製作年:2004年

2010/04/03

初恋のアルバム 人魚姫のいた島

Main

製作年:2004年
製作国:韓国
監 督:パク・フンシク

なんという強引な設定。失踪した父親を捜しに済州島へ訪れたナヨン(チョン・ドヨン)。そこで、何の説明もなく、結婚する前の若き両親が暮らす時代に彼女はタイムスリップしてしまうのだ。自分とそっくりの母親ヨンスン(チョン・ドヨン)と出会い、当たり前のように暮らし始めてしまう。

青年時代の父ジングン(パク・ヘイル)は、ナヨンに心乱されることなくヨンスンだけに純朴な愛を捧げる。ここまでの展開で、いろいろな葛藤が生じる筈であるが、さらりとやり過ごされてしまう。もう少ししっかりとした設定の説明が欲しい。

という不満はひとまず置いておいて、残酷なドラマであると思う。一途に初恋を育んでいる二人の未来に何が待っているか、ナヨンと観客である我々は、知っているのである。“優しさだけでは生きていけない”というハードボイルドのような台詞もあったが、優しさだけで生きていられた済州島での生活が切なく見えてならない。

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2009/05/19

ストリングス 愛と絆の旅路

製作年:2004年
製作国:デンマーク
監 督:アンデルス・ルノウ・クラルン/庵野秀明(ジャパン・バージョン)

日本の文楽を見ていても感じることであるが、最初は違和感の覚える人形の無機質ぶりも、物語が進んでいくうちに人間ドラマとして遜色なく見られるようになる。なんとも不思議なものであるけれど、それが奥行きある芸の力というものであろう。本作品は、5メートルもの糸で一体につき五人の人形師によって操られた人形による物語である。決してスムーズとは言えないぎこちなさの残る人形の動きも、やがて魅力的に映ってくる。糸に操れたということが、その人形劇の世界観にも大きく影響を与えているという設定も素晴らしい。自分の意思で恣意的に行動しているようであっても、実は誰かの糸によって操られているのではないか。我々が暮らす実社会でもそういうことがあるのではないかと感じさせるから、本作品は意義深い。

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2009/03/13

シリアの花嫁

製作年:2004年
製作国:イスラエル/フランス/ドイツ
監 督:エラン・リクリス

イスラエル占領下のゴラン高原。複雑な中東情勢というのはニュースでよく聞く言葉でありますが、本作品を見ることで、その意味を改めて教えられました。自由に行き来できないため、写真でしか見たことのない相手に嫁ぐということ。しかも、一度シリア領に渡ってしまえば、二度と故郷に戻ることができなくなってしまうということ。結婚は家族との永別でもあるということなのだ。仮に結婚に失敗したとしても実家には戻ることはできない。結婚を決めるまでに相当の覚悟がいることだろう。

それなのに、いざ軍事境界線を越えようとすると、通行証の手続きトラブルで立ち往生を余儀なくされる。なんとも不条理な話であるが、これこそ現実ということか。こうした背景だけでも見ごたえのある作品であるが、それだけで終わっていないは花嫁モナ(クララ・フーリ)の姉ラウルのドラマでもあるからだ。境界線とは何も国境だけを意味するのではない。自分の望む場所に行けない自由の制限は家族の中にもあることを明らかにし、より奥深い映画に仕上がっている。

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2009/02/17

ある愛の風景

製作年:2004年
製作国:デンマーク
監 督:スザンネ・ビア

人は変わっていく。例えば、戦争という異常な状況に置かれたとき、人は思いもかけない自分の姿を見出して驚愕することになる。その過去といかに折り合いを付けるか。映画の中でも、何度も繰り返し描かれてきた主題であるが、決して古びることはない。現実に、戦争は繰り返されているからだ。デンマークという戦地から遠く離れた国でも、その苦悩と無縁でないことを示したのが本作品である。

エリート兵士のミカエル(ウルリク・トムセン)は、誰もが羨むような理想的な家庭人であった。だが、戦争捕虜における過酷な経験が彼を別人に変えていく。逆に、問題児であった弟のヤニック(ニコライ・リー・コス)は、失意の兄家族を見て、頼りがいのある暖かな人となっていく。この皮肉な対照。スザンネ・ビア監督が用意した一つの回答は、ラスト・シーンからうかがえる。苦しみを一人で抱えるものではないということ。例え、過去を変えることはできないにしても、赤裸々な心を明らかにすれば、何かが変わっていくかもしれない。

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2008/08/09

ライフ・イズ・コメディ ピーター・セラーズの愛し方

製作年:2004年
製作国:アメリカ/イギリス
監 督:スティーヴン・ホプキンス

本作品で特徴的なのは、ピーター・セラーズ(ジェフリー・ラッシュ)の奇行とも言える行為が二度、三度と繰り返され、強調されているところである。怒りを爆発させ、息子の模型や家具装飾品を粉々に破壊する異常性。他の女性への想いを何のてらいもなく妻アン(エミリー・ワトソン)に報告する愚直さ。ラジオ番組から映画界へ順調にキャリアを伸ばすのと反比例するように、異常な行動が増えていく。それは、いくつになっても大人になりきれない幼児性を表していると思う。何かを欲すれば何かを諦めなけばならない。その摂理を理解しなければ、幸福はやってこない。

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2008/08/07

うつせみ

製作年:2004年
製作国:韓国/日本
監 督:キム・ギドク

鏡を覗きこんでいる自分の顔は、向こうの世界の同じ顔を持つ誰かではないか。ふと、そう思うときがある。鏡に映っている風景は、我々の世界と併存する異次元の世界のもの。そうしたパラレル・ワールドはSFドラマでお馴染みであるが、留守宅に侵入し、転々と放浪生活を続ける本作品の主人公、テソク(ジェヒ)は、向こう側の人間ではなかったのかと解釈すると、妙に納得できる話となる。

言葉を喋らないのも、向こう側では話す習慣を持たないからではないか。浮遊感のあるふわったとした存在感は、気ままにこちら側と向こう側を行き来する軽やかさからくるものではないか。

そんな彼を繋ぎとめる重石となったのが、夫から虐待を受けているソナ(イ・スンヨン)の存在。一人であるはずが二人となったため、彼はこちら側の人間に捕えられてしまう。留置所での訓練は、二人の重さに耐えられるようにするものだ。浮遊の技に進化を遂げたテソクは、夫がいる、いないに関わらず、ソナと生活を共にすることができるようになる。

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2008/07/19

いま、会いにゆきます

製作年:2004年
製作国:日本
監 督:土井裕泰

亡くなった妻が甦ってくる。ありがちな設定であるが、本作品はそれにもう一捻りある。それが明らかになったとき、怒涛のような感動が打ち寄せてくる構成だ。前半、状況説明の伏せられていたことが巧みな伏線となっている。見事な脚本であった。無論、こんなことは現実的でない、都合が良すぎると切り捨てるのは容易い。だが、こんなことが現実に合って欲しいという願望を見る者は心に内に秘めているのではないか。こうした奇跡は自分に訪れることはないと知っているから、夢幻の世界に酔いたいのである。

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2008/05/19

ヴァン・ヘルシング

製作年:2004年
製作国:アメリカ
監 督:スティーヴン・ソマーズ

ドラキュラ伯爵の宿敵として知られたヴァン・ヘルシング教授。フランシス・フォード・コッポラ監督の「ドラキュラ」(1992)などにも登場してくるキャラクターであるが、バチカンの密命を受けたモンスター・ハンターとして新たに造形された一編。ドラキュラだけでなく、フランケンシュタインやウルフマンという伝説のモンスターたちと壮絶な闘いを繰り広げられる面白い試みである。だが、人物の背景描写に深みがなく、どうも見ていて物足りない。例えば、何故、ヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン)が記憶を無くし、モンスター・ハンターとして生きているのか。それは戦いのドラマの中で、興味を引く設定なのであるが、うまく活かされていない。それが惜しまれる。

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2008/05/05

ジャスミンの花開く

製作年:2004年
製作国:中国
監 督:ホウ・ヨン

間違った選択を重ねる家族。チャン・ツィイーが上海に生きる母子三世代の女性を一人で演じた力作ではあるけれど、不幸を自ら呼び込んでいるような生き方の繰り返しに悄然としてしまう。彼女たちは、それぞれ幸せになろうとして、母の反対を押し切って一歩前に踏み出す。それが、望んだ結果にならなかったとしても、卑下することはないではないか。歪んだ自己嫌悪と失ったものを追い続ける諦観の無さが、更なる悲劇を生み出すのだ。

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2008/04/15

ニキフォル 知られざる天才画家の肖像

製作年:2004年
製作国:ポーランド
監 督:クシシュトフ・クラウゼ

あまり前情報に触れる機会もなく、てっきり、ドキュメンタリー映画かと思って見始めたら、伝記ドラマだったのでビックリした。さらに、小柄な老人画家の主人公ニキフォルを演じたのが、クリスティーナ・フェルドマンという女優さんだと知って、さらに驚いてしまう。偏屈な老人にしか見えない秀逸な演技力だった。

さらに、さらに驚いたは、いくら天才的な絵画に魅了されたとはいえ、身内でもできないような親身な世話を家族を捨ててまで行っていたという男性の存在。このマリアン(ロマン・ガナルチック)こそ、本作品のなかでもっとも興味深い。どうして、ここまで打ち込むことができたのか。私には分からない。ただ、天才画家として、こうして映画まで作られるほどの名前を残すことができたのは、マリアンのような人々の支えがあってのことだろうと思うだけだ。

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