくる。兄弟の戸惑いをよそに、翌朝、父は彼らを小旅行に連れ出すが…。
2003年第60回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞と新人監督賞をダブル受賞。

アンドレイ・ズビャギンツェフ監督のインタビューを読んでいると、「本当に重要なことは語るのではなく示唆するだけでいい」との発言がありました。正にその言葉通りの映画でありました。

登場人物の背景説明が足りないとキャラクターに深みを欠くことになるのが一般的です。だが、本作はそれをぼやかすことによって宗教的にも政治的にも神話的にも表現されているように感じられ、奥行き深い作りになっている。映像も、音楽も実に効果的である。非常に力のある作品です。

本作撮影終了後、ロケ地だった湖で兄アンドレイ役のウラジーミル・ガーリンが不慮の事故で溺死する不幸な出来事があったとの事。映画の世界を引きずるような悲劇。

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2005/02/27

翼よ!あれが巴里の灯だ

「翼よ!あれが巴里の灯だ」★★★★(BS)
1957年アメリカ 監督:ビリー・ワイルダー
原作:チャールズ・A・リンドバーグ
出演:ジェームズ・スチュアート マーレイ・ハミルトン
    バートレット・ロビンソン マーク・コネリー

大西洋横断に向けて地元の有力者から資金を募り “セントルイス魂”号を作り上げたリンドバーグ。1927年5月、ルーズヴェルト空港から飛び立った。だが、機上のリンドバーグを待ち受けていたのは、様々な苦難であった…。

今でこそ当たり前の飛行機であるが、その創生期はいかに困難で危険極まりないことであったことか。霧の中、無灯火の滑走路に着陸する最初のエピソードに肝胆する。

単なる伝記映画でなくユーモアを交えて描くのは、さすがB・ワイルダー監督である。手作りで“セントルイス魂”
号を製作する場面が印象深い。

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2005/02/26

ポセイドン・アドベンチャー

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製作年:1972年
製作国:アメリカ
監 督:ロナルド・ニーム

12月末、豪華客船ポセイドン号が、ギリシャに向かうためにニューヨークを出港する。地中海に入ったとき、クレタ島沖合いで海底地震が発生。それから間もなく大津波が押し寄せ、ポセイドン号は一瞬にして転覆してしまうが…。
1974年第45回アカデミー賞で歌曲賞と視覚効果による特別業績賞を受賞。

中越地震やスマトラ沖地震を経て、こうしたパニック映画を観ると、リアリティーが俄然高まる。未曾有の大惨事に遭遇したとき、人はどう行動し、決断していかねばならないか。その一つの事例が本作にある。

権威ある者の言葉を鵜呑みすることなく、合理的に自分で思考し判断することが大切なのであろう。

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2005/02/25

ターミナル

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:スティーヴン・スピルバーグ

JFK国際空港。ビクターは東ヨーロッパのクラコウジアからやってきた。だが、いざ入国しようとした矢先、クラコウジアでクーデターが発生。アメリカへの入国を拒否されてしまい、空港内に足止めされてしまうが…。

現代において“待つ”という時間は、効率化の名の元にどんどん削られていく。そのシステムに慣れたものが、“待つ”時間に遭遇すると耐えがたい苦痛と苛立ちを覚えずにはいられない。

だが、そんな効率ばかり追うことが真の幸福に繋がるのだろうか? この映画の中には“待つ”時間を抱えている人が主人公ビクター(トム・ハンクス)以外にもたくさん居る。

昇進を待つ者、愛人からの電話を待つもの、気になる彼女と仲良くなるチャンスを待つ者。非効率な“待つ”時間の中にこそ、人生の真髄があるような気がしてならない。

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2005/02/24

赤い月

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製作年:2003年
製作国:日本
監 督:降旗康男

1934年、満州。森田波子は、夫・勇太郎とともに小樽から移住し“森田酒造”を開業する。この商売で成功を収
めた彼らは3人の子供を育て幸せに暮らしていた。だが、1945年8月、ソ連軍の満州侵攻で一変してしまうが…。

確かに笑ってしまうようなエピソードに満ちた作品である。だが、思ったほど腹立たしくなかったのは、波子(常盤貴子)のヒロイン像がある種の清々しさを持って感じられたからである。

奔放な恋愛を真っ当し、固い信念で生きていく女性。周りの常識や道徳に囚われず、自分の幸せのために生きる。無論、自分の幸せのために犯罪的行為を行うのであれば問題外であるが、恋愛、人生観というレベルで自己の信念を貫く姿は、決して間違いでない。

「生きるためには,愛し合う人が必要なのよ」という台詞に、理屈を越えた説得力がある。精一杯悔いなく生きた
からこそ、「ありがとう満州」という幕切れの台詞になるのだろう。

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2005/02/23

チルソクの夏

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製作年:2003年
製作国:日本
監 督:佐々部清

1977年。下関の高校の陸上部員だった郁子は、釜山で行われる関釜陸上競技大会に出場するため、チームメイトたちと韓国にやってくる。大会が行われた7月7日、彼女は安大豪という韓国人の少年と出会うが…。

70年代後半の雰囲気を見事に再現し、瑞々しくノスタルジックに作られた一篇。それらはいいのであるが、どうしても最初の場面が引っ掛かる。

郁子(水谷妃里)と安が一目でお互いに好意を持つのはいい。出会った夜に、安が一人で郁子を訪ねるのもいいだろう。だが、ああいう訪問の仕方はどうだろう。デリカシーを大いに欠くものであるし、反感を覚える人もいるだろう。

ロミオとジュリエットのようなスタイルでの会話も周囲がじっと見ている中では、ムードがない。ここが乗れず、その後の二人の交際も冷ややかに見えてしまう。

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2005/02/22

海猫

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:森田芳光

1980年代半ば。薫はそれまで住んでいた函館を離れ、峠ひとつ隔てた漁村・南茅部の漁師・邦一のもとへ嫁ぐ。慣れない漁師の生活も、邦一に支えられ懸命にこなす薫。やがて二人の間には娘・美輝も生まれるのだ…。

人が生きていく中で、原因と結果は必ず生じてくる。本作がいびつに見えてくるのは、その原因がしっかり描かれておらず、結果ばかり目立ってしまうからだろう。

たとえば、薫(伊東美咲)が三角関係に悩むという結果は分るが、夫(佐藤浩市)との生活にどこが不満であり、どうして義弟(仲村トオル)に惹かれていくのか。都市生活者が漁業生活に慣れず、自分の居場所が見出せないという理屈は分るのだが、それが感情として伝わってこないのだ。

もっと本質的な心情を掘り下げて欲しい。でないと彼女の行動が身勝手なものとしか取れないのである。

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2005/02/21

トッポ・ジージョのボタン戦争

「トッポ・ジージョのボタン戦争」★★★
(盛岡フォーラム1)
1967年日本 イタリア 監督:市川崑
アニメ:(盛岡フォーラム・アニメオールナイトより)

とある街の片隅で、寂しい独身生活を送っていたネズミのトッポ・ジージョ。彼はある晩、眠れずに街中をフラフラ
さまよっていて赤い風船に出会う。その風船を気に入ったジージョは一緒に夜の街を散歩することにするが…。

普通のアニメ作品と思うと大いに裏切られる。これは市川崑監督作品として観るべきものなのだ。

シルエットやシャドーを多用したライティング、切り返しの効いたカメラワーク。そこに市川監督らしい斬新さを感じる。

この暗さが最初から悲劇を予感させて哀しい。

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2005/02/20

クルテク もぐらくんと森の仲間たち

「クルテク もぐらくんと森の仲間たち」★★★★
(盛岡フォーラム1)
1957~1999年チェコ 監督:ズデネック・ミレル
アニメ:(盛岡フォーラム・アニメオールナイトより)

もぐらのクルテクは普段、森の地中で一人暮らしをしている。だけど森の中には沢山の友達がいるので、決して孤独になることはなかった。ウサギ、ハリネズミ、カエル。みんなと仲良く暮らしている…。

公開7作品の年代にかなりばらつきがあり、それぞれ味わいが違う。だが、ほのぼのとした素朴なタッチは共通で7作品、みんな楽しめた。

特に好きだったのは雪だるまと遊ぶ一篇。困ったときに頭をかくクルテクの表情も可愛かった。

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2005/02/19

ミトン

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製作年:1967年
製作国:ソ連
監 督:ロマン・カチャーノフ

犬を飼いたくて仕方ない小さな女の子アーニャ。彼女は、ほかの子供たちが飼い犬を雪の中で楽しそうに遊んでいる様子を、いつも家の窓からながめていた。ある日、アーニャは赤い手袋を子犬に見立てて遊び始めるが…

同監督の「レター」「ママ」と同時上映されたが、それぞれに見応えがあった。人形たちの表情や動きが愛くるしく、繊細な描写が心を打ちます。

欠落した何かを強く思うとき、幻想の中で夢を実現させる。その喜び、そして哀しさ。「マッチ売りの少女」の話を思い浮かびました。

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2005/02/18

氷の微笑

「氷の微笑」★★★★(DVD)
1992年アメリカ 監督:ポール・ヴァーホーヴェン
出演:マイケル・ダグラス シャロン・ストーン
   ジョージ・ズンザ ジーン・トリプルホーン

元ロック・スターがアイス・ピックによって惨殺された。サンフランシスコ市警察のニックは最後に被害者といるところを目撃された恋人のキャサリンを訪ねる。彼女はミステリー作家で今回の事件そっくりの作品を発表していたが…。

公開当時、真犯人は誰かということで大いに話題になりました。こうして再見すると、限られた登場人物の中で意外な犯人というのはありえない気がします。

私の解釈はキャサリンが直接的には犯行を起こしていないというものです。

本作はシャロン・ストーンのエポック・メイキング的作品であり、妖しい魅力が遺憾なく発揮されております。ファム・ファタール、ここにありという感じ。

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2005/02/17

ポルターガイスト

「ポルターガイスト」★★★(DVD)
1982年アメリカ 監督:トビー・フーパー
出演:ジョベス・ウィリアムズ クレイグ・T・ネルソン
    ヘザー・オルーク ビアトリス・ストレイト

郊外の宅地開発の行なわれた1区画に住むスティーヴ一家。ある夜、放送が終了して何も写ってないテレビ画面と、5歳の末娘キャロル=アンが言葉を交わしていた。翌日から異常な現象が家の中で続くのだが…。

クライマックスの展開は遊園地のアトラクションのようで、リアルな恐怖というよりも作り物を楽しむという感じでした。

プロデューサー、スピルバーグの陽性とT・フーパー監督のグロテスクな陰性がうまくミックスされている感じです。

本作と同じ町でスピルバーグ監督の「E.T.」も撮影されていたと言うのがちょっと面白い裏話でした。

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2005/02/16

Mr.インクレディブル

製作年:2004年
製作国:アメリカ 
監 督:ブラッド・バード
声の出演:クレイグ・T・ネルソン ホリー・ハンター
   サミュエル・L・ジャクソン ジェイソン・リー

世界の危機をいくつも救ってきたスーパー・ヒーローたちだったが、15年前にその破壊力が問題視され、ヒーローとして活動することを禁じられていた。Mr.インクレディブルも、正体を隠し一般市民として暮らしていたが…。

自分の力を発揮できず、自由に振舞えないもどかしさ。その苛立ちが前半よく描かれており、物語に共感を呼ぶ下地になっている。

ピクサー前作の「ファインディング・ニモ」(2003)で歯医者の待合室で子供が読んでいる本がコレだったいう。再見する機会があったら注意して観てみよう。

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2005/02/15

10日間で男を上手にフル方法

「10日間で男を上手にフル方法」★★★★(DVD)
2003年アメリカ 監督:ドナルド・ペトリ
原作:ミシェル・アレクサンダー ジェニー・ロング
   「The Universal Don'ts of Dating」
出演:ケイト・ハドソン マシュー・マコノヒー
   キャスリーン・ハーン アニー・パリッセ

女性雑誌のライター、アンディは、 “10日間で男にフラれる方法”というコラムを担当させられる。一方、独身の広告マン、ベンは社長と “10日以内に恋人をつくれば、宝石店のを任せる”という約束を取り付けるが…。

ラブ・コメディーの定石通り、予定調和な結末が待っている。それはそれでいい。優劣を決めるは、話の本筋を引っ張るエピソード、伏線が巧く張られた台詞、主人公を盛り立てる友人などのキャラクター造型などである。

本作はそれらをうまくクリアして、楽しい一作に仕上がっている。それと共にアンディ(K・ハドソン)の自分の本当にしたいことへ突き進んでいく成長ドラマになっているところも良い。

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2005/02/14

Dr.Tと女たち

「Dr.Tと女たち」★★★(DVD)
2000年アメリカ 監督:ロバート・アルトマン
出演:リチャード・ギア ヘレン・ハント
    ファラ・フォーセット ローラ・ダーン

Dr.Tはダラスの産婦人科医。女性の悩みを親身になって聞いてくれることで、医院はさまざま思惑を胸に秘めた女性たちで毎日大盛況している。娘のディーディーの結婚が近付いたある日妻のケイトが異常な振る舞いを行うが…。

ダラス中の女性のことならなんでも分っていると自負しているDr.T(R・ギア)であるが、実は自分の家族の女性達のことを何も分っていなかったという皮肉。

それが娘の結婚を契機に一気に噴出してくる。クライマックスで嵐に巻き込まれていくのが、実に象徴的である。

知っているということは、何も知らないことでもある。

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2005/02/13

バレエ・カンパニー

「バレエ・カンパニー」★★★(盛岡フォーラム3)
2003年アメリカ 監督:ロバート・アルトマン
出演:ネーヴ・キャンベル マルコム・マクダウェル 
    ジェームズ・フランコ バーバラ・ロバートソン

シカゴに本拠地を置く名門バレエ・カンパニー“ジョフリー・バレエ・オブ・シカゴ”。芸術監督のミスターAの指揮の
下、新たなシーズンが幕を開ける。ダンサーのライは主役の怪我により思わぬチャンスが到来するが…。

バレエに詳しい人の批評を読むと、ネーヴ・キャンベルがあの踊りと体型で主役に抜擢される事自体に無理があ
るという。私から見ればどこに違いがあるのか、さっぱり分からないのだが。

そのために無理なく映画の中に入り込む。ドキュメンタリーのような作りが、過剰なドラマ性を削ぐ。

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2005/02/12

チャンピオン

「チャンピオン」★★★(DVD)
2002年韓国 監督:クァク・キョンテク
出演:ユ・オソン チェ・ミンソ 
    ユン・スンワン ジョン・ドホン

海岸沿いの小さな村で暮らす少年キム・ドゥック。ある日、故郷の村を飛び出しソウルに向かった。浮浪児同然の少年時代を経て青年へと成長したドゥックは、ボクシングと出会いジムに入るが…。

悲惨な幼少時代においても主人公ドゥックは未来を見つめ前に進んでいく。何度がバスを追い駆けて走るシーンが挿入されておりますが、夢を実現させる手段を追い求めている象徴であると感じました。

「ボクサーはミス・コリアよりも鏡を見る時間が多いはずだ。なぜなら、闘うべき敵がそこに映っているからだ」と
いう会長の台詞が良かったです。闘う相手は自分自身。

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2005/02/11

アタック・ザ・ガス・ステーション!

「アタック・ザ・ガス・ステーション!」★★★★(DVD)
1999年韓国 監督:キム・サンジン
出演:イ・ソンジェ ユ・オソン カン・ソンジン ユ・ジテ

日常に退屈した4人の若者たちが、特に明確な目的もなく深夜のガソリンスタンドを襲撃する。金を奪って逃げようとしていた4人は、切り上げるタイミングを逸してガソリンスタンドに居座り続けることになるが…。

なかなか快調なアクション・コメディーである。ひとつひとつエピソードが意表を突いて面白く、キャラクターの造型
が実に鮮やか。全体の構成も巧みなものでありました。

彼らに共感できるのは、韓国の儒教的上下関係、理屈でなく目上から強制される社会のありかたに対するいら
だちが見事に表現されているからでしょう。

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2005/02/10

オールド・ボーイ

製作年:2003年
製作国:韓国
監 督:パク・チャヌク

一人娘の誕生日の夜、泥酔したサラリーマン、オ・デスは、何者かに誘拐され、小さな部屋に監禁されてしまう。なぜ監禁されたか理由は明かされないまま15年が過ぎた。ある日突然、デスは解放されるのだが…。
2004年第57回カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞。

中盤まで、謎を追い駆けていくミステリー的展開に引き込めていきました。そして、この結末。こういう理由もあったのかという驚きを感じました。

そこに本作のオリジナリティーがあります。人間心理の闇を見る思いです。

ただ私にはチェ・ミンスクの過剰な演技が重たかった。

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2005/02/09

嵐が丘

「嵐が丘」★★★(BS)
1988年日本 監督:吉田喜重
原作:エミリー・ブロンテ
出演:松田優作 田中裕子 名高達郎 石田えり

中世の頃。山部一族の東の荘の当主・高丸は都から鬼丸と名づけた異様な童児を連れて戻る。鬼丸は下男として仕えた。高丸の娘・絹は京に上り巫女となる身だったが、鬼丸に惹かれ山に残るため西の荘の光彦へ嫁ぐことにしたが…。

未だに「嵐が丘」のドラマを消化しきれていない。こういう愛の形があることは知識として分っていても、本質的なところで共感を得る迄に至っていない。いつか理解できる日が来るのだろうか。

絹(田中裕子)が鬼丸(松田優作)へ照らす手鏡の反射光は、彼女の飾らない想いを表したものであろう。

鎌倉・室町期の日本を舞台に翻案した独自の様式美。霧を巧く生かした幻想的な映像。松田優作の狂気迫る演技。

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2005/02/08

美しい夏キリシマ

「美しい夏キリシマ」★★★(DVD)
2002年日本 監督:黒木和雄
出演:柄本佑 小田エリカ 原田芳雄 香川照之

1945年、夏の霧島地方。15歳の康夫は働いていた工場で空襲に見舞われ、親友が被爆死するのを目の当たりにする。以来、それが原因で体を壊し、祖父の家で療養している。厳格な祖父・重徳は康夫を非国民と罵倒するが…。2003年度キネマ旬報日本映画第1位作品。

戦時中に生き残ったことで死者に対して罪悪感を抱くというのは、「父と暮らせば」に共通するモチーフであり、黒木和雄監督の思いがヒシヒシと伝わってくる。

主人公の康夫(柄本佑)だけでなく、他の登場人物もみな暗い負い目を抱いている。それが美しい夏の風景を背景に、明確に浮かび上がってくる。

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2005/02/06

父と暮せば

製作年:2004年
製作国:日本 
監 督:黒木和雄

原子爆弾が投下され、3年後の広島。図書館に勤める美津江は自分だけ生き残ったことに負い目を感じながらひっそりと暮していた。そんなある日、図書館で一人の青年、木下と出会う。その夜から父親の幽霊が出てくる…。

まずなんと言っても、宮沢りえと原田芳雄の二人の俳優の見事さ。特に宮沢りえの声の美しさに瞠目する。「おとったん」という響きが実に心地良い。

そして、シナリオの素晴らしさ。もちろん、井上ひさしの原作に拠るものであるが、その世界を壊さずに、丁寧に映画化しているところが良い。

原爆資料など木村威夫の美術も見事であった。

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2005/02/04

死刑台のエレベーター

「死刑台のエレベーター」★★★★(BS)
1957年フランス 監督:ルイ・マル
原作:ノエル・カレフ
出演:モーリス・ロネ ジャンヌ・モロー
    ジョルジュ・プージュリー リノ・ヴァンチュラ

土地開発会社に勤めるジュリアンは社長夫人フロランスと通じ合い、邪魔な社長を殺害する。だが、残してきた証拠に気づいたジュリアンは現場へ戻ろうとするが、週末で電源を落とされたエレベーター内に閉じ込められてしまう…。

完全犯罪の目論むにしては、日中の何処に目撃者がいるか分らない状況で、ロープを使って窓から社長室に侵入するのはどうかと思う。

結果としてこのロープが二人の運命を狂わせる事になるのだが、そもそもの出発点が間違っていた。

マイルス・デイビスの奏でるミュート・トランペットの旋律が映画のムードを絶妙に盛り上げる。若者の退廃的な
感情と刹那的な行動をドライなタッチで描くルイ・マル監督の演出も素晴らしい。

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2005/02/02

五月のミル

「五月のミル」(BS)★★★
1989年フランス 監督:ルイ・マル
出演:ミシェル・ピッコリ ミュウ=ミュウ
    ミシェル・デュショーソワ ドミニク・ブラン

1968年、南仏ジェールのヴューザック家。当主の夫人が急死する。時は五月革命でストが続くなか、苦労して駆けつけた家族達はさっそく遺産分配を話はじめる。家を売ろうという話に長男のミルは怒りを爆発させるが…。

都市生活者達は葬儀を迅速に終えて戻りたいが、5月革命のため滞在を余儀なくされる。刺々しい家族達の関係が南フランスの明るい太陽に照らされ、笑顔に変わっていく。

そんな家族の団らんの場を簡単になくしてしまっていいのかという問いかけを、ルイ・マル監督は子供の視線からシニカルに描く。

ステファン・グラッペリのバイオリンの音色が優しく響きます。

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2005/02/01

ドリーマーズ

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製作年:2003年
製作国:イギリス/フランス/イタリア 
監督:ベルナルド・ベルトルッチ

1968年のパリ。シネマテークに入り浸るアメリカ人留学生のマシューは、イザベルとテオという双子の姉弟と知り合い、彼らの家で暮らし始める。彼らは“映画クイズ”に興じるが、罰ゲームは常軌を逸していた…。

マシュー(マイケル・ピット)にとって双子の姉弟は異文化そのものであったと思う。映画という共通する言語を交わし部屋にこもりきりで生活し、お互いの距離が縮んだように見えても、本質的なところは共有することが出来なかった。

ラストシーンで異邦人としての哀しみを見た。

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