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2005年1月

2005/01/31

かげろう

「かげろう」★★★(DVD)
2003年フランス 監督:アンドレ・テシネ
原作:ジル・ペロー「Le Garcon aux yeux gris」
出演:エマニュエル・ベアール ガスパール・ウリエル
グレゴワール・ルプランス=ランゲ クレメンス・メイヤー

1940年。戦争で夫を亡くしたオディールは、パリから13歳の息子フィリップと7歳の娘カティを車に乗せ、ドイツ軍の侵攻から必死に逃れていた。だが車が爆撃に見舞われてしまう。そこで17歳の青年イヴァンと出会うが…。

死の恐怖と向かい合わせとなり、イヴァン(G・ウリエル)と離れたくても離れられないオディール(E・ベアール)の
苛立ちや疲労感。

父親の形見であった腕時計を手に入れたことで、父親の役割を託されたイヴァン。彼らは閉ざされた空間の中で
擬似家族となっていく。戦時下とは思えない安らいだ生活を過ごすが、それも長くは続かない。敗残兵が立ち寄り、狂っていた時間が正されたとき、終焉を迎える。

E・ベアールの巧みな演技が光る一編。

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2005/01/30

彼女たちの時間

「彼女たちの時間」★★★★(DVD)
2001年フランス 監督:カトリーヌ・コルシニ
出演:エマニュエル・ベアール パスカル・ビュシエール
    ダニー・レヴィ ジャン=ピエール・カルフォン

幼馴染みのナタリーとルイーズは、共に演劇クラブに所属して舞台女優を目指していた。ある晩、ルイーズは公
の前でナタリーを罵り、2人は絶交する。10年後、ルイーズは女優として活躍しているナタリーと偶然出会うが…。

ルイーズ(パスカル・ビュシエール)がナタリー(エマニュエル・ベアール)に求めたものは愛情だったのに、ナタリーがルイーズに求めたのは友情であった。

ルイーズは全てを捨ててでもナタリーを求めて突っ走る。だがナタリーは孤独感に苛まれる時には優しく甘え、そ
れ以外の時には酷薄な態度でルイーズと接する。

この想いの差が、二人の関係を不安定にするのだ。

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2005/01/29

天国の青い蝶

製作年:2004年
製作国:カナダ/イギリス 
監 督:レア・プール

末期の脳腫瘍に冒され、余命わずかな10歳の少年ピート。彼にはどうしても叶えたい夢があった。中南米にしか生息しない世界で最も美しいといわれる神秘の青い蝶“ブルーモルフォ”を捕まえたいという夢。彼は世界的な昆虫学者アランに南米行きを直訴するが…。

実話をベースにという看板に守られているが、ドラマ自体が平凡で泣けるようなものでない。一つ一つのエピソードが作り過ぎ。自然でなく、感情移入しにくい。

例えば、南米に行くまで展開が急ぎ過ぎ。ピート(マーク・ドネイト)とアラン(ウィリアム・ハート)との交流をもう少し丁寧に描いて欲しかった。

南米に生きる虫や鳥の映像は美しかったが、逆にリアリティーを削ぐような感じも受ける。

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2005/01/26

風の歌が聴きたい

「風の歌が聴きたい」★★★★★(BS)
1998年日本 監督:大林宣彦
出演:天宮良 中江有里 勝野洋 入江若葉

昌宏は3歳のときに罹った風邪が元で耳が聞こえなくなった。中学生の時に文通している奈美子も聾唖者である。二人は様々な困難にぶつかりながら互いに励ましあい、結婚する。共に過酷なトライアスロンへの挑戦を始めるが…。

多彩な登場人物を細やかに描いており、奥行き深い話になっている。特に登場する場面こそ少ないが奈美子(中江有里)の姉が印象深い。彼女の孤独がさりげなく描かれ、大林監督の巧さを感じる。

そして、昌宏(天宮良)の父親の言葉が胸に残る。「耳が聞こえないのなら、目で見えるものを楽しめ」、「なくしたものを数えるな」など、大いに勇気づけられる名言であった。

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2005/01/25

この世の外へ クラブ進駐軍

「この世の外へ クラブ進駐軍」★★★(DVD)
2003年日本 監督:阪本順治
出演:萩原聖人 オダギリジョー 
    ピーター・ミュラン シェー・ウィガム

1947年、米軍基地のクラブで一稼ぎしようと、それぞれ楽器を抱えた若者たちが集まっていた。軍楽隊出身
の健太郎は先輩ベーシストの平山たちと“ラッキーストライカーズ”という名のバンドを結成しジャズを演奏する
が…。

戦後の混乱期、何をしてでも食べていかねばならないという力強い意志。ジャズメン達の成長を通して描く群
像劇かと思って見ていたが、あの反戦の幕切れで考えてしまう。テーマがうまく消化していないと思う。

一番の不満は戦争で弟を亡くし日本人に妄執的な敵愾心を持つラッセル(S・ウィガム)が健太郎(萩原聖人)と
友情を育むエピソードが足りないところ。これでは感情の流れに一貫性がなくなってしまう。

敗戦から復興途上の街を見事に作り上げた原田満生の美術は素晴らしい。

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2005/01/20

血と骨

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:崔洋一

1923年。朝鮮・済州島から大阪へ渡った金俊平。彼は持ち前の腕力と上昇志向で自分の蒲鉾工場を構える。だが、並外れた凶暴さと強欲さで悪名も高く、近所だけでなく家族までがその存在を怖れていた…。

凄まじいほどの暴力で周囲を支配する金俊平(ビートたけし)。こんな男が現実に近くにいたら災難でしかないが、映画の中では哀切感を伴って存在する。

それはこの男の青春時代を映画の中では描いていないことだ。冒頭の大阪に着く船の場面だけ見せているが、それ以後はスッパリ切っている。

こんな酷い無茶苦茶な男にも、夢に瞳を輝かせていた希望の日々があったのだ。その事が峻厳に残りつづける。

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2005/01/19

マルコヴィッチの穴

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製作年:1999年
製作国:アメリカ
監 督:スパイク・ジョーンズ

人形師として一流の腕を持ちながら仕事にあぶれているクレイグ。彼はニューヨークのど真ん中にあるビルの7と1/2階に事務所を構えた会社に就職する。ある日、書類整理していると、奇妙な穴を見つけるが…。

奇想天外な話を盛り込んだチャーリー・カウフマンの脚本がなんと言っても凄い。こういう発想がどこから生まれ
てくるのか。単にコメディーに終らず哲学的なテーマへと繋がっていくところが、斬新だ。

それをマルコヴィッチ本人が楽しげに演じているのも楽しい。

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2005/01/18

バッファロー‘66

「バッファロー‘66」★★★★★(DVD)
1998年アメリカ 監督:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロ クリスティナ・リッチ
 ベン・ギャザラ アンジェリカ・ヒューストン

5年の刑期を経て出所してきたビリー。トイレを借りに寄ったダンススクールで偶然会ったレイラを拉致する。ビリーは両親に仕事で家を離れ、結婚したと偽っていたのだ。彼はレイラに妻の代役を頼むが…。

どうしようもないほど身勝手でわがまま、そして自意識過剰な男ビリー(V・ギャロ)。普通であれば唾棄したくなるような人物であるが、なんと魅力的に描かれていることか。

キング・クリムゾンなど音楽の挿入が絶妙な効果を与えている。

C・リッチのタップダンスが名場面。何度見ても楽しめる。

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2005/01/17

モンスター

製作年:2003年
製作国:アメリカ
監 督:パティ・ジェンキンス

1986年、フロリダ。ヒッチハイクをしながら男に身体を売る生活に疲れ果て、自殺する覚悟を固めたアイリーン。有り金の5ドルを使い果たそうと入ったバーで、彼女はセルビーと運命的な出会いを果たすが…。
第76回アカデミー賞でシャーリーズ・セロンが主演女優賞を受賞。

佐野元春は“SOMEDAY”の中で「信じる心、いつまでも」と歌っている。アイリーン(シャーリーズ・セロン)は悲惨な境遇に暮らしていても、いつか愛する人と出会えると信じている。

鏡の中で自分の顔を見つめる場面が何度か出てくるが、自分の夢が叶うことを疑わない心情の表れだと思いました。

彼女がセルビー(クリスティナ・リッチ)と会ったことは、結果として報われることはなかった。だが、愛したことを決して後悔していない。光の中に消えていくラストシーンが力強く響く。

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2005/01/16

いたいふたり

「いたいふたり」★★★(DVD)
2002年 監督:斎藤久志
出演:唯野未歩子 西島秀俊 鈴木卓爾 唯野友歩

なつは元看護婦で今は小さい会社に勤めている。涼はまだその思いを捨て切れていない元カメラマン。今でも塾講師のかたわら写真を撮っている。互いに愛し合う2人はいつの頃からか相手の肉体的痛みを感じ合うようになるが…。

時に愛は互いを滅ぼそうとする激しい衝動を生みことがある。相手の肉体的痛みを共有するというのは、その象徴ではないか。

この二人の周辺にも愛の激しさに身を持て余す人々が出てくる。時に愛は恐ろしいものになる。

原一男や廣木隆一など映画監督たちが俳優として出演しているのが楽しい。

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2005/01/15

福耳

「福耳」★★★(DVD)
2003年日本 監督:瀧川治水
出演:宮藤官九郎 田中邦衛 高野志穂 司葉子

浅草の高齢者向け高級マンション、東京パティオ。フリーターの里中はパティオ内のレストラン“タイムマシン”で働くことになった。その初日、里中は死んだばかりの老人・藤原に取り憑かれてしまう…。

宮藤官九郎と田中邦衛のコンビネーションが楽しい作品であるが、シナリオもなかなか良い。

フリーターとして暮らす里中(宮藤官九郎)。「先が見えてしまうと本気になれない。先が見えないと不安で進み出せない」という台詞が彼の心理状態をよく表している。

それを受けて藤原(田中邦衛)のメッセージが本作のテーマなのであろう。

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2005/01/13

隠し剣 鬼の爪

製作年:2004年
製作国:日本 
監 督:山田洋次
原作:藤沢周平「隠し剣鬼ノ爪」「雪明かり」

東北の小藩、海坂藩。下級武士・片桐は、かつて家に奉公に来ていたきえと再会する。伊勢屋に嫁ぎ、幸せに暮らしているものと思っていたが、あまりにも寂しげでやつれた姿だった。やがて、きえが病に伏せっていると聞くが…。

どうしても同じようなプロットの前作「たそがれ清兵衛」(2002)と比べてしまう。私としては前作の方を好むが、本作も決して悪い作品ではない。

率直さと明るいユーモアに溢れ、広々とした希望が広がる。特にラストシーンが良い。そこが違う味わいになっている。

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2005/01/12

スカイハイ[劇場版]

「スカイハイ[劇場版]」★★★(DVD)
2003年日本 監督:北村龍平
原作:高橋ツトム
出演:釈由美子 谷原章介 大沢たかお 戸田菜穂

恋人との結婚式を控えている神崎刑事は、心臓をえぐり取る連続猟奇殺人事件に悩まされていた。そして結婚式当日、神崎の婚約者・美奈が4人目の犠牲者になってしまう。殺害された美奈は“怨みの門”の前にたどり着くが…。

剣劇の型が似通っているとか、ドラマが支離滅裂であるとか、あまり良い評判を聞かない本作であるが、それは
それで印象深いシーンがある。

それは小百合(岡本綾)の存在である。怨みとか復讐を描く物語の中で、過去を振り返らずさっと再生する道を
選択する姿は、鮮やかなほど清々しい。

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2005/01/11

女はバス停で服を着替えた

「女はバス停で服を着替えた」★★(DVD)
2002年日本 監督:小沼勝
出演:戸田菜穂 遠藤憲一 中村麻美 北村和夫

北海道・鹿追町。充は東京での生活を捨てて、蕎麦職人として再出発するため奮闘していた。ある日、充を追って瑞枝がやってくる。瑞枝は充の事故死した弟の妻で、サルサ大会にパートナーとして出場する間柄でもあった…。

身近にいた者の死から逃れなれない二人。そこからいかに再生していくかというプロットは良いにしても、個々のエピソードに魅力が乏しい。

惜しいのは、中村麻美が抱く都市生活の憧れと迷いが、二人のドラマに重なってこないことだ。

投げ捨てられた自転車。何も答えてくれない後ろ姿。

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2005/01/10

誰も知らない

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製作年:2004年
製作国:日本
監 督:是枝裕和

2DKのアパートに引っ越してきたけい子と4人の子供たち。兄妹たちは父親がみな別々で、学校に通ったこともない。けい子がデパートで働き、長男・明が家事をし、兄妹の面倒を見ていた。そんなある日、けい子はわずかな現金を残し家を出ていってしまう…。
2004年第57回カンヌ国際映画祭で柳楽優弥が日本人初となる主演男優賞をカンヌ史上最年少で受賞。

子供達を置き去りにした母親や、それに気が付かない周辺住民の是非に付いては、ここでは触れない。取り残されたという不条理な事態に対して、明(柳楽優弥)は何を選んでいったかということである。

彼は警察や児童相談所に助けを求めるという選択肢を知っていながら、4人の兄弟と一緒に生きる道を選んだのだ。そこには学校に行きたいとか、友達と遊びたいとかという子供らしい思いを断ち切る哀しさがある。

最初で最後になるであろう野球の試合に参加する場面が愛しく残る。

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2005/01/06

ナビィの恋

「ナビィの恋」★★★★★
(BS)1999年日本 
監督:中江裕司
出演:西田尚美 村上淳 登川誠仁 平良とみ

奈々子は都会の喧騒に疲れて久しぶりに粟国島へ帰ってきた。島までの小さな船には一人旅の福之助と伊達な白スーツの老紳士が同乗していた。その老紳士は60年前に奈々子の祖母ナビィが最も愛していた人だった…。

60年前は因習にしばれて別れることになった二人。時は経ち、島は他国の人々や文化を受け入れ、自由な風が吹き渡っている。

そしてナビィ(平良とみ)は旅立っていき、奈々子(西田尚美)は福之助(村上淳)と結ばれる。島の文化は新しい風に影響を受けつつ、大事な芯の部分は揺ぎ無い。

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2005/01/05

棒たおし

「棒たおし!」★★★(DVD)
2003年日本 監督:前田哲
出演:谷内伸也 金子恭平 古屋敬多 平愛梨

普通科の高校生・次雄は何も刺激のない退屈な日々を送っていた。ある日、彼が素早くポールの頂上までよじ登る様子を見て、勇は体育祭の棒たおしに活かせると思いつく。勇は次雄に棒たおしを一緒にやろうと強引に誘うが…。

いい場面もたくさんある。特に次雄(谷内伸也)と小百合(平愛梨)のシーンなど哀切であった。

だが、全体として物足りなさをおぼえるのは、次雄が棒たおしに熱中していくくだりが充分に描かれていないからであろう。

起承転結の<起>と<結>はいいのだけれど、競技へ熱中していく<承>と<転>の掘り下げ方が足りないの
だ。主人公の成長の軌跡が分らず、ドラマに一貫性を欠いている。

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2005/01/04

茶の味

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製作年:2003年
製作国:日本 
監 督:石井克人

山間の小さな町に暮らす春野家の人々。彼らはそれぞれに悩みを抱えていた。内気な高校生の長男・一は恋に悩み、小学校に入学したての妹・幸子は時折現われる巨大な自分の分身に困惑していたが…。

鳥、虫、蛙などの鳴き声や風の音など効果音が巧みに使われている。知らず知らずの内に心が落ち着いてくる作品だ。

この田舎の風景は生活臭が全くない。現実の世界でなく、イメージされた理想郷である。まさに父親(三浦友和)が施す催眠治療の中で見る夢幻の世界のようであった。

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2005/01/03

泥の河

「泥の河」★★★★★(BS)
1981年日本 監督:小栗康平
原作:宮本輝
出演:朝原靖貴 桜井稔 藤田弓子 田村高廣

日本が高度成長期を迎えようとしていた昭和31年。大阪・安治川の河口で食堂を営む板倉晋平のひとり息子・信雄。ある日、彼は対岸に繋がれているみすぼらしい船を見つけ、そこに住む姉弟と知り合うが…。

少年がイノセンスを喪失していく11歳の夏。信雄(朝原靖貴)は船で去っていく友を追い駆けて名前を呼び続ける。それは過ぎ去っていく少年時代を惜しむようにも聞こえる。

戦後10年、必死で生きてきた人々。ふと、実感する心の空白。「戦地で死んだ方が良かった」との述懐が重く響く。

人生の陰影を感じさせる美しいモノクロの映像。

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